では、楽しんでもらえたらうれしいです。
~~ ガールズトーク ~~
まほまほ「やー、いいしょうぶだった」
紗季 「ホントにね。一進一退だったわね」
あいり 「でも、やっぱり勝っちゃう智花ちゃんはすごいんだね」
ひなた 「おー。ともか、さすが」
湊 智花「そんなことないよ~。東雲さんもすごく上手だったよ」
まほまほ「しののめさんもだって。てことはもっかん、じぶんがうまいって
みとめてるんだ」
湊 智花「も~、真帆ってば~」
「ユッキー、お疲れ~。もっかんといい勝負なんてすごいね~」
入部テストの勝負がついて座って一息ついていると、三沢さんが話しかけてきた。後ろには他のメンバーも一緒だ。
「やった本人としては、全然いい勝負じゃなかったんどけどね。湊さんはホントすごいよ」
「ふぇっ、そんなことないよ~。東雲さんだって、あんなシュート打ててすごいよ」
僕がさっきまで勝負していた湊さんのことを褒めると、当の湊さんは恥ずかしがってしまった。
「そう、それっ! なんか変な感じはしたけど、なにしてたの?」
「それ? ……あぁ、シュートのこと?」
僕たちの話を聞いていた三沢さんが変なところに喰いついてきた。まぁ、隠すようなことじゃないから話すのは全然構わないかな。
「あれは簡単に言うと、シュートのタイミングをずらしてたんだよ」
「???」
説明しても首をひねっている三沢さんはどうやらわからなかったらしい。同じように香椎さん、袴田さんも不思議そうにしている。永塚さんだけは、ポンと手を打っているので理解できたみたいだ。
「つまり、普通のシュートはジャンプしたら1番上で打つんだけど、僕は上がりきる前に打ったり、逆に落ち始めてから打ったりして湊さんのブロックをかわしてたってこと」
「なるほど!」
この説明でようやくわかったようで三沢さんの顔がパッと明るくなる。
「ねぇねぇ、それってすごい技? もっかんもできる?」
すると、間髪いれずに僕と湊さんに質問が飛んできた。
「えーと、私にもできないことはないけど、あんなに精度よくは無理だと思うな」
「技自体はそんなにすごい技じゃないと思うよ?」
そうなんだ~と納得した感じの三沢さんに、湊さんが技の補足説明をしてくれる。
「でも実際にやろうとしたら、バランス感覚や高いジャンプ力に、なによりパワーが必要だよ。それこそ男の子みたいな、ね」
「っ?! あ、あはは…………」
実際男なんで、なんて思っていても言えるわけないよね~。
「それに、東雲さんはそのシュートを活かすために中々正面からブロックさせてくれなかったから大変だったよ」
「それも高さに差がありすぎるとあんまり意味がないけどね。香椎さんくらい背が「あああああっ!!」」
何気なく言った僕のセリフは、全部言いきる前にみんなの叫び声にかき消されてしまった。いきなりでびっくりしたけども、この叫び声の意味はすぐにわかることになった。
「うぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
みんなの叫び声の直後に、体育館中に泣き声が突如として響き渡る。その泣き声の元は香椎さんだった。
「ふぇぇ、えぐ。や、やっぱり私……」
「だ、大丈夫だよ、アイリーン。ユッキーはちょっと言い間違っただけだって」
顔を手で隠して泣いてしまった香椎さんをみんなが励ましている。急な展開についていけない僕は、呆然と立ち尽すしかなかった。
「で、でも、私の名前のあとに背がって」
「ち、ちがうよ愛莉。東雲さんは…………そう! セガサターンって言おうとしてたんだよ」
え~~、湊さんそれはどうかと思うよ。
湊さんの言い訳に思わずツッコミを入れてしまいたくなるけども、グッと堪える。見れば、三沢さんや永塚さんも何か言いたそうにしていた。
「な、なんだ。私の勘違いか~」
「おー、そうだよ。あいりの勘違い」
なぜかそれで納得して泣きやむ香椎さん。いろいろあって混乱している僕に、永塚さんが小声でこっそりと話しかけてきた。
「実は愛莉は身長のことがすごいコンプレックスで、ちょっとでも背のことに触れられるとさっきみたいに泣いちゃうのよ」
「やっぱり、バスケするのに愛莉の身長が気になるのは当然だよね。私も先に言っておけばよかったね」
香椎さんをなだめるのを三沢さん達に任せてきた湊さんは、責任を感じてシュンとしてしまっていた。
「そんな、湊さんは気にすることないよ。やっぱり、言っちゃった僕が悪いんだし」
きっとすごくからかわれたりしてコンプレックスになっちゃったんだろうな。この分だと、香椎さんのもう1つの大きな『もの』についても触れない方がよさそうだね。まぁ、僕にその部分に触れるような会話は無理だろうけど……。
「そういえば、ユッキーはその技は誰かに教えてもらったの? それとも独学?」
香椎さんが泣きやんで、しばらくしてから改めて三沢さんが話しかけてきた。
「まぁ、これは姉さん達に対抗するために練習したからね。独学……かな」
そう言ってごまかす僕の顔は苦笑いだ。すると、今度は永塚さんが前にでてきた。
「もしかしてそのお姉さんって、中等部2年の東雲 美紀さん?」
「そうだけど、ミキ姉を知ってるの?」
思わぬ質問がきたので、今度は僕の方が首をかしげて質問を返してしまう。
「結構有名人のはずよ。1年でバスケ部のレギュラーになったって」
そういえば、そんなことを家で自慢していたような記憶がある。適当に聞き流してたら怒られたっけ。
「紗季ちゃんの心当たりって、そのことだったんだね」
「そうよ。東雲なんて珍しい名字だし、もし姉妹なら妹さんの方もバスケやるなら上手かなってね」
やっぱり『姉妹』や『妹』なんかの単語ってすごい違和感だな~。まるで自分のことを言ってる感じがしない。まぁ、当然なんだけどだんだん慣れていくしかないのかな。
そんな風に考えながら香椎さん達の話を聞いていると、またもや三沢さんが詰め寄ってきた。
「お姉さん『達』ってことは他にもいるの?」
「あと1人、高校1年の姉がいるよ。自己紹介の時にも2人、姉がいるって言ったはずだけど?」
覚えてない、なんて胸を張って言う三沢さんは、ほっとくとさらに質問をしてきそうな雰囲気だ。これ以上いろいろ質問されるのも疲れるのでこっちから話題を変えることにしようかな。
「ところで、入部テストに負けたってことは入部は取り消しになるのかな?」
今回のことで1番重要なことを聞いたはずなのに、僕の質問を聞いた三沢さんはキョトンとした顔を見せた。
「何言ってんの? そんなの入部OKに決まってんじゃん」
何を今さら、みたいに言われてもこっちが困ってしまう。だってそういう話じゃなかったっけ?
そんな僕を見かねて、永塚さんが困った顔をしながらフォローを入れてくれた。
「つまり、さっきのは入部テストって言うより実力テストって感じだったってことよ。ぶっちゃけ、勝敗はどっちでも良かったのよ」
それならそうと早く言って欲しかったところだ。いや、この場合は『早く』じゃなくて『正しく』の方が正解かな。
「まあ、経験者ってだけで私たちより上手いのは確実なんだから実力テストもやる必要はなかったんだけどね。全部このアホの思いつきよ」
「別にいいじゃん。みんな反対しなかったんだし、おもしろかったんだからさ」
アホと言われた三沢さんは、口を尖らせてブーブー文句を言っていた。そのまま永塚さんと三沢さんが言い合いを始めてしまったので少し距離をとると、トテトテと袴田さんがこっちに近づいてきた。後ろには香椎さんも一緒だ。
「おー。ユキはもうお仲間さん」
「そ、そうだね。東雲さん、仲良くしてね」
最初に袴田さんが、続いて香椎さんが新しく一員になった僕にわざわざ挨拶をしてくれた。
「こっちこそよろしく、袴田さん、香椎さん」
慌てて返すと、なぜか袴田さんは頬を膨らませてあからさまに怒っている顔になってしまう。
「ぶー、ひなはひなた。友達はみんなそう呼ぶよ」
「私も愛莉でいいよ」
本人から許しをもらったので名前で呼びなおすと、ひなたの機嫌は直ったみたいだ。そんな話をしていると、湊さんも近づいてきた。
「改めて、よろしくね東雲さん。私も智花って呼んでね」
「よろしく、智花。次は負けないから」
私だって負けないよ、と返され笑い合っていると、それが聞こえたらしい三沢さんが言い合いを止めてこっちに飛んできた。
「あー! ズルい、もっかんたちだけ名前で呼んでもらって。あたしも真帆でいいから。なんならあだ名も大歓迎!!」
真帆のあだ名か~、まほっち、まほりん、まーちゃん、…………いいのが思いつかないな。
「う~ん、普通に真帆にしておくよ」
「全く、あだ名なんてあんたくらいしか使ってないじゃない。あ、私も紗季でいいわよ」
紗季も集まってきて全員が揃ったのでちゃんと挨拶しておこうと思い、みんなに向き合う形に移動して背筋を伸ばす。
「じゃあ、改めて。智花、真帆、紗季、ひなた、愛莉、今日からよろしくお願いします。僕のこともユキって呼んでくれていいよ」
僕がきちんとした挨拶をすると、みんな笑顔になって拍手をしてくれた。
こうして、めでたく僕は慧心女子バスケットボール部に入部を決めた。この後に厄介事が待ち構えているとは露にも思わず……。
読んでいただきありがとうございます。
ところで、3話で出した由紀のタイミングをずらすシュートなんですが、名前を知っている方がいたら是非教えてください。ググってもわからなかったので……。