踏み台やらされそうになりましたが、割となんとかなりました。   作:街をさまよい歩く亡霊

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魔法を使いました。

 目を覚ました時、まどろみの中で、ぼやけて見えた時計の針は、7を指していた。寝る前に確認した時は8時だったから……

 

「11時間も寝てたのか……」

 

 何と半日弱も寝てたことになる。いつもは6時間程度で済ませていたのだが……精神的に疲れていたらしい。

 

 空気が抜ける音とともにスライド式である仮眠室のドアが開く。入ってきた人物は、案の定蔵人だった。

 

「お、起きたのか、おはようさん」

「ああ、おはよう」

「さっそくだが、顔洗って、これに着替えてこい。訓練室に行くぞ」

 

 蔵人は、黒いジャージを投げてよこす。というか、いきなり訓練室か…何をするのか聞くと、訓練室で話すと言われてしまった。

 イマイチ納得はできないが、指示に従うことにする。

 ……顔に泣いた跡が付いていた。気づかれてないよな?

 

 部隊室からでて、建物の中で徒歩数分ってなにとか思いながら、蔵人についていき、歩くこと数分。

 俺はその訓練室と思われる部屋で、蔵人と向き合っている。

 

「じゃあ今から、魔力測定をやるぞ」

「魔力……?」

「そう、魔力。魔法を使うための燃料みたいなもんだ」

 

 燃料……間違ってはないんだろうが、魔法に燃料は違和感がある。

 

「零は魔力はあるんだが、安定してない。おそらく、リンカーコアが覚醒してないんだろう」

「リ、リンカーコア?」

「簡単に言えば魔力を生み出す体内機関だ。それを覚醒させるのは案外簡単」

 

 そこで一旦切り、手に持っているカードのような機械を目の前に持ってくる。

 

「魔力を運用させる。初めはなれないだろうが、このデバイスのサポートもあるし、すぐなれるはずだ。」

「デバイス……」

 

 蔵人から、デバイスと呼ばれた機械を受け取る。想像より軽い。裏には、57という数字が刻印されていた。

 

「そのデバイスの名前はT-57。訓練用のインテリジェントデバイスだが、使いやすくはあるはずだ。魔法を使う自分を思い浮かべて、Set upと言ってみろ」

 

 魔法を使う、自分……。

 

「……T-57、Set up」

 

『T-57 start(起動). Set up』

 

 デバイスから、電子音声が聞こえてきた刹那。紺色の光に包まれた。光が晴れた後、自分の格好が変わっていることに驚いた。

 

「なんだ、これ?」

「バリアジャケット。デバイス起動時に展開される、簡単な防御魔法だ。イメージをしっかり持たないと、デバイスに設定されてるデザインのバリアジャケットになるんだが……成功したみたいだな」

 

 今の俺の格好は、白いYシャツに黒いズボン。その上に黒いローブを羽織るという形。デバイスは、杖のような形に変化している。

 

「それにしても……うん?なんだ?……は?おいおい、まじかよ」

 

 何やら蔵人が驚きながら、どこか疲れたような顔をするという器用な真似をしているが、何かあったのだろうか。

 

「今日の目的は魔力測定だって、言ったよな?その結果が出たんだが……」

 

 そこで、何かに詰まったように言葉が止まる。どうした、何か問題でもあったのか?

 

「総魔力量……文字通り魔力の量なんだが、それが、SSS。過去最高値なんだ」

「過去、最高値……?」

「ああ、俺も総魔力量S超えを見たことがなかったんだが、よりにもよって初めて見るのがSSSとは」

 

 頭を抑えながら溜息を吐く蔵人。それにしてもSSSか、あまり自覚はなかったんだが、とんでもない魔力が眠っていたらしい。

 まあ、それは置いといて。

 

「それで、この後どうするんだ?」

「ん?……そうだな、予定通り基礎的な魔法を教えようと思う」

「了解」

「零、お前、楽しそうだな」

 

 蔵人が恨めしげな目で見てくるので、苦笑でしょうがないだろ、というふうに返す。

 やはり、未知のものに触れるのはワクワクしてしまうし、過去最高値を叩き出した自分の魔力を、早く使って見たいという思いもあるのかもしれない。

 

「まあいい、くれぐれも暴発なんか起こしてくれるなよ」

「わかった」

「ほんとにわかってんのか……?じゃあ、初めに攻撃魔法から教えるぞ」

 

 その後、攻撃魔法、防御魔法、捕獲系魔法、結界魔法、補助魔法を教わったが、基礎的なものだったからか、手応えを感じなかった。

 魔法を行使するたび、目からハイライトが消えていく蔵人が少し、気になったが。

 

「お前、人間か?」

「失礼な、人間だ」

「人間は見本見ただけで、まんま再現は無理だっつーの」

「まんまじゃない。少し劣ってる」

「初っ端の行使で、少し劣る程度で再現できる方がおかしいんだって気付け」

 

 むう、そういうものか。一回見本を見てわからなかったら、記憶の中にある見本を何度も見ればいいと思うが。

 

「見た所、魔力運用も充分現場で戦えるレベルだ。これなら、すぐ応用を教えてもいいのかもな」

「……!じゃあ」

「ただし、今は無理だ。訓練室の使用時間が迫ってるからな。また今度ってことで」

 

 少し消化不良気味だから、納得しにくい。

 

「消化不良なら、魔法について調べたらどうだ?応用には知識も必要だから、やっておいて損はないだろう」

「……わかった」

 

 今から調べる内容を考え始めるぐらいには、俺は、魔法にハマっていた。 なぜこんなハマるのかは、自分でもわからないが。




あと2話ぐらいで、原作には入れたらいいなあと、思ってます。

8/9 15:00
魔力量→総魔力量などの加筆。
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