B's meat b   作:畑の蝸牛

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SF要素が強いかなー?とは思います。


サンダーバード・オリジン

それはそれは怪しい建物が森の奥にあった。

建物のまわりはジャングル特有のもさもさした木で覆われており、非常に蒸し暑い。

もちろん、すすんで近寄るような者はいない。

本来なら研究所はもっと都会に建てるべきだろう。

そう、怪しい建物は実は研究所だった。

研究所はツタに巻かれた外観であり、もはや怪しさを取り繕う気がないのが見て取れる。

障気とも呼ぶべきオーラが漂っていた。

さて、外のことはこれぐらいにして中の方へと話を移すこととする。

イメージに反して手動のドアを開ければ、そのまま奥まで繋がる廊下となっている。

いくつかある研究室のうちのひとつ。

入り口から数えて二番目の研究室から男の声が響くことだろう。

ボサボサの白髪で白衣の男はテンション高めに語っている。

「ようやく、ようやくだ。いったいどれだけの時間がかかったことやら!」

床から天井を貫く、巨大な水槽。

彼の言うところでは試験管。

その中のものを見ながら男の語りはだんだんと熱を帯びていく。

「それはもう数えたくもないくらいさ!足の指を足したって足りないねぇ!あんな注文を受けたときは注文したやつの正気を疑ったよ!」

やれやれ、とわざとらしくジェスチャーしてみせる。

というのも、聞いているであろう助手の反応が悪いからである。

なんなら助手は半分無視状態だった。

教授である男が熱く語っているのに、作業の手を止めようとしない。

「見たこともない生物を造れ、とまで言われることになろうとは、少年だった頃の私に聞かせたらどんな愉快な反応をするんだろうねぇ?」

「・・・少なくとも今の僕よりはまともな反応してくれますよ」

語りの熱に比例するように近づいてきた男に嫌気がさしたのか、助手は言葉を投げつけた。

「あぁ、聞いていたんだね。反応しないからてっきり作業しながら眠ってしまったかと思ったよ」

「僕は教授ほど器用では無いので、そんなこと全くできる気がしませんね」

この二人においてはこんな会話が普通である。

皮肉を言葉に混ぜ合うのが平常運転だった。

「まぁ、そうだろうね。それよりも注文通りか確認する方が先ではないかね」

「僕としては機材を戻してからやりたかったんですが、まぁいいか。注文書よこしてください」

「ほれ」

紙束が手渡される。

かなり詳細に書き込まれており、使い方を誤れば人を殺せるほど質量がある。

でも助手は教授を殴ろうなどと欠片も考えなかった。

「では、形状から読み上げたまえ」

「えーっと、コウモリのような翼、独立した腕が二本で指が三本。胴体はトカゲ。で、頭が・・・」

「どうしたのかね?」

「これを」

「なるほど、これは見ないとなんとも言えないね」

頭の形状に関しては図解があった。

図解でもしない限りどうにも表せそうにない形だった。

無理矢理にでも説明するなら、「鼻の骨がトサカになるように延長された頭部」という怪文がてきあがる。

「うん、まぁ形状は問題なさそうだ。次」

「性能、性能?なんかマシンみたいな仕様ですね」

形状、の点で引っかからない助手も助手である。

「注文者がそういう趣味なんだろう。さっさとしたまえ」「はぁ、飛行能力・会話能力・発電能力とありますが、教授、大丈夫ですよね?」

「私を誰だと思って「ですよね」

キメ台詞を決めきれなくて助手を睨むが、助手は取り合わない。

これもよく見られる光景だった。

助手はなんとなく壁時計を見やる。

「やってたらそろそろ時間ですね」

「・・・・・・そうだな」

「どんな人ですかね。僕は話があう人だと思いますよ」

「キミとかい?」

「まさか!教授とですよ」

「・・・今度、私のイメージについて洗脳すべきかね」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

二人は目と目で火花を起こしていた。

ぺちぺちとドアを叩く・・・叩く?音が二人の沈黙を崩す。

教授がアゴでドアの方を指す。

助手がゆっくり移動しドアを開けると、そこには・・・誰も居なかった、ように見えた。

ドアを叩いた者は大人の通常目線より下、それこそ小さなこども程度の身長をもってそこに居た。

全身は白と黒のツートンカラー。

背が黒く、腹は白い。

全身に毛はなく、つるつるとしている。

本来なら口があるべきところに、クチバシがあった。

手または腕と呼べるようなものはなく、空を飛んでいただろう先祖の名残、翼がついていた。

足は非常に短く、指の間にはみずかきがあった。

ーーー要するにペンギンだった。

「注文したものは完成しているだろうか」

しかも、内蔵まで届く低音ヴォイス。

ついでに言っておくと、助手はペンギンとは初めましてである。

「・・・・・・・・・教授。」

「どうかしたのかね。・・・お客さんを放置してはいかんだろう。どうぞお入りください」

「失礼する。マッド博士とお見受けするが?」

「さぞ慧眼をお持ちのようで。用件はこちらですかな」

助手は頭が割れそうだった。

よく分からない生物が目の前に居るということもそうだったし、それよりも教授が丁寧な対応ができることが原因だった。

助手はドアの前で固まったままだった。

気絶しないぐらいには精神力があった。

その間にもペンギンと教授の間で話は進んでいく。

「デザインは注文書の通りのつもりですが、これでよろしいですか?」

「うむ、予想以上だ。報酬を足しておこう」

「ありがたく。こちらが能力の方の仕様書になります」

「後で読ませてもらおう。追って評価は送ろう。宛先はこの研究所で?」

「ええ、よろしくお願いします。おい!クルマ持ってこい!」

「あ、はい!」

どうやら話は纏まったようで、固まっていた助手に声がかかる。

研究室の奥から運び出し用のマシンを持ってくると、教授とペンギンが握手・・・握手?していた。

「難しかっただろうが、よくやってくれた。次があればどうかよろしく」

「こちらこそ。何だって造ってみせますとも」

「あ、そうそう。コレを置いておこう。用があれば連絡してくれ」

そう言って机の上に何かを置いた。

そんなやりとりをしている間にも、研究所の外に注文された品は運び出されていたりする。

この研究所はマシンも有能なのだ。

「では失礼する」

ただものでは無い雰囲気を漂わせながら、ペンギンは悠々と去っていく。

足音がぺたぺたするのはご愛敬。

そして、研究室には二人が残された。

「教授、なんだったんですかアレ」

「・・・私が聞きたいよ畜生!?何なんだよあの生物!?私は生物分野で優れている自信があったんだがねぇ!?

「・・・知りませんよ」

二人してため息。

 

 

 

研究者といえど、いや研究者だからこそ、未知との遭遇には自らの常識を傷つけられる。

しかし彼らが幸運だったのは、軽傷で済んだのは、未知もしくは不可思議な生命体を造らされていた、その経験であった。

なんとも皮肉である。

注文された翼竜に救われ、注文したペンギンに正気を脅かされるとは。

二人の研究室の机には、「サンダーバード」と表紙に記された紙束と「カイゼル」と書かれた小さなカード、名刺が置かれていた。

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