ロウきゅーぶ ~表裏一体の6人目~   作:打ち上げ花火

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さて、いよいよ問題のバスケ描写のある話です。
楽しんでいただけたらうれしいです。


03. 1on1

~~ ガールズトーク ~~

 

 

まほまほ「さあて、どっちが勝つのかな」

 

湊 智花「入部テストってことなら、私が勝ったら東雲さんは入れないの?」

 

まほまほ「なんで? 勝敗なんてどっちでもいいじゃん」

 

紗季  「それなら入部テストなんてする意味ないじゃない」

 

あいり 「真帆ちゃん、もしかして入部テストって言いたかっただけ?」

 

まほまほ「入部テストってなんかカッコイイイじゃん。先輩気分、みたいな?」

 

紗季  「全く、あんたは。……まぁ、東雲さんがあの『東雲さん』ならトモとの勝

     負は面白くなりそうだし別にいいけど」

 

ひなた 「おー? さきはゆきとお知り合い?」

 

紗季  「知り合いって訳じゃないけど心当たりはあるって感じかな」

 

 

 

 

 

 まだ体育館の行き方まで覚えていない僕は、みんなの後について移動していた。程なくして体育館についたけども、僕はすっかり油断していた。

 先頭を歩く三沢さんが、ガチャとドアを開けてある部屋に入っていく。1番最後にその部屋に入った僕がドアを閉める。

 

「なっ?! ここは」

 

 振り向いてから、ここがどういう部屋か気付く。周りには服が畳まずにそのままかけられるサイズのロッカーが何列も並べられている。考えてみれば当たり前のことだった。これからバスケをするんだから、まずは着替えをするのが当然だ。

 みんなはどうやら、いつも使っているロッカーがあるらしく他の空いているロッカーを素通りしていく。

 

「ん? どうしたの? あたしたちがいつも使ってるのはこっちだよ?」

 

 入口で突っ立ったままの僕に気付いた三沢さんが、手招きで呼んでくれるけどもついて行けるわけがない。ついていけばそのままみんなの着替えを…………。

 

「ご、ごめん。ちょっとトイレ行ってくる」

 

 危うくいけない想像をしてしまいそうになって、慌ててそう言って部屋を出る。閉じたドアの上を見てみるとしっかりと『女子更衣室』と書かれたプレートがあった。

 幸い僕たち以外に着替えている人がいなくてよかった。ホントに……。

 

 

 トイレは更衣室に行くまでに前を通ったので場所はわかっていた。けども……。

 

「誰もいませんか~?」

 

 一難去ってまた一難。

 更衣室がダメならトイレで、と思ったけども今の僕は女の子。つまり、使うトイレも『女子トイレ』。当然、すんなり入れる訳もなく小さな声で誰もいないことを確認しながら恐る恐る入っていく。

 

「おー? ゆきはどうして入らない?」

「うわっ!」

 

 突然背後から声をかけられ、すごくびっくりしてしまう。振り向いてみると、しっかりと体操服に着替えた袴田さんが不思議そうに首を傾げていた。

 袴田さんが着替えてここにいるってことは、僕はそんなに長い間トイレの前で中の様子を探っていたんだろうか。だとしたら、傍から見たら完全に変質者じゃないか。まあ実際、女装中なんだからあながち間違ってもないかもしれないけど。

 自分で考えていて落ち込みそうになったので、袴田さんの着替えが早かったと思うことにしよう。

 

「いや、ちょっと入りづらくって。……悪いんだけど袴田さん、中に誰もいないか見てきてくれないかな?」

「お安い御用~」

 

 そう言って、タタタと袴田さんは女子トイレに入っていってくれた。数分もしないうちに出てきた袴田さんは、僕の前まで来るとなぜかビシッと敬礼をしてくる。

 

「たいちょう~、なかにせいぞんしゃはいないであります」

「フフ、……ご苦労さま。みんなのところに戻って良いよ」

 

 袴田さんはご了解~と言って、また更衣室の方に戻っていった。はて? 袴田さんは一体なにしにトイレにきたんだろう?

 袴田さんの行動を不思議に思いつつも、ひとまずは着替えが先だと気付き、急いでトイレに入って着替えを済ます。そして、体育館に戻るとすでに全員が僕を待っている状態だった。

 

「遅いぞ~。待ちくたびれちゃったよ」

「ごめんごめん」

 

 少しご機嫌斜めの三沢さんに謝りながら、みんなに近づいていく。

 

「で、1on1のルールはどうするのかな?」

 

 湊さん以外の4人はお互いに顔を見合わせた後、1度うなずいてから一斉に湊さんの方を見た。

 

「え、えーと。じゃあ、サドンデス方式で自分のシュートを決めて、次の相手のシュートを止められたら勝ちってことでどうかな?」

「じゃあ、それでいこ。いい?」

 

 視線を集めた湊さんは、戸惑いながらも一般的な1on1のルールを提案して、それを引き継ぐ形で三沢さんが僕に聞いてくる。

 まぁ僕もそれで良かったから特に文句もなく、ジャンケンの結果、僕が先攻で湊さんが後攻に決まった。

 

「じゃあ行くとしますか」

 

 それぞれ軽くウォームアップを済まし、パスの受け渡しをして、いよいよ僕の入部テストを兼ねた湊さんとの1on1が始まった。

 ボールを受け取ると、まずはゆっくりとしたペースでドリブルをしながら湊さんとの距離を詰めて行く。対する湊さんも、すぐさま仕掛けてこないで僕を待つ構えだ。

 

「ふっ!」

 

 湊さんの間合いまであと1歩というところで、手元にボールがくるタイミングで体をグッと沈め、左にドライブを仕掛ける。もちろんその程度で抜ける訳もなく、しっかりと進路を防がれてしまう。勢いを殺さず、さらに左に抜こうと一歩を踏み出す。

 

「っ?!」

 

 と、見せかけて踏み出した右足を軸にバックターン。湊さんの息を飲む気配を背後で感じながら、ボールを右手に持ち替えてゴールへ向かう。けど敵もさるものながら遅れたのは一瞬だけで、すぐに僕に並走する形で追いついてくる。

 3秒ルールが適用されるエリアに入ったところで急停止して、すぐさまシュートを打つべくジャンプする。湊さんも少し遅れてブロックのためにジャンプをしてくる。

 

「え?」

 

 結果として、僕のシュートは決まった。ブロックのタイミングは少し遅かったと言っても、普通なら止められてもおかしくないにもかかわらず、だ。

 

「なんか、今のユッキーのシュート変じゃなかった?」

「確かに。……どこが、とは言えないけどなにか違和感があったわね」

 

 さすがに初心者らしいメンバーには、僕がさっき何をしたのかはわからなかったらしい。けど、目の前にいる相手はきっと気付いてるだろうな。

 

「じゃあ、今度は私の番だね」

 

 ボールを持ってスタート位置についた湊さんは、さっきのディフェンスの時よりも険しい目つきになっていた。どうやらさっきのプレーで、湊さんのやる気に火をつけてしまったみたいだ。

 

「行きます!」

 

 湊さんはパスの受け渡し直後、様子見などせずにいきなり突っ込んできた。そのスピードに慌ててコースを塞ぐと、湊さんは目の前でいきなりスピードを緩めてくる。

 これにタイミングをずらされながらもスティールを狙う。けど、なんなくかわされ逆にこっちの体勢を崩してしまった。湊さんにはそれだけで致命的で、その隙に再び加速され脇を抜けられてしまう。なんとか追いすがるけどもゴール下まで行ったところでシュートモーションに入られる。

 

「このやろっ」

 

 間に合わないだろうと思いつつもブロックに行った僕は、そこで湊さんのシュートを見た。

 

 迷いなくゴールを見据えるまなざし

 

 流れるようなモーション

 

 まるで教科書の手本のようなフォーム

 

 一連の動作の完成度に驚きを隠せなかった。一体どれほどの練習をすれば、あんな綺麗なシュートを打てるようになれるんだろう。何千、いや何万回か。

 そんなシュートが外れるわけもなく、リングにすら当たらずにネットを揺らした。

 

「さすが智花ちゃんだね」

「おー、さすが智花。でも、智花の本気久しぶりに見た」

 

 それにしても、湊さんの実力は想像以上だ。でも、僕もこのまますんなりと負けるほど弱いつもりはない。

 

「じゃあ、第2ラウンドと行こうか」

 

 ニヤリと笑い、俺の悪い癖の負けず嫌いが発揮される。自分より強い相手との対決はやっぱり楽しいと思ってしまうのだ。姉さんたちにバスケバカと言われる由縁だ。

 

「今度も決めるよ」

「止めてみせる」

 

 挑戦的な僕のセリフに、湊さんは真剣な表情で返してくる。

 そうして始めた第2ラウンド。何回もフェイントをかけるも湊さんを抜くことができなかった。けど、なんとかシュートレンジまでこれたのでマークを振り切れなていないけど強引にシュートにいく。

 

「今度はいかせない」

 

 さっきの僕のシュート対策をやりつつ、湊さんがブロックにくる。でも、それはこっちの思い通りなんだ!

 

「っ!」

 

 湊さんが息を飲むのがわかる。狙い通りの展開に僕は湊さんのブロックをかわし、シュートを決めることに成功した。

 

「おー、また決めた。やるな、ユッキー」

「トモと互角なんてすごいわね」

 

 三沢さん達が褒めてくれているのを聞きつつ、ネットをくぐって転がっていたボールを湊さんに渡す。

 

「これでひとまず、僕のリードだね」

「負けません」

 

 ちょっと挑発気味に言った僕のセリフは効果抜群だったようで、湊さんにさらに気合いが入ったのがわかった。そんな湊さんのオフェンスは、さっきより鋭さを増していてあっけなくシュートを決められてしまう。

 

 

 

 その後も、シュートを決めて決められてを繰り返した。そして、決着がついたのは5回目の時で、僕のオフェンスが止められて湊さんのオフェンスが決まった時だった。




読んでいただきありがとうございます。
悪い点でも構わないので、感想をもらえたらうれしいです。
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