踏み台やらされそうになりましたが、割となんとかなりました。 作:街をさまよい歩く亡霊
硬い床の感触に違和感を覚え目を覚ますと、周りの風景は相変わらず訓練室だった。
「起きたのか……復活も早いのな、お前」
「ん……どのくらい寝てた?」
「だいたい10分というところだな」
「そうか……」
10分か……掠っただけで気絶するとは、不覚だな。
思わず、ふっ、と自分を鼻で笑ってしまう。
「どうした?」
「いや、なんでもない。ただ、まともに負けたのは、久し振りだな」
「若いんだから、負けるだけ負けとけ」
「はははっ……そうだな」
同意はするが、勝負事においてわざと負ける気は無い。俺は、どうやら負けず嫌いなようだから。
「なあ、蔵人」
「うん?」
「今度は、俺が勝つ」
「おお?まだまだ負ける気はねえぞ、俺は」
「それでも、だ」
「……そうか」
最後に蔵人が言葉を発してから、しばらくの沈黙がうまれるが、その沈黙は、疲れた体には心地よく、いつまでもこうしていたいと思わせた。
もっとも、その沈黙を破ったのは、俺だったのだが。
「……俺は、逃げていたんだな、魔法に」
「ああ」
「サクの死を受け入れられなくて」
「……ああ」
「そして、人殺しをした‘ゼロ’から」
「……」
「俺は、弱いから。人殺しをしたことを、心の中では受け入れてなかったんだと思う。それで、零であることに、ゼロが持ってなかった魔法の力を持ってる零に、逃げてたんだ……」
ようやくわかった。俺が魔法にのめり込む理由が。
俺は、ゼロであり、零だ。なのに、それを忘れて、ゼロであることから逃げていた。ゼロを否定していた。同じ、自分なはずなのに。
「零っていうのは、地球で
「いや、俺は、逃げて……」
「逃げてたとしても、思い出しただろ?俺は、それだけで十分だ」
ーー全く、ほんとにこいつは……あったかいな。
ああ……泣くつもりはなかったのになあ。涙が出てくる。
「今は泣け。そして、もう二度と忘れるな」
「ああ……わかった」
それからは、泣いた。それはそれは、みっともなく。ただ、心にあったつっかかりが取れた気がした。
ーー決めた、俺は蔵人のようになる。普段サボってもいい。ただ、大切な人を、心から守れるような、そんな暖かい人に。俺がなれるかわからないけど、目指すぐらいは、構わないよな?
ーーー
ーー
ー
「落ち着いたか?」
「ああ、ありがとな」
どのくらい経っただろうか、5分、10分か、もしかしたら、1時間かもしれない。
ーーまあ、どのくらいでもいいけどな。
「なあ、蔵人」
「なんだ?」
「俺が、零であり、ゼロであるということを忘れないために、この目に、証を刻もうと思う。」
「…はあ?」
「まあ、それは建前だけどな」
「おい」
俺が考えた新しい魔法の中でも、もっとも難易度の高いと思われる魔法。計算上で、実行するためには、最高峰の魔力制御をもってしても、最低でも30秒は必要という、化け物術式である。
その名も……
「
効果自体は優れているのだが、いかんせん術式量が半端ではなく、戦闘中いちいち術式を用意しようものなら、その間にやられてしまう。その上、術式省略・破棄もできないという扱いづらさを誇る。
そこで考えた。元から術式を用意できればいいのでは?と。
紙に術式を書き、発動させたところ、多少のタイムラグはあったが、十分戦闘に使えるレベルだと判断した。が、紙は、魔法を発動させた後、爆発するように消えた。
紙が込められた魔力に耐えられなかったのだろう。
そこで思いついたのは、体の一部に術式を刻印して、その術式から、魔法を発動する。というもの。
しかし、それでは範囲指定ができない。だったら……目に、正確には虹彩に刻印すればいい。そうすれば、目の機能を奪わずに目に刻印できる。
「今からそれをやる。蔵人は、何かあった時のために、見てて欲しい」
「お前……正気か?」
「正気だ。大丈夫、失敗するつもりはない」
魔法を起動する。失敗する気はないが、成功する見込みも、正直ない。
ふう、心の準備は整った。
ーーよし、始めよう。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「ん……あ」
目が覚めたら、いつか見た仮眠室の天井が目に入ってきた。
というか、いつ気を失ったのだろうか。
「……とりあえず、鏡」
仮眠室なので、洗面台は近くにあるだろうと思い、近くをさまよう。謎の虚脱感が体を襲っているが、無視しても大丈夫だろうと判断する。
部隊室に繋がる扉とは別の扉が、洗面台に繋がっていた。踏み台に登り鏡を覗き込む。
まるで金属のような艶を放つ銀の髪。鋭い、冷たさを与える目は、右が黒、左が青と、異なる光を放っている。すっと伸びた鼻。横一文字に閉じられた口。その顔は、世間一般で、イケメンと呼ばれるものなのは、自分で理解しているがどうでもいいと思ってしまう。
「目は、変化なし…か?」
試しに、目に魔力を流してみる。
すると右目に、ミッド式の魔法陣の中に時計の針が描かれた魔法陣が光った。
「成功か……?」
今度は、魔法を起動するという意思をもって、右目に魔力を流す。
きちんと効果が発動し、体に影響がないことを確認する。
「成功だ……!」
やったと、喜びを感じる前に俺の意識はとんでいた。
これも後から聞いた話だが、俺はこの時、魔力が完全に取り戻せてなく、不安定な状況だったのに時間逆行を使ったため、意識を失ったらしい。
今度から、気をつけよう。
結構駆け足でしたね、読みにくかった方、すみません。
次は、時間がとび、原作に入ろうと思います。