ドラゴンクエストⅪ 復讐を誓った勇者   作:ナタタク

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第103話 武人

「くそ…!分身も同じ強さか!?」

炎のガリンガとつばぜりあうこととなったエルバは両手の痣の力を解放するが、それでようやく力では互角になるだけで、上回ることができない。

「ふん…。勇者の力はこの程度か」

力が復活しただけでなく、両手の痣を宿すというローシュではなしえなかったことをなしたエルバ。

彼からはローシュを越える、並の人間をはるかに超える力を見せてくれるだろうと期待していた。

だが、これではあまりに肩透かし。

「失望させるな…勇者よ!!」

炎のガリンガが全身の炎を激しく燃え上がらせるとともに周囲にまき散らす。

間近にいたエルバはまともにその炎の嵐を受ける形になり、剣を手放すことはしなかったものの燃え上がる体を地面を転げて消そうとする。

「エルバ様!!」

炎上するエルバをどうにか救おうとセーニャが唱えたヒャドの氷が炎の勢いを弱める。

魔力がこもった繊維で作られたはずの魔法の闘衣が焼かれたことで炭のように黒く染まり、アーヴィンから受け継いだ鎧も黒ずんでいる。

「ぐう、うう…」

「はあ、はあ…こいつ、できるわ…」

傷だらけのマルティナはいまだに2体の分身を含めて健在な姿を見せるガリンガをにらむ。

彼は息も乱れておらず、まだまだ余裕を残している様子だ。

「ふん…天下無双、爆裂脚、グランドクロス…」

「アモーレショット、会心必中、メラゾーマ…」

「そして、勇者の剣。足りん、足りんな…人間ども」

ガリンガ、そしてガリンガの意志をそのまま宿しているかのように2体の分身も口を開いた。

 

「ふっ…さすがだな。ガリンガ、ここまで勇者どもを苦しめることができるとは」

闇のオーブで戦いの様子を見るホメロスはフッと笑みを浮かべる。

だが、こうでなければならない。

こうでなければ、まだまだ力を発揮することができない。

「ガリンガ…2つずらすとグレイグ…」

ホメロスの背後に少女が姿を現し、ホメロスのオーブを覗き込む。

「ああ…そうだ。奴には武人の心がある。彼のようにな…」

世界を滅ぼし、天空魔城を生み出したウルノーガはロトゼタシアの支配を強めるため、自らの配下となった数多くの魔物を束ねる魔物を求めた。

その際に目に着けたのがエルバ達が命の大樹への道を作るために祭壇にささげた6つのオーブだ。

その中に宿る力のことを知っていたウルノーガはそれを埋め込むことによる強化を考えた。

その実験体第1号がホメロスで、自ら志願した彼はシルバーオーブと見事に適合して見せた。

多くの魔物や捕まえた人間に無理やりオーブを宿し、ウルノーガの魔力で無理やりオーブの力を解放させることで実験し、その結果として多くの人間と魔物がオーブの力に耐えきれずに命を落とした。

ウルノーガとホメロスにとって、予想外だった結果はオーブに適合した生物の多くが下級の生物であることだった。

デルカダールを闇で包んだゾルデは元々はただの骸骨で、キラゴルドとなったマヤは孤児、ジャコラに至っては何の力もないはずの魚人だ。

ブギーに関しては高い魔力を誇る上級の魔物であるサタンフーラーで、六軍王の中では唯一強い魔力を持った魔物だったといえる。

そして、人間が元なのはホメロスとガリンガだ。

ウルノーガの命で地上に攻撃を仕掛けていた時に生け捕りにした騎士の一人で、彼は捕虜となってもなおも抵抗を辞めず、オーブの実験台の選別が行われる際にも一緒に捕まった人々を守るために真っ先に名乗り出た。

グレイグとは似ても似つかない顔立ちだが、彼からはなぜかグレイグの面影が感じられた。

ブルーオーブに適合し、ガリンガとなったことで人間としての記憶をすべて失ったものの、彼の精神だけは生き残っていた。

「軽蔑するか…?私を」

「当然よ、だってあたしはあんたに殺されたようなものだし」

「ならば、この場で殺してくれてもいいのだぞ?」

「ふん…!そんなことして何の意味があるのよ?あんたにはたっぷり苦しんでもらわないと。心を入れ替えたとしても、あんたが大勢の人を殺したって事実は変わらないから」

「ああ…わかっているさ」

この罪はどんなに善行を重ねたとしても、決して消えることのないもの。

自分の罪から目を背け続ける小心者であったら、どんなに楽だっただろうか。

しかし、やり遂げなければこの先の未来を創ることができない。

たとえ自らの魂が命の大樹の円環の中へ還ることができないとしても。

「私の末路は既に決まっている。君は君にしかできないことをするといい」

「そうね…なら、そうさせてもらうわ。さよなら、ホメロス」

その役目を果たすべく、少女は歩き出すが、数歩進んだところで急に足を止める。

「…ありがと」

一言つぶやくと同時に少女の姿が消える。

かすかに聞こえた感謝の言葉にホメロスは思わず苦笑する。

「自分を殺した男に感謝の言葉を口にするとは…本当に、変わった連中だ」

 

「うおおおおお!!!」

傷だらけになりながらも両手の剣に雷を宿し、切りかかるエルバだが、炎の分身にその刃は届かない。

攻めあぐねる状況に焦りを感じ、脳裏にはこの状況をあざ笑いながら眺めているであろうウルノーガとホメロスの姿が浮かぶ。

「マルティナ、グリーンオーブでこいつらの魔力を吸収することはできないのか!?」

炎と氷の魔力で生み出された分身ならば、ブギーがやったように魔力を吸収すれば弱体化させることができるかもしれない、

「無理よ!あれはあくまでもブギーだから使えた技!私には使えないわ…。それから…あいつのことを二度と話題に出さないで!!」

脳裏にバニースーツを無理やり着させたうえに洗脳までしたブギーの姿が脳裏に浮かび、それに怒りを覚えたマルティナは飛んでくる長刀を蹴り飛ばす。

オーブに選ばれたマルティナ達は六軍王が発動したオーブの力を自分たちでも使えないかと練習をした。

しかし、いずれも同じ力を発動することができなかった。

力の引き出し方が違うのか、それとも今自分たちが使いこなしている状態こそが通常の物なのか、それはオーブに宿るネルセン達は教えてくれない。

「ふん…。ならば、これはどうだ…?」

ガリンガが指を鳴らし、同時に長刀を地面に突き刺した氷の分身が全身から白い霧を発し始め、同時にその姿を消していく。

白い霧があたり一面を覆っていき、霧の中に炎の分身とガリンガの姿も消える。

「ガリンガ、何を!?」

「ぐ…これは!!」

左手から違和感を感じたエルバが見たのは水竜の剣の持ち手のところから凍り付いていく自分の左手だった。

白い霧が立ち込めたと同時に息が真っ白になるほど気温が落ちていて、それがエルバ達の体を凍り付かせていく。

「ぬうう…この寒さ、クレイモラン以上じゃ…!」

「果たして、寒いだけ、凍るだけで終わるかな…?」

ガリンガの声があたり一面から聞こえ、同時にキィーンと嫌な耳鳴りがエルバ達の鼓膜を刺激する。

その瞬間、急にエルバの体の各部に切り傷ができ、出血する。

「う、ああ…!」

「エルバ様!!」

「嘘、でしょ…これって!!」

エルバに続き、シルビアとグレイグ、さらにカミュまでもが急に体中に切り傷ができ、吹き出た血は凍り付いていく。

マルティナも足を中心に切り傷ができていて、長刀を杖代わりにしてこらえながらこの惨状を目の当たりにする。

「まさか…見えていないだけで、氷でできた刃がそこら中に!?」

「目のいい女武闘家だな。そうだ、この霧の中で私の氷の分身が刃となって貴様らを襲っている。うかつに動けば切り刻まれるだけだ」

「動けば…冗談じゃねえ!動かなくても、切り刻まれるじゃねえか…!」

動きたくても、足元まで凍り付いている状態ではそうすることもできない。

瞼や口、鼻が凍るなんていう状況になると、もう戦える状態ではなくなってしまう。

「このまま凍り付かせてもいい…。だが、なぶり殺しでは私の心に後味の悪いものを残す…。あと一撃で葬ってくれる」

猛烈な吹雪のドームの真上に向かって飛んだ炎の分身は体を丸めていく。

分身の炎は勢いを増していき、やがて太陽のような明るさとなって、それは吹雪の中方でも視認できるほどになっていた。

「ぐ、うう…今度は、何を…!!」

「まずい…まずいぞい。どうにかしてこの吹雪か、あの炎を止めねば…全滅する!!」

「どういうことだ、爺さん!」

「考えるんじゃ!わしらは今、雪と氷で閉ざされておる。氷で閉ざされた環境では火を起こすなど至難の業じゃ。じゃが…仮にそこで強烈な熱が加わるような事態が発生するとどうなるか…」

「氷に対して強烈な熱…まさか!!」

震えるセーニャの脳裏に浮かんだのは、かつて旅立つ前にベロニカとともにファーガスから教えを受けていた際に教えられた呪文。

強力な氷の呪文と炎の呪文を掛け合わせることで成立する、ベロニカが習得しようとしていたが果たすことのできなかった、セニカが生み出した呪文。

すべてを消滅させるほどのエネルギーをぶつけるその名前は…。

「メド…ローア…!!」

「そうじゃ…それと同じ状況が生まれる。そんなものが相手ではたとえオリハルコンであっても無事であるかどうか…」

「そんな…!!」

「くっ…出れたらいいが、まずいな…!」

もう凍り付いた足は鉄球のついた足掛けをつけられたかのような重量を感じ、もうまともに動かすことすらままならない。

エルバの体力も強烈な冷気が奪い尽くしていき、それによって痣も輝きを失っていく。

(このままでは…全滅…お姉さまとの約束も果たせていないのに…)

まだウルノーガの前にすら立っていないここで倒れるなど、受け入れることができない。

それでは、自らを犠牲にしてエルバ達を救い出したベロニカに顔向けすることができない。

セーニャは必死に思考を巡らせ、状況を切り抜ける術を探る。

(考えなさい、セーニャ!もし、もしお姉さまならどうするのか?どうすれば、皆さまをお救いできるのか…!)

今自分が使える呪文だけではない、聞いただけのものであっても、今のセーニャになら使えるかもしれない。

考える中で、一つの呪文が浮かぶ。

(そう…そうです!あの呪文なら…!)

ベロニカと一緒に読んだ呪文の教科書の中にあった呪文。

感覚がなくなりつつある両手を上空へ伸ばしたセーニャはそこに魔力が集中する情景をイメージする。

見えない氷の刃で傷つき、左目を血で濡らしたセーニャだが、それでもそれをやめない。

「セーニャ!?」

「はああああああああ!!!」

声を上げたセーニャの両手が光を発し、同時に猛威を振るっていた吹雪が徐々に弱まっていく。

「セーニャ…おぬし!!」

「く、うううう!!」

「おいおい、どうなってんだよ…これ…」

吹雪が消えていき、カミュはセーニャが起こしている今の状況に息をのむ。

吹雪を生み出していた魔力、元々はガリンガの氷の分身を生み出していた魔力がセーニャに集中していた。

魔力の磁石といえる状態となったセーニャは吹雪だけでは飽き足らず、上空にいる炎の分身の魔力をも飲み込もうとしていた。

「く、う…うううう!!!」

集まっていく魔力が両手に集中し、それがセーニャの肉体と精神に負担をかけていく。

確かに今のセーニャが行っている行動はブギーがやっていたものに近いかもしれないが、違いがあるとすると無差別に魔力を吸収するのではなく、既に発動している魔力を両手に集中させていることだ。

「まさか…マホプラウスを使っておるのか!?」

「マホ…プラウス…?」

周囲で発動した呪文の魔力を自分に集中させ、それを敵に向けて放つ呪文であるそれは使い方次第では敵の呪文の集中砲火から自分や仲間を守ることに使えるうえに、単独で強力な呪文を唱える以上の火力で攻撃することもできる。

だが、多くの魔力を集約し、制御する必要があることから扱いが難しい呪文であり、今では使い手がほとんどいない呪文の1つとなっている。

そんな呪文を習得したわけでない、見様見真似で使っている状態だ。

「ほぉ…驚いたな。まさかこれほどの魔力を集約することで状況を脱するとは…。だが、いつまで持つかな?その少女は…」

自分が持つ以上の魔力を制御する必要がある状況に置かれ、少しでも誤ると暴発し、全滅してしまう状況の中でセーニャの体は震え、顔色も悪くなる。

(どうにか、最悪の事態は回避できましたが…ここからは…)

あとはどうにかしてこの魔力を放ちたいが、残念なことに今のセーニャにはこの膨大な魔力を制御したうえで指向性を持たせて発射するだけの力がない。

だが、そうでもしなければ自爆する羽目になる。

そして、無防備になっている自分をガリンガが放っておくわけがない。

(こうなったら、私が…)

ここから飛び降りて、エルバ達の被害が及ばないところで制御を離せば、自分一人だけの犠牲で済む。

これだけの力を解放したガリンガが再び同じ攻撃を仕掛けるには相当の魔力を補給する必要がある。

「セーニャ!!」

(カミュ様、ごめんなさい…。お姉さま、今…)

後ろへ下がり、そこから落ちればあとは済む話だというのに、セーニャの足がまるで鉛の足かせをつけられたかのように動かない。

呪文で縛られている気配もないのにどうしてと視線を下に向ける。

すると、震えのとまらない自分の足が見えたと同時に、冷たい感覚が胸いっぱいに高まっていく。

(どう、して…こんな時に!?)

体の震えが足だけでなく、腕以外の全身に伝わってくる。

かろうじてマホプラウスの魔力を維持しているものの、これではいつ暴発するかわからない。

ここに至ってようやく、恐怖を抱いていることを自覚するセーニャ。

それは表情にも表れ、顔色が青くなる。

(怖い…死ぬのは、怖い…。…もしかして、お姉さまも本当は…)

エルバ達を救い出し、一人残ったベロニカも最期の瞬間はこのような恐怖を感じていたのだろうか。

たとえ命の大樹の元に再び生まれ変わるとしても、それでも死ぬことは恐ろしい。

そんな当たり前を双賢の姉妹としての意識がもみ消していたが、今ではそれができない。

「これでは維持するので精一杯だろう…あとは、この手で…」

「そうはさせるかよ!!」

もう破裂寸前の風船のような状態の魔力にとどめを刺そうと接近するガリンガを阻むようにカミュが真っ先に飛び出し、レーヴァテインをふるう。

カミュに続いてグレイグとシルビアも飛び出し、3人がかりで魔力の多くを使ったガリンガを抑える。

「皆さん…」

「セーニャちゃん、頑張って!アタシは魔力がそんなにないから、こんなことしかできないけど…」

「俺は勇者の盾だ!ならば、勇者の仲間たちに襲う驚異すら守る盾となろう!」

「さっきはよくもやってくれたわね!!」

エルバの回復呪文で足を治療したマルティナが上空へ飛び、右足に力を籠める。

長刀を飛ばすだけの力が残っていないガリンガだが、マルティナの何倍もの体格をした彼ならば、正面から全力の攻撃を仕掛けようとするマルティナを御す手段はいくつもある。

「エルバよ、放つぞ!」

「ああ、じいさん!!」

マルティナら4人に気を取られている間にエルバは巨大な覇王斬を生み出し、ロウはグランドクロスを放つ。

十字架と刃がぶつかり合い、ドリルのように回転しながらガリンガを襲う。

聖なる刃の一撃、グランドネビュラは確かに強力だが、あくまでも魔力の集合体でしかない。

ブルーオーブの力があれば、簡単にかき消すことができる。

だが、そのためにはブルーオーブに力を集中させる必要があり、それがガリンガのマルティナへの注意が薄れる。

「はああああああああ!!」

マルティナの右脚がガリンガの兜に炸裂し、その鋭い一撃が兜を砕いてしまった。

砕けた兜の中にあったブルーオーブは薄い水色の光を放つと、それは一直線にセーニャの元へと飛んでいく。

それは魔力を抑え続けるセーニャの周りを一回転する。

(ああーーーーーもう、じれったいわね!こら、セーニャ!しゃんとしなさい!!)

「その声…どうして!?」

ブルーオーブから聞こえるのはもう二度と聞くことはないと思っていた声。

命がけで自分や希望を助けてくれた姉。

(何死に急ごうとするのよ!あんたにはそういうのはまだ早い!!)

「お姉さま…お姉さまなのですね!?でも、どうして…ブルーオーブに…!?」

(そんなことより集中よ!集中!もっとイメージを働かせるのよ!自分の手の中で炎と氷が鎮まって、溶けあうのを!!そして、それをあんたの力にして撃つの!!)

「そんなことを、言われても…!」

もしそれができるならあの決断を下そうとするはずがない。

抑えるのが精いっぱいなのはベロニカも分かっているはずだ。

だが、彼女はそんなことお構いなしだ。

「あんたならできる!あんたにはあたしがついているのを忘れたの!?あんたとあたしの力でコントロールするのよ!」

「お姉さまと、私の力で…」

ベロニカがいる、彼女が手伝ってくれる。

そのことを実感すると、心を犯していた恐怖が消えてなくなり、同時に死ぬ選択肢が頭の中から消えていく。

そして、頭に浮かんだイメージに従うかのようにセーニャは両手の魔力を調整していく。

(炎と氷、破壊と再生…。相反する2つを1つに…!)

一つになっていた魔力が再び炎と氷の2つの魔力にわかり、それぞれがセーニャの右手の左手に宿る。

やがてそれを一度手を合わせる形で一つにすると、それは金色の光の魔力へと変わる。

「何?!」

「セーニャよ、その呪文は…!」

「皆さん、離れてください!!」

魔力は大きな弓矢を形作り、セーニャはそれをガリンガに向けて構える。

セーニャの隣にはなぜか大人のベロニカの幻影が浮かび、それもまた同じように金色の魔力の弓矢を構えていた。

右手の力を抜き、手を離すとともに金色の魔力の矢は弓と化した魔力を取り込み、巨大な矢へと変わってガリンガに向けて飛んでいく。

「うおおおおおお!!!!!」

エルバ達は済んでのところで左右に散らばるが、魔力の余波はビリビリとエルバ達の体に伝わっていた。

そして、魔力の矢がガリンガに当たると同時に大きな爆発を起こし、その中心でガリンガの体が崩壊を始める。

「ば、馬鹿な…これほどの魔力を人間一人の力で、制御しきっただと!?」

「はあ、はあ、はあ…」

光の中にいるガリンガを見たセーニャはヘタリとその場に座り込んだ。

「だが…たとえ貴様らがどんなにあがこうとも、もう…戻らぬ…!大樹も、大樹へ還ることのなかった命も、崩壊した世界も…過ぎ去りし時も…。ホメロス様、ウルノーガ様、申し訳ございませぬ…。ガリンガ、これまでです…」

ガリンガは消滅し、同時に金色の魔力が収まると、彼がいた場所には巨大なクレーターができていた。

「マジか…。骨一つ残ってねえ…」

「これが、メドローア…」

ガリンガが生み出した魔力を利用したとはいえ、それでも彼を消滅させるほどの破壊力に戦慄した。

「すげえじゃねえか、セーニャ!六軍王の全開の魔力を逆に利用しちまうなんて!」

「そんな、私だけの力ではありません。これは…」

「そうよ、ま、ほとんどセーニャの力のおかげだけど」

宙を舞うブルーオーブがセーニャ達の周りを一回転した後で青い光のシルエットを生み出す

その形は紛れもなくベロニカのものだった。

「ベロニカ…!?」

「久しぶりね、みんな」

 


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