踏み台やらされそうになりましたが、割となんとかなりました。 作:街をさまよい歩く亡霊
「つまり、今、なのはが倒れているのは、ジュエルシードに呑まれたことが原因ってことか?」
「やっぱりなのはに何かしたんじゃない」
「少し、
「なんでよ!」
2人の口論がひと段落したところで、事の経緯を、掻い摘んで説明したと思ったら、また不穏な空気が漂い始める。
仲良いな、こいつら。
「ジュエルシードを探したのは、なのはの意思だ。探させたわけじゃない零に、責任はない」
「ぐ……レオのくせに……!」
「お前それどういう意味だよ!」
「べつに〜? あいつを一歩も動かせずに負けたのに偉そーですねー、なーんて思ってないわよ?」
「テメエ……」
お互いの発言にいちいち食いつくあたり、とても仲が良いのは分かった。
「大体、あいつが本当のこと言ってる証拠なんてないしね、私は信用できない」
「とことん疑ってかかるなあ、お前」
「念には念を、よ」
「お前のそれは度を過ぎてんだよ」
確かに、今話した話が本当であることを示す証拠は、今の所持ち合わせてはいないため、信用問題になってしまうのだが……予想通りといえば予想通りなのだが、やはり花織には信じてもらえなかったか。
「そうだ、あなたの話が本当なら、家にユーノがいるはずでしょ? じゃあ放課後、ユーノに話を聞けば良いんじゃない?」
「それ、家に行くってことだぞ」
「分かってるわよ?」
赤石は、ため息を吐きながら、軽く頭をかく。その顔には、諦めの色が滲み出ていた。警戒している奴、この場合は俺の
まあ、それはそれで構わないが。
「なら、高町も連れて行っていいか?」
「……何をする気?」
「魔法関連について、一通り話をするだけだ」
「あ……」
まるで、忘れていた、と言っているような、花織の反応。これで、魔法の秘匿が出来ているのか問い詰めたいところではあるが、面倒なのでやめておく。
ユーノに関しては、申し訳ないが一度家に戻ってもらうということになるな。後で連絡しておいたほうがいいだろう。
「そろそろ、教室戻らないか?」
それよりも今は、教室に戻るべきだ。
言い合いをやめた2人が時計を確認すると、2人して驚いたような顔をしたと思ったら、『やばい!』と、仲良く保健室を出て行った。
こんな時まで息ぴったりな2人に呆れた後、教室に戻る……
「おっと」
忘れるところだった、高町に書置きを残さなければ。
メモ用紙に、その場でじっとしていること。と書き、高町が寝ているベッド近くの机に置いて、今度こそ教室に戻った。
「これで、6時間目の授業を終わりにします。ありがとうございました」
1人(学級委員長なるものらしい。高町が喋ってた情報の中にあった)の号令に合わせて、同級生がありがとうございました、と先生にお礼を言い、頭を下げる。
「ありがとうございました」
ワンテンポ遅れて、クラスメイトと同じ動作をとってから、すぐに荷物をまとめて、教室を出る。
まだ帰りのSHRが残っていたが、先生に用事があると伝え、保健室に向かう。
そろそろ、高町が目覚めていてもおかしくない頃だが。
教室から歩いて1分と少し。普通の教室とは異なり、廊下から、室内の様子が確認できないようにされた扉の前に立つ。
ノックをしてから、扉を開ける。
「失礼します。……高町、起きてるか?」
「零くん……? 起きてるよ」
ベッドから、体を起こした高町は笑顔こそ浮かべているものの、いつものような元気はないように思えた。
「体調はどうだ?」
「うん、大丈夫だよ。少し体が重いけど……」
にゃはは……と、苦笑する高町は、やはり覇気がなかった。
高町の魔力は、総魔力量から考えると、弱々しすぎる程しか感じられない。ジュエルシードに呑み込まれた時に、かなり魔力を持ってかれたのだろう。
「そうか……すまん、高町」
「あ、謝らないで!零くん。正直私、何があったのか覚えてないの」
「それに関しては、俺らの事情のせい、だな」
「零くんの事情……?」
「勝手ですまないが、ここでは話せない。この後、俺の家に来てもらっていいか?」
「う、うん」
高町は、戸惑ったまま頷く。まだ少し寝ぼけているのか、目の焦点が合わない。
「あ……そうだ、カバンは」
「荷物はレオ達に任せて置いた。心配しなくても、高町はついてきてもらうだけでいい……そろそろいいか?」
「あ、うん」
ベッドから立ち上がりながら、なんでレオくん……?と、呟く声が聞こえたが、それも事情の内に入るので後にさせてもらおう。
そして、校門でレオ達と合流し、俺の家に向かった。合流するとき花織がうるさ……もとい、高町を過剰に心配していたので少し予定より遅れたことは、仕方なくない。ユーノを待たせているのだから、早くしてほしいものだ。
「すまんユーノ。遅れてしまって」
「ううん、大丈夫。ところでその3人が?」
「ああ、そうだ」
ユーノには、一応の事情説明はしておいた。クラスメイトの2人の魔導師と、1人の魔力持ちについて。
「まさか、本当にいるなんて……でもフェレットもどきじゃないわね」
「別に疑う必要なかっただろうに……それは知らん」
「警戒心なさ過ぎよ、レオ」
「そういうお前はあり過ぎなんだと、何度言えばわかるんだ?」
「あら、これが普通なのよ?」
「にゃはは……」
また‘仲良く’してる2人はいつも通りとして、高町が言い合いを止めないのは少し意外だ。
……単純に止める意味がないことを知っているからなのかもしれないが。
「とりあえず自己紹介だな。改めて、俺は東雲零。得意魔法は攻撃魔法。よろしくな」
ボソッと花織が……あと踏み台。なんてことを言っていて、赤石に肘で注意されていたが、気にしない。
「僕は、ユーノ・スクライアです。スクライアは部族名だから、ユーノって呼んでください。よろしくお願いします」
「敬語は要らないよ、ユーノくん」
「私もよ」
「俺もだ」
「……だ、そうだが?」
ユーノは少し戸惑ったように、そして慣れていないのか、少し顔を赤らめて頷いた。
「じゃあ次は俺だな。赤石蓮斗だ、俺も得意魔法は攻撃魔法。呼び方は、レオでいい」
「レオの場合は、それしか使えないじゃない」
「何を言うか。バインドも使えるぞ」
「‘使える’だけでしょ」
「はいはい、2人ともそこまでだよ」
今度は高町が止めに入った。流石にこの場で‘仲良く’されるのは困ると、悟ったらしい。いい子だ。
……止める時の笑顔が、少し黒いような気もしたが、気のせいだろう。
「わ、わかったわよ……。こほん、私は花織光愛。使う魔法は、主に補助魔法。東雲以外は光愛でいいわ」
「おい」
……別に言われなくとも呼ばない。むしろ、ユーノが不思議そうな目でこっちを見てくるから言わないで欲しかった。
「えと、最後は私かな。高町なのはです。なのは、って呼んでね」
「わかった。よろしく、なのは」
ユーノの返事に笑顔で頷いた高町はこちらを見て、零くんもだよ?と言わんばかりの顔をしているが、気にしない。
別に高町を信用してない訳ではないが……気が引けるのだ、高町の名前を呼ぶのは。
「さて、じゃあ本題に入ろうか」
それよりも今は、やるべきことを先に済ますべきだ。
「魔法と……そしてロストロギア、ジュエルシードについて」