またバスケ回ですが、前回よりも詳しく描写したつもりです。
それでは、どうぞ。
~~ 交換日記(SNS) ~~
まほまほ「きょう、めでたくにゅうぶしたユッキーでーす」
ユッキー「こんばんわ、こっちでもよろしく」
紗季 「アドレス、真帆に教えてもらったのね」
湊 智花「気軽に話してね」
あいり 「みんなで楽しくおしゃべりしようね」
ひなた 「おー、ユキもきてくれてうれしい」
ユッキー「ありがとう。ていうか、真帆っ! みんなのハンネ、普通に名前じゃ
ないか! 真帆がみんなあだ名だっていうから僕もそうしたのに」
まほまほ「いいじゃん。はやくなじめるように、いきなはからいってやつ」
慧心学園小等部には男バスと女バスがあって、女バスが月・水・金、男バスが火・木・土に放課後の体育館を使って練習をしている。始業式の日は月曜日で女バスの練習日だったので、智花との1on1ができたというわけだ。
そして2日後の今日はまた、女バスの練習日なので着替えて(もちろん、僕はトイレで)コートに集合している状態だ。
「じゃあ練習しようか。メニューってどんな感じなの?」
ウォームアップを済ませてみんなを見渡しながら聞いてみると、なぜか智花は気まずそうな顔になり、反対に真帆の顔はニコッと楽しそうに変わる。
「そ、それは……」
「試合だよ、試合。ユッキーが増えたから、3対3でできるもんね」
いきなり試合とは、基礎練習はナシなんだろうか?
「初めのころはちゃんとやってたんだけどね。だんだん試合ばっかりやるようになっちゃって」
「だって、その方が楽しいじゃん」
智花が苦笑いで説明している横で、真帆はすでにボールを持ってやる気マンマンだ。
まあどうせ披露する時なんてないんだから、みんなが楽しいと思うようにやった方がいいのかもね。きっと智花もそう考えてるから、何も言わないんだろうし。
「じゃあ、3on3でいいよ。チーム分けはどうする?」
僕が試合をするのに賛成すると、智花はホッとした顔になった。基礎練習をしないなんて、って怒るとか思ってたんだろうな。
「まあ、トモと由紀が別のチームなのは確実ね。他はジャンケンで決めましょう」
そうして、4人のジャンケンの結果は僕のチームに紗季とひなた、智花のチームに真帆と愛莉に決まった。
「よっしゃー、やるぞー。もっかん、アイリーン、じゃんじゃんあたしにボール回してよね。バシバシ決めるから」
真帆がガッツポーズしながら2人に声をかけている。
「ふふふ、了解。バンバン回すから決めちゃってね」
「わ、私も回すからよろしくね」
2人が真帆に答えているのを聞きながら、思ったことがあったので隣の紗季に小声で聞いてみることにした。
「ねえ、紗季。真帆ってそんなにうまいの?」
「そんなわけないじゃない。あれはただの目立ちたがりよ」
僕の質問に呆れた様子で答える紗季。あんなに自信満々に言うから素人っていうのはウソで、実は上手かったりするのかと思った。ちょっと残念かな。
「それに紗季のそれ、アイガード? ずいぶん本格的なもの持ってるんだね」
「あぁ、これは成り行きでね」
紗季は昨日は自分が動くわけじゃないからつけてなかったのか、今日はメガネのかわりに高価そうなアイガードをつけていた。それについて聞いてみるも、よくわからない返答だった。
「まぁ、こっちはこっちで頑張ろうか。2人ともよろしく」
気持ちを切り替えて、チームの2人に話しかける。すると、すぐに返事が返ってきた。
「おー、こっちこそよろしく」
「頼りにしてるわよ」
ひなたと紗季から返事がきたところで、もう1つ聞いておかなきゃいけないことがあるのに気付く。
「そういえば、みんなってどこまでルール知ってるの?」
「ダブルドリブルやトラベリングなんかの簡単なものなら知ってるわよ」
それなら3on3をするのに支障はなさそうだ。この試合でみんなの実力がどんなものか見てみようかな。
「3on3では相手からボールを取ったら一旦ハーフラインまで戻ってから攻撃になるからね。じゃあ、そっちの攻撃からはじめよっか」
智花にボールを渡し、ディフェンスにつく。
「紗季は真帆、ひなたは愛莉を担当して、僕は智花を相手するから」
それぞれのマッチアップの相手を指示すると返事はすぐに返ってきた。
「了解」
「おー、わかった」
そして、いよいよ3on3が始まる。さて、みんなのお手並み拝見といきますか。
「真帆っ」
ハーフラインに立っている智花とボールの受け渡しを行うと、智花は少しドリブルをして真帆にパスをだした。
「まかしとけ」
「いかせないわよ」
真帆にパスが渡ると、予定通り紗季がマッチアップにつく。フリースローラインより若干外の位置でパスを受けたので、紗季を抜くべくドリブルをする真帆。
まあそこは素人らしい感じの、べったんべったんとしたドリブルなのは予想通りだ。紗季も懸命にディフェンスをして真帆をコートの端に追い詰めていく。紗季は初心者だという割に、上手く真帆を追いつめていた。
「くそー、アイリーン」
追い詰められた真帆はコートの反対側にいる愛莉にパスをだす。
「あう」
苦し紛れのパスは愛莉には強すぎたらしく、パスをうまく受け取れなかった。パスミスの原因はパスの強さだけじゃなく、愛莉がびっくりしすぎていたこともありそうだったけど。
ルーズボールはひなたがとったので、今度はこっちのオフェンスに交代だ。
「じゃあ今度はこっちの番だね」
さっきとは逆になって、智花とボールの受け渡しをやってオフェンスをスタートさせる。みんなの実力を見るのが目的なので、まずは紗季にパスをしてみる。
「紗季っ」
「まかして」
無事パスを受け取り、ちょうどゴール下にいるひなたに向けてすぐパスを出す。
ワンバウンドさせ受け取りやすくしてくれたパスを体全体で受けたひなたは、愛莉が少し離れていたので両手で押し出すようにシュートを放つ。
2、3度リングに当たって危なっかしくもネットを揺らすことができた。
「ナイッシュー」
「おー。やったー」
無事シュートを決めたひなたと紗季がハイタッチを交わす。
「くそー、今度はこっちの番だよね?最終兵器もっかん、やっておしまい」
「もう真帆ってば」
最終兵器と呼ばれて照れている智花。というか始まって数分で最終兵器が投入されるってどうなんだろう?
けど、そっちがその気なら……
「智花、今度は止めるよ」
「負けないよ」
ハーフラインに立った智花にそう告げる。
さて、そう言ったものの正直止められるかは不安なところだ。
智花とボールを受け渡しをして気を引き締める。今度はドリブルで抜こうという気満々な感じで対峙するので、抜かせまいとしっかりと腰を落としてそなえる。
しばらく、ダンっダンっと様子を見る感じでドリブルをしてキッと表情を変える智花。
「行きます」
そう宣言して閃光のようなスピードでドライブを仕掛けてくる。
「くっ」
間一髪で止めることに成功したが、内心冷や汗をかいて余裕なんて吹き飛んでしまった。すぐさま体勢を立て直そうとする智花に、そのスキをつこうとスティールを仕掛ける。なんなくかわされ、逆にこちらの体勢が崩れたのを好機に抜きにかかってくる。
なんとか体勢が崩れるのをふんばり、フリースローラインに沿って智花と並走する形になった。けど、ラインの半分くらいのところで智花が急制動をかける。
完全に虚をつかれ止まるのが若干遅れた。
「なっ」
智花にはそのちょっとの遅れも致命的で、すぐシュートモーションに入ってしまう。
「よしっ!」
智花の放ったシュートはシュッと音を立ててネットを揺らした。
「ナイス、もっかん」
「す、すごいね、智花ちゃん」
真帆たちに褒められて照れている智花。昨日も思ったけどやっぱり智花の実力はすごい。
「智花ってどっかの有名チームのエースやってたことがあったりしない?」
「そ、そんなことないよー」
思わずそんなことを聞いてみたくなるほど、智花の実力は小学生の域を抜きんでている。
「じゃあ今度はこっちの番やな」
智花にボールを渡してもらい、ハーフラインに立つ。本日4度目となる受け渡しを行い、オフェンスを開始する。
僕に智花が見せたほどのドライブで抜き去るなんてことは無理なので、フェイントを混ぜてドリブルでゴールに近づくしかない。けど智花はディフェンスもうまく、僕のフェイントに、時折引っかかるけどすぐ体勢を持ち直してプレッシャーをかけてくる。
逆にこっちが体勢を崩せば、即座にスティールを狙ってくるので1秒たりとも気を抜けない。
このままではジリ貧なのは確実なので勝負にでることを決める。
まず、ボールと智花の間に自分の体を置くような感じで、ほぼ真右と言っていいほどの向きでドリブルをする。これには智花も一瞬驚いていたが、すぐ気持ちを切り替えて追いついてきた。
しかしここで、智花が追いついたのを見計らって仕掛ける。
「えっ」
今まで右に向かってドリブルをしていたのを急に反転させる。ただそれだけなら智花は余裕で着いてくるだろう。
けどその時、右手でドリブルをしていたのを左手に変え、智花に背を向け続けている格好でドリブルの向きをゴールの方へ90°変える。
智花からは一瞬ボールが見えなくなり、完全に抜き去る形になる。
「おいおい」
しかし、智花も一筋縄ではいかない。完全に抜いたはずなのにゴール下まで行く前に追いつかれてしまった。僕は、フリースローラインより若干内側に入ったところで止められてしまう。
本来ならここでまた智花のチェックをかわすための作戦を考えなければならないが、僕はかまわずシュートを放つ。
智花が懸命に手を伸ばしジャンプするが残念ながら(それでもギリギリだった)ボールには届かず、そのままボールはネットを揺らした。
ボールがコートにバウンドしているのを、乱れた呼吸を整えながら見ていた。周りがやけに静かなのに気付くのには、呼吸が落ち着くくらいまでかかった。
そして、ふいに静寂は破られる。
「やっぱりユッキーも上手いじゃん」
「でも今はチームなんだし、最初みたいにパスしてくれてもよかったのに」
紗季に言われて、さっきのはワンマンプレーすぎたのに気付く。ちょっと頭に血がのぼりすぎっちゃったな。気をつけないと。
それからは、ちゃんと紗季たちにもパスをだしたり、時には智花と一騎打ちになったりしながら3on3を時間がくるまで続けていった。
そんな中で思ったことが1つ。それは智花はこのメンバーでバスケをするのが楽しいのか、ということだ。
明らかに智花と真帆たちのレベルに差がありすぎる。あそこまでになるほどの練習をしてきた智花が、こんな遊びみたいな部活で満足しているのかが気になったのだ。
まぁそういう僕も、これはこれで楽しいと思っているんだからそういうこともあるんだろう、と思うことにした。
けど、その事情を知る機会は意外と早くに訪れることになる。女バスの運命を変える出来事と一緒に…………。
読んでいただきありがとうございます。
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