踏み台やらされそうになりましたが、割となんとかなりました。   作:街をさまよい歩く亡霊

10 / 16
いつの間にかバーが黄色になってました。
ありがとうございます!


ジュエルシード探します。

 

『Master……』

「ん……」

 

 誰かが俺に話しかけている。この声と呼び方は、イブだろう。

 

ーー寝かせてくれ……

 

 そう思い、再び体を襲う睡魔に身を任せようとする。

 

『Master』

「……」

『Get up! Master!』

「……はっ」

 

 イブの大きな声によって、体を襲っていた眠気が吹き飛び、意識を明確に取り戻す。

 

 そして、今がどんな状況かも思い出した。

 

 慌てて準備をしようとして、既に時遅しであると察し、諦める。

 

「東雲くん?」

「はい」

「何をしていましたか?」

「人間の三大欲求の一つに負けてました」

 

 今は学校の授業中。昨晩、慣れない夜更かしをしたためか、遅刻ギリギリまで寝ても疲れが完全にはとれなかった。

 

 その結果、授業中常に睡魔に襲われていたのだが、いつの間にか、負けてしまっていたらしい。

 

「はあ……清々しいぐらいの開き直りですね」

「言い訳しても無駄でしょうから」

「わかっているなら、寝ないでください」

「努力します」

「そこは、了承しなさい」

 

 また寝ないとは限らないので、了承はしかねている。

 

 了承して、次寝た時が、非常に恐ろしいから。

 

『Master……』

 

 イブが、「私、起こしましたよ?」と言ってるような気がして、とても心が痛かった。

 

 

 

 その後、何度か眠気に負けそうになるものの、なんとかその授業中は寝ないで済んだ。

 

 だが、正直もう限界に近い。今日だけ、魔法で誤魔化せないか……

 

『No.』

 

 だよな。てか、主人を拒否するデバイスなんて、いないと思うんだが……

 

I am me.(私は私ですから)

 

 そうか、知ってたよ。設計したの俺だからな。

 

 デバイスなしで魔法は使えなくもないが、その場合、魔法を使ったことが2人にバレるだろう。

 

 バレずに使えるイブは拒否。

 

ーー詰んだ。

 

 こんなことを考えている間にも、眠気は強くなる一方。ついに、マルチタスク使えば眠気半分にならねえかな、とか考えはじめてしまう。

 

ーーしょうがない、休み時間だけでも寝て、少しでも体力回復しよう。

 

 そう思い、机に突っ伏していた時。あの2人(勘違いズ)とは違う、不安定な魔力が近づいてくるのを感じた。

 

「零くん、ちょっといいかな?」

「……」

 

 なんで、よりによってこのタイミングなんだ、高町……寝たふりで切り抜けよう。

 

「零くん……寝てるの?」

「……」

「ねえ、零くんてば」

「もういいわよ、なのは。寝てるやつなんて、ほっときなさい」

 

 ナイスだ、えっと、多分高町と話してた金髪の方……確か、先生からバニングスと呼ばれてたな。

 

 その声に、少し迷ったように「う、うん」と、応えて、ゆっくり元の場所に戻っていった。

 

 やっと寝られる、と、気を抜いたその時、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

 

 ……がんばれなさそうだ。

 

 

 

 案の定、板書が止まり、先生が世間話をし始めた途端に、気が抜けて寝落ちしてしまった。

 

 だが、それでも注意はされなかった。周りに漂う魔力素の微かな変化から察するに、イブがなんとかしてくれたのだろう。

 

ーーありがとな、イブ。

 

 イブに届かないように心の中で、お礼を言っておく。

 

 お礼を言ったとしても、『what?(なんのことですか?)』と、とぼけられるのが分かっているから。

 

 だが、何もしないのもしのびないので、首にかけてあるイブを軽く撫でる。

 

 

 さて、時は昼休み。場所は教室から中庭へ。もちろん、昼食を取りに、というわけではなく、昨晩イブが特定したジュエルシードの一つが、学校にあるので、回収しに来ている。

 

「学校なのはわかるんだが……何処にある?」

 

 いかんせん、ジュエルシードは小さいから、草むらに入っていると、それだけで探すのは、苦労するだろう。

 

「イブ、どうだ?」

No reaction(反応なしです).』

「そうか」

 

 イブが、正確に魔力反応を捉えるのは、イブを中心に半径50mまで。

 逆に言えば、半径50mまでなら、どんなに小さい魔力でも、反応を逃さない。

 

 ちなみに、精度は落ちるが、イブの最大魔力探知範囲は、半径2000m……つまり、2kmまで探知できる。

 そこまで探知範囲が大きくなると、小さい魔力は反応しなくなるが。

 

 そのイブが、反応を捉えられないということは、この辺りには無いのだろう。

 

「他を探すか」

「何を探してるの?」

「……高町、後ろから話しかけるのはやめてくれ」

 

 というか、いつ近づいた?イブが反応を逃すなんて……ああ、探知魔力を限定してたのか。俺は考え事してたし……狙って近づいたわけでは無いとはいえ、高町、侮れないな。

 

「にゃはは、ごめんね」

「別にいい。高町は、友達と弁当食べてたんじゃ無いのか?」

「今日は零くんと食べようかなって、思ったんだけど、何か探し物?」

 

 なぜ俺となんだ……別に仲良いわけでも無いだろうに。

 

 それより、高町か……一番見つかりたくないやつに見つかってしまった。

 探すのに魔法を使いたかったのだが、一般人がいると使えない。

 

 いっそのこと高町に魔法を教えることも考えたが、ジュエルシードが街に散らばっている今、魔法を教えるのは危ないだろう。

 

「いや、特に探し物はしてない」

「ウソはダメだよ」

「本当だ」

「他を探すかって言ってたの」

「気のせいだ」

「……視線が定まってないの」

「え?……あ」

 

 自分のポーカーフェイスには自信があったために、高町のその一言に動揺してしまった。

 

 高町はニッコリと笑って、言う。

 

「手伝うよ」

「い、いや、大丈ーー」

「て・つ・だ・う・よ」

「……はい」

 

 高町の、一も二も言わせない、少し影を感じる笑顔に押し切られる。

 

「それで、零くんは何を探してたの?」

「小さな青い宝石」

「宝石、なの?」

 

 そりゃあ戸惑うよな、小学校で宝石探すって、まずないし。

 

「ああ、落としたみたいで。昨日家でも探したんだけど、なかった」

「そうなんだ、だからそんな眠そうなんだね」

「そういうことだ」

 

 まあ、嘘はついてない、よな。

 

『Master,there is a reaction.(魔力反応あり。)It is near 120 meters ahead.(前方120m付近です)

 

 イブが念話でジュエルシードのある場所を知らせてくる。

 

『細かい位置は分かるか?』

I know but there is no way to tell it to you.(分かりますが、伝えられません)

『やっぱりか……』

『Sorry』

『いや、分かっていたことだし、気にしないでくれ』

 

 魔法が使えたならば、光で示すという方法もあったはずなのだが、この場には、高町がいる。

 

 とりあえず、高町に、探し物はもう少し先で落としたことを伝えて、移動する。

 

 ちょうど、120mぐらい歩いて、高町に話しかける。

 

「おそらく、この辺りで落としたんだ」

「わかったの。それじゃあ、一緒に探そう」

「……俺はこっちを探すから、高町はあっちを探してくれ」

「むう……わかったの」

 

 少し高町はむくれるが、手分けした方が効率がいいのは分かっているのだろう。

 特に反論もせず、手分けして草むらを探し始める。

 

 それから、お互い特に話すことなく探し物……ジュエルシードを探したが、昼休みの間は、見つからなかった。

 

 それから、高町と一緒に弁当を食べて、教室に戻った。

 

 前は、名前で呼んでとしつこかったのに、弁当を食べている時には世間話しか、しなかったことに違和感を覚えたが、気のせいだと結論づけた。

 




イブさん大活躍ですね。
細かい魔力制御ができ、探知出来る範囲は最大2kmと、欠点がないように思えますが、重大な欠点が、イブさんにはあります。
いずれ明らかになると思うので、楽しみにしてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。