-神殿内部-
「…駄目だ、こいつも。もう死んでる」
緑色の服を着た青髪の青年は目を開いたまま息絶えた兵士の瞼を閉じさせる。
ランタンを使い、周囲を見渡すと、彼だけでなく、10人単位で兵士の死体が転がっている。
いずれも鉤爪によって引き裂かれており、それが致命傷となっている。
そんな彼らの遺体を気にかけることなく、茶色いサラサラなセミロングの髪で紫色の服を着た男は先へ進んでいく。
そこには傷を負っているが、まだ息をしている兵士がいた。
その兵士の前で膝を曲げ、顔を近づける。
「何があった…?」
「魔物が…レッド、オーブを奪いに…。早く、グレイグ、将軍…ホメロス…軍師…デルカダール王に…」
「レッドオーブ…デクの話は本当みたいだな…カミュ」
追いついた青髪の男に茶髪の男は目を向けることなく話す。
「ああ…。あいつは盗みの腕はからっきしだが、商売と情報集めに関してはかなりだしな…エルバ」
茶髪の男、エルバが言っていたデクという男はカミュの相棒だった男だ。
2人は彼から受け取った情報をもとに、この神殿、デスカダール神殿までやってきていた。
そこに保管されているレッドオーブを手に入れるために。
「治療できるか?こいつ…」
既に内臓をえぐられていることから、助からないことは分かっているカミュだが、念のためにエルバに尋ねる。
エルバはホイミを覚えているため、傷の治療は可能だ。
しかし、これほどの傷を受けてしまってはベホイムやベホマのような上級の回復呪文を使わなければ難しい。
しかもそれも怪我をしてまだ時間が経っていない場合での話で、仮にそのまま放置して破傷風を起こしたり、壊死したりしてしまうともはやザオラル、ザオリクといった呪文を使わなければ手の施しようがない。
エルバは何も言わず、背中に差している鋼の大剣を手にする。
それが何を意味するのか理解した兵士は目を閉じる。
次の瞬間、鋼の大剣が彼の肉体を貫き、兵士の人生を終わらせた。
剣を振り、付いた血を払ったエルバは剣を握ったままカミュと共に前へ進む。
「あいつ、魔物がレッドオーブを奪いに来たと言っていたな。急いだほうがいいな」
「ああ…。そのためにも、目の前の奴らが邪魔だ」
開けた場所に出ると、そこには集団で行動し、弓矢で攻撃を放つ小さな怪人型モンスターであるリリパットや呪文以外の攻撃を受け付けない煙でできた実体のないスモーク、捨てられたランタンに魔物の魂が宿ったランタン小僧や魔力を利用したビームを発射できる2本の触角をもった小悪魔のインプなどの魔物たちがいた。
魔物自体はこの神殿の中でも住み着いているが、それでもそこにいる魔物は多すぎる。
「くそっ…この神殿はほとんど一本道だ。こいつらを倒さねえと、先へ進めないか!」
「だったら倒すだけだ。俺は…まだ死ねない。勇者の真実を知り、俺から故郷を…愛する人たちを奪った奴らに復讐するまでは…」
鋼の大剣を握るエルバの手に力が入る。
復讐という言葉を聞き、わずかに表情を曇らせたカミュだが、気持ちを切り替えて、ここに入る前にキャンプで作った2本の聖なるナイフを手にする。
「行くぞ…!」
エルバとカミュは魔物たちに向けて突っ込んでいった。
序章、ということで今回はこの程度の長さで。
ドラクエ11をプレイして面白かったので、速攻で書きたいと思い、見切り発車で書いてしまいました。
タイトルでもあるように、主人公エルバ(スウェーデン語で11を意味します)の目的は真実を突き止めることと復讐になっています。
そんな彼がどのようにして成長していくのかがポイントになるかもしれません。
あと、プレイして思ったことは声優がつかなくてよかったなって思ったところですね。
声優がつくと、どうしてもその声でイメージが固まってしまいますので…。
ちなみに、今回登場したエルバとカミュの声優さんを妄想してみると…。
エルバ:うえだゆうじ
カミュ:岡本信彦
異論は…受け付けます!!