改造戦士美鈴   作:akimon243

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第1話

─幻想郷、霧の湖の畔の紅い館─

 

美鈴「ん?」

 

もうそろそろ休息しようと館に入ろうとした瞬間である。

門番の美鈴は何かの気配を感じた。

どうも鳥獣の類ではないようである。

 

美鈴「......」

 

美鈴は周囲の気を探った。

日頃はただの人間のようにしか見えぬ彼女であるが、

気を感じ、使うことについては他の追随を許さぬ妖怪であった。

しかし、美鈴はこの能力を何処でどのように手に入れたかは覚えていなかった。

毎日の修行で身に着いたのかもしれないし、生まれつき持っていたのかもしれなかった。

 

美鈴「......!」

 

美鈴は謎の気配の主を捉えた。目の前の森の中にいる。

やはり鳥獣ではなく妖怪の類である。殺気は感じられない。

気の主は付喪神や蟲のような野良の妖怪ではないようである。

どちらかというと天狗のような、妙に洗練された気である。

しかも一つや二つではない。十以上いるようである。

 

美鈴「(なんだ......?)」

 

美鈴は構えた。館の者を狙う悪党であったら困る。

それに、こういうところでちゃんとしなければ、サボっていると見られかねない。

 

美鈴「そこにいるのは誰ですか......?」

 

一応聞いておく。返事はない。

勘違いかもしれないと思ったが、やはり気を感じる。

 

美鈴「ッ!!!」

 

突如上空から殺気が落ちてくる。

咄嗟に、美鈴は自身の気を感じる能力を頼りに拳を振り上げた。

 

美鈴「はあッ!」ドスッ

 

殺気が一瞬消えた。拳は相手に直撃したようだった。

確かな手応えを感じた。しかし──

 

美鈴「......!?」

 

相手の姿が見えない。

確かに今は真夜中だし、月明かり以外に光はなかったが、全くそれらしい者が見えない。

試しに気を練り上げて照明弾を放つ。すると......!

そこには影だけがあった。

 

美鈴「なん...だと...ッは!?」

 

美鈴には驚いている時間もまともに与えられなかった。

森から撃たれた弾丸を察知、回避しなければならなかったのだ。

 

美鈴「はッ...ふッ...」ヒョィッヒョィッ

 

飛翔物を回避するのは美鈴の十八番だった。

数日に一度の頻度でメイド長の咲夜にナイフを投げられているのだ。

回避に慣れない訳がない。

 

美鈴「ふんッ...はぁッ!」

 

気弾を撃ち返す。正確に着弾。しかし敵の姿は見えない。

 

美鈴「(何処だ...何処に居る...?)」

美鈴「...ハッ!」

 

美鈴は背後から来た別の敵と弾丸への対応がわずかに遅れた。

弾丸に当たる。

 

美鈴「ぐっ...う...」

 

どうやら麻酔弾のようだった。身体がだんだんと動かなくなる。

 

美鈴「はっ...はぁっ...」

 

薄れゆく意識と荒くなる呼吸の中で最後に美鈴が見たのは、河童であった。

 

--------

 

妖怪の山の中腹、玄武の沢の畔にひっそりと佇む小さな小屋...

その地下には河童の秘密基地があった。

 

河童A「...この妖怪、本当に人間にそっくりだな」

河童B「まあそういう種族もあるだろうさ。...次、最重要パーツだぞ」

河童A「おう。胸部切開及びエナジーコアの移植を開始する。メス入れろ」

河童C「了解。ヒュー、デカい。」

河童B「胸に気を取られるなよ」

河童C「ウッ 了解」

河童A「このエロ河童め。生体反応は」

河童D「異常なし。心拍・呼吸・脳波すべて正常値」

河童C「...切開よし。ム、なんだこれ」

河童B「ん、どうした。...なんだこの球は」

河童C「わかりません。こんなもの初めて見ました」

 

美鈴の体内に河童たちが見たのは、紅い謎の球体だった。

 

河童A「邪魔だな。切除するぞ」

河童B「待て、何の器官かわからんものをむやみに切るわけにはいかん。」

河童A「しかしこれではエナジーコアが入らんぞ」

河童C「切ろうとしたって無理ですよ、これ。大動脈から血管が何本も巻き付いてます」

河童B「しかも何本かは一体化してるな。これは無理に切ると最悪死に至る」

河童A「むう...こいつを殺すわけにはいかんし...」

河童D「じゃあエナジーコアを半分露出させるというのはどうですか」

河童B「それでは防御力に不安があるな」

河童C「たしか試作の装甲板があったはずです。それなら何とかなります」

河童B「一応上に連絡はとっておこう」

 

結局、美鈴の胸には松の種のような大きな紅いものが埋め込まれることとなった。

表面に露出するのは特殊な装甲板である。

 

河童A「ふう。...よし、次で最後だ。電脳移植と制御プログラムの導入だ」

 

制御プログラムとは河童側が改造した妖怪などを遠隔操作するためのものである。

ただ、妖怪は種族によって脳や思考、肉体の構成等が異なるため、

それぞれの種族に合わせたプログラムが必要になる。

 

河童B「電脳はともかく、制御プログラムはこいつの種族が正確にわからないといかん」

河童C「でもこいつって何の妖怪なんですかね」

河童B「わからん」

河童A「試しに人間のものを入れてみて起動試験しようか」

河童B「なぜ人間用のプログラムを?」

河童A「こいつはどう見たって人間だ」

河童C「とりあえず入れてみましょうよ。後から変更できますし」

 

ということで美鈴の麻酔は解かれ、河童たちはじっと美鈴を見ていた。

 

--------

 

美鈴「......」

河童A「おう、起きたか」

 

美鈴は見慣れぬ部屋の中で目を覚ました。

まだ薬が抜けきっていないのか、意識はすこしぼんやりとしている。

身体を動かそうとするが、動かない。見ると、手足が金具で固定されている。

美鈴は、しまった、と思った。河童に捕まったようだ。

 

美鈴「......私をどうするつもりですか」

河童A「もうしたよ」

美鈴「もう?」

河童A「すでにやることは全てやった」

美鈴「何を...?」

河童A「なに、君の身体に改造を施したのさ」

美鈴「改造!?何のために!?」

河童A「君を我が軍の優秀な兵とするためだ」

河童B「安心しろ、館の者は皆改造済みだ。君だけがこうなった訳ではない」

 

美鈴が目を覚ました直後、河童の一人が装置を起動した。

改造した妖怪を遠隔操作する装置である。

しかし、それを起動したにも関わらず、美鈴にはその影響が見られなかった。

 

河童A「それはともかく、またちょっと改造をしなければならない。眠ってくれ」

美鈴「えっ」

河童A「よし、再度麻酔をかけろ!」

河童達「おう!」

美鈴「なにっ、やめろっ!畜生!」

 

美鈴が状況を理解し悪態をついている間に手術の準備は始まった。

しかしその時、戸の方で凄まじい爆発が!

 

小悪魔「うぉりゃぁぁぁぁ!!!」

河童「ぐわぁぁぁぁぁ!」

 

爆発とともに走ってきたのは小悪魔であった。

 

咲夜「そこの頭邪魔!」ヒュッ

河童「ぐほっ」ドスッ

 

咲夜の姿もある。部屋の河童をなぎ倒しながら美鈴の元へ駆け寄る小悪魔と咲夜。

体中傷と返り血だらけである。

 

咲夜「美鈴、大丈夫!?」

美鈴「...大丈夫に見えますか?」

小悪魔「美鈴さんなら多分大丈夫ですね!今から脱出しますよ!」

美鈴「えっ脱出?」

咲夜「この河童の基地を出るのよ」

小悪魔「ちょっと魔法使いますよ」

 

火の魔法で金具を溶断する。

 

美鈴「あっちちち!」

小悪魔「走って逃げますよ!さあ立って!」

 

走って部屋の外へと出る。

途中、河童の攻撃を受けるものの、咲夜のナイフと小悪魔の魔法で悉く退ける。

 

美鈴「...お嬢様やパチュリー様は!?」

小悪魔「完全に改造されてダメでした...」

美鈴「咲夜さんは!?」

咲夜「私は身体の改造が終わる前に小悪魔に救出されたのよ」

小悪魔「いや、危なかったです」

美鈴「......」

 

昇降機が数個並んだ部屋に出る。周囲に敵影はない。一息つく。

 

小悪魔「...ふう。さあ、これで上に行きますよ!」

美鈴「上?それって屋上に出るんじゃ」

小悪魔「ここは地下なんですよ。完全に隠されてたので最初はわかりませんでした」

咲夜「階段の方が安全じゃない?」

小悪魔「いえ、私が来た時はこれで大丈夫でした。何の問題もありませんでしたよ」

 

三人は昇降機に乗って上へ行く。

昇降機が直通する最上階に到着。走って階段に急ぐ。

しかしその途中、河童の戦闘部隊が後ろから強襲。

 

河童「目標発見!撃てェ!撃てェ!」タタタタタ

美鈴「うわっ撃ってきた!」

咲夜「ぐわッ」ブシャッ

 

短い呻き声を上げたあと、咲夜が崩れ落ちる。

右膝から血が噴き出している。銃撃をもろに食らったらしい。

 

美鈴「咲夜さん!?」

小悪魔「咲夜様!?」

咲夜「私は...大...丈夫......だから...うッ...早く...」

美鈴「何処が大丈夫ですか。一緒に逃げますよ」

小悪魔「美鈴様、咲夜様は頼みますよ。私、反撃しますがあッ」ブシャァッ

 

直後、小悪魔も被弾。うつぶせに倒れる。

こちらは後頭部に直撃したようで、頭の前後から血と脳髄が噴き出ている。

 

美鈴「あっ...死んでる…」

咲夜「美鈴......死亡確認...は...いいから...早く......早く逃げ...ぐッ」ガッ

 

ついに咲夜が河童に捕まる。

 

美鈴「ぐわッ!」

 

美鈴も腕を撃たれた。貫通されたらしく、腕の両側から血があふれ出す。

思わず傷を押さえ、応急処置のつもりで気を送り込む。

 

美鈴「うッ...くッ......うん?」

 

見る見るうちに傷が小さくなっていく。最終的には完治してしまった。...凄い回復力だ。

美鈴は驚いた。自分の能力の強さに驚いた。もしやこれは改造の影響か。

まだ銃撃は続く。しかし美鈴は逃げようとはしなかった。美鈴は激しく怒っていた。

館の者を囚われ、殺されたことに怒っていた。そして河童を侵入させた自分に怒っていた。

そしてその怒りの矛先は目の前にいる河童達に向けられた。

 

美鈴「貴様らァ......」

美鈴「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」

 

美鈴は気を溜め始めた。怒りに任せて。

 

美鈴「とうぁぁぁぁッ!!!」

 

美鈴は空高く飛び上がった。

最前列の河童に急降下して飛び蹴りをかます。

 

河童「ぐほッ!」グシャァッ

 

蹴られた河童の頭が砕けた。文字通り砕けた。

血飛沫の中に立ち上がったのは最早美鈴ではなかった。

美鈴の姿は鎧のように変化していた。

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