人、魔族、竜。
この世界に存在する彼らは自らが地上の覇者となるべく、幾多も戦いを繰り広げてきた。
いつ果てることなき戦い、その中で積み上げられていく亡者の数々。
それを憂い、3つの種族の神が生み出した存在、竜の騎士。
竜の戦闘力と魔族の魔力、人間の心を持つ究極の生命体。
世界の調和が乱れる時、その存在は聖母竜マザードラゴンにより生み出され、地上に舞い降りる。
そして、調和を乱す存在であれば、人も魔族も竜も、例外なく葬ってきた。
だが、竜の騎士はその圧倒的な力故に戦いから逃れられず、平和な世界においては災いを招く存在。
戦いの中で生き、戦いの中で死ぬことが竜の騎士の運命。
命あるものであれば、当たり前に望むものを得ることなく、マザードラゴンの元へと還る。
そして、その竜の騎士が戦いの中で得た知識や経験が戦いの遺伝子として次の竜の騎士へと受け継がれる。
だが、最後の竜の騎士、ダイはあらゆる意味でこれまでの竜の騎士とはかけ離れた存在だった。
父親である竜の騎士、バランが数奇な運命に導かれて人間の女性と出会い、その間に生まれた少年、ダイ。
その生まれ故に戦いの遺伝子は受け継がれず、受け継いだのは竜の騎士のたぐいまれなる肉体と魔力のみ。
その異端児といえるダイはそれにもかかわらず、歴代の竜の騎士をはるかに上回る力を見せ、地上を破壊すべく魔界より降臨した大魔王バーンを葬り、竜の騎士の宿命に従うかのように姿を消したという。
そして、マザードラゴンは邪悪なる存在によって落命したことで、もう二度と竜の騎士がこの世界に舞い降りることはなくなった。
大魔王バーンの死から、およそ200年。
竜の騎士の物語はもはや多くの人々から忘れ去られ、物語として一部の地域で語り継がれるのみとなった。
「ここねー、目標の遺跡ってのは」
岩の上から、薄青色の髪をフードで隠した少女が右手で日差しから視界を守りながら森の中にある遺跡を見る。
左手に握る地図にはこの森が描かれていて、バツ印がついているそこは目標の場所だ。
「さあ…ギルドからの久々の儲け話。このクエスト、とってやるわよ!この私、アーシュラがね!!」
「はあ、はあ、あ、ああ…」
わずかな光が差し込む遺跡の中、傷だらけの青年が尻餅をつき、目の前からゆっくりと近づいてくる巨大なゴーレムから逃げている。
グレーのズボンだけをはき、上半身が裸の彼の手には武器はなく、ゴーレムと戦えるはずもない。
「始末、始末…。ナンバー13、エッジ」
「なんだよ…なんだよ、ナンバーって、13って!?エッジって、俺の名前なのかよ!?」
「始末、始末…」
「来るな、来るなよぉ!!」
背中と後頭部に冷たい塊がぶつかり、もう後ろに下がれないことを悟る。
もはや命乞いを聞く必要のないこの存在を速やかに葬るべく、ゴーレムが拳を握りしめる。
あとは大きく振りかぶって拳をぶつければ、跡形もなくこの肉体は霧散する。
青年、エッジの瞳にゴーレムの冷たい拳が映る。
「来るなーーーーーー!!!!」
エッジが叫び、同時に彼の体を青い光が包む。
構わず拳を振るうが、青年の右手が拳をつかみ、受け止めた。
「…!?」
「あああああああ!!!!」
叫び青年の額に出現する紋章。
この世界から既に失われたはずの竜の紋章が光るとともに、彼の体が変化していく。
とび色の瞳が青く染まり、額から生える黄金の二本角。
何かを感じ、後ろに下がったゴーレムが見たのは赤い炎を体から放ち、鬼のような顔と紅蓮のような肌と人間とは思えないほどの頑強な肉体をした何か。
身丈は変わらないが、そこから感じたのはすべてを焼き尽くさんほどの力だった。