今俺は病院の前にいる、何故俺がここに居るかと言うとある人物のお見舞いをするためだ、ある人物と言うのは数日前学校の廊下でおきた衝突事故の被害者である晴天目香夜である。
彼女は事故の後すぐに入院したので学校に来ていない、そのため学校で配布された物などを誰かが届けなければならない、その配達係に何故か俺が任命された。
その時俺は普通は担任の教師や学級委員の仕事では無いのかと言う疑問を投げかけたが担任の教師はあっけなく、「お前が一番仲良いだろ」と言い放った。
「絶対に職務放棄だ…」
などとぼやいていても仕方が無いので気は進まないが受付に向かった。
病院に入るとあの独特の薬品くさい匂いが鼻腔を刺激した。
とりあえず面会の手続きを済ますついでに受付で彼女の病室の場所を聞いてしまう。
「すいません、ここに入院している晴天目香夜さんの病室はどこでしょうか?」
「晴天目さんの病室は3階の突き当たりの病室ですよ」
受付の人は愛想良く病室の場所を教えてくれた。
病室の場所が分かったので早速向かう事にする、エレベーターを使い3階まで上がる、最近はエレベーターのある場所ではなるべくエレベーターを使う事にしている
あの一件から階段を避ける様になってしまった、これは良く無いな健康的に、などとくだらない事を考えるうちに3階に付いた、言われたとうりに廊下を突き当たりまで歩き病室の前で立ち止まる壁に掛けられた名札には晴天目の文字、扉はしまっている、何故か無性に緊張してしまう、扉の前で大きく深呼吸をして扉を開ける。
彼女は寝ているだろうと思いゆっくりと病室に入っていくやはり寝ているのかベットの周りのカーテンは閉まっている。少し安心してベットに歩み寄っていく、すると突然ベットを囲むカーテンがゆっくりとあいた、そのカーテンの中から彼女の姿が見えた、その姿を見て俺は言葉を失った、彼女はパジャマ姿だったのだ、入院しているのだから当たり前なのだが制服のイメージしか無い俺にとっては衝撃的な姿だった、しかも彼女が着ているパジャマはまるで幼い少女が着る様な可愛らしい物だった、そんな姿に俺は見惚れていた。
「おじいちゃん?」
思考を現実に戻し言い訳を考えているとこの様な声が聞こえた、幾ら何でもおじいちゃんは無いだろと思いながら彼女の方を見ると彼女は眼鏡をかけていなかった、
要するに彼女は俺をおじいちゃんと間違えて居るのだ、かなり目が悪いらしい。
どう答えるべきか悩んでいると彼女が話を続けた。
「パジャマ持って来てくれた?流石にこのパジャマじゃ恥ずかしくて」
どうやらあのパジャマは彼女の趣味では無いらしい、なんだか一安心
「学校でこんな怪我するなんて、ほんま情けない、もみじには笑われるし…」
彼女の話し方は関西弁だった彼女は関西出身なのだろうか、それにもみじって誰だ?彼女の友人だろうかなどと考えていると、後ろから声を掛けられた。
「あら晴天目さん起きてらしたんですね、お友達とお話し中でした?」
声の主は看護師だった、お友達と言う言葉に彼女はきょとんとしていた。
「確か多岡君だったかな、お見舞いありがとね」
多岡と言う名前を聞いた途端彼女は顔を赤くしていった。
「そのパジャマ可愛くて似合ってるわよ」
看護師は更に追撃の言葉を口にした。
彼女は涙目になった自分で気にしている姿を見せたく無い相手の前で可愛いと言われる、耐え難い苦痛だろう。
彼女は泣きそうな顔を手で隠そうとするが両手を固定されて居るためそれはかなわない。
「お友達とのお話し終わったらまた呼んでちょうだいね」
と言い残して看護師は行ってしまった。
改めて二人になった病室に少しの沈黙が訪れる、これはまずいと思い話を切り出す。
「えっと、黙って入って来て悪かったな、寝てると思ったから」
「別に気にしないで、私が勘違いしてただけですし…」
会話が続かない。
「晴天目って関西出身なの?」
気になっていたことを聞いてみる。
「生まれは京都なんです、今はおじいちゃんの所に住んでいるんです」
「そうなんだ」
「それで今日は何のごようでしょうか?」
次に切り出す話題を考えていると彼女がこう尋ねたので本題に入る事にした。
「学校で配られたものを渡しにいく様に先生に言われたんだ」
「わざわざありがとうございます、いつもご迷惑をかけてすいません」
「別に迷惑じゃ無いよ、ここに置いて行くから後で読んでおいて」
「はい」
「それじゃ俺そろそろ帰るよ、早く良くなるといいな」
と言い残して病室を出ようとする。
「あの!」
突然呼び止められたので振り返る。
「今日の事はどうかご内密に…」
「分かってるよ」
そう言うと彼女は安心したようだった。
「そういえばそのパジャマ似合ってると思うぞ」
病室を出る直前そう告げると彼女はうつむいてしまった。
彼女の病室を後にして病院の廊下を歩いていると大きなバッグと布に包まれた長い棒の様なものを持った老人とすれ違った、誰かのお見舞いだろうか、お互い大変だな、なんて思っていると看護師達のこんな話が耳に入った
「この前見回りしてたら見ちゃったの」
「見たって何を?」
「幽霊よ!幽霊!」
「幽霊って、あのねぇ、この病院は幽霊が出ないってゆうめいなのよ?」
「そんなこと言われたって見たものは見たのよ!着物をきた女の幽霊!」
「着物って江戸時代じゃ無いんだから…」
「本当にみたのよ!」
「はいはい分かったわよ、さぁ仕事に戻るわよ」
俺が聞いても病院に着物の幽霊はおかしいと思う。
そしてこの病院が幽霊が出ない事で有名だとは知らなかった。
何はともあれ俺に課せられた課題は無事クリアした。
それにしても彼女が口にしたもみじとは何ものなのだろうかやけに親しげな様子だったが、彼女の謎は深まるばかりだ。