ドラゴンクエストⅪ 復讐を誓った勇者   作:ナタタク

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最終話 未来

「おーい、ここの柱の木材、どこにおいてたかなー?っておい、その木材、持っていくなよなぁ!?」

「うーん、作物は良くなってきたが、まだ土が回復しきれていないか…。いい肥料がないか聞いてみるかなー」

「こらこら、魔物がおとなしくなったからって、あんまり遠くへ行くなよー?」

最後の砦となっていたイシの村で、村人や避難民、兵士たちによって家屋や畑の修繕が行われ、砦が徐々に解体されていく。

デルカダールによる襲撃と世界の崩壊により、大きな傷を負ったイシの村だが、時間をかけて復興を遂げていき、いずれは元の姿に戻ることだろう。

その後は、崩壊したデルカダールの復興を行うことが決まっていて、デルカダール出身の避難民は故郷へ帰れる日を楽しみに待っている。

「痛っ!ああ…やっちゃったなぁ…」

屋根にくぎを打つエルバの指にトンカチがあたり、鋭い痛みに歯をくいしばって耐える。

イシの村に戻ったエルバは他の村人と一緒に復興作業にかかわっており、今はようやく資材がまわってきたことから自宅の修理を行っている。

ウルノーガを倒し、世界を平和にしたエルバには休んでほしいと村人だけでなく、デルカダール王からも言われたが、こうして働いているのはエルバたっての願いだ。

すべてが元通りになるわけではないが、それでも元に戻せるものは戻したい。

そして、イシの村は長年育ってきた大切な帰る場所だからと。

村を出る前から来ていた布の服の姿で、痛む指をさするエルバの目に古傷のような痕の残った甲が映る。

命の大樹がよみがえってから、やはりというべきかホメロスの言う通り、エルバは勇者の力をすべて失った。

両手共にこういう状態となっており、もう紋章閃もデイン系の呪文も使えない。

何も特別なことのない、普通の人間となった。

その証を見たエルバは立ち上がり、元に戻りつつある村の光景を見る。

「いいさ…普通っていうのも悪くない。みんなも、頑張ってるから…」

エルバと共に村へ戻ったマルティナ、グレイグはデルカダール王と共に各国家を回っている。

離れ離れになってしまった日々を埋め合わせるように過ごしつつ、次期国王としての作法や政治学などを学ばせている。

グレイグは再び将軍に就任し、デルカダール王とマルティナと共に行動しつつ、各地の兵士たちの教導を行っている。

ユグノアの惨劇からこれまでそのようなこととは無縁な毎日を過ごしてきたマルティナにとっては新鮮ではあるが、やはり真逆の分野を一から学ぶということになっていることから苦労も多いようだ。

カミュとセーニャはラムダの里へ戻り、そこで待つマヤとセーニャの両親に会いに行った。

ベロニカの墓参りをし、里の復興の手伝いをしているという。

シルビアはソルティコの町へ戻り、ナカマたちと再会を果たすとともに再び世直しパレードを始めた。

魔物がおとなしくなったことから戦いになることは減ったが、悪人は存在し、何かを失ったことで悲しんている人々も存在する。

そうした人たちを助け、悪人を懲らしめる活動を行っている。

なお、帰ってきたシルビアが驚いたのはそこで待っていたのはジエーゴやナカマたちだけでないことだった。

世界各地のシルビアのファンやシルビアのおかげで笑顔になった人々の助力により、完成した船があったことだ。

かつてのシルビア号と大きな変化はないものの、大きな違いとして存在するのは船内にサーカス場が存在することだ。

これにはシルビアは涙を流して喜び、彼の夢への大きな一歩となった。

ロウはユグノア復興のため、国王代理としてデルカダール王同様各地を巡っている。

ユグドラシルを組織し、各地に散らばったユグノアの民と共にユグノアを復興させることを自らの生涯最後の仕事とし、それを終えたら正式に王位をエルバに譲り、妻と共に隠居することに決めている。

命の大樹で待つアーヴィンとエレノアに胸を張って報告できるように。

たまに手紙が来て、その中には早く嫁と孫の顔が見たいという旨の文章があったことも覚えている。

「家族、か…」

「エルバー-!そろそろご飯ができるわよー!」

「ワン、ワン!!」

下からエマとルキの声が聞こえる。

伝わってくるかすかな臭いから、シチューであることは明らかだ。

「ああ…今降りる」

滑らないように気を付けてゆっくりと梯子まで行き、下へ降りていく。

まだ完全とはいかないが、それでも屋根があることで家らしい状態に戻った生家。

その中でペルラとエマ、ルキがエルバの到着を待っていた。

3人と1匹でいつものシチューに舌鼓を打つ。

失われたと思われた日常が戻った幸福をかみしめながら。

「そうだ、ルキは大丈夫か?あんまり動き回らない方が…」

「大丈夫よ、今は安定期みたいだから。でも…新しい家族ができるのって、いいわよね」

「だな…」

シチューを食べ終えたルキが休憩のため、エルバ達のそばで眠りにつく。

最後の砦に来た避難民の一人が連れてきていた猟犬と仲良くなったことがきっかけで、10歳以上の老犬にあたるルキにとっては大変かと思われたが、今の様子を見ると普通の若い犬よりも元気だ。

だからといって油断してはいけないが、どこか安心できる。

(家族…あとは、あんた達がくっつけば…私も安心ね)

まだ村長の家の修理が終わっておらず、エマはダンの頼みで今はエルバの家で暮らしている。

やはりというべきか、エマと一緒に過ごしているとエルバが笑顔になることが多い。

「エルバ、今日はいよいよ…よね?」

「ああ。そろそろ2人が来る頃合いだが…」

数日前にシルビアが村に来た時に渡されたカミュからの手紙。

書いているのはカミュだが、書いている内容を考えると、発案者はセーニャだろう。

かつて、すべての戦いを終えたセニカはローシュの勇者の剣を命の大樹に奉納したという。

ウルノーガが戦いの中で残した言葉が真実なら、このような戦いが再び起こる可能性がある。

その時に生まれるであろう新たな勇者、自分たちの子孫のために道を残すべきだと。

その第一歩として、オーブからもたらされた力と勇者の剣を命の大樹に奉納しようというものだ。

カミュとセーニャが迎えに来るため、それから出発ということになる。

今日が手紙に書かれていた、カミュ達が到着する日になる。

壁には旅立ちの時に身にまとった旅人の服と同じものがかけられている。

「エマ、命の大樹へは君も一緒に来てほしい」

「私も…いいの?」

「ああ、見てほしいんだ。俺の使命の終わりを」

「エルバ、来たぜー!」

「…話をしていたら、だな」

外から聞こえた、旅の間は頻繁に聞いていた相棒の声にエルバは笑った。

 

ウルノーガの死とともに甦り、再び天に上った命の大樹。

その様子をケトスの上からエルバ達は眺める。

「すごい…いつも見てた命の大樹を、こういう感じで見れるなんて…」

「ああ。ここから俺たちは始まったんだ」

旅人の服姿のエルバの隣で命の大樹を見るエマは同じ高度で、そして徐々に近づくそれを見ることで、その神々しさを振るえるほど感じていた。

きっと、この中には幼いころに死んだ両親もいる。

そして、自分もいずれは死んで命の大樹に還り、新たな命となってロトゼタシアへ戻る。

その当たり前が守られたことがどんなにこの世界にとって幸運なことかと思えて仕方がない。

「ベロニカ、そんなに動くなよ。母さんが大変だぞ」

命の大樹を見て、セーニャの腕の中でキャッキャと手足をばたつかせて喜ぶ金髪の赤子の様子にカミュは笑いながら彼女の頭を撫でる。

ラムダの里へ戻ってしばらくして、セーニャはカミュとの間にできた子供を出産した。

里の誰もが、その生まれた女の子がベロニカの生まれ変わりだと信じて疑わなかった。

セーニャの両親曰く、森の中で出会い、拾ったときのベロニカとそっくりだという。

それ故にカミュとセーニャもこの生まれた子供をベロニカと名付けることに抵抗はなかった。

エルバ達を守るために命を散らし、魂をオーブに宿して最後までエルバ達の力となったベロニカが再び帰ってきた。

今度は戦うためでなく、あまたの戦いと犠牲の果てにもたらされた平和をかみしめるために。

エルバ達が近づくにの反応するように、命の大樹の根とツルが動き出し、エルバ達が降りることのできる足場ができる。

その足場から先の道ができ、それが命の大樹の中核へとエルバ達を導く。

ケトスから降りたエルバ達に合わせるように、ケトスもフランベルグへと姿を変えてエルバのそばで降りる。

「本当に、フランベルグがケトスであったとは…」

「こうして間近で見ても、やっぱり信じられないって思えるわ…」

あの巨大な空飛ぶクジラとエルバの愛馬たるフランベルグの姿。

かけ離れた両者に驚きは隠せず、勇者の存在抜きでそれを見たとしても、素直に信じられない人間が圧倒的だろう。

「さあ、いつまでもこんなところにいないで早く行きましょう。命の大樹がアタシ達を待っているわ」

シルビアに促され、エルバ達は命の大樹の奥へと入っていく。

核への一本道をゆっくりと進んでいき、やがて見えてくる命の大樹の中核のある広間。

あの時はホメロスとウルノーガの介入により、一気に最悪の事態へと突入することになった。

そして、ベロニカを失うことになった忌まわしい過去。

だが、ここへ来たのはその過去を振り返るのではなく、未来へ進むためだ。

エルバは腰の鞘に納めてある勇者の剣を抜く。

エマと二人でそれを握り、核へ向けて歩いていく。

ローシュを失い、一人で勇者の剣を奉納せざるをえなかったセニカの時とは違う。

「…ねえ、エルバ。男の子と女の子…どっちがいい?」

「エ、エマ…どうしたんだよ、急に…」

「だって、カミュさんとセーニャさん…自分たちの子供を見てるとき、とっても幸せそうにしてたから。きっと…私のお父さんとお母さん、エルバの本当のお父さんもお母さんも、おんなじだったと思うの。だから…私もお母さんになって、お母さんらしいことをしたいって思って…。エルバが、嫌じゃなかったら、だけど…」

後半になり、徐々に赤くなった顔で声を小さくしていくエマ。

核まで間近となり、あとは2人で勇者の剣をその中に入れるだけ。

エマの言いたいことが分かり、釣られるようにエルバの顔も赤く染まる。

だが、エマに向ける答えは一つだけ。

「ああ…もちろんだ。俺も、親になりたい…。眠っている父さんと母さんのように…エマと、一緒に」

アーヴィンの過去を見たからこそ、自分もまた愛されて生まれたのだとわかる。

たとえ勇者の生まれ変わりという使命がなかったとしても、きっとアーヴィンとエレノアなら、変わらぬ愛情を注いでくれただろうと信じられる。

2人の手から勇者の剣が離れ、核の中へと入っていく。

ふと、エルバの目に見えたのはその中にいるローシュとセニカの姿で、勇者の剣を受け取った2人がエルバとエマを祝福するように優しく笑ったように見えた。

そう見えたのはほんの一瞬で、もしかしたらただの幻覚か見間違いかもしれなかったが。

「はじめに…光、ありき…」

「どうしたんだよセーニャ、いきなり…」

「神話の一節を思い出しました。元々、この世界は闇に覆われてた死の大地だったといわれています。そこに命の大樹の光が降り注ぎ、緑豊かな美しい世界、ロトゼタシアが生まれたといわれています」

「なるほどな…で、ここがロトゼタシアで生まれる命の源…ふるさと、って感じか…」

核に取り込まれた勇者の剣が輝き始め、やがてその光は命の大樹を包み込んでいく。

暖かな熱を持つ光がエルバ達を包み、その光の中で見えたのは黄金の瞳と黄金の鱗を持つ巨大なドラゴンの姿だった。

「ドラゴン…!?」

「敵意は感じられない…それに…」

勇者の力のないエルバだが、目の前に突然現れたドラゴンからは、命の大樹に似た気配が感じられた。

黄金の瞳に映る小さな人間、光の闇を抱えながらも邪神を討ち破った勇者の姿を見た黄金のドラゴンが瞬きをした後で、エルバ達の脳裏に向けて直接語り掛ける。

(ようやく、会えましたね。あなたが使命を果たし、ここに来るのをずっと待ち望んでいましたよ。私は命の大樹のもう1つの姿…かつて、聖竜といわれていたもの)

「聖竜…」

命の大樹に別の姿があるなどという話はどこにもなく、いきなりそんなことを言われても普通であれば眉唾物としていただろう。

だが、脳裏に響くその声とドラゴンの姿になぜか真実味が感じられ、それに反論しようという気持ちになれなかった。

(はるかな昔…ロトゼタシアが生まれる前、私は邪神との戦いに敗れた私は命を落としました)

かつての邪神との戦いを思い出す聖竜は胸に深々と刻まれた傷跡に触れる。

強大な邪神の力に打ち勝つことができず、当初はその傷があまりにも大きく、力を使い果たしたことで死を覚悟した。

(私の命は光の源。主をなくした光は時に彼方に葬られ、世界は闇に飲まれました。しかし…私と共にたたかった 神の民たち…彼らの願いが奇跡を起こしました)

同じ光の源を命とする神の民たちの祈りが聖竜から失われつつあった光を活性化させた。

甦る中で聖竜が感じたのは立ち上がる機会が与えられた感謝、そして己の無力だった。

たとえ蘇り、再び戦いを挑んだとしても同じ敗北を繰り返すだけ。

それは実際に戦ったからこそわかる。

ならば、できるのは来るべき邪神を討ち破る未来のために希望を残すこと。

(奇跡によってよみがえった私は竜の体を捨て、命の大樹となり、この世界を作りました。いつか、邪神を討ち滅ぼす勇敢な者たちが現れるのを待って…)

「そうか…俺たちはめぐり合って、そして…」

エマやカミュ、セーニャ、ベロニカ、シルビア、マルティナ、ロウ、グレイグ。

そして、旅の過程で出会った多くの人々。

数多くのめぐり逢いがエルバの力となり、邪神を滅ぼすことにつながった。

ローシュの時代、それよりはるか昔の黎明の時代から紡がれてきた希望をエルバが形にした。

(あなたは…果たしてくれた。私やかつての勇者ローシュがなしえなかったこと。受け継がれ続けてきた、たった一つの希望を…。エルバ、あなたこそロトゼタシアを救ったまことの勇者、あなたはこれより…ロトの勇者として伝説となり、皆の希望の懸け橋となるでしょう)

ロトゼタシアを真の意味で救い、世界を取り戻した勇者。

たとえエルバという一人の少年の名前が歴史から忘れ去られようとも、勇者ロトの伝説は永遠に消えない。

これからも続くであろう光と闇の戦いが続く限り、勇者ロトという希望はその終わりを見届けるまで残り続ける。

(ロトの勇者、エルバよ…光ある限り、闇は生まれる。そして、闇がある限り、光もまた生まれる。長き時の果てに、再び闇から何者かが現れるでしょう)

邪神となったウルノーガとの戦いの中で見たビジョン。

おそらくそれは、その闇から現れるであろう未来の敵。

それは現実としていずれ訪れることはエルバも分かっている。

(そして、もしかしたら私自身が闇に染まることがあるかもしれません。しかし、それでも人の愛は…勇気は…決して消えることはありません。もし、私が闇に染まってしまったなら、その時はどうか…この剣を手に…過ぎ去りし時を求めて…)

「聖竜…邪神を倒したけれども、俺にはわからない。愛とか、勇気とか…。多分、本当はわかっているのだとは思うが、それでも…それをどう表現すればいいかわからない。だが、一つだけ言える。あなたにも、愛がある、勇気がある。だから…あなたの愛と勇気が消えるみたいなことは、言わないでくれ。そして、闇に染まろうとしても、負けないでくれ。俺たちが生きている、ロトゼタシアのように…」

 

天空に浮かぶ大樹、それを丘の上から見上げる8人の戦士たち。

そのイラストが刻まれた本を本棚に戻した女性を柔らかな朝の日の光が祝福するかのように注ぎ込む。

彼女は階段を上がり、我が子が眠っている部屋のドアをノックする。

ドアを開けると、光を遮るように掛布団を顔まで覆い、眠る我が子の姿があり、それを見た彼女は困った顔をして笑う。

いつもなら、仕方ないなともう少しだけ寝かせようと思うが、今日だけはそれはできない。

今日は我が子にとっても、世界にとっても大事な日なのだから。

「起きなさい、起きなさい、私のかわいい坊や。今日はお前が初めてお城へ行く日だったでしょう」

 

「ほぉ…お前がここへ来たということは、戦いに敗れ、命を落としたということか」

場所が変わり、深い闇が空を包む世界。

草木が生えない、無機質な土があるだけの世界に紫のローブで身を包み、フードで顔を隠した人物が立つ。

彼の前には地面に刺さった剣を杖代わりにして立っている何者かの姿があり、その剣はフードの人物にとって見覚えのある。

「何、敗れて死したことを責めるつもりはない。生まれた命はいずれ死ぬのだから。だが、問題はこれからだ。お前にはチャンスが与えられる。そのチャンスを与えるのはこの世界の番人である私だ。だが、これは呪いでもある。再び現世へ戻り、世界を救うために戦い続けるお前には幾度もなく敗北と死が待ち、その度にここに来るであろう。その時は今回よりもはるかに大きな苦痛や絶望が待つかもしれん。もしそれに耐えきれないのなら、お前から力を奪い、永遠の安息を与えよう。だが…貴様にかつての勇者たちのように、幾度も絶望と苦痛から立ち上がり、世界を救うために戦おうという意思があるのであれば…」

ローブを脱ぎ捨て、その中にあった顔と姿を目の前に人物に見せる。

薄い金色の短い髪に長くこの地にいたせいなのか、若干赤く染まった瞳と紫に染まった肌。

だが、すっきりとした若々しい顔立ちと双頭の鷲が刻まれた純白の鎧はかつてのもののままだ。

「何度でもよみがえらせてやろう。お前の意思に応えて…!!」




長きにわたってお付き合い、ありがとうございます!
勇者エルバの物語、ここで完結となります。
ドラクエ11をクリアしてから書いていき、筆者の生活習慣が大きく変わったこともあって、ずいぶんと遅くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございます!
ここからもドラクエの小説、書いてみたいなとは思っていますが、どんなものにするかはまだ決めていません!
いっそ、ダイの大冒険のようなオリジナルも悪くないかも…。
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