デジモンストーリー オールドフレンド   作:Tomato.nit

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ティラノモンの過去に触れていくお話です。
ティラノモンの昔の姿はギルモン。
ギルモンと親友のアグモン。

二匹のデジモンの冒険の物語です。


第九話 幼竜の記憶

 今日も今日とて草原を駆け回る。二匹のデジモン。少し昔の悲しい物語。

 

「ギルモン待ってー。走るのはやいよ。そんなに急がなくてもデジタケは逃げないから」

 二つの影が風を切って駆け抜けていく。一つはギルモン。もう一つはアグモン。二匹の影はどんどん距離が離れてい行く。先を行くギルモンは籠を背負っているにも関わらず、跳ねるように駆ける。

 二匹にとってはこの草原での時は日課でもある。

 散々走り回った後は、適当な食料とかをを調達して町に帰る。

 珍しいものが見つかれば、お小遣いにもなるし、町に持って帰った食べ物はどんなものでも大体は感謝される。

 流石に腐った肉は喜ぶデジモンはいなかったけど、トイレの前でヌメヌメしていたヌメモンには「どっちかっていうと美味い」とちょっぴり好評だった。

 ちなみにボクの好物はデジタケ。

 アグモンは何でも好きだけど、お気に入りは巨大肉。極上肉よりも食べやすいんだって。

 空に昇る太陽はその姿を雲の影に隠し、草原には大きな影が広がっている。

 このままの調子だと三時間もすれば雨が降りそう。涼しいから晴れているより動きやすから曇りは曇りでボクは好きだけど。

 空の端には黒い雲が少し姿をのぞかせている。

 

 アグモンとギルモン。基本的にデジタマから生まれるデジモンに兄弟という概念は薄い。

 中には、両親と呼べる関係のデジモン達からデジタマが誕生し、兄弟の関係になる者もいるが、極めて特殊な例である。

 双子で生まれることの多いテリアモンとロップモンは自動的に兄弟であるがこれも特例である。

 しかし、同じ時期にデジタマから孵ったデジモンは多くの場合、成長期までは同じような成長スピードであるため、自然とその後の行動も共にする場合が多い。そのため、俗に言う兄弟のような仲の良い関係になることが多い。過ごす時間が幼馴染というようなものと比べると多く、趣味や嗜好が似ることが多い。

 この二匹もその境遇であり、生まれたころからほとんど一緒の時を過ごしたのである。

 

 先に池の畔に着いたので腰を下ろして、アグモンを待つ。

 

 水面を一陣の風が駆け抜け、さざ波を立てる。

 今日も風が心地いい。

 

 バタバタ駆けてくるアグモンに手を振り応援する。

「おーい、アグモン。はーやーくー」

 それに答えるように手と足の回転はすこし早くなるけど、速くなった気はあんまりしない。

 最近気づいたんだけど、アグモンと鬼ごっこしてもすぐに捕まえちゃうし、逃げる番になったら全然捕まらないし、面白くない。

 だから最近はかくれんぼだったり、レアな食材探しだったり、必殺技の練習だったりして遊んでる。早く進化してもっと強くなりたいっていうのが最近のボク達の目標だ。

 

「今日は何する?昨日はかくれんぼしたし、他のことやろうよ」

 やっと到着したアグモンに尋ねてみると、「ちょっと待って」と池に向かう。

 走ったから喉が渇いたみたいで、ゴキュ、ゴキュと池の水を飲み始めた。そんなにいっぱい飲んだらお腹タプタプになっちゃうよ?

「生き返ったー!じゃあ、じゃあ、今日はね、バトルしようよ。新しい必殺技も考えて来たんだよ!」

 腕をブンブン振り回してやる気満々なアグモン。よーし、だったらこっちもアレを試してみようかな。

「いいよ。今日はバトルだね!じゃあ、負けたら相手の言うことを何でも一つ聞くこと」

「今日は負けないからね!」

 ボクとアグモンの戦績は今のところ三勝二敗三引き分け。ボクの勝ち越しだ。

 

 地面に大きな円を描いてリングにする。ここから出たら負けっていうルール。ガルダモンが「それはスモウですね」って言ってたけど、スモウって何だろう。

 この辺りは成長期のデジモンしか居ないからちょっとくらい暴れても怒られない。この前、町で遊んでると静かな所が好きなデジモンの迷惑になっちゃうからダメだって注意された。静かなところが良いならなら町に住まなきゃいいのに。大きなデジモンの考えることは分んないや。大きくなったら分かるのかな?

 

 リングが完成したからいよいよバトルだ。ワクワクしてきたぞ。

「それじゃあ、はじめよう!」

 アグモンの掛け声を合図にバトルスタート。

 

 アグモンは必殺技を考えて来たって言ってた。どんな技か分からないけど油断はしないようにしよう。

「ベビーフレイム!」

 得意の攻撃でアグモンが攻めてくる。いつの間に火の玉を作っていたんだろう気付かなかった。いつもだったら口から火の粉が漏れてたりして気が付くんだけどな。

 

 やっぱりアグモンも成長してるんだ。負けてられないな!

 火球は横っ飛びに避けることができたけど、そのせいで少し態勢が崩れちゃった。

 立て直そうと地面に手をついたところにアグモンが飛び掛かってきた!

 爪はすぐ目の前に迫っている。考えるより動く。

 

 上空から迫るアグモンの下を潜るように前進し、攻撃を躱すギルモン。躱すと同時に地面に対して細工を行う。

 

 「まだまだ!ベビーフレイム!」

 すぐに次の攻撃を行うアグモン。この前より断然反応が速くなってる。

「ファイアーボール!」

 向かってくる火球に合わせるようにこちらも火球で対抗する。

 二つの炎がぶつかり合って爆発が起きる。

 今のうちに!

 お互いの視界が奪われているうちに必殺技の準備に取り掛かる。

 地面にいくつもの穴を掘る。

 視界が晴れる頃には僕の周りには無数の穴が空けてある。

 今度はこっちの番だ!

「ロックブレイカー!」

 地面のある点に爪を差し込む。

 すると、穴と穴を繋ぐように地面が割れ、巨大な岩盤が出来上がる。

 持ち上げるとパラパラと土が落ちてくるその塊を投げつける!

「うわっ、そんなの聞いてないよ!」

 これにはアグモンも驚いたみたいで、慌てて後ろに逃げる。でも、このリングはそんなに広く作ってない。

 リングの縁で急ブレーキをかけて止まったアグモンは勢い余ってつんのめっている。

 平均台から落ちないようにバランスを取るように、体をくねくねさせてリングから出ないように必死。

 でも、これは勝負。

 そんなアグモンの後ろに立って

「えいっ」

 ツンと背中を押す。

 もちろんバランスを崩しているアグモンは耐えられる訳もなく。

 呆気なくリングの外に出てしまう。

「ああー、負けちゃった。今の何??」

「ボクの新技だよ。ロックブレイカーっていうんだ。びっくりした?」

「びっくりた。っていうか死ぬかと思った。あ~あ、折角新しい技考えたんだけどな。出しそびれちゃった」

 ヘタヘタと座り込むアグモン。

 一応加減はしてあるから死にはしないんじゃないかな。たぶんだけど。

「その新しい技ってどんなの?」

「だめだよ。教えない。今度のバトルで使ってびっくりさせてやるんだから」

 やっぱりそう簡単には教えてくれないみたい。

 

 結構時間は経ったけど、まだ遊び足りない。

 今度は・・・・

「ギルモン、宝探ししようよ」

 寝っ転がったままのアグモンが提案してくる。

 宝探し!いいじゃん!

「よーし!じゃあ、制限時間は一時間で、どれだけレアなアイテム見つけられるか勝負だ」

「勝負もいいんだけどさ、折角だし、お互いに相手にプレゼントしない?」

 面白い提案をしてくるアグモン。お互いにプレゼントか。

 ボクたちの宝探しは基本的にお互いの見つけたものを欲しがることが多い。隣の芝は青いってことらしい。それなら最初から相手の為と割り切って探した方がいいのかもしれない。

「分かった!一時間後に集合ね」

「うん!」

 こうして、ボクらの宝探しが始まった。

 アグモンは少し離れた森に行くらしい。ここの近くの森には昆虫型のデジモンがたくさんいる。あんまり強いのはいないけど、たまにクワガーモンなんかがいて危ない。

 ボクはこの池に流れ込んでいる川の上流に向かうことにする。水の流れは色んなモノを運んでくる。食べ物だったりガラクタだったり、時には本当に珍しいものが流れてくる。

 

 ルンルン気分で川の横手を歩いていると早速何かが流れている。

 白い塊みたいな。なんだろうアレ。

 とりあえず引き上げてみよう。籠からロープを引っ張り出して先端に輪っかを作って、ブンブン振り回す。最近見た映像に「かうぼーい」っていうのがあった。牛を追いかけながら輪っかを投げていたのがカッコよかったからこっそり練習していた。

 役に立つとは思ってなかったけど。

 適当に見様見真似でやってみたところ、思いの他上手くいって、輪っかに綺麗に引っかかった。そのままずるずる引き上げてみる。

 白い塊は引き上げてみると、耳と手足がある。

 その先端は薄い紫色で、頭には三角のマークがあって。

 これって、クルモン?

 話ぐらいは聞いたことあるけど、かなり珍しいデジモンだった気がする。

「でも、これをプレゼントするのは違うよね。ねー、大丈夫??」

 ゆさゆさ。揺すってみるとピクっと反応はある。

 怪我してるわけじゃなさそうだし、このまま連れて行こう。

 とりあえず籠に入れて運んでいくことにする。そのうち起きるよね。

 五分も歩いたところで後ろの籠からゴソゴソと動き回る気配がする。

「クル~。ここはどこクル~??」

「クルモン、大丈夫だよ。さっき川で流れてたから助けてあげたの」

 籠の外から声を掛けると、ビクっと怖がってしまう。

 いきなり外から声がしたら怖いか。

「籠から出すからびっくりしないでね」

 一応説明だけしておいて、籠に手を突っ込んでみると、逃げる。

 やっぱり。

 仕方ない。覗き込むけどびっくりしないでね?

「クル!?」

 目が合ったら動きが止まった。

「クルモンは食べられるクル。もうおしまいクル」

 ガタガタ震えながら、酷いことを言われる。

 食べないよー。

「食べないから安心してね。っていうかデジモンは食べても美味しくないらしいし」

 と、籠から出してあげたところ少し落ち着いた様子。

「本当に食べるんじゃないクル?それじゃあなんでクルモンは捕まっていたクル?」

「捕まえたんじゃなくて助けてあげたんだけどなー。まあ、いいや。クルモンはどうして川で流れてたの」

「クルモン川で流れたクル?わかんないクル」

 記憶喪失ってやつかな。たぶん遊んでて流れちゃったんだな。

 

 とりあえず一緒にいた方がいいよね。クルモンって幼年期だし。この辺が安全だって言っても流石に幼年期一匹じゃ危ないし。

「じゃあクルモンしばらく一緒に遊ぼう。後で町に連れて行ってあげるからから」

「遊ぶクル~」

 頭上をくるくると円を描いて回るクルモン。遊ぶのは好きみたい。

 

 クルモンと宝探しを始めてからもうすぐ三十分。

 ガラクタはいくつか見つかったけど、お宝と言えそうなものはまだ見つからない。

「うーん、なかなかいいのが見つからないね」

 そろそろ引き返さないと時間に間に合わなくなっちゃうな。

「ギルモン、あそこの岩の下に何かあるクル」

 ちょうど目の前にある大きな岩を指すクルモン。アレは動かせないな。

 動かせないなら、穴を掘ってみようかな。

 ガツガツ穴を掘っていくとキンと爪が硬いものに当たる。音からして金属。すごいなクルモン、何であるの分かったんだろう。結構深くに埋まってたから見えるはずはないし。

 とりあえず持っていこう。

 

 これは何だろう。腕輪?バングル?サイズ的には成長期のデジモンにはでかいかな。腹巻には使えそうだけど。

 鈍い銀色をした腕輪のようなもの。六角形を中心にしてその左右にバンドが二本伸びている。六角形は分厚く、外周にはデジ文字がびっしりと刻んである。中心には緑色の水晶のようなものがはめ込まれている。今は泥だらけでくすんでる。

「クルモンこれ何だか分かる?」

「分かんないけど、いい匂いがするクル」

 クンクン。匂いを嗅いでみるけど、ボクには何の匂いもしない。クルモンにだけ分かる匂いって不思議だな。

 とりあえず、初めて見るアイテムだからレアものなことは間違いない。

 アグモンへのプレゼントはこれに決定だ。

「よーしクルモン、お宝も無事見つかったし、アグモンと合流して町に帰ろう」

 

 三匹で町の小屋に戻る。基本的にボクとアグモンの住処だけど、クルモンが一匹増えても全然へっちゃらなくらいには広い。特に家具とかは無いけど、僕たちが集めたお宝が祖kらへんにいっぱいある。 

「クル―!おもちゃがたくさんあるクル!」

「おもちゃじゃないよ!」

 そういうアグモンのお腹にはさっき見つけた腕輪がピッタリはまっているいる。それ、丁度いいんだ。

 アグモンが探して来たのは、クロンデジゾイドの小さな塊。確かにレアものだけど、これだけ持っていても仕方ない。そのうち使うこともあるかもしれないから一応持っておくけど。

 クルモンのことは明日ガルダモンに聞きに行こう。

 

 今日はもう疲れたからすぐに寝るということで、三匹の意見が一致した。

 日はもう暮れて、外は真っ暗。町の外では虫の鳴く声が響いている。規則正しいような、何の秩序も無いような、リンリン、ジリジリ、五月蠅くない程度の音はいつもボクらの子守歌だ。

 

 これがボクとアグモンとクルモンの出会いの日。

 

「そうですか。では、行く当てもないのであれば、この町で暮らして頂いても構いませんよ。ギルモン、アグモン、引き続きクルモンのお世話よろしくお願いしますね」

 三匹でハイタッチを交す。一日一緒に遊んですっかり仲良くなったボクたちは友だちだ。

「それじゃあ、早速遊びに行こー!!」

「「おー」」

 こうして新しい友達との生活が始まった。

 遊んで食べて寝て起きて。

 そんな生活が三カ月ほど続いたある日。

 

「草原じゃない場所にも行ってみたいクル」

 好奇心に負けたクルモンのわがままが始まった。基本的に言うことを聞く良い子なクルモンだけど、たまにこういうわがままがある。

 昨日、冒険から帰ってきたケンタルモンの話を聞いて、他の場所に行きたくなったみたい。

 確かにケンタルモンの話は面白かった。

 強敵との闘いや、ワクワクするような冒険の話、まだ見たことのない場所の景色はボクたちの心を掴んで離さなかった。

「でも、草原以外の場所は結構危ないよ」

 アグモンが窘めるけど、クルモンは納得してくれそうにない。

 少しくらいなら、森の方に行っても大丈夫かな。

 僕たちも前に比べたら随分強くなったし!

「じゃあ、クルモン。今日は森の方に行ってみようか」

 アグモンは少し驚いた顔でこちらを見るけど、すぐに「まあ、いっか」という顔になる。

 なんだかんだで、他の場所で遊んでみたいというのは共通の認識だった。

 森では草原に比べて、デジモンが強い。とは言っても、町からあまり離れなければ出てくるのはせいぜい成長期だし、成熟期のデジモンは町から一日以上歩かないと滅多に出会わない。

 それに森で取れる食べ物は美味しいものがたくさんある。デジタケもいっぱいある。ボクとしてはそれだけで行く価値がある。

 

 なんだかんだで、森に到着したボクたち。

 木が生い茂る空間が森。森と林の違いは何だろうか。何となく密度が関係している気もするけど、誰が決めているのかは分からない。

「木がいっぱいクル―、どこがどこかわかんなくなっちゃうクル」

 あっちをうろうろ。こっちをうろうろ。初めて見るものばかりの空間に心を奪われたクルモンはさっきから全く止まる気配がない。

「クルモン、遠くに行っちゃ危ないよ。あんまりボクたちから離れないでね」

 アグモンが声を掛けるけど、クルモンは聞く耳持たず。その姿はどんどん離れていく。

「このままじゃはぐれちゃう。アグモン、追いかけよう」

 

 クルモンを追う二匹の影。その姿を見つめるように大木の上にはもう一つの影が。

 その全身は黒い布に覆われ、姿ははっきりとしない。

「こんな所で見つけられるなんて、あたしってラッキー。今日ちゃんと捕まえれば、この前取り逃がしちゃったのは帳消しよね」

 影は一人笑いを堪えながら、獲物に迫る。

 木から木へ。

 音もなく駆ける。

「そしたらあの子に会える」

 その呟きは森の木々に埋もれ、誰の耳にも届かない。

 

 

 クルモンを追いかけて一時間。ようやく追いつくことができた。

「クルモンやっと捕まえた~」

 ボクとアグモンは散々振り回されたお陰でもうへとへとだ。大人しくなったクルモンを確保する。でも、その様子がおかしい。

 さっきまであんなに元気だったのに全然動きが無い。腕に抱いて初めて気づいたけど、微かに震えている。

「クルモン?どうかしたの。大丈夫?」

 そうしている間にも、クルモンはガタガタと震えを増す。

「クルモン!しっかりして!クルモン!」

 震えよりも強くその体を揺する。クルモンの目を覚まさせるように。

 クルモンの震えが収まり、焦点の合っていなかった瞳と目が合う。

「来たクル。あのデジモンが来たクル。怖いクル」

 意識は十分に戻ったみたいだけど、その体は未だ震えている。来た?誰が来たんだ。

「クルモン、来たって誰が?ここにはボクとアグモンしかいないよ」

 

 クルモンを安心させるために、左右から挟み込むように抱き着く。震えも収まりだいぶ落ち着きを取り戻したみたいだ。

「残念でした。あたしもいるのよね」

 そんな僕たちの頭上から声降ってくる。

 見上げても逆光でその姿を正確に捉えることができない。シルエットは耳の生えた人の形をしていることしかわからない。

 人の形をしたデジモン?

「誰・・・」

 一つだけ分かることがある。それはクルモンがあのデジモンに怯えていたということ。

 あれが誰かは分らないけど、友達を怖がらせる奴は悪い奴だ。

「そんなに怖い顔して睨まないでほしいな。あたしはただ、そこのクルモンに用があるだけなんだけど」

「クルモンにどんな用があるっていうの」

 クルモンを背中に隠し、前に出る。

「あたしはその子を連れてこいって命令されてるだけだから、別にあたし自身はその子に用事がある訳じゃないんだよね」

 そう言って謎のデジモンは木から飛び降りてくる。

 陽光に照らされ、その姿がハッキリと見て取れるようになる。

 耳だと思っていたのはフードの飾りで、その下には人型のデジモンの姿が、透き通るような白い素肌に似つかわしくない、凶悪な二丁の拳銃が握られている。

 

 フードではなくクロブークなのだが、このときのギルモンには知る由もない。

 

 初めて見るデジモンだ。見たところ成長期か成熟期ってところだけどどっちだろう。

「折角だし自己紹介しようか。あたしはシスタモン。シスタモンノワール。ノワールっていうのは黒って意味。ね、黒いでしょ?」

 服の裾を掴みクルっと回るシスタモンノワール。

 ・・・シスタモンか。やっぱり聞いたこと無いや。

「それで、クルモンを渡してくれると嬉しいんだけどな。戦うのは好きだけど、無意味な戦いはしたくないし」

 チャキ、撃鉄の上がる音がする。

 撃つぞっていうことか。

「無意味な戦いってどういうことさ」

 少し語気が強くなる。なんだかバカにされたような気がしたから。

「だって、君達じゃどれだけ頑張ってもあたしには勝てないもん。怪我する前にその子渡しなよ」

 やっぱり気のせいじゃなかった。無意味っていうのはつまり戦う価値も無いってこと。

 自然と体に力が漲る。バカにされて黙っているほど恐竜型のデジモンは大人しくない。

「やっぱり諦めてくんないか。仕方ないね、殺すと後味悪いから死なないでね」

 なんて勝手な物言いなんだ。こっちだって、黙ってやられるほどお人好しじゃないぞ。

 

 相手は一。こっちは二。数の有利はあるんだ、アグモンと連携して倒す!

 

「行くよアグモン!」

 左右に展開して仕掛ける。シスタモンは人型のデジモンだ。だったら、視界は限られるし、捌ける攻撃には限りがあるはずだ。

「ベビーフレイム!」

 アグモンの放った火球を銃撃の一撃で消し飛ばす。すごい威力だ。少なくともベビーフレイムと同等の威力の銃弾をトリガーを引くという簡単な動作だけで何度も放つことができる。

 カワイイ見た目だけど成熟期と考えて挑もう。でなきゃ死ぬ。

「アレやるよ、アグモン!」

 コクっと頷き、もう一度ベビーフレイムを放つ。でも、その弾道はシスタモンに直撃するコースじゃない。

「やる気あるの?ないなら帰っちゃいな!」

 迎撃もせず、躱しもせず、その顔の横を火球が通り過ぎていく。

 これでいいんだ!

「ファイアーボール!」

 今度はこっちから、撃つ。狙いはシスタモンじゃない。ベビーフレイムそのもの。

 二つの火球がぶつかり激しい爆発が生じる。同時大量の煙がに生み出され、視界を奪う。

 これでいける。

 アグモンに見せたロックブレイカーは威力は高いけど準備に時間がかかる。そのための目くらましが今の爆発だ。

 素早く、必殺技に必要な仕掛けを施す。少ない時間でも確実にできるように何度も練習した。そのおかげで、草原でアグモンに使ったときは一回分しか準備できなかったけど、今回は三回分は用意できた。

 視界が晴れる。

「ケホっ、いったい何なのよ!」

 至近距離での爆発に見事に巻き込まれ、せき込むシスタモン。

 その隙を逃すまいとアグモンが飛び掛かる。

「しつこいなあ、えいっ!」

 そんなアグモンを何でもないという様に蹴り飛ばす。シスタモンは強い。でも、今のでアグモンと距離が離れて隙ができた。

 吹き飛ばされながらも、アグモンはブイサイン。全部計算済みか!

 それならこっちもやるしかない。

「ロックブレイカー!!」

 アグモンに気を取られたままのシスタモンの背中目掛けて、岩盤を放り投げる。

 

 背後からの風切り音に気付き、振り返ったシスタモンの眼には、謎の塊が写る。

 軌道から明らかにこちらに飛んでくるし、その軌道を追えば、ギルモンが確認できる。状況証拠から攻撃だろう。

「なかなかやるじゃん。でも・・・」

「ミッキーバレット!」

 

 シスタモンは岩が直撃する間際に二丁拳銃を乱射し、岩を粉々に打ち砕く。パラパラと落ちてくる砂粒を気にも留めず、銃口にフっと息を吹きかける。

 白い煙がたなびき、空気に薄まって消えていく。

「ちびちゃん達にしてはよく頑張ったね。褒めてあげるよ」

 パチパチと手を叩くシスタモン。普通褒められたらうれしいけど、今はむかつく!

「ロックブレイカー!ロックブレイカー!」

 仕掛けを二つ同時に使って、巨岩を連続で叩き込む。

 でも、シスタモンは同じようにその岩を撃ち壊す。

「だからあたしは君達に賭ける。妹を助けるためにクルモンが必要なの。それを許してくれなんて言わない。でも、君達がクルモンを助けたいなら・・・」

 そう言って、シスタモンは僕らに銃撃を放つ。

 直を受けて意識が薄れていく中、シスタモンの最後の言葉が聞こえる。

「ここに来て。妹とクルモンを助けるためならあたしはどうなってもいい」

 

 そうしてシスタモンが一枚の紙きれをボクの腕に持たせたところで意識が完全に途切れた。

 

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