チーズハンバーグ   作:はなみつき

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前回の話で非常に恥ずかしい勘違いを指摘していただきました。(6つに割れた腹筋をシックスパッドだと思っていた)
ご指摘いただいた感想はお消しになったようなので、この場で感謝申し上げます。


学食ハンバーグと21話

 みんな大好き水泳の授業の時間だ!!

 太陽さんのテンションが日に日にマシマシになるにつれて上がっていく気温に対抗するための学生が取れる僅かな手段の一つ。普段ならダルいだけの時間だと思ってる人だってこの時ばかりは体育の時間を待ち望むはずだ。

 

「「「1、2、3、4!」」」

「アインス、ツヴィイ、ドライ、フィーア……」

 

 転校すぐはドイツ語で数を数える準備体操に戸惑っていたが、今となってはお手の物だ。

 

 お手の……もの……なのだが……

 き、気になる……女子がスク水姿で準備運動をしていると、その……色々と……言わせんなよ……

 絶対この状況間違ってるだろ……

 

 考えると毒なのでこの時間は目を瞑って無心に行こう。

 水の中に入ってしまえば顔しか見えないし、気にすることも少ないはずだ。

 

 ……

 

 うがああああああああ!!!!

 目を瞑ると男子高校生特有の無駄な妄想力が掻き立てられる!

 

 あ、そうか。

 地面でも見てよ。

 呼吸たのし。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 黒高のプールは8レーンの50mプールであり中々の大きさを誇る。

 今日の授業内容は初回という事で軽めに泳法を問わずにプールを5往復した後は自由時間としても良いらしい。軽めとは一体。これからの授業に一抹の不安を抱えながらも、泳ぎは特に不得手ではないため適当にノルマをこなしていった。

 俺の少し後にエリカもノルマを達成したようでプールサイドで休んでいる。そこそこの長さがあるエリカの髪は全て水泳用の帽子にしまわれており、なんだか凄い違和感がある。ていうか、あの髪が全部収まるのか……確かスイムキャップだったか? 凄いなスイムキャップ。

 そんな感じで女性の長い髪を吸い込むあの帽子の中はどんな空間になっているのかと言う最高に無駄な事を考えながらフリータイムにクラスメイトとチャプチャプ遊んでいるとあっという間に水泳の時間は終わってしまった。

 

 

 ☆

 

 

 

「ふぁーあ」

 

 自分以外誰もいない男子トイレ兼更衣室の中で大口を開けてあくびをかます。

 水泳って全身の筋肉を使うから異様に疲れて眠くなるんだよな。

 この後昼飯を食ってからの午後の授業とか、この時間割を考えたやつは午後の授業を聞かせる気がないに違いない。

 そうは思いながらも適度な運動の直後ということもあって腹は空く。着替えるのに時間がかかるエリカ達は置いて一足早く学食にやって来た。

 着替える時間というハンデのせいで、既に学食には多くの学生が詰めており、注文をするのが面倒だ。逆に女性陣と時間を合わせる位にもう少しゆっくり行けば第一陣の学生たちは注文を終えて丁度いい頃合いだったかもしれない。次からはそうしよう。

 

「ケチャップハンバーグ定食下さい、ライス大盛りで」

「はいよ、ケチャップね」

 

 ようやく自分の番まで回ってきた。頼むのは当然ハンバーグ定食。露骨な冷凍ハンバーグだが、それもまた悪くない。自作だと作れない味とも言えるからな。

 

 支払いも終え、俺はレジから近めの4人がけのテーブルにトレーを置く。この学校の学食は超デカイため、満席となる事はほとんど無い。配膳や支払い等、人手のリソースの関係で列が出来る事はあるが、空席を待つ必要がないのは快適である。

 

「いただきます」

 

 一言。

 

「うん、ハンバーグ」

 

 なんだろうなぁ、オカンが作ってくれた弁当に入ってるハンバーグって感じだなぁ……

 添えられたケチャップが一層風味を強くする。

 悪くない。

 決して美味しいとは言えないが、これもまた味と楽しめるやつだ。

 

「邪魔するわよ」

 

 邪魔するなら帰ってと言ったところで返ってくる返答は「は?」だ。それに、別にお帰り願う相手と言うわけでもないしな。

 

「お、エリカは和風醤油ダレハンバーグか。ちょっとくれよ」

「イヤ」

 

 ちぇっ、ケチなやつだ。ちょっと位分けてくれても良いのにな。

 違う味も食べたいじゃん? まあ、もう食べた事あるけどさ。

 

「自分で作りなさいよ」

「学食の味は学食でしか味わえないんだよ」

「じゃあ明日食べなさい」

「そうする」

 

 という結論に到る頃には俺の前の皿には何も乗っていない。エリカが食べ終わるまでにはもう少し時間が掛かりそうだ。それまで待つことにしよう。 

 

 エリカは箸を使ってハンバーグを一口サイズに切り分け、それを口元まで運んで食べる。口に含んで一噛みした瞬間にわずかに溢れる笑みを見逃さない。続いて追い打ちをかけるように白いご飯を口に放り込む。口に残ったハンバーグの旨味がご飯の味を引き立てると同時に口の中をデフォルト状態へと戻す。そしてまたハンバーグを一口。

 くっそ〜、美味そうに食いやがって……

 

 と、エリカを見ていて気がついたことがある。普段は料理をする時でもないとしないポニテ姿で居ることを。おそらく、濡れた髪がうなじに張り付くことを嫌ったのだろう。

 未だプールの水が乾ききっていない髪の毛は普段より光沢があり、キラキラとしている。

 

「ちょっと、ジロジロ見ないでよ。食べづらいんだけど」

「いやさ、髪の毛濡れてるなって」

「更衣室にドライヤーもあるんだけどね、アレ使ってたらご飯食べる時間短くなるじゃない? 自然乾燥でいいやって思ったのよ。今の時期は暖かいし風邪を引く事もないでしょ」

「なるほどね、エリカは結構髪の毛長いからそういうの大変そうだな」

「そういうことよ」

 

 そう言って再びハンバーグをぱくり。

 エリカの口元はややニコリ。

 羨ましい……

 

「そういや、スイムキャップってさ……」

 

 エリカが見せつけるように美味そうにハンバーグを食べ続けるからこちらは適当な話題を振って食べることに集中させない作戦に出た。

 

 

 ☆

 

 

「ふう……満足したわ」

 

 俺の雑な振りを雑に切り捨てていったエリカはその後もペースを落とすことなく定食を食べ終える。

 

 まだ時間に余裕はあるとは言え、いつもよりは遅い昼食だったために次の授業まであまりゆっくりはしていられない。

 

「そんじゃ行くとしますか」

「ええ」

「「ごちそうさまでした」」

 

 二人でごちそうさまをして俺たちは午後の授業へと向かったのだった。

 

 

 

 この後みんなで滅茶苦茶睡眠学習した。


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