踏み台やらされそうになりましたが、割となんとかなりました。 作:街をさまよい歩く亡霊
本当にありがとうございます!
『
ーーいま、なんて?
昼休みが終わり、授業中。ジュエルシードの魔力を、探知し続けていたイブが、衝撃的な報告をしてきた。
魔力反応消失?見失うじゃなくて、消失だと?
そんなことあるのか?などと、一瞬、イブが嘘をついているのかと思ってしまったが、そんな報告をする必要がないと直ぐに気付いた。
じゃあどうして?……まさか、な。
頭の中にある可能性が浮かんだ。確かにこれなら、ジュエルシードの魔力が消えたことも説明できるが、かなり面倒くさいことになるだろう。
できるだけ違っていて欲しいのだが……
『最後に魔力反応を捉えたのはどこだ?』
『
『……そうか』
この答えにより、俺の考えはほぼ間違いないと見ていい。
‘高町が、昼休み時点でジュエルシードを見つけていて、ポケットに入れていたが、“何らかの要因”によって、ジュエルシードが起動し、高町の魔力とジュエルシードの魔力が混ざり合い、変質した。’
もちろん、あくまで予想のため、違う部分は多いだろう。それゆえ、疑問も残る。
その中でも大きな疑問の一つ。ジュエルシードが起動して、明確な変化がないことに関して。
今でも高町は、授業に耳を傾けているように見える。とてもではないが、ジュエルシードの影響を受けたようには思えない。
このことから考えるに、ジュエルシードは人でいう微睡みの状態……起きてはいるが、意識がはっきりとしない……つまり、半覚醒状態ではないか。
ならば、ジュエルシードが完全に覚醒する前に行動を起こす必要があるのだが、今は授業中。魔法を使うには一旦、人の目から離れる必要がある。
ーー今さら、先生に目を付けられるとか、気にしてる場合じゃない……死なれるよりはマシだ。
俺は立ち上がり、高町の席の方へ歩いて行く。
先生が、「東雲くん?」と不思議そうな顔で見てくるが、それを無視して、やっと高町の席に辿り着いた。
周りの視線は俺に集中している。多少緊張してしまうが、この程度なら、慣れっこだ。
「高町」
「ふぇ?」
「来い」
俺は戸惑う高町の腕を引き、強引に立ち上がらせ、教室の外まで歩いて行く。
先生は、「どこ行くんですか?」と、焦ったように聞いてくるが、俺は「保健室に連れて行きます。先生は、授業が終わったら来てください」と答え、高町を引き連れて階段に向かう。
本来は保健室は、一階にあるので、階段を下らなきゃ行けないのだが、俺らは階段を上る。
目的地は屋上。そこでジュエルシードを封印する。
小学3年生には、多少辛いだろうと思われる速度で階段を上がって来たのだが、高町は息を切らす気配がない。
ーー手遅れ、か。
分かりにくいが、既に変化が出ている以上、ジュエルシードはほぼ覚醒している、ということだ。
「イブ、結界」
『Yes,master』
封時結界を展開する。クラスメイトの魔力持ち2人は、結界に取り込まれないようにしておいた。
取り込まれたら、教室からいきなり消えることなるからな。
「ねえ、零くん、どうしたの? いきなり。先生に嘘までついて」
「高町、俺が探してた青い宝石、持ってるだろ?」
「え、うん。持ってるよ」
なんの悪びれもなく、高町は笑顔でジュエルシードをポケットから取り出した。
「頼むから、渡してくれ。高町」
「うーん、渡してもいいけど……一つ、いい?」
だんだん目のハイライトがなくなっていき、高町とジュエルシードの魔力が強まっていく。
この話の流れはまずい……!
「高町ッ!」
『名前を呼んで?レイクン』
大声で呼びかけるが、やはり無駄だったようだ。
いつもの透き通るような声から、どこか低く、二重に聞こえる声に変わった、高町の手に持たれたジュエルシードから、視覚可能な魔力の渦が巻き起こる。
もう、なりふり構う余裕はない。
「くっ……リミッター解除、セットアップ!」
『limiter burst. Set up.』
地球にくる上で、ずっとつけていた魔力を縛り付けるリミッターを解除する。これで、本来の魔力が使えるようになった。
紺色の光が俺を覆い、その次の瞬間には、バリアジャケットを纏った姿になる。
イブは、ペンダントから、メカメカしい杖に変わった。
高町から発生した魔力の渦が収まると、そこには、まるで‘いかにも’な魔女のコスプレをしているような高町がいた。
その手には、ジュエルシードが嵌った木の杖を持っていたが。
高町がハイライトがない目でこちらを見据えると、魔力の嵐が吹き荒れる。
一般の魔導師なら、それだけで気絶してしまうだろうという、濃密すぎる魔力の風。だが、
『……!』
イブに集まっていく魔力。これだけ魔力素が濃密なら、最高難度魔力制御技術である収束も簡単にもなる。立っていられれば、の話だが。
収束しているのを察した高町は……いや、魔女は、すぐに魔力放出を止めるが、もう遅い。
「いくぞ」
『Explosion!』
雷がすぐ近くに落ちたような轟音とともに、目を覆いたくなるほどの極光が、比べものにならない規模で起こる。
「……」
視界が悪化して、よく見えないが、イブが封印しないということは、まだ終わっていない。
『ヒドイナ……』
「しゃべるな……!」
瞬間、電撃が俺の元へ飛んでくるが、プロテクションで弾く。
『アハハ……!』
何がおかしいのか、魔女は笑っていた。ハイライトの消えた目で笑うのは、狂気を感じさせる。
そして、いくつもの電撃を放ちながら、魔女は魔力を集中させる。
「……」
その様子を俺は黙って見ていた。
既に、魔女の集中させてる魔力は、SSSを超えている。今ここで妨害したとしても、あの魔力が暴発してしまえば、結界に少なからず影響が出る恐れがある。
ゆえに、正面から対抗することにした。
『イケ!』
同時に放たれる、濁った桃色をした、砲撃魔法。正確には、魔法ではないのだが、それでも、推定魔法ランクはSS。まともな防御魔法では、防御魔法ごと呑み込まれて、やられるだろう。
そんなことを考えながら、ゆっくり左目を閉じる。
「はあ……めんどいな」
ーー
期待外れにも程がある。魔力だけ高い攻撃なんて、当たるはずもない。そして何より、魔力を使っているだけで、魔法として成立してない魔法など、驚異ではない。
始めの魔法は、収束を使っただけの、小手調べ。しかし、結構魔力を込めたあれを、無傷は驚いたが……それだけだ。
「終わらせる……‘
右目に刻まれた時計のような針をもつ魔法陣が起動し、紺色の光を放つ。
それと同時に、魔法の効果が現れる。
魔女の砲撃が、止まった。
止まった。そう、止まったのだ。ある位置を境に、魔女の砲撃は、まるでそこに壁でもあるのかのように、止まっている。
『ナ、ニ……?』
困惑する魔女。それを見て俺は、まあ当然だろうな、という感想を抱く。
『何ヲシタノ!』
「さあな、自分で考えろ」
‘時間逆行’によって防がれた砲撃は、宙に漂う魔力素へと変わる。
……さあ、反撃だ。
もう一度魔力素をイブに収束させる。
『ムダダヨ!』
魔女は、こちらに電撃を放ちながら、魔力で壁をつくる。ただの魔力が、可視化できているということは、あの壁を構成する魔力は、相当な密度を誇るだろう。
……だが、それこそ無駄だ。
『
「本当の砲撃魔法を見せてやる」
今から放つのは、収束直射砲撃魔法。推定魔法ランクは、なんとSSS。
地球の通常の魔力濃度なら、半径10km内の魔力素を全て収束させて、やっと放てる魔法だ。
その収束量の多さゆえに、使える状況は基本ない。
だが、さっきの砲撃によって、この場の魔力素濃度は十二分に高くなっている。
『Master!』
「貫け、閃光」
その魔法の名は、地球の神話の武器の名で「貫くもの」の意をもつ名……。
『
刹那、イブから放たれた極光は、魔女の張った魔力壁をないもののように貫通し、魔女をも貫いた。
「イブ」
『sealing』
魔女が光に包まれて、高町とジュエルシードが別れる。ジュエルシードは、イブに吸い込まれていった。
『No.13』
同時に結界を解除すると、その場には、意識を失った高町が倒れていた。
ジュエルシードのナンバーが被っていました。
指摘してくださり、ありがとうございます。