僕の名前は緑谷出久おそらく今年で十五歳になる。今から二年前中学一年生の時、僕は虐めを受けていた。劣等感に揉まれ、いつ死んでもおかしくなかった。だが、足元が輝き気づくと僕は異世界にいた。
「勇者様どうかお救いください」
その世界は、魔族と言われる邪神の眷属が侵略していて、人類は最後の手段で僕を呼び出したみたいだ。憧れのヒーローみたいで一瞬でも口元が緩んだが、僕は無個性だ。何もない落ちこぼれである。こんなハズレが最後の希望なんて申し訳なく思った。
「……僕には無理です」
「ど、どうしてですか!? 」
さっきから僕の相手をしている人は、巫女のような格好である。最後のすがりから断られた彼女は、悲痛にも絶望の表情を見せた。
「僕は無個性なんです……元いた世界では無能と言われています。力なんて何もないんです」
「無個性?とはよくわかりませんが、召喚された勇者様は我らが創造主が適正があるお方に加護を授けているはずです」
「加護? よくわかりませんけど、僕に能力が備わっているんですか?」
「そのはずです。召喚された勇者様には、誰よりも頑丈で不屈の体が授けられるといいます。私たち人族は、あと一歩までのところまで邪神を追い詰めることができました。しかし、邪神の弱点である心臓部に到達するまでに、想像を絶する激痛や崩壊が起きるのです。そのために、我らが創造主は別世界で肉体的にも仕組みが違う勇者様に打破できる加護を授けると仰りました。そこで、勇者様には邪神のトドメを刺して欲しいのです」
僕の心は踊った。僕が誰からも望まれる希望、ヒーローになれるなんて……
それから二年かかり、仲間たちと邪神を倒した。巫女さんや仲間から残るように懇願されたが、家族のところに還りたいと答えて僕は帰還した。
帰還した先はあの時の場所だ。ここから壮絶する冒険があったんだ。感傷に浸る。早く帰らなきゃな、と思い一歩踏み出した。
「い、いずくなの?」
振り向いた先には、会いたかった母がいた。若い時美人だったのになぜか激太りした母ではない。目に隈があるものの若い時同様スタイルの良かった母がいた。
「かーさん!」
僕は母に抱きつき、泣いてしまった。母も僕の名前を何回も連呼し泣き出してしまった。
その後警察から事情聴取をされて、ありのままを説明したが、信じてもらえなかった。公式には異空間を作る敵に監禁されていたと発表された。
だが、僕の持つ加護は消えることなく残っている。あれは幻じゃなく間違えなくリアルの出来事だ。僕は向こうで英雄になった。なら、この世界でも英雄になればいい。そう考えて、僕は前を歩き出した。
しばらくわかりません