今回の語り人は多岡結衣になります。
私は今ある少女と向かいあっている、彼女は晴天目香夜、弟のクラスメイトである彼女に私はとても興味を持っている。
「晴天目さんだね、弟と仲良くしてくれているそうじゃ無いか、ありがとう」
「いえ、私も色々お世話になってますし」
「そうか、さて、いきなりだが本題に入らせてもらうよ?」
「はい、なんでしょうか?」
「私は君に感謝しているんだよ」
「感謝ですか?私に?」
「そう、君にだ、いや、正確には君の後ろにいる彼女にかな?」
「後ろ…ですか?」
「隠さなくても大丈夫だ、私には彼女が見えている」
「そうですか…貴方には見えているんですね、紅葉が」
「あぁ、こんな仕事をして居ると見えて来る物なんだよ」
「そうなんですね」
「初めて君たちを見たのは夏祭りだった、あの時は驚きそして感動した、自分の研究対象が目の前に居た、しかも弟のクラスメイトだった!」
「研究対象…」
「おっとすまない…この手の話になるとつい高ぶってしまうんだ、すまない」
「いえ、良いんです」
「さて、話がそれてしまったね、感謝の件だが二つある、まずは一つ目だ」
「はい」
「今私がこの研究室を持っているのは君たちのおかげだ、と言うのも私が書き評価された論文は紅葉伝説の論文なのだが、この論文は君たち二人を参考に作成している、勿論推論の部分も多々あるがその論文が評価されて今に至ると言うわけだ、本当に感謝している」
「感謝なんて、私は何もして居ません、この研究室は結衣さんの努力の賜物です」
「そう言ってくれると嬉しいよ、さて二つ目の感謝だがこれは紅葉への感謝の言葉だ、なのでもし良かったら彼女と話をさせて貰えないだろうか?」
「えっと…」
「ゆっくり考えてくれて構わない」
「良いそうです…」
「本当かい⁉︎」
「は、はい」
「では、よろしくたのむよ」
こう言った途端、部屋の空気が変わった、そして目の前にいた彼女の瞳が紅く染まった
「君が紅葉かい?」
「呼び捨てとは良い度胸じゃな小娘」
「これは失礼した、でも私も小娘ではないよ」
「妾から見れば十分小娘じゃ…」
「それもそうだね、では本題に入ろう」
「そうじゃの」
「あの時は私を庇ってくれてありがとう、そして傷の治療までしてくれたね、本当に感謝して居るよ」
「はて、何のことか分からぬの、妾はお前なんぞ庇っておらぬ、庇ったのは香夜じゃ」
「そうだったか、でも傷の治療は君の君のおかげだろ?」
「お前の弟の小僧がうるさかったのでな、仕方なくじゃ」
「そうか、弟君か、何にせよ治療したのは君だ、感謝して居る」
「まぁ感謝されて嫌な気はせん、素直に受け取っておこう」
「あぁ」
「用事はそれだけかの?終わったのなら妾は戻らせてもらうぞ」
「おや、もう帰るのかい?もう少し話して居ても良いじゃ無いか」
「小娘の戯言に付き合っている程暇では無いのでな」
「一日中彼女に取り付いて居るだけなのにかい?」
「言ってくれるなぁ小娘、妾が鬼である事を忘れてくれるなよ?その気になればお前の末代まで呪う事も容易いのじゃからなぁ…」
「君はそんな事はしないよ、君はきっと少し意地悪だけど悪い人じゃないからね」
「知ったような口をききおるわ、そろそろ戻らせて貰うぞ…」
「あぁ、君と話せてとても嬉しかったよ」
私がそう告げると彼女の瞳から紅が消え部屋の空気もいつもどうりになった。
「あの…紅葉が色々とすいません」
「いやいや、実に有意義な時間だったよ、本当に…」
「そうですか…あの!一つお願いがあります」
「なんだね?」
「今日のことはどうかご内密にして欲しいのです」
「それは無理だ」
「どうしてですか⁉︎」
「私が妖怪研究家だからだ」
「でも!」
「安心してくれ、もし今日の事をあれこれいったとしても、一般の人からすれば頭のおかしい研究家の戯言にしか聞こえないさ、妖怪研究と言うのはそう言う職なのさ」
「でも…」
「どうしてもと言うなら一つ条件がある」
「なんですか?」
「弟君とこれからも仲良くしてやってくれ」
「え?」
「馬鹿で礼儀知らずでお人好しの出来の悪い弟だがこれからも仲良くして欲しいんだ」
「それだけですか?」
「あぁそれだけだ、まぁ贅沢を言うなら少しばかり勉強を教えてやってほしいけどね」
「勿論です!これからも仲良くさせてもらいます、多岡くんは良い人ですから」
「そうか、なら今日の事は此処だけの話にしておこう」
「ありがとうございます!」
「さぁそろそろ先生と弟君の所に戻るとするか」
「はい」
「あ、そうだ、弟君は君の事が気になっている様だよ?、全く姉弟で気になることが同じとはね」
「知っています、先日言われましたから」
「おやそこまで進んでいたとは驚いた」
「そ、そんなのじゃ無いです!」
「なんだね?弟君では不満かい?」
「え、えっと…そうでは無くて…あの」
「フフフ、冗談だよ、此処での話は二人だけ、いや、三人だけの秘密だ、私が妖怪を見えることも全て」
「はい、分かりました」
こうして私と彼女の対話は終わりをむかえた、その日の夜私は弟君に電話をした。
「もしもし?弟くん?今日も君のおかげで良い日だったよ、今度実家に帰った時にはいーぱいぎゅーっとしてあげるよ」
「やめてくれ」
「恥ずかしがっちゃって」
「所で姉貴?今日晴天目となに話したんだ?」
「それは秘密」
「またそれか」
「ふふーん、それじゃあおやすみ」
「おやすみ」
またと言うことは彼女も秘密と答えたのだろう。
こうして私の刺激と感動に満ちた一日は終わりを迎えたのだった。