ドラゴンクエストⅪ 復讐を誓った勇者   作:ナタタク

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第32話 ロウ

「くそ…あの爺さん、くせ者だ」

カミュの話では、彼は戦いをすべてマルティナに任せ、彼自身はずっと後ろから見学するだけだった。

だが、そんな彼の正体が眠れる獅子であり、光栄なことにエルバがその獅子のターゲットになった。

退魔の太刀を落としてしまったエルバに残ったのは2本の片手剣。

獅子としても本性を見せたロウも年齢には勝てないのか、全身にまとう魔力のオーラはもって十数秒しか維持できないようだ。

だとしたら、そのオーラが解除された時を狙うのがベストだ。

問題なのはその時にどう攻撃するかだ。

(MPはまだ余裕がある…。俺の使える呪文の中で遠距離に攻撃できるのはデインとギラ、ベギラマの3つ…)

考えるエルバだが、再び大蛇のような氷が飛んできて、エルバはトベルーラですぐにその場から離れる。

そして、上空からベギラマを唱えて氷に閃光を命中させる。

だが、ベギラマを受けたはずの氷には何も影響がなかった。

(ホッホッホッ、残念じゃな。使う人間の魔力が違うのじゃ。魔力がのぉ!)

氷の上をすべるように移動するロウの両手にはいつの間にか鉄の爪が装備されていて、そのスピードのまま大きくジャンプしたロウはそのままエルバに肉薄し、その爪で切り付けようとする。

(拳法まで使うのか、このじいさんは!?だが、この爪は…??)

爪からわずかに見える振動。

違和感を覚えたエルバは抜いたばかりの片手剣を受け止めるのをやめ、高度を上げて回避する。

エルバがいた場所を通過したロウは爪を正面に見えた像に突き立てて動きを止める。

鉄の爪であれば、爪のほうが砕けるはずだが、鉄の爪は確かに像にヒビを入れ、刺さっていた。

「よくわかったのぉ。さっきの爪は鋼鉄をも切り裂くことができたんじゃよ。これが爪技、裂鋼拳」

爪に激しい振動を加え、その振動の刃で本来なら切断が難しい鋼鉄をも切り裂くその技は優れた格闘家にしか使用できない。

その技が使えるという時点で、彼が武闘家と賢者の2つの能力を持っていることがわかる。

「ふううう…!!」

大きく息を吸い込み、今度は爪を振動させずにトベルーラでエルバに接近してくる。

二刀流となったエルバは次々と切り付けてくるロウの攻撃で刃で何度も受け止める。

だが、腕の動きをダイレクトに反映することのできる爪のほうが攻撃速度に分があり、サークレットや頬、手の甲などにいくつも切り傷ができる。

「このぉ!!」

このままの近接戦闘ではエルバが不利になる。

エルバはロウの横っ腹にけりを入れようとする。

だが、左腕で脚を受け止められてしまう。

「けれど、これで!!」

爪での攻撃が一時的にも緩み、エルバは左手の剣でロウの右の爪を受け止め、右手の剣を逆手で握り、柄頭を彼の腹部にたたきつける。

鈍い痛みを覚えたロウは歯を食いしばって耐えるが、それでも力や動きが鈍くなる。

(まだ倒れない…なら!!)

ロウに魔力を回復させる時間を与えるわけにはいかないエルバは左手を上空にかざす。

勇者の痣が光り、上空に小さな雷雲が発生する。

「デイン!!」

エルバの叫びと共に落雷が発生し、エルバもろともロウに直撃する。

「ぐおお…無茶を、しおって!!」

「これ程度…無茶とは言わない」

双方消耗しているが、勇者ではないロウの方がこの落雷のダメージが大きいようで、トベルーラを維持できなくなり、エルバ共々落下した。

 

「ちぃ…!」

「はあ、はあ…攻めきれない…!」

ステージ上で戦うハンフリーとマルティナはお互いに距離を取るとともに、息を整えていた。

エルバとロウが戦っている間、お互いに先に目の前の相手を倒して援護したいと思っていたが、そのためにはその目の前の相手が悪かった。

お互いの実力が互角で、手傷を与えることができても決定打にならず、攻めあぐねている。

マルティナが多くの闘士を葬ってきた蹴りもハンフリーの腕で受け止められ、ハンフリーの腕と炎の爪は彼女の蹴りのリーチよりもわずかに短い。

遠距離から炎の爪の炎で攻撃しても、彼女の蹴りでかき消されてしまう。

(あと少し、リーチでどうにかするなら…!)

ハンフリーはステージに刺さった状態で落ちている退魔の太刀の存在を頭に浮かべた。

ルール上では戦闘終了後に返還することを条件に相手の武器を戦闘中に奪う、またはパートナーの武器をその場で借りることは許されている。

あの太刀であれば、リーチは上回るが、問題はハンフリーが剣術の修行をしたことがないことだ。

素人の剣で果たしてマルティナに勝てるかどうか。

(それに、俺もそろそろ限界みたいだからな…)

息を整えるハンフリーは左手で自分の胸に手を当てる。

数分前から胸から痛みが発生し始めており、まだ動きに影響は出ていないものの、それに影響が出るくらいまでに悪化するのは時間の問題だ。

本当なら、あと30分以上はその痛みが出ないはずだが、今回は様々な事情があって万全とは言えない状態になってしまった。

(だが…勝つんだ!子供たちのためにも…!)

脂汗を流す中、ハンフリーは再び笑みを浮かべる。

「そろそろ、けりをつけた方がいいみたいね。…あなたにとっても」

「俺にとっても…?何の話かな?」

「とぼける必要はないわ。おそらく、あなたは…」

ズドン、とステージの北端に大きな落下音が響く。

何事かと2人が目を向けると、そこには気絶したロウと体から若干焦げ臭いにおいがするエルバの姿があった。

「ロウ様!?…!?」

ロウが倒されたこともそうだが、マルティナは彼を倒した少年の左手の痣を見て、驚きの余り動きを止めてしまう。

血で濡れていて、一部しか見えないものの、見間違うはずがない。

(いまだ…!)

どういう理由かはわからないが、これを逃したらもう勝利の道がないハンフリーは退魔の太刀を手にし、マルティナに向けて全速力で走る。

足音が聞こえたことで、ハンフリーが近づいてくるのに気付いたマルティナはすぐに彼の目を向けるが、反応の遅さが結果に響いた。

退魔の太刀がマルティナの肩をかすめ、更には太刀を投げ捨てたハンフリーによるとどめのショルダータックルを受けてしまう。

強烈な体当たりでステージの外へ弾き飛ばされたマルティナは砂の上であおむけに倒れ、そのまま意識を失った。

「勝負ありーーーー!!!!仮面武闘会決勝戦、数々の熱戦が繰り広げられる中、勝者となったのは…エルディ&ハンフリーペアーーー!!チャンピオン防衛だーーーー!!」

「「ハンフリー!ハンフリー!」」

「ハア、ハア…やったか…」

片膝をついて、息を整えるハンフリーは観客の歓声にこたえるように、右拳を上空に向けて掲げる。

勝負が決まったのを知ったエルバもその場に座り込み、ベホイミで自分の体を回復させる。

そして、近くで倒れているロウにもベホイミをかけた。

デインをもろに受けたことで大きなダメージを負ったようだが、幸いにもベホイミで大部分治療することができ、あとは薬草を貼っておけばどうにかなりそうだ。

「うん…?」

エルバは彼の上着のポケットの盛り上がっている部分に違和感を覚えた。

その盛り上がりは小さいものだが、形がどこか見たことあるような気がして、エルバはその中身を取り出す。

それはハンフリーが飲んでいたドリンクの瓶そのもので、中身も入っていた。

「まさか、こいつは…!?」

エルバは昨晩起こった強盗騒ぎを思い出す。

もしかしたら、あの強盗を起こしたのは彼ら2人で、目的は金銭ではなく、これそのものではないのか?

だとしたら、これが一体何なのかを聞くしかない。

「ハンフリー、これは…!?」

「う、うう…!」

問いただす相手であるハンフリーが急に胸を右手でつかみ、苦しそうに声を上げた後でその場で意識を失ってしまう。

「おい、チャンピオンが倒れたぞ!?」

「ハンフリーさん、どうしたの!?」

「医者だ、早く医者を連れて来い!!」

ハンフリーが倒れたことで、あれほど歓声に包まれていた観客席が一気に静まり返る。

(こいつの…せいなのか…?)

エルバは謎の液体が入った瓶をじっと見る。

そうした中で、ハンフリーは到着した医者の手で運ばれていった。

 

「…どうだ?セーニャ、エルバの体に異常は?」

宿屋に戻ったエルバは部屋のベッドに上半身を裸にして横たわり、セーニャが手に青い魔力を宿した状態で彼の体内を調べていた。

「はい、問題はありません。まったくの健康体です」

「そうか…」

「そうか…じゃないわよ」

セーニャの隣に座るベロニカは怒りながら腕を組み、カミュは壁にもたれた状態でため息をついた。

まさか、あの液体の効果を確かめるためにハンフリーを半分騙す形で2度も飲むとは思わなかった。

そのうちの1つはマルティナの蹴りで吐き出すことになったが、1つは完全に飲んでしまっており、それを知ったときは3人とも真っ青になった。

「何やってんのよ!?もし、本物だったら…これなしで生きられない体になっていたかもしれないのよ!」

調べ終わった例の瓶を突きつけながら、ベロニカはそのあまりに無謀な行動を責める。

勇者の真実を突き止めること、そしてデルカダールに復讐すること。

それを目的としているのにいったいどうしてそんなことができるのか、ベロニカには理解できなかった。

「どういうことだ…?」

「持参した資料を調べたのですが、その液体にはマホイミに近い性質があることが分かりました」

「マホイミ…聞いたことのない呪文だな」

「そりゃあそうよ。マホイミは今じゃあ使う人がほとんどいないもの」

「使う奴がいない…?」

「そう。マホイミ…過剰回復呪文は過剰なまでに回復させて生体組織を破壊するものよ。ちなみに、それでできた傷は回復呪文で回復できないから、患部を切り取ってさらに回復させるしかないの」

ベロニカの説明を聞き、マホイミの危険性を直感で感じたカミュは苦い顔で顔をそむける。

そして、そんな危険な代物が入った液体をハンフリーが飲んでいたかもしれないということに驚いた。

「だが…逆に体を壊すほどの回復呪文の物を、どうして…?」

「マホイミは危険だけど、セーブして使えば、体の欠損した部位を治療したり、体のマヒを治療できるの。それにプラスして、この中には強い中毒性があるわ」

「中毒…?」

「分かりやすく言えば、一度飲んでしまうとそれを体が覚えてしまって、また飲みたくてたまらなくなってしまうのよ。こんな厭味ったらしい薬を作ったの…一体誰よ?」

それ以上にベロニカが気にしたのはハンフリーの体だ。

いったいどれだけの時期それを服用したかはわからないが、おそらく体は本人が自覚している以上にボロボロになっている可能性が高い。

もしあのままそれの服用を続けたら、あと何年かで死んでしまう。

「かなり高度な治療が必要だけど、今の私とセーニャじゃあ…」

おそらく、臓器や骨への治療も必要で、それはベホマ以外にもザオラルなどの復活呪文も必要になる。

復活呪文は回復呪文では修復できない臓器や神経、欠損した体の部位の再生などができる高度な呪文で、高名な僧侶や賢者でなければ難しい。

セーニャは現在、ザオラルの契約を済ませてはいるものの、まだまだ使いこなすことができない。

事情はともかく、エルバと一緒に戦ったハンフリーの身を案じる中、急にドアが勢い良く開く。

「ひっさしぶりね、みんなーーー!!シルビア、ただいまかえって…って、今はそういう空気じゃないわね」

エルバ達を包む重い空気を感じたシルビアはすぐに表情を硬くし、ドアを閉めてから近くにある椅子に座る。

行方不明になっている間に彼が何をしていたのか、全員分かっているためか別に帰ってきたところで突っ込む人物はこの部屋の中にはいない。

「ハンフリーちゃんは暮らしている教会に運ばれて、今は面会謝絶の状態よ。それにしても、彼一体どうしたのよ?急に苦しみだして倒れたって聞いたから…」

こうなった原因が分からないシルビアにエルバは例の瓶の液体について説明する。

マホイミという聞きなれない呪文の説明も含まれていて、少なくとも彼が服用していたその水が危険なものだということは分かった。

「公式には過労による体調不良ってことで表彰式は3日後に延期になったわ。でも、それで本当に回復できるか不透明ね…」

「今はどうすることもできない…。ここで待つしかないということか」

「ハァ…さっさと賞品の虹色の枝と一緒におさらばしたいぜ」

カミュの脳裏にあのグレイグの胸像がちらつく。

このままこの場所にいたら、もしかしたら彼と再び遭遇する気がして仕方がなかった。

 

「…そう、ロウ様。やはり彼は」

建物の陰で、マルティナはロウの話に驚きを感じるが、同時に嬉しくも感じられたのか、わずかに口角が上がる。

本当は路銀を得るために参加しただけの大会。

だが、めぐりあわせとは奇妙なもので、意外なところで予期せぬことが起こる。

ロウも70年近く生きていて、そういうことが起こる物とは分かっているつもりだった。

しかし、今回だけは起こるはずがないと思っていた。

「儂も信じられん。まさか彼がいるとはのぉ…。じゃが、今は…」

「ええ。今はチャンピオン…ハンフリーの」

「うむ。…明日、町の出入り口で落ち合おう」

うなずいたマルティナはロウとは反対方向の道を歩き始める。

ロウが向かうのは酒場で、マルティナは宿屋。

真夜中だからか、人影はない。

登り階段に差し掛かると、背後から人の気配を感じた。

振り返らず、階段を昇っていくと、急に気配が消える。

疑問を抱き、振り返るがそこにはだれもいない。

しかし、急に後ろから誰かに口をふさがれる。

(人の…男の手…この、手は…?)

まどろむ意識の中で、マルティナはその手の主を頭に浮かべる。

だが、それも束の間で、意識を失ってしまった。

「…すまない。だが、他に方法はない」

静かな空間の中で、男の声がする。

男は静かにつぶやいた後で、気絶したマルティナを抱えると、その場を後にした。

 

翌朝、エルバ達は部屋で従業員が持ってきてくれた朝ごはんに舌鼓を打つ。

コーヒーとパン、そしてコーンスープに野菜サラダという質素なものだが、朝はこのくらいがちょうどいい。

「んで、今日はどうすんだ?まさかずっと宿にいる、なんてことはねえだろ?」

コーンスープをスプーンを使わず、カップから直接口に注ぎこむカミュは今できることを考えていた。

路銀を稼ぐとなると、近くの魔物を倒してそれからはぎ取った皮や骨、そして肉を売ることになる。

だが、この時期はそういう仕事は闘士たちが修行を兼ねてやっており、魔物が少なくなっているため、そんなに稼げるお金は期待できないだろう。

あとは闘士行方不明事件の調査だが、追われる身であることからあまり面倒事に巻き込まれたくなく、調査した結果自分たちがさらわれたとなるとシャレにならない。

「薬をもう少し調べてみるのもいいけど、もうこれが限界ね。これ以上は調べようがないわ」

「でも、どうしてハンフリー様はこんな危険な薬を飲むようになったのでしょうか…?今日なら、もしかしたら面会が…」

話している中、急にドアをノックする音が聞こえてくる。

小さく規則的な叩き方で、エルバはドアの前へ向かう。

「悪いが、まだ食事中だ。食器はもう少し後で…」

「ロウじゃ。おぬしに用があってきたんじゃ」

「ロウ…用というのは何だ?」

「開けてくれんと話せんわい」

「はあ…分かった」

エルバがドアを開け、ロウはトコトコと部屋の中に入る。

そして、エルバが座っていた椅子に勝手に座った。

「おい、じいさん。用がある見てーだが、俺らも…」

「実を言うと、探し物があるんじゃ。小さいひし形の小瓶で透明な液体が入っている…昨日の試合で気絶した後からポケットの中からなくなっておってのぉ。何か、心当たりはないかのぉ?」

それはまさしくハンフリーに関係する瓶で、ロウが持っていたそれはエルバが持っている。

だが、正体のわからない人物に渡せる代物ではない。

「こいつは危険な薬だ。何のつもりかは知らないが、返すつもりはない。焼いて処分するつもりだ」

「いや…それは待ってほしい。それが探している人物を見つける材料になるんじゃ」

「探す…?誰を?」

「マルティナ姫、一緒に旅をしている仲間じゃ。昨晩から行方が分からなくなっておる。町中どこを探しても見つからん」

「おい、そいつは…」

まさしく、闘士行方不明事件に似た状況だ。

高い成績を出した闘士が仮面武闘会の閉会を前後して行方不明になる。

直に判断することはできないが、おそらくマルティナが行方不明になったのは…。

「探すのを手伝ってほしい。おそらく、その事件と薬がどこかで繋がっている」

「繋がっている…?そういえば、そのマルティナって女が俺に言っていた。ハンフリーに気を付けろと」

まさかとは思うが、その事件の犯人がそのハンフリーではないのかと一瞬疑ってしまう。

だが、ハンフリーに闘士を誘拐するメリットが感じられない。

しかも、薬はともかく彼が誘拐した証拠がない。

おまけにロウはそのマルティナがさらわれたにもかかわらず、かなり冷静で、淡々とした口調だ。

本当に彼女を心配しているのか、もしかして彼こそが犯人なのかと思ってしまう。

「まだ証拠はない。じゃが、マルティナ姫が消息を絶ったのは…教会付近じゃ」

「何…?」

「おいおい、それでハンフリーが犯人かもしれないと…」

「じゃが、確かめなければならん。そのためにもその薬を使う必要がある」

「お待ちください、ロウ様。この薬には強い中毒性と…」

「マホイミの魔力じゃな。まさか若いのにここまで突き止めるとはのぉ…」

セーニャとベロニカに感心しつつ、ロウは背負っていた荷物を床に置き、大きめの紙を机の上に置く。

黒いインクをつけた筆で魔法陣を書き、その中央に瓶を置く。

六芒星の先端1つ1つに根元に黄色い石がついた金色の羽根を置いていく。

「ねえ、おじいちゃん。それって何をするの?見たことないけど…」

「これは秘術じゃ。この術を使うことで呪文の性能を高めることができる」

「秘術…」

セーニャとベロニカはラムダの里の修行で聞いたその秘術の話を思い出す。

かつて、勇者と共に旅をした仲間の1人が生み出した秘術で、現在は封印されて使い手が一人も存在しないという。

魔力を増幅させる力のある石、輝石で作られたゴールドフェザーを媒介にすることでその秘術を使うことができる。

今目の前でロウが使っているのがそれで、まさかそれを間近で見ることができるとは思わなかった。

両手をかざし、6本のゴールドフェザーが淡く光り始める。

深呼吸しながらロウは両手に淡い魔力の光を生み出していく。

「フローミ…!」

唱えると同時に、魔法陣の上にグロッタの街の地図が出現し、地下街の教会の中に光の点が発している。

「フローミって、自分の居場所を探る呪文じゃない。それを秘術で…」

「そうじゃ。今は魔力を高め、この瓶の持ち主の居場所を追跡できる。じゃが、この位置は…地下の庭園。話ではまだ意識が戻っても体が動かんはずじゃが…」

「まさか、またあの薬を…!?」

「考えられることじゃ。うん…?」

ハンフリーと思われる光の点が急にその場で消えてしまう。

同時に、ロウも疲れたようで、地図が消えてしまい、彼は大量に出た汗をタオルでふき取る。

「おいおいじいさん、大丈夫かよ…?」

「は、はあ…この秘術はまだまだ修行中で、増幅する魔力のコントロールがまだできとらんのじゃ…」

「とにかく、教会の庭園へ行くぞ。そこに手がかりがあるはずだ」

「待て…何が起こるかわからん。それに、マルティナ姫がそこにいる可能性もある。わしも一緒に行くぞ」

汗を拭き終えたロウは椅子から降りると、魔法陣を書いた紙を瓶ごとたたむ。

ゴールドフェザーはフローミが切れたのと同時に消滅していた。

「ああ、あんたの力はよく知っている。頼りにさせてもらう」

「そうか…なら、出発じゃな」

疲労しているとはいえ、二本足で歩けるだけの体力は残っているようで、ロウは先頭に立って部屋を出ていく。

もはや主導権はロウに握られていた。

「はぁ…あんまり騒ぎは起こしたくねーが、中途半端で終わるのも気分が悪りー…行くぞ」

「ああ…」

仮面武闘会で見せたあの魔力のオーラと強烈な呪文、そして今見せた秘術。

マルティナを姫と呼ぶ彼がいったい何者なのか?

敵なのか味方なのか何一つわからないまま、エルバはロウと一緒に教会へ向かった。

 

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