数十分が経った。
ワルプルギスの夜も、上空にいる巨大なメガロも、まだ終わらない。
そして―――タワーの中の戦いも今だ続いている。
「400%!」
マミの攻撃により、吹き飛ぶ夜の王がタワーの窓にぶつかる。
「ではこちらは500%!」
夜の王の攻撃を受けたマミも同様に吹き飛んで背中を打ち付けた。
鉄製の窓枠に背中をぶつけたマミ。背後の窓には血がべったりと付着している。
「600パーセントッ、友達を殺したくないっていうユウの優しさをっ!」
腕と脚を使って、跳び出すマミ。
立っている夜の王向かって飛び出すマミが、拳を振りかぶる。
「なんでっ、なんでわかってあげないのッ!!」
拳を打ち付けるマミだが、夜の王は両手で防ぐ。
防いでいた両手が音を立てる。
彼の両手の骨が砕けていく。
「700%!」
お返しと言わんばかりに放たれた夜の王の蹴りが、マミの腹に直撃した。
大量の血を吐き出しながら、吹き飛んだマミがエレベーターの扉にぶつかる。
床へと倒れ込むマミの周囲は吐き出された血で汚れていた。
「昨日今日知り合った君が、一体彼女の何を知っている……」
冷たい声が聞こえるが、数日前や先ほどに比べるとずいぶん感情が乗っている。
痛みに震える体、両手を床について起き上がろうとするマミ。
俯くマミの髪留めが、砕けたのか落ちる。
片方のロールを残して、片方のロールはほどけた。せっかく毎朝セットしているロールだが、今はそんなことに構っているほど心に余裕も無かった。
「そう、だからムカついてるのよ……」
顔を上げるマミ。
「私なんかよりずっと前からユウを知ってる貴方がっ、なんでユウのことわかってあげないのかってね!!」
眼を見開き、動揺する夜の王。
マミが両手と両足に力を込める。
「800パーセントォッ!!」
大きな声と共に、立ち上がったマミが勢いよく夜の王に駆けた。
素早く近づいたマミは、下から抉るような拳を打つ。
夜の王の顎を打った拳。マミは鋭い目つきのまま叫ぶように言った。
「ユウの笑顔をっ、一番可愛い顔をっ! 貴方は見たことがないわけ!?」
マミの拳の衝撃でか、夜の王の喉元から骨が突き出てすらいる。
だがお互いにゾンビ。その傷も音を立てて再生していくのみ。
「笑顔?」
つぶやくように言う夜の王。
ふらつくマミが、まだ叫ぶ。
「楽しい時、ユウがどんな笑顔を見せるのか、知ってるのか!」
荒々しく言葉を投げつけ、拳を振るう。
右からの拳により左に倒れそうになる夜の王を左から殴る。
「貴方はユウが好きな食べ物、知ってるのかッ!!」
さらに拳が打ち付けられる。ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
ひたすらな攻撃。腹部を打つ蹴り。
だがそんな攻撃を受けても死なない。死ねない。
「毎日毎日! ユウがどんな思いで暮らしてるのかっ―――知ってるの!?」
打ち付けられる拳。
「好きでネクロマンサーに生まれたわけじゃない! それでも頑張って生きるしかないのにっ!」
自分で言いながらも、思い出すユウとのここ一ヶ月の生活。
足を蹴り飛ばすと、膝まで崩れ落ちる夜の王。
「生きることを諦めたお前にっ! わかったようなこと絶対に言わせないッ!!」
叫ぶと共に放たれた拳は、下から抉るように夜の王の顔を貫いた。
血液と、骨の破片が窓まで飛び散る。
貫いたマミの腕は、血に濡れていた。
だが、それでマミは止まる。
マミの背中に抱きついているユークリウッド・ヘルサイズ。
苦しそうな声が聞こえた。
マミはゆっくり目を伏せて、腕を引き抜く。
静かに立つマミと夜の王、そしてユウの三人。
外では、いまだに戦いが続いている。
夜の王が口を開いた。
「君もいつか知る。死ねないことの辛さを……だから、頼む……」
そっと、ユウへと視線を移す夜の王。
「その時が来ても、ユークリウッドを恨まないでくれ」
「そんなことあるわけない、私には魔法少女の皆がいるし、セラもいる。貴方とは違うわ」
はっきりと否定するマミ。
ただ一人、死ねない体で孤独だったからこそこうしてしまったのかもしれない。
マミ自身だってあのままユウと出会ったまま一人きりでいたらこうなっていた可能性だってある。
「そうか、そうだね」
穏やかな表情で微笑する夜の王。
「もういいだろユークリウッド……これ以上は辛すぎる。お願いだ」
その言葉に、眉をひそめるユウが静かに目を伏せた。
一歩一歩、足を踏み出すユウ。そっと夜の王の手を握った。
振り向いてマミを見るユウ。頷いたマミが数歩下る。
夜の王が膝を曲げた。
そして彼の耳元で―――つぶやく。
膝をつく夜の王。
足元から徐々に、光の粒子へとなって消えていく。
ユウはその手を離さない。
「死んだら、ペンギンにしてくれ。ボクはペンギンが、好きなんだ」
何度も、何度も頷くユウ。
だが、涙を流しながらもユウは笑顔を浮かべる。
「すまなかった、ユークリウッド」
そして、夜の王は完全に消えた。
無言のマミとユウ。震えるユウの頭をそっと撫でると、魔法少女姿の時にかぶっている帽子。
それを出すとユウの頭にそっとかぶせた。
「迎えに来るからね」
そう言うと、マミは割れた窓から飛び出していった。
彼女は再び戦いの舞台へと舞い降りる。
上空でメガロが消えた。
それを見たさやかが真上を見て笑顔を浮かべる。
マミが勝ったという証拠だ。
「やったんだ……」
「さやか!」
声が聞こえた。ほむらの声だ。
振り向くとそこには使い魔。
その手が自分を貫こうとした瞬間、使い魔は切り裂かれた。
「まったく、油断しないで」
目の前に現れたほむらが刀を空に降り、背中の鞘に納める。
「あっ、ごめんごめん」
さやかの手にある大剣。
迫る使い魔をそれで切り裂くさやか。
さすがに疲れがきている面々だが、グリーフシードは徐々に減る。
戦える。
「ほむら! さやか!」
セラの大きな声が聞こえる。
大きなビルがほむらとさやかへと真っ直ぐと落ちてくる。
不味いと思った時には、すでに避けられる距離でもなかった。
―――ティロ・フィナーレ!
声と共に、ビルが爆散した。
粉々になったビルの破片が周囲へと落ちる。
ほむらとさやかの前に降り立つ。
「待たせちゃったわね」
そこに立つのは、間違いなく巴マミだ。
いつも通りの魔法少女姿。
だが、帽子が無く片方のロールがほどけていた。
残っている方のロールも、ロールと言えないぐらいストレートに戻っている。
アンバランスに残ったもう片方の髪留めを外しストレートの髪型になるマミ。
「お待たせ」
振り返ってそう言うマミの横に現れる杏子とセラ。
「遅いですマミ」
「ごめんなさいね」
なぜここにセラがいるか疑問に思わないのは、なんとなく察したからだろう。
吸血忍者たちが避難所を守ってくれているならば百人力だ。
マミが自分の持っている三つのグリーフシードを確認する。
周囲に配置される100を超えるマスケット銃。
「さぁ、舞台装置の魔女ワルプルギスの夜! この舞台の主役はこれより私が勤めましょう。おいでなさい!」
100を超えるマスケット銃が同時に撃鉄を鳴らす。
それと共に放たれる弾丸が、ワルプルギスの夜に直撃した。
「まだまだっ!!」
跳んだマミが、魔法で足場を作るとそこに着地して巨大なマスケット銃を召喚する。
「ティロ・フィナーレ・トゥラーヴェ!」
ビームが放たれて、ワルプルギスの夜が吹き飛ばされた。
街から離そうとするが、あの巨体はそう簡単には吹き飛んだりしない。
まだ浮いている。
「行くわ!」
ほむらがリモコンを出してボタンを押す。
見滝原の湖から放たれたミサイルがワルプルギスの夜に直撃し、爆発。
まだだ、セラが空を飛び、刀を木の葉へと変える。
木の葉でできた巨大な剣。
「スパーダ・エドゥ・キマーナ!」
マミが渡したメモ帳に書かれた必殺技の名前だ。
振り下ろされる剣に押されて、地へ落ちるワルプルギスの夜。
地上を走る杏子が、槍を真っ直ぐ構える。
「フレーム展開!」
槍の刃が二つに割れ、紅の魔力が巨大な刃を形作る。
「ロッソ・アルマ・フリオーゾ!」
それが、ワルプルギスの夜の体を貫いた。
杏子はワルプルギスの夜を貫き、その向こうのビルに着地する。
ゆっくり浮遊を始めるワルプルギスの夜相手に、青い流星が迫った。
「コラテラルエッジ!」
下から掬い上げるような斬撃。
さやかはすぐにワルプルギスの夜から離れる。
だがまだ終わらない。
マミが走っていた。魔法少女姿で、手にリボンを巻きつけて拳を握りしめる。
「900%ッ!」
再び地に落ちようとしているワルプルギスの夜を下から拳で撃つ。
衝撃と共に、ワルプルギスの夜は浮いた。
「ぐっ!」
くぐもった声を出すマミ。殴った方の右手の骨が砕けている。
即座に下がってワルプルギスの夜から距離を取るマミが、背後に大砲を召喚した。
その銃身に光が集まっていく。
「ボンバルダメント!」
巨大な銃から、放たれた砲撃。
吹き飛んだワルプルギスの夜。巨大な大砲が消えると、マミが跳ぶ。
マミがビルの上へと乗ると、他の四人も集まった。
五人の視線の先にいるワルプルギスの夜は浮遊して、身体をゆっくりと動かす。
それは、絶望。反転し、頭を真上に向けるワルプルギスの夜。
ほむらから聞いた情報によれば、本気モード。
「魔力もグリーフシードももうほとんどありませんよ!」
焦るようなさやかの声に、頷くマミ。
勝てない……勝てない……今から本気。
焦るほむら。
「ドゥーエ・ステルミナトーレ!」
巨大な二つの銃が現れ、同時に放たれる。
二つのビームがワルプルギスの夜へと直撃するが、ダメージがあるようには見えない。
実際はあるのだろう。けれどダメージを感じさせないほどの力なのだ。
「クッ」
それぞれ、一つずつ程度だろう。
マミは二つ。それでも勝てる気がしない。
ほむら、さやか、杏子、少し遅れてセラ。その四人でしばらく戦っていた。
ストックしていたグリーフシードは自分が三つ持って行ったとは言え、三人は十数個ずつほど持っていたはずだ。
それでも倒せないのだから、異常と言うほかあるまい。
自分が名づけた最大出力の攻撃を撃ったに違いない。
「私が……魔法少女になりましょうか?」
そんな言葉に、勢いよく振り返る五人。
居たのは、二人だ。サラスバティとまどかの二人。
おそらくサラスが運んできたのだろう。
だがそんなこと頭に入らないマミが、まどかの肩を掴む。
「貴女、今なんてっ……」
「わかってます。でも、みんなが死ぬくらいなら……今、私にできることは何もないから」
瞳に涙を浮かべながら、言う。
「何も、ない?」
ほむらがつぶやく。
「わかってるんです。頭では、私が魔法少女にならないことが私にできること……でもそれって結局なにもしてないんじゃないかって、心が納得できないんです!」
涙を流しながら叫ぶまどか。
足音が―――聞こえた。
涙を流すまどかも、マミさえもそちらを見る。
「……ヘルサイズ殿」
つぶやいたセラ。
なにも言わずに、その場から去るサラス。
現れたユウはマミの帽子をかぶっていた。
ユウはゆっくりとまどかへと歩を進める。
まどかの目の前で足を止めたユウは、メモ帳をしっかりと見せた。
『貴女にもやるべきことがいずれくる』
「でも……それでもっ……」
『今はマミを、みんなを信じて』
メモ帳に書かれた言葉に、まどかは戸惑いながらもマミを見る。
笑顔で頷くマミを見て、ほむらを見た。
「まどか、貴女を私に守らせて」
穏やかな表情でそう言うほむらを見てから、さやかたちの方に視線を移す。
「心配性だなぁまどかは!」
「さやかはともかくアタシたちはやれるっての!」
「任せてください。私たちに」
三人の言葉に、頷くまどか。
涙を流すまどかの頭を撫でると、マミはユウを見る。
笑顔を浮かべたマミに、ユウは相変わらず無言だ。
「お待たせしました」
声がした。巨大な何かが置かれるような音。
全員がそちらに目を向けると、そこには志筑仁美がいた。
「志筑!」
「仁美!?」
ほむらとさやかが驚くが、杏子は誰? と聞くのみ。
まどかとマミが苦笑している。
ユウはそっとメモ帳を持ち上げる。
「久しぶりですわユークリウッド様。さて、ワルプルギスの夜相手にここまでやっただけ十分でしょう」
驚いているほむらやさやかを無視して話を進める仁美。
今はそんな余裕が無いということだろう。
仁美の背後にある巨大な、機械。
「マミさんからの依頼もありましたが、まずはこちらを……その名も魔力吸引器」
なんだか危険装な機械だなあ、なんて思いながらもマミが苦笑している。
仁美の手には巨大な機械につながれた二つのヘルメット。
「さぁ、早くすましましょう」
笑顔で言う仁美に、マミは苦笑以外で応える術がなかった。
視線をユウに移すが、すでにヘルメットをかぶっているユウ。
やる気満々と言ったところか……なら、仕方あるまい。
マミも心良く引き受けることにした。
二人がその魔力吸引器とやらを使う間に、ほむらたちは時間稼ぎをするらしい。
どうやらあの機械自体まだ未完成のようで、志筑仁美がなんとか持ってきたもの。
中々どうして彼女にも世話をかけていたのだと、ほむらは苦笑した。
背中に装備している刀も、マミが彼女に頼んだものらしい。
気づかなかったが仁美も自分たちを支えていた仲間なのだろう。
「さぁ、いくわよ八咫烏!」
『ほむら、痛い』
杏子からのテレパシーに、顔をしかめる。
「……感染症なのかしら中二病って」
刀を抜き放ち、黒い刀身をもって使い魔を切り裂く。
片手に銃を持つと、さらに敵を撃っていった。
ワルプルギスの夜は先ほど吹き飛んだ場所から徐々に近づいてくる。
マミ達の方に飛んで行く遠距離攻撃はすべてさやかがなんとかしているだろう。
「行くわよ!」
「任せてください」
セラが返事と共に、巨大な刀を振り下ろす。
だが先ほどより強力になっているワルプルギスの夜は両手を上にあげてその攻撃を抑える。
ほむらは立ち止まると刀を鞘に納め、ロケットランチャーRPG-7を撃つ。
弾道がワルプルギスの夜の顔面に直撃すると、セラの刀を押さえる手の力が弱まった。
「はあぁぁぁっ!!」
振り下ろされた刀。それと共にワルプルギスの夜が地上に叩きつけられる。
相変わらず、笑い続けるワルプルギスの夜に苛立ちを覚えるほむら。
上空にいるセラから見るが、見えるのは砂煙だけだ。
砂煙が晴れると、そこから伸びる黒い鞭。それがセラを叩き、吹き飛ばす。
地上のほむらが叫ぶ。
「セラフィムさん!」
セラを吹き飛ばした鞭が三体ほどの使い魔へと変わる。
倒れているセラの元へと走ろうとしたが、今のワルプルギスの夜に背中を見せた瞬間、殺られる可能性もいなめない。
ワルプルギスの夜が砂煙の中から出てきたが、その瞬間、地面から現れた巨大な多節棍がワルプルギスの夜を高速する。
それは間違いなく、杏子。
「感謝するわ!」
『早くセラを助けろ!』
テレパシーで杏子の叱咤が飛ぶ。
ほむらがハンドガンをしまうと、両足に魔力を回して走る。
セラへと近づいたほむらが、背中の刀を抜いて他の使い魔をバラバラにした。
苦しそうな声を上げているセラを確認するほむら。
「す、すみません……ぐっ」
「無理しないで」
「無理しろバカ!」
叫び声が聞こえた。
背後を振り向くと、そこには杏子がいる。
視界に映る杏子の背中。そして、その前方には大量の使い魔たち。
勝てるわけがないと、覚悟を決める。
使い魔たちが束になってほむらたちを襲おうとした瞬間……。
―――巨大なビームが使い魔たちを殲滅した。
この攻撃は、考えることすらしなくてもわかる。
間違いない。この攻撃は間違いなく、彼女のものだ。
尻もちをつく杏子。青い光が、ほむらとセラと杏子を回復させていく。
そして、ほむらの視界に映るのは使い魔から自分たちを守るように立つマミと―――まどか。
「まど、か?」
つぶやくほむら。
マミがメモ帳を開いて文字を書くと、向けてくる。
『間一髪ってところね』
「もう大丈夫だよほむらちゃん」
その姿が、かつて自分を守ってくれた二人の少女と重なる。
涙があふれてくる。まどかは魔法少女になっていない。
悲しくないはずなのに、涙が止まらなかった。
『行くわよ鹿目さん』
まどかの足元に現れる文字。
頷いたまどかが、右手に弓を持っていた。
制服姿のまどかから、魔法少女である様子はうかがえない。
ほむらと杏子とセラの背後で三人を回復させているさやか。
「マミさんがね。まどかのために仁美にお願いしたの……」
そして、ほむらたちの足元にも文字が浮かぶ。
『ユウを縛り付けていた沈黙の誓いを、一時的に私に移したことにより私は無限と言っていいほどの魔力を手に入れたわ。魔力吸引器は仁美さんが自ら持ってきてくれたものなのだけれど』
少しだけ、間が空く。
『本当に私が頼んだのはまどかさんが私たちと共に戦える力』
「まどかに戦わせる? 何を考えているの巴さん!」
怒鳴るように言うほむらだが、振り返ったまどかがほほ笑む。
「私ね、うれしいんだ。ほむらちゃんが私に授けてくれたって言っても良いこの力……それで、みんなを守れる」
さらに、仁美とユウが現れた。
数々のことに協力してくれた仁美は、笑みを浮かべて全員の顔を見る。
満足そうに頷くと、ワルプルギスの夜へと視線を移す。
「この舞台の主演はすでに巴マミへと変わりました。鹿目まどかを殺すことはついでになるでしょうからあまり心配はいりません……さぁ、まどかさん、今こそ魔装少女へと!」
その言葉に、頷くまどか。
『魔装少女』というわからない単語で、混乱するほむらや杏子。
まどかの隣に立つマミはいつものような魔法少女衣装でありながら、いつもユウがつけているアーマーやガントレットを装備している。
反対にユウは装備していない。
ロールを解いている髪はほどかれていて、その長い金髪がユウと対となっていて、そのアーマーやガントレットをまた違う雰囲気に魅せた。
不思議な状況で色々な疑問を投げかけたいが、今はそんな状況じゃない。
襲い掛かる使い魔。だがマミが無言で片手を振る。
それだけで多くのリボンが目の前の使い魔たちを拘束していく。
聞きなれない声が聞こえた。
「魔装少女というのは、魔装錬器を使って戦う少女たちを言う」
聞きなれない声の正体は、ユウの声だ。
現在ユウの魔力はすべてマミの魔力へと変わった。
ならばこれも必然と言えば必然。
「今はこの程度のことしか言う時間は無いけど、とりあえず心配するようなシステムじゃない」
そんな言葉に、ほむらと杏子とサラスは戸惑いながら頷く。
さやかは何がなんだか、と三人の背後で苦笑していた。
まどかが、弓を持ち、眼をつむって―――言葉を紡ぐ。
「ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャ、デーリブラ!」
輝くまどか。程なくしておさまった光、そこに立つまどかは、ほむらの記憶にある魔法少女そのもの。
ピンク色の魔法少女、いや魔装少女としての衣装。弓矢を持つ彼女と銃を持つ彼女。
二人の少女の背中を見て、ほむらは戸惑う。
「まったく厄介なことをしてくれたね。志筑仁美」
現れたのは、キュゥべぇ。
「フフッ、私と貴方は所詮平行線。交わることのないひたすらな並行。なら……今更厄介もなにもないでしょう?」
キュゥべぇは何も言わず二人の背中を見た。
まどかとマミの二人が、自らの武器を構える。
鹿目まどかの手に現れる桜色の矢。
マミの手に現れるマスケット銃。
二つの武器が音を立ててその『力』を―――撃ちだす。
あとがき
そう、今復活の魔法少女!
まどかが変身しました
一応細かい設定も考えてありますが出る場所があるかどうかw
とりあえず最終決戦は続きます!
では、次回をお楽しみに♪
感想お待ちしてます!