その人物は、大戸島沖にてある計画を実行する。
同じころ、東京湾内にある埋め立て地では、職務をサボっていた特車二課第二小隊隊長、後藤喜一が異変を感じていた。
ここから世界は、最悪の方向に進んでいくことになるのだった…。
東京湾海上、大戸島沖、夜。
夜の闇と静寂の中に、一隻のクルーザーが浮かんでいる。
その甲板には、ぼろぼろの白衣を着て、白いひげを蓄えた1人の老人が、何かを待つように立っていた。
やがて、その老人のもとに1機の赤い戦闘機がやってくる。
それは先ほど、浅間山山中の道路で武蔵と弁慶の元からゲッター炉心を奪って離脱したドラゴン号であった。
ドラゴン号はクルーザーの隣に静かに着水すると、コクピットハッチを開く。
それを見て、老人―――早乙女博士はにやりと笑い、クルーザーからドラゴン号のコクピットへと乗り込んだ。
早乙女博士「フフフ…。これで始められる」
そういいながら早乙女博士はコクピットのハッチを閉じ、計器を操作していく。そして最後に、出力の制限をなくす赤いボタンを自らの拳で叩き、先ほど奪ったゲッター炉心の出力を臨界点まであげていく。それと同時に、ドラゴン号は水中に潜っていった。
そして、東京湾の地下深くに潜む、「ある生物」へと迫っていく。
その生物の元まで行くと、早乙女博士は出力レバーを一気に最大まで引き上げた。
急上昇したゲッターエネルギーの緑色の光に包まれながら、早乙女博士は叫ぶ。
早乙女「愚かなる人類よ!今こそ全てが終わるとき!この場から、世界最後の日を始めようではないか!フハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
その瞬間、ドラゴン号は深泥色の発行と共に爆発し、早乙女博士もろとも巻き込んでいった。
同じころ、東京湾の埋め立て地にある特車二課基地では、第二小隊の隊長、後藤喜一が1人防波堤に腰をかけて夜釣りを楽しんでいた。
本来であれば今日は夜勤で、まだ職務時間中なのであるが、日本政府の国営事業「バビロンプロジェクト」の最中に起きた事件を解決して以降、レイバーを使った凶悪犯罪の数も減ったため出動がなく、おまけに部下たちが自分よりも職務を忠実に全うしてくれているのでかえってやることがなくなり、居眠り防止と気分転換もかねてこうして釣り糸を垂らしに来たのだ。
とはいうものの、なかなかヒットはなく、結局のところ暇を持て余していることに変わりはない。その証拠に、自然とあくびまでしてしまう有様である。
これはいかんと考えた後藤は制服の胸ポケットからタバコを取り出し、一本口にくわえて火をつける。
そしてゆっくりと口から紫煙を吐き出しながら、
後藤「平和だねぇ」
と、ひとり呟いた。
自分たちの出番は常に市井の人が危機にさらされるときとなるので、こうして出番がないのはいいことなはずなのだが、いかんせん眠気との戦いとなる夜勤の時にこうもやることがないと辛いというのが本音だ。
それから数回、紫煙を吐き出し吸っていたタバコを灰にすると後藤は火を消し、吸殻を携帯灰皿にしまう。
後藤「さーて。そろそろ戻らないと南雲さんに怒られちゃうし、引き上げますか」
そういって、竿の片付けをしようとした後藤は足元が小さく揺れていることに気付く。
後藤「お?地震か?」
そう言いながら海の方を見た後藤は、遥かかなたの海が小さく、緑色に発光しているのを目撃した。
後藤「なんだあれは…?」
光が気になり、後藤は目を凝らすが発光は一瞬だったらしく、海はもとの静けさを取り戻していく。
それでも何か異常を見つけようと目を細める後藤に、後ろから声がかかる。
南雲「第二小隊の隊長ともあろう人が、職務を投げ出して夜釣りとはいいご身分ね」
後藤「な、南雲さん…」
後藤が振り返ると、そこには特車二課第一小隊の隊長、南雲しのぶが不機嫌な顔をして立っていた。
後藤「いや、夜釣りをしていたことは事実だけどね、海がさっきこう、パァーっと緑色に光ってね?何か異常だと思って見てたんだ。本当だよ?」
南雲「そんなこと言って、結局はサボりに来たんじゃない」
後藤「本当だって!俺が南雲さんに嘘ついたことある?」
南雲「片手で数えきれないくらいはあるわね」
南雲の言葉に、後藤は言い返せなくなってしまう。この前のバビロンプロジェクトの事件の時も、南雲に内緒で捜査課の刑事と独自に犯人を追っていたので旗色が悪い。
南雲「まぁいいわ。それよりも、本庁に提出しなきゃいけない報告書が山ほどあるの。半分は私がやっておいたから、あとは後藤くん、お願いね」
後藤「えぇ~」
南雲「今までサボってたんだからそれくらいやりなさい!明日の朝まで頼むわよ」
そう言うと、南雲は基地の中へ戻っていく。
後藤「あ!ちょっと南雲さん!…はぁ。ここからは休憩なしだな」
後藤はそう言ってため息をつくと、釣り竿の片付けに入る。
道具をまとめ、防波堤から立ち去ろうとしたとき、海の方から「ズゥゥゥン…!」と、何かが動くような気配を感じて足を止める。
後藤「…何かの前触れじゃなきゃいいんだけどねぇ」
そう言うと、後藤は足早に基地の中へと戻っていった。
早乙女博士が散り、後藤が緑の光を見た海の底では、眠りについていたある生物が目を覚ましつつあった。
それがやがて進化し、世界に最後を呼ぶ究極の破壊神となることを、早乙女博士以外にこの時、知るものはなかったのであった。