【艦これ】アウェイク   作:白井マナ

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艦これの2次創作です。キャラ崩壊、独自設定があります。苦手な方はブラウザバック推奨です。

2000PV超え! ありがとうございます!



気まぐれ姫-1

 2度目の出撃指示が出たのは、初出撃から2週間ほど過ぎてからだった。

 その間、私は粛々と爪を研ぐ作業に没頭していた。朝は早めに起きてランニング、昼は演習弾を使った模擬戦闘訓練、夜は疲れを残さないために早寝を心がけていた。模擬戦闘は、暇そうな子に片っ端から声をかけて手伝ってもらった。もちろん無理強いはしない。相手が見つからないときは一人で航行練習をすることにした。

 その練習の甲斐があったのだろうか。今回の出撃は、前回よりも濃い内容になっていた。

「今回の出撃メンバーはここにいる6人。長良を旗艦にして、朝潮、大潮、荒潮、曙、そして満潮だ」

 司令官に続いて、作戦内容についての説明が大和さんから伝えられた。

「哨戒中の潜水艦の子たちからの連絡です。南西諸島近海で敵軽巡洋艦5隻、駆逐艦十数隻が発見されました。敵艦隊はゆっくりと領海に近づいているようで、半日後には侵入すると予想されます。みなさんには、この駆逐艦隊を撃退していただきます」

 大和さんが作戦の説明をしている間、私は胸の高ぶりを抑えられなかった。

(待ちに待った戦闘に出られる!)

 この前は、戦いらしい戦いが出来なかった。今回は、もう少しまともな戦闘が出来そうだ。それに、第8駆逐隊だった面々と出撃できる。艦船時代の旧友と肩を並べられることも相まって、いつになく気分が高揚していた。

 細かな指示が与えられると、私たちは提督室を退室した。、

「満潮と出撃できる日が来るなんて、夢みたいですね」

 大潮が嬉しそうに目を細める。

 私が着任してから、大潮と会話する機会は殆どなかった。大潮は頻繁に出撃や遠征の要因になっていて、鎮守府に常駐することが少ないのだ。

 同じ第8駆逐隊だった朝潮や荒潮も、私の訓練中に何度も出撃していたが大潮ほど多くなく、食堂でも寮でも見かけては長い立ち話をしていた。

「出撃するのは良いけど、足引っ張らないでよね。ついこの間練習期間が終わったばっかりで、まだ1回しか出撃経験がないんだから」

 と、後ろから曙が突っぱねるような口調で言う。

 楽しい空気に水を差されたことにむっとして、肩越しに睨み返した。

「満潮が頑張ってるのを、司令官はちゃんと見てたってことだよ。毎日訓練してるし、模擬戦闘も駆逐艦だけじゃなくて戦艦のひとにも手伝ってもらってたしね。あんまり満潮を軽く見てると、すぐに追い抜かれちゃうかもしれないよ?」

 と朝潮が言った。言い返せなくなったのか、ふん、と曙はそっぽを向いた。

「はいはい。言い合いはそこまで。みんな、出撃までに準備をしておいてね」

 長良の指示に従って、私たちは各々思うところへ向かって行った。私は工廠で艤装の調整をする前に、食堂でお腹を膨らませておくことにした。

 そんな私と同じ考えをしていた子がいた。

「なによ」

 隣を歩く曙が機嫌悪そうに言った。

「そっちこそ」

「あたしは食堂に行くの。ついて来ないで」

「私も食堂に行くの。そっちこそついて来ないでよ」

 私は曙より先を歩くために歩調を早めた。

 しかし、隣にいる曙との距離が一向に変わっていなかった。心なしか、曙の振る手の動きがさっきより速い気がした。

「ちょっと、私に歩調を合わせないでよ」

「合わせてるのはそっちでしょ。ついてくるなら、あたしの後ろを歩きなさいよ」

「ついて来てほしくないんでしょ。なら、曙が私の後ろを歩くべきじゃないかしら」

「あんたこそ、ついて来てほしくないって言ってたじゃない!」

 そこからはもう堂々巡りだった。私が歩調を速めれば曙も歩調を速めていて、疲れてゆっくり歩こうとしたら曙もゆっくり歩いていた。私と曙は顔を突き合わせて、相手に先を越されないように火花を散らしていた。

 食堂に入る時もそのままで、座る席も同じ、食べるものも同じと来て、何となく思っていた通り、食べ終わるのも同じだった。

 どうやら、庁舎からずっと私たちの後ろにいたらしい荒潮は、何がおかしかったのか、食堂にいる間ずっとお腹を抱えて笑っていた。

(出撃しても、間違いなくコイツとは上手くいかない)

 おそらく、お互いがそのようなことを思っていただろう。

 私と曙は、同時に水を飲み干した。

 

 ***

 

 海上に立つ時雨は、背中に艤装の重りを感じながら、左右から注がれる視線に苦笑いを返すしかなかった。左右にいるのは5人の女の子。うち1人はニコニコと笑顔を浮かべて、1人は横目に時雨を見て鼻を鳴らした。残りの3人はと言うと、「どうしてあなたがここにいるの?」というように、怪訝そうに首を傾げていた。

「あの、時雨」

 大潮が言った。

「どうして、満潮がいないの?」

 そう聞かれ、時雨はくぐもった声を上げるしかなかった。

「出撃時間の5分前になっても来ないし。やっと来たと思ったら時雨だったし」

 朝潮と長良も、不思議に思うことは同じようだった。

 事情を知っている荒潮は必至に笑うのを堪えようとしているが、耐えきれずにのどを鳴らしている。曙は曙で、「まぁ、足手まといになられなくて済んだわ」とつまらなそうに腕を組んだ。

「ん~っと。満潮ね……急に出撃できなくなったとしか」

「もしかして具合が悪くなったとか」と朝潮。

「あ、いや。そういうわけじゃないんだけど」

 答えるのを窮していても仕方ない。

 時雨は、ありのままを伝えることにした。

「えっと。満潮は、今ね」

 向けられる3つの視線に、時雨はこう答えた。

「バイクの旅に連れて行かれた」

 

――は?

 

 3人の声が重なる。

「あ、ハモった」などと曙が呟いた。

 そう。出撃時刻である現在。

 満潮はバイクの後部席に座らされて、吹きすさぶ風に小さな身体をあおがれていた。




しばらく週をまたぎまして、次回は1/20(土)投稿予定です。
お間違えの無いよう、よろしくお願いいたしますm(__)m
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