鞄の騒動から数週間が経った、未だに俺は晴天目に誤解をされたままだった、口も聞いてくれないし目も合わせてくれない、仕舞いにはクラスの友人にも「何かあったのか?」と聞かれてしまう始末だった。
明日こそと思っているうちに週末を迎えてしまった。
土曜日の事何時もなら昼まで寝ているのだがその日は目が冴えてしまいベットの上で天井を眺めていた。
すると家のチャイムがなった、家には俺以外誰もいない、来客の予定もない、つまり居留守を使っても問題無いと言うことだ。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポン、ピンポン!
「あぁーうるせぇ!人が悩んでる時に朝からピンポンピンポン!」
「はい!どちら様ですか⁈」
ピンポンの音にイラつきを覚えながら玄関の扉を開ける。
「あ、あの…」
扉を開けた先に居たのは幼い女の子だった、見た目は小学生低学年くらいで黒髪、赤縁のメガネを掛けている、まるで晴天目を小さくした感じだ。
そんな少女の前にしゃがみ込み目線を合わせる。
「えっと、何か用かな、お嬢ちゃん?」
「え、えっとその、多岡くん、助けてほしいんです」
多岡くん?なんで俺の名前知ってるんだ?表札を読んだのか?
「助けてってどう言う事かな?お嬢ちゃん名前は?」
「香夜、です、晴天目香夜です」
「晴天目香夜ねぇ、俺の知り合いと同姓同名とは珍しい、とりあえずお巡りさんの所行こうか」
「違います!私です!同じクラスの晴天目香夜です!」
何をおかしな事を、晴天目は俺と同い年、こんなに小さい訳が無い。
「いやいや、同じクラスの高校生だからね?」
思った事をそのまま言葉にした。
「本当です!嘘じゃありません!」
「そう言われてもねぇ…」
「服だってほら!制服ですし」
確かに少女が着ている服は俺の高校のセーラー服、かろうじて肩にかかっている。
「それだけじゃなんとも」
「それでしたら、貴方にはお姉さんが居ます、職業は妖怪研究家です」
確かに少女の言う事は全て会っている。
「それと、多岡くんは、私の鞄の中を勝手に覗きました…」
最後の言葉で確信した、この少女は晴天目であると。
「い、いや、あれは、誤解で、と言うか本物かよ、なんでそんな小さく」
「信じてくれたんですか?」
「鞄のことまで知ってるとなると、信じるしか、とりあえず中入れ、話はそれから」
「はい!」
少女もとい晴天目を部屋に通す。
「で?どうしてそうなった?それとその長いのなに?」
晴天目は手に風呂敷に包まれた長い物を持っていた。
「えっとこれは刀です」
「刀、なんでそんな物を…」
「実はですね、昨晩、私は何時もの様に妖怪退治をして居たんですが、とある妖怪の妖術を受けて体が小学生位まで縮んでしまったんです、家に帰ってもこの体じゃあ家の門も開けられませんし、頼れる人が多岡くん位しか頼れなかったので、ここに」
見た目は子供頭脳は高校生って訳だ。
「なるほどねぇ、まぁ幸い家に誰もいないし、ゆっくりしてってくれ」
「はい、ありがとうございます」
「所でだな晴天目、話があるんだけども」
「はい、なんでしょうか?」
「鞄の事なんだけどな…」
俺は鞄の事件について嘘無く話した。(第16話参照)
「そ、そうだったんですね…分かりました」
「分かってくれるか、良かった」
とりあえず誤解は解けた、しばらくすると玄関の方で声がした
「ただいまーお姉ちゃんが帰ってきたよー」
「ヤバイ、姉貴が帰ってきた!」
姉貴にこの状況を見られるのは非常にめんどくさい。
「とりあえずクローゼットに隠れてくれ!」
「え?どうしてです?」
「いいから!」
晴天目をクローゼットに押し込む、それと同時に姉貴が部屋のドアを開ける。
「ただいまー!おとうと君!」
「お、おぉ姉貴、おかえり」
「ん〜なんか怪しいなぁ」
「なんだよ…」
「そこのクローゼットに何か隠してるね?」
なぜ分かるんだ、エスパーかうちの姉は…
「な、何も無いよ」
「ははーん、クローゼットにエッチな本でも隠しているんだろう」
「隠して無いって」
「良いから、良いから、恥ずかしからずに見せてご覧」
そう言うと姉貴はクローゼットの扉を開けようとする。
「お、おい、辞めろって、何も無いって」
「何も無いなら見せても問題無いと思うけどねっと!」
そう言って扉を開けてしまう。
クローゼットには小さい少女が一人、それを見た姉貴は。
「おとうと君、誘拐は駄目だよ、こんなに小さい女の子、おとうと君がまさかこんな、お姉ちゃん悲しいよ」
「ち、違う!これは、この子は晴天目でだな、信じられないかもしれないけど」
「香夜ちゃんだって?どれどれ」
姉貴は晴天目の周囲を見渡す、すると
「うん、確かに香夜ちゃんの様だね」
「信じてくれるのか?」
「私は自分の目で見た物は信じるタチだからね」
「良かった…」
「それにしても実に興味深い」
姉貴は晴天目を舐める様にみる。
「で、どうして香夜ちゃんがうちにいるんだい?」
「それはだな…」
今までの経緯などを説明した。
「なるほど、なら香夜ちゃんは私の部屋を使うといい、ゆっくり話もしたいし、おとうと君と居るより安全だろうからね」
「どう言う事だよ、それ」
「いや、なに、健全なる男子高校生のピンク色の欲望が爆発しないとも言い切れないと思ってね」
「ば、馬鹿!そんな事あるわけ無いだろう!」
「照れちゃって、そう言う事だから、よろしくね」
「照れてねぇ!」
「そう言えば、おとうと君、香夜ちゃんと喧嘩してたんじゃ無かったっけ?、毎日ぼやいてたから深刻かと思ったんだけど?」
「そう言う事は言わなくてもいんだよ!」
「はいはいそれじゃあ香夜ちゃん、行こうか」
「は、はい!」
その後晴天目はうちに泊まって行く事になった。
一緒に夕飯を食べたり、テレビを見たり、した、寝る前に晴天目が勉強するとか言い出したので逃げようとしたが姉貴に捕まったりと、楽しい時間だった。
自分の部屋に戻った後もリビングや姉貴の部屋の方から楽しそうな声が聞こえていた。
次の日の朝には晴天目の姿は元に戻っていた、姉貴の貸したパジャマが小さくて見るに耐えなかったが今は置いておく。
姉が晴天目を家まで送っていけと言うので家まで送って行った。
「昨日はありがとうございました」
「おぅ、妖怪退治もほどほどにな」
「そう言う訳には行きませんよ」
「そうか、じゃあ、頑張れよ!」
「はい!」
そう返事をした晴天目の顔はここ数週間で見た中で一番良い顔だった。