「多岡、こないだ貸した漫画そろそろ返してくれ、他にも待ってる奴居るから」
「あー、あの漫画な鞄の中だわ」
「で、その鞄は何処にあるんだよ」
「学校」
「学校って、今は下校中なのになんで持ってないんだ?」
「いや、俺置き勉してるし、鞄も滅多なこと無いと持って帰らないんだ」
「置き鞄なんて聞いたこと無いぞ」
「と、言うわけで明日返すから」
「今返せ、次のヤツには一週間も待って貰ってるんだ」
「分かったよ、学校にいる奴に持って来てもらうよ」
部活でまだ学校に居るであろう友人に電話をかけることにする。
何度か呼び出し音が鳴ったあと電話の向こうから声が聞こえた。
「もしもし多岡っち?どしたの?」
「悪いんだけど俺の鞄持って来てくれない?教室にあるから」
「はいよー、何処まで持って行けばいいの?」
「通学路にある公園まで頼む」
「了解ですよ、あとで何か奢りね」
「はいよ」
しばらくすると友人がやって来た。
「お待たせー多岡っち、ヘイパス!」
そう言って鞄を投げる。
「おい、人の鞄投げるなよ」
「フフーン、多岡っちの鞄だから問題ない」
投げられた鞄をキャッチするとある違和感を覚えた、それは鞄の色、投げられた鞄は焦げ茶色だった、うちの学校の指定の鞄の色は2種類ある、今俺の手元にある焦げ茶色と黒だ、俺の鞄は黒なのだ。
「おい、投げる方間違えてるぞ、俺のは黒い方だ」
「え?俺のも黒だよ?」
「あ?じゃあこの鞄誰のなんだよ?」
「さぁ?」
「さぁ?じゃねぇよ!」
「開けてみればわかんじゃない?」
「開けるのはまずいだろ」
「でも開けないと誰のか分からないよ?」
「それはそうだけど…」
「まどろっこしいなぁ〜、レッツオープン!」
そう言って鞄を開けてしまう。
中には沢山の物が入っていた、小説や沢山のノートと電子辞書、筆箱にポーチが二つ、英単語帳などだった。
ノートに書いてある名前は、晴天目香夜、だった。
「おい、これ晴天目のだぞ」
「晴天目さんのだったか〜」
「多岡?漫画は明日で良いから早く返して来い」
「なんで俺なんだよ⁉︎」
「晴天目さんの案件の対応はお前と決まって居るんだ」
「そうだ、そうだ!行け〜多岡っち!」
「訳がわからん…」
「ファイト!」
何故か俺が鞄を返しに行く事になった。
あたりは日が落ち始めている、学校まで走り教室にはいる、教室に晴天目の姿は無い、先に帰ったのか、まだ学校に居るのかはわからないが鉢合わせしなくて良かった。
誰かに見つかる前に晴天目の机に鞄を戻そうとしたその時教室の扉がカラカラと音を立てて開いた。
その音の方を振り返るとそこには晴天目が居た。
「多岡くん?私の机で一体何を?」
「いや、別に何ってわけでは…」
晴天目の視線が俺の手元に向けられる。
「それって私の…」
晴天目の顔が驚きと軽蔑の顔に変わった、それはそうだ、晴天目から見れば俺は今まさに鞄を盗もうとしい居る奴にしか見えないのだから。
「いや、これはだな、友達が間違え…」
言い終わる前に晴天目が無言で近づいてくる、こういう時の晴天目は妙に威圧的だ。
「中見ましたか?」
「い、一応…」
そう言うと晴天目は俺から鞄を無理矢理奪い取って廊下に歩いて行ってしまう。
「お、おい、晴天目!」
「最低です…」
晴天目は俺に向けてそう言い放って走って立ち去ってしまう。
俺はしばらく呆然とした後暗くなった道を一人で帰った。
「なんか最近ついてない様な気がする、明日にでも謝ってちゃんと誤解をとか無いとな」