踏み台やらされそうになりましたが、割となんとかなりました。 作:街をさまよい歩く亡霊
初めて魔法を使った日から、数日間。無限書庫の存在を教えられた俺は、魔法のことについて調べた。
曰く、魔法とは、自然摂理や物理法則をプログラム化し、それを任意に書き換え、書き加えたり消去したりすることで、作用に変える技法である。
また、空気中に漂う魔力素というエネルギーを魔導師が体内に持つ器官『リンカーコア』に取り込み、 取り込んだ魔力を使用し「変化」「移動」「幻惑」のいずれかの作用を起こす事象である。
ーー全然違うじゃねえか蔵人、何が魔力は「燃料」だ。てか、こんな複雑なプロセスを踏むものを、特に考えずに使えたもんだ。いや、もしかして皆何も考えずに使えているのか……?
このことを知ったあと、体内で魔力制御を行ってみたが、以前より精密な制御に成功した。
魔法について調べている中、付属的に付いてきたデバイスの知識。デバイスの構造は機械なので、一番簡単な構造のストレージデバイスは、自分でも作れそうだと感じたが、材料がない上、金もない今、自作するのは諦める他なかった。
訓練室外では、魔法の使用は許可されてないそうなので、新しい魔法プログラムを考えながら、次の魔法訓練を待ちわびることにした。
2日程過ぎ、机上ではあるが、3つほどの魔法が完成したところで、やっと訓練の時間がきた。
先の訓練室にて、俺はまた、蔵人と向き合っている。
「それで、今から応用編つーか、残りの魔法を教えるわけだが……お前のことだ、全部調べて知ってんだろう」
「ああ、攻撃魔法系統の砲撃。防御魔法系統のフィールドタイプ。捕獲系魔法のケージタイプ。結界魔法のエリアタイプ、それから……」
「あー、もういい、そういうのは専門外だ」
「蔵人から聞いてきたんだろうに」
「気にすんな。……じゃあ始めるぞ、まずは、攻撃魔法系統の直射砲撃からか。
「了解」
体内のリンカーコアからの魔力素を使い、デバイスの補助の元、魔法プログラムを構成する。
今回使うのは、砲撃直射魔法の「ブラスト」だ。特徴はこれといってない、基本的な魔法なので、魔法プログラムの構成自体は直ぐに終わった。
すると、足元に真円2つに正方形2つで成る魔法陣が現れる。
これで発射準備は完了。後は魔法のトリガーを引くだけだ。
ーーさあ、行け。
『Blast』
轟音。杖の先から放たれた閃光は、一瞬で的を呑み込み、貫いた。
後から聞いた話だが、「ブラスト」は、どれだけ魔力を込めても最大魔法ランクはBなのに対し、今の魔法のランクはAA。
術式はブラストそのものだが、細かな魔力制御によって、もはや別物の魔法となっていることから、新たな魔法「ブラスト(リミット・ブレイク)」として扱われた。
「……やっぱこうなったか……」
あまりにも生気がない声の元を見ると、目からハイライトが消え失せた蔵人がいた。
「てか、零、この数日間で何があったよ。魔力制御が以前の比じゃねえな……まさか」
「魔法は使ってないぞ」
あくまで、魔力の制御の練習をしただけだからな。
「そうか、ならいいんだが、ほんとに何があったよ?」
俺はこの数日間でしたことを話した。無限書庫で魔力について調べたこと。デバイスを作ろうとしたこと。新しい魔法を作ったこと。
「……零、お前はなぜそこまで魔法に執着する?」
なぜって……なぜだろうか、自分でもわからない。
「そうか、なら、模擬戦するぞ」
「……はあ?」
「構えろ」
バリアジャケットを展開した蔵人は、デバイスらしき大剣を正面に構えながら言う。
「……いきなり過ぎないか?」
「そうでもない。敵がいつ襲ってくるか分からないんだからな。戦闘開始時に、コンディションが完璧じゃないことの方が多い」
そういうものか。だからと言ってあの話の流れで模擬戦は、意味わからんが。
「行くぞ」
『Flash move』
一瞬で距離を詰めてくる蔵人。振りかぶった大剣は、瞬きをしようものなら俺をすぐに潰すだろう。
「……チッ」
『Protection』
即座に魔力と、魔力制御にものを言わせた防御魔法魔法を展開する。大剣とプロテクションがぶつかり合い、不愉快な音と共に火花をあげる。
「くっ……はあッ!」
ある程度拮抗した後、接近してきた蔵人を
「T-57ッ!」
『Blast』
着弾と同時に爆発を起こす性質を備えた閃光が、蔵人に襲いかかる。
どうだ……と思いながら、蔵人を見るが、蔵人は焦った様子などなく、逆に余裕そうな表情を見せていた。
ーーまずいッ!
背中に寒気が走り、ブラストの後、すぐにプロテクションを展開できるよう準備をする。
「相変わらずすさまじい魔力だが、甘いな」
『Earth breaker』
蔵人の周りの魔力素が、大剣に集まっていく。
「収束魔法……!?」
「隊長舐めんなっての」
『Fire』
大剣を横薙ぎに払うと共に、凝縮された魔力の斬撃が形を成して、ブラストと拮抗……せずにブラストを切り裂いた。
「ちいっ……ラウンドシールド!」
「Round shield」
蔵人のアースブレイカーがブラストを切り裂いたのを確認するや否や、プロテクションの術式を破棄。一方向に硬い防御を誇るラウンドシールドを展開する。
ーー少なくない魔力を
「なんて、考えてるなら、それこそ甘いな」
「なっ……!?」
拮抗するかのように思われた、アースブレイカーとラウンドシールドは、ろくに火花をあげないまま、ラウンドシールドが切り裂かれて終わった。
迫るアースブレイカー。止める術はもうない……
『横薙ぎの攻撃は、跳ぶか、しゃがめ』
「……ッ!」
不意に脳に響いた声に従い、迫り来るアースブレイカーを跳んで避けようとするが、反応が遅れたため足に当たってしまう。
「ガッ……」
アレには、相当な威力が籠っていたのだろう。かすっただけで、体が十分に動かせないほどに、精神エネルギーを削られた。
跳んでいたため、勢い余り、地面を転がり、伏せた。
「終わりだな」
首に冷たい感触。大剣のデバイスが首に当てられているのだろう。
とても、
「……少しは、吹っ切れたようだな」
「な……に……?」
意識が闇に呑み込まれるまえにみた顔は、蔵人の柔らかい微笑だった。