これは魔法少女ですか?~はい、ゾンビです~   作:超淑女

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17「ご察しの通り、中二病です」

 あれから一日が経った。

 今日も変わることなく、マミは朝御飯を作ってちゃぶ台に並べる。

 ここ一ヶ月ですっかり賑やかになった食卓を見渡すと、三人。

 杏子、セラ……そしてユウ。

 ここが、前までと同じ一人ぼっちで泣いていた家とは到底思えない。

 

「いただきます」

 

 四人で声をそろえて言うと、食事を始める。

 朝食を食べながら『そう言えば……』とマミがつぶやく。

 

「ベランダに矢が落ちてたんだけどあれなに? 儀式?」

 

 そう聞くと、おそらく関係者であろうセラがそっと茶碗と箸をおいた。

 マミと静かな雰囲気を見に纏うセラが近くにあったティッシュで口を拭く。

 雰囲気に呑みこまれそうになるマミが、ゴクリと喉を鳴らした。

 

「……矢文です」

 

「今時っ!? なに吸血忍者!?」

 

「いちいち騒がないでください気持ち悪い」

 

 そんな言われようにくじけそうになるマミ。

 ふつうにその会話を聞いている杏子に内心恐怖すら感じる。

 セラはついでというように『前マミに預かってもらった眼鏡を使ったと言うわけです。ご苦労さまでした』とメガネを軽く持ち上げて見せてきた。

 なんだかんだで嫌われていないのだろうけれど、自称豆腐メンタルのマミには厳しい毒舌っぷりだ。

 

 ふと、杏子への連絡手段が無いなんてことに気づく。

 テレパシーだけというのも不便で仕方がない。

 

「佐倉さん、今日は午前授業だから一緒に生活用品でも買いに行きましょうか?」

 

 そう言うと、杏子が驚いているようだった。

 マミにとってはそれと言って特別なことでもない。

 ユウもセラも同じくだった。生活用品を買いに行くことが無かったわけでは無い。

 ただセラの場合は持ってきたものが多い。

 

「あのリュックの中身って服とかでしょ? 新しい服も、生活用品も必要だし……なによりも携帯ね」

 

 そう言うと、杏子は嬉しそうに頷いた。

 横から袖を引っ張られる。

 無論ユウだ。

 そちらを見るとメモ帳が持ち上げられる。

 

『時間』

 

 書かれた文字を見てから時計を見た。

 もう待ち合わせの時間だと、急いでご飯をかきこむとカバンを持って立ち上がる。

 口の中のものを全てお茶で流し込むと、マミは玄関へと走った。

 

「そういえば、セラとユウも杏子と一緒に校門前で待っててね!」

 

 出て行ったマミ。

 杏子はしばらく黙っていた後『え?』とつぶやく。

 二人きりだと思ったのだろう。

 セラとユウは行く気満々のようで、杏子は何も言えないまま頭を抱えるばかりだった。

 

 

 

 

 

 マミは走っていた。道の曲がり角を曲がると、そこには仁美。

 待ち合わせの時間には間に合ったというように頷くと、歩き出す。

 他愛も無い話をしながら歩いていると、マミが何かを思いついたように話しだした。

 

「夜の王について聞きたいのだけれど……」

 

 だが、仁美はそんな言葉に眼を細めるばかり。

 語らない気は無いのだろうけれど、あまり語りたくは無いと言った表情。

 

「ユークリウッド様に黙って言うのは非常に忍びない話です。それでも聞きますか?」

 

 いつものほんわかとした雰囲気をした仁美はいない。

 冥界人である『シーウィード』と呼ばれる者だけがそこにいた。

 その威圧感。マミにとっては大したことも無いけれど、確かに凄みは伝わる。

 語れと言えば語ると言うことだろうけれど、マミは首を横に振った。

 ユウに聞かなければならない話ならば、いずれ聞くだけだ。

 

「そう言うと信じていました」

 

 なら言う気など最初から無いと言えば良いのに、と思うも言わない。

 仁美なりに自分を試したのだろう。

 前方に、見慣れた三人を見つける。

 マミが軽く手を振ると、三人は手を振りかえしてきた。

 元気そうな青髪の少女を見て、仁美も嬉しそうである。

 

「(鹿目さんのことは……終わってなさそうね、暁美さん)」

 

 心の中でつぶやいて、マミは溜息をつく。

 一難去ってまた一難どころではない。難が溜まっていくばかりだ。

 消化も一苦労。まぁなにはともあれさやかの件だけでも片付いて上々。

 ほむらにもいずれは話してもらいたい。

 何者なのかということや、どうして鹿目まどかを魔法少女にしたくないのか……。

 

 いずれで良い。自分が彼女にとってそれを話すだけの価値の人間になれれば、良いのだ。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 恋愛に関しての難題とは、相手が自分の好意に気づいていないというのが一番の問題だ。

 ある一人の少女の色恋沙汰が片付こうとも、そういう恋愛というのは問題の種が消えることは無い。

 だれかのそれを片付けたところで次は自分だ。

 

 いわゆる朴念仁とやらを好きになればその時点で壁は高い。

 彼女、佐倉杏子もそんな壁に挑む挑戦者の一人である。

 

「えへへ♪」

 

 そんな気分良さげな声は後ろからだ。

 見滝原にある巨大なショッピングモールにて、歩いている杏子。

 その背後にはセラ、まどか、ユウ、ほむら。そしてさらに後ろにマミとさやかである。

 さやかはマミの腕を掴んでいた。

 

「み、美樹さん、ちょっと近すぎない?」

 

「いえいえ! 弟子、いや舎弟としては常に傍に居ないと!」

 

「やめて!」 

 

 物騒なことを言うさやかを止めるマミ。

 周りの一般人からは奇怪な眼で見られている。

 魔法少女の面々、それにマミの家族であるセラとユウ、そしてまどか。

 アサミのことでかかわった全員で歩く。

 なぜだかマミにべったりのさやか。

 

「それにしても、屋根があって助かったわ」

 

 ゾンビであるマミに日差しは強烈な攻撃だ。

 ふと、マミの隣にいたさやかがマミの腕を引いた。

 そちらを見たマミが立ち止まる。

 

「どうしたの?」

 

「あの…腕組んで良いですか!?」

 

 ブッ、と吹き出すマミ。

 突然のことについていけないマミが、少しあたふたとする。

 頬をかきながらマミの顔を見るさやか。

 

「おいマミ!」

 

 大きな声に、そちらを見るマミ。

 杏子が気に入らないと言う顔をしていた。

 

「なにしてんだよ……?」

 

 機嫌が悪いのはわかりきったことだ。

 なぜそんなに不機嫌なのか、まったくわからない。

 

「いや、それは……」

 

 相変わらず局面にしていまいちハッキリしないマミ。

 近づいてくる杏子が、マミの片腕を取る。

 

「あの店に行くぞ」

 

 不機嫌そうな声音で、マミの手を引いていく杏子。

 同じく引き摺られていくさやか。

 面々は店へと入って行った。

 

 

 全員で遊びに行くと言った時、マミは自分で『私のおごりよ!』なんてことを言ってしまった。

 今ではそれを後悔している。目の前で行われるファッションショーは見ていて良いものだ。

 しかし、それと比例するように財布から去っていく者も居た。

 

「うぅっ、諭吉さん何枚かかるんだろう……」

 

 一応お金は持ってきておいて良かったと安心する手前、いくらかかるのかと肝を冷やす。

 目の前で広げられるユウ、杏子、さやか、ほむら、まどかのファッションショーはかなり良いものだ。

 こうなったら自棄だと、マミもいろいろ似合いそうな服を用意するのだった。

 

 一方、セラは端の方にあるコスプレ用のメイド服を見ている。

 

「似合うんじゃない? 来てみたらぁ?」

 

 いつも一方的に言われるセラに仕返しのチャンスと言わんばかりに言うマミ。

 さすがのセラも焦っているようだった。

 

「そしてっ! これもつける!!」

 

 マミが取り出したのはどこから持ってきたのか猫の手と猫耳。

 

「お断りしますクソ虫」

 

「はやっ!」

 

 冷めた眼をしたセラがマミを睨んだ。

 

 その数分後、マミがまどかたちと服を見ているのを見計らい、セラは鏡の前に立つ。

 猫耳をゆっくりつけると、恥ずかしそうにしながらも両手を猫のように頭の部分に持っていく。

 

「にゃ、にゃぁ……っ!?」

 

 背後にはマミ。ニヤニヤした顔でセラを見ている。

 良いものを見たと言う気になっているマミの両目に、手裏剣が刺さった。

 

「にゃぁ~!!? 目がっ! 目がぁぁっ!!」

 

 案の定悶えることになったマミ。

 眼球が再生するまで、些か時間がかかることだろう。

 

 

 

 

 

 大きなベッドの前、バスローブを着たさやかとマミがいた。

 本来ならばさやかより少し背の低いはずのマミだが、さやかより少し大きい。

 マミはいつもしないような表情で、さやかの頬をそっと撫でる。

 

「ま、マミさん……」

 

「マミさんじゃないでしょ?」

 

 そっと、近寄ってくるマミがさやかの耳元で囁く。

 ほんのりと頬をそめたさやかが小さくつぶやいた。

 

「ま、マミ……」

 

 そして、二人の唇は近づいて行き―――いき―――。

 

 

 

「だあぁぁぁぁっ!!」

 

 下着売り場の真ん中で大きな声を上げるさやか。

 自らの頭をボサボサとかく。

 真っ赤な顔をするさやかの目の前にはド派手な下着をまとうマネキン。

 

「(なななっ! なんでここで恭介じゃなくてマミさんなのよ!? どう考えたって……があぁぁっ!!)」

 

「なにやってんだ?」

 

 隣にやってきた杏子がツッコム。

 焦って言葉にならない言葉を出すさやかを見てから、マネキンを見る。

 それを見た杏子はニヤニヤと笑みを浮かべた。

 

「例の男かぁ?」

 

「違うわよ!」

 

 そう言うが、杏子はケラケラと笑うのみだ。

 なんだかそれが悔しくもあるが、そう言われてホッとしている自分が居る。

 妄想になぜかマミが出たなんて、杏子並びにもろもろには口が裂けても言えないことだ。

 

 

 

 

 

 そして、お昼頃になった時、全員が歩いている中、マミがただ一人大量の荷物を抱えていた。

 のっそのっそと全員の後ろを歩くマミは不満そうな顔をする。

 携帯電話を買ってもらった杏子は上機嫌と言った様子で先頭を歩く。

 

「なによもぉ、少しぐらい持ってくれても……」

 

 まどかやほむら、さやかがマミの方を向く。

 

「持ちましょうか?」

 

 そんなまどかの言葉。

 いざあんなことを言ったはいいものの、マミ自身とて後輩に物を持たせるのに抵抗はある。

 頼りにされたい先輩としては物を持っていてあげるぐらいするべきだろうと、大丈夫だと答えた。

 マミはおとなしく物を持っている。

 前の方を歩くユウが、メモ帳を持ち上げる。

 

『空腹』

 

「お姉ちゃん、ユウねぇ? お腹ペッコペコなのぉ」

 

 もちろんマミの頭の中の妄想ユウの言葉であった。

 後輩の前ということも忘れ、緩んだ顔でマミが言う。

 

「じゃあご飯にしよっかぁ~」

 

 そんなマミの顔を見ているのが誰も居ないと言うのが幸いだろうか。

 

「そう言えばお腹減ったね」

 

「なににしましょうか?」

 

 セラやまどかたちが楽しそうに話す。

 ご飯をどうするかと話をしながら歩いていく。

 少なからず、こう見ると彼女たちはただの女子中学生だった。

 

 

 花屋で働いている青年が、ふと歩いているマミたちを視界に入れる。

 そして、視線の先でユウを捕らえると……静かにその糸目を開いた。

 金色の眼が鈍く輝く。

 

 

 

 

 

 牛丼屋の店内で、まどか、マミ、さやか、ユウ、セラ、ほむら、杏子。計七人が並んで座る。

 目の前にならぶ七つの牛丼を見て、マミが複雑そうな表情をしていた。

 元々遊びに行くような友達がほとんどいなかったマミとしては、こうして大勢で遊びに来るなんてめったにないことだ。

 しかし、自分が求めていた遊びは違う。

 

「(こう、おしゃれなレストランで、とか……ファミレスでドリンクバーで三時間、とか……)」

 

 マミの理想と些か違ったこともあり、戸惑っている。

 

「ユウ、本当にここで良かったの?」

 

 気を使うと言うのも含めて、着てみた。

 全員不満は無いようで、むしろまどかとほむらは初めてなのかそわそわとしている。

 杏子は、良く牛丼を食べたりしていたのだろうか? 小慣れていた。

 

『問題ない』

 

 なら良いかと、全員が割り箸を持って手を合わせる。

 

「いただきます!」 

 

 七人の揃った声。

 同時に箸を割る音が七つ。

 マミが牛丼へと手を伸ばそうとした瞬間、隣のまどかが悩むような表情をしていた。

 ソレが気になり、手を止める。

 

「どうしたの?」

 

「牛丼、こう……がっつり行っていいんですか? お肉とご飯別々にするので、いまいち食べ方で悩むというか……」

 

 なんだそんなことかと、笑う。

 さすが、牛丼屋で牛丼を食べる経験なんて今まで無かったのだ。

 魔法少女稼業が忙しいマミは、ユウが来る前などは良く来ていたものだと思い出す。

 なつかしい気持ちになりながらも、マミはまどかに言う。

 

「普通で良いのよ、貴女が思うように……食事って大抵そういうものよ。相当じゃないかぎり誰も何も言わないわ。でもぐちゃぐちゃにかき混ぜるのは牛に対する冒涜だから注意ね」

 

 そう言われると、まどかはみんなと同じように牛丼を食べ始める。

 まどかの方を見ると、全員が見渡せた。大勢で食べる牛丼。

 たかが牛丼ではあるが、こうみんなで食べるとありがたいものに感じられた。

 

「同族意識ですか?」

 

「セラ、あなたねぇ。胸で言ったら貴女の方が牛並よ……」

 

 割り箸を折りたくなる気持ちを押さえながらも、言い返した。

 

「私は腹のことを言っているのです」

 

 再びマミが怒り出す。まぁ、本気で言っているわけではないとわかっているから本気で怒りはしないのだろう。

 そんな家族間の冗談を笑いながら見る面々だったが、ユウとほむらだけは笑顔で見ていない。

 ユウは相変わらずの無表情だが、ほむらはどこか気に入らないと言った表情だ。

 

 

 

 

 

 昼食を終えると、七人はショッピングモール内にあるゲームセンターへと向かった。

 それぞれ遊んでいる面々をよそに、マミは近くのベンチに座っている。

 たくさんの荷物を横にベンチに座るマミは、難しい顔をしながらUFOキャッチャーをやる杏子を見ていた。

 

「やはり貴女は誰でも良いのね」

 

 気づけば、一つ離れたベンチに座るほむら。

 腕と両足を組んでいた。

 

「なんの話をしているの?」

 

 いつもと同じく高揚の無い声だがわかる。

 数週間ずっとそばに居たのだからわからないはずがない。

 この暁美ほむらは、少し不機嫌だ。

 

「自分と一緒に居てくれれば誰だって良かったんでしょって話よ」

 

 冷めた目だ。始めて会ったあの時のような目をしている。

 いや、それは今に始まったことではない。

 今日朝見たときからずっとそうだった。

 昨日まではそうではなかったはずだ。

 

「暁美さん、貴女……」

 

「お~い! マミさん!」

 

 走ってきたのはさやかだった。

 問答無用でマミの腕をつかむ。

 

「ゲームしましょうよ!」

 

「えっ!? ちょっ、暁美さん! 荷物よろしく!」

 

 そのまま連れて行かれてしまうマミ。

 ベンチに一人になったほむらが、腕と脚を組むのを止める。

 ほむらは一度だけ、自らの指につけられているソウルジェムを見た。

 

 

 

 その後、荷物をロッカーに入れてからほむらも皆の輪へと入った。

 一度も笑顔は見せなかったけれど、それにも慣れている面々は特に何かを言うわけでは無い。

 全員それなりに普通じゃないのだから、当然と言えば当然だろう。

 それから全員でプリクラを取る。

 

「みんなとプリクラ! 私もう一人じゃないのね! もう何も恐く―――」

 

『それ以上いけない』

 

 ユウに止められたマミは不思議そうに頷いた。

 とりあえずマミにとっては初めてなのだ。こうして沢山の友達と遊びに行くことなど、基本的に一人で魔女狩り以外することがなかったマミ。

 いつ魔女や使い魔が出るかわからないこともあって事情を知らない相手と遊びに行くのも問題がある。

 だからこそ一人だったが、このメンバーが一緒ならいつ抜けても問題無い。

 安心して遊べるというものだ。

 最近はいいことづくめで逆に恐さすらあるが、今はただこの場を楽しめばいい。

 

 

 

 

 

 夜、傍にある観覧車に乗った後、外はすでに暗くなっていた。

 近くの広場、ベンチに腰かけているユウとまどか。

 木製のテーブルの上、UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみで遊ぶ二人。

 

 少し離れた場所で立って話をしている杏子、さやか、セラの三人。

 マミは飲み物を買いに行くとそこから離れた。

 ほむらもその後を追ってすぐに離れたので、今は三人きりだ。

 

 

 

 暗い中、数少ない明かりである自動販売機の前に立つマミ。

 財布を出して小銭をいくつか確認すると、千円札を自動販売機に入れた。

 足音と共に、ほむらが現れる。そちらを見たマミが笑みを浮かべた。

 

「暁美さんも飲む? 何が良いかしら」

 

「巴マミ、貴女は一人ぼっちの溝を埋めるならだれでも良いの?」

 

 マミの笑みが、凍る。

 何を言っているのかと、驚いているようでもあった。

 少し前に自分のために泣いて、自分にほほ笑んでくれたほむら。

 

「誰でも良いのでしょう? 何度やりなおしても貴女は一人。だからこそ私は貴女を諦めたくなかった―――だから諦める前は貴女に手を差し伸べた。貴女は本当に可愛い人だったの、一人ぼっちだから私が少し手を差し伸べただけで貴女は私へと依存した……だけどそんな貴女は私やまどかをかばって死んでしまう。無理なことだったのよ、貴女とまどかを助けるなんてこと!」

 

 ここまでほむらが話し続けるなんてなかったことだ。

 それに驚きながらも、頭でほむらの言葉を整理するマミ。

 あの時、自分が食われた時の言葉も思い出す。

 

「だからあきらめた。貴女への敬愛もすべて忘れて、まどかのためだけに戦うことを決めた……けどまたここで諦めきれなくなった。だから私に依存していた貴女を私はまた守ろうと―――そう思ったのに! 思ったのに! 貴女は私と一緒に“いてくれた”のなんて最初だけじゃない。わけがわからないわ!」

 

 そんな言葉の数々をマミは頭の中で整理し終えた。

 後半の言葉で、全て理解できる。おそらくではあるが、マミの感は間違っていないだろう。

 

「暁美さん、貴女まさか……」

 

「っ!?」

 

 瞬間、ほむらは無表情へと変わった。

 まるで一瞬で頭を冷静にしたようである。

 数分は経っているんじゃないかという変わりようにわずかに戸惑うマミ。

 しかしすぐに気づく。マミが思っていることが確かならば“ソレ”は……可能なのかもしれない。

 

 

 

 ぬいぐるみで遊ぶユウと、一緒になって遊ぶまどか。

 ふと、まどかもユウもいじっていないはずのぬいぐるみが、みんなで撮ったプリクラの上に置かれた。

 

「たまたま散歩していたら君に会った」

 

 声が聞こえる。優しそうな声だが、どこか冷たい声。

 そんな青年の声に、まどかが反応するが、それ以上にユウが反応した。

 

「やぁ、不幸な偶然だね。ユークリウッド」

 

 見上げるユウとまどかの視界に映ったのは薄茶色の髪をした青年。

 少しばかり長い髪を一本に縛って前に垂らしている。

 優しそうな表情をした冷たい青年は、ほほ笑んだ。

 

 

 

 鋭い瞳が、マミを貫く。

 今さら言い逃れもできないことはわかっている。ということだろう。

 溜息をついたマミが苦笑した。

 

「とりあえず今は忘れておきましょう」

 

 そんな言葉に、ほむらは驚愕する。

 

「貴女が話したい時に話してほしいの、別にいつでも良いから」

 

「……貴女はいつでも優しいのね」

 

 いつでもなんて言葉に、マミは笑ってしまう。

 もう隠す気も無いのはわかる。

 だが深くは言うまいと、自動販売機のボタンを次々と押していくマミ。

 腕にたくさんの飲み物を持つと、歩き出す。

 

「持つわ」

 

 いつも通り淡泊な言葉。それに頷いたマミ。

 ほむらがいくつかの飲み物を持って歩く。

 黙ってある二人。

 

「(時をかける少女暁美ほむら。そうねこれは運命の女神(ディスティーノ・デーヴァ)の定めた道、数多の私という可能性の中、特異点たる私が最後に道を切り開く。それがガイア、貴女が私にかす試練ね!)」

 

 そんなことを思っているマミだが、ほむらは悟っていないのだろう。

 内心マミは舞い上がっている。

 理想的な主人公状況なのだろう。

 たった一人特別な存在。特別ではないけれど特別な存在だ。

 

 

 

 みんなが集まっている場所へとやってきたマミとほむら。

 ユウたちとは少し離れた木製のテーブルの上に飲み物を置く。

 辺りを見渡すほむら。

 

「まどかとヘルサイズさんは?」

 

 少し離れたユウとまどかの座っていたテーブルを見ると、そこにはぬいぐるみが散乱しているだけだった。

 静かな風が、マミの肌を撫でて、髪をなびかせる。

 プリクラが落ちていた。

 マミとセラとユウと杏子で撮ったプリクラ。

 

 落ちているソレを見て、マミは黙ったまま、唖然としていた。




あとがき

さて「これはゾンビですか?」の方のストーリーもかなり進んできましたよ。
ここはまどかマギカで言うさやかが魔女化するはずの日でした。

あとマミさんをデブって言った奴屋上な

これからほむらの葛藤やセラの葛藤など、そしてユウと共に消えたまどかは一体!?
というこです。さて、次回もお楽しみに!!

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