ソードアートオンライン×比企谷八幡   作:水無月優

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第008話

俺たちはヨルコさんに詳しい話を聞くために3人でレストランに来ていた。席に着いてからどう切り出そうか考えているとアスナが口を開く。

 

「ねぇ、ヨルコさん。あなた、グリムロックって名前に聞き覚えある?」

 

それを聞いたヨルコさんはハッとした表情をして俯く。

 

「はい…昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです…」

 

「実はカインズさんの胸に刺さっていた黒い槍…鑑定したら作成したのがそのグリムロックって人だったんだ」

 

ヨルコさんはその言葉に驚きの表情を浮かべる。

 

「何か思い当たることはあるか?」

 

「はい…あります…昨日お話できなくてすみませんでした…忘れたい…あまり思い出したくない話だったし…でも…お話します…そのせいで私たちのギルドは消滅したんです…ギルドの名前は《黄金林檎》っていいました。半年前…たまたま倒したモンスターが敏捷力を20も上げる指輪をドロップしたんです。ギルドで使おうって意見と売って儲けを分配しようって意見で割れて、でも最後は多数決で決めたんです。結果は5対3で売却でした…前線の大きい街で競売屋さんに委託するためにリーダーのグリセルダさんが一泊する予定で出かけました。でもグリセルダさん、帰ってこなかったんです…後になって私たちはグリセルダさんが死んだことを知りました…どうして死んでしまったのか未だにわかりません…」

 

「そんなレアアイテムを抱えて圏外に出る可能性は低い…ってことは睡眠PKか…」

 

「半年前ならまだ手口が広まる直前だわ」

 

「ただ、偶然だとは考えにくいな。グリセルダさんを狙ったのは指輪のことを知っていたプレイヤー、つまり…」

 

「《黄金林檎》の残り7人の誰か…」

 

「中でも怪しいのは売却に反対した人間だろうな」

 

「売却される前に指輪を奪おうとしてグリセルダさんを襲った、ってこと?」

 

「おそらくな。グリムロックさんというのは?」

 

「彼はグリセルダさんの旦那さんでした。もちろんこのゲーム内のですけど…グリセルダさんはとっても強い剣士で美人で頭も良くて、グリムロックさんはいつもニコニコしている優しい人でとってもお似合いで仲のいい夫婦でした。もし、昨日の事件の犯人がグリムロックさんなら、あの人は指輪売却に反対した3人を狙っているんでしょうね…指輪の売却に反対した3人のうち2人はカインズと私なんです…」

 

その言葉に俺とアスナは前かがみになる。

 

「じゃあ、もう1人は?」

 

「シュミットというタンクです。今は攻略組の《聖龍連合》に所属していると聞きました」

 

「シュミット…聞いたことあるよな無いような…」

 

「《聖龍連合》ディフェンダー隊のリーダーよ。でっかいランス使いの人」

 

「あ〜そんなやついたなぁ」

 

「シュミットを知っているのですか?」

 

「まあ、ボス攻略で顔を合わせる程度だけど…」

 

「シュミットに会わせてもらうことはできないでしょうか?彼はまだ、今回の事件のことを知らないかも…だとしたら、彼も、もしかしたらカインズのように…」

 

「シュミットさんを呼んでみましょう。《聖龍連合》に知り合いがいるから本部に行けばどうにかなると思うわ」

 

「だったらまずはヨルコさんを宿屋に送らないとな。ヨルコさん、俺たちが戻るまで絶対に宿屋から出ないでくれ」

 

「はい…」

 

俺たちはヨルコさんと別れると《聖龍連合本部》に行くために路地を歩いていた。

 

「エイトくんは今回の《圏内殺人》の手口をどう考えてる?」

 

「おおまかに3通りだな。まず1つ目は正当なデュエルによるもの、2つ目は既知の手段の組み合わせによるシステム上の抜け道…」

 

「まあそんなところだよね。3つ目は?」

 

「県内の保護を無効化する未知のスキル…あるいはアイテムの存在…いや、でもこの3つ目はやっぱり無しだ」

 

「どうして?」

 

「フェアじゃないからだ。認めるのもちょっと癪だけどSAOのルールは基本的にフェアネスを貫いてる。圏内殺人なんてこのゲームが認めてるはずがない…と俺は考えてる」

 

「へぇ…」

 

俺たちはシュミットを連れてヨルコさんの泊まる宿屋へと向かった。着いて早々、シュミットは苛立ちを抑えながらヨルコさんに問う。

 

「グリムロックの武器でカインズが殺されたというのは本当なのか…?」

 

「本当よ……」

 

シュミットは我慢ならないというように苛立ちを込めて続ける。

 

「なんで今更カインズが殺されるんだ!?アイツが…アイツが指輪を奪ったのか!?グリセルダを殺したのはアイツだったのか…!?グリムロックは売却に反対した3人を全員殺す気なのか…?俺やお前も狙われているのか…」

 

「グリムロックさんに槍を作ってもらった他のメンバーの仕業かもしれないし、もしかしたらグリセルダさん自身の復讐なのかもしれない」

 

「え…?」

 

「だって、圏内で人を殺すなんてこと…幽霊でない限り不可能だわ…」

 

ヨルコさんの発言にシュミットだけでなく俺とアスナにも動揺が走る。

 

「私…昨夜寝ないで考えた…結局のところグリセルダさんを殺したのはメンバー全員でもあるのよ!?あの指輪がドロップした時!投票なんかしないでグリセルダさんの指示に従えばよかったんだわ!!」

 

ヨルコさんは窓に腰掛けながら続ける。

 

「ただ1人…グリムロックさんだけは…グリセルダさんに任せると言った…だからあの人には私たち全員に復讐して、グリセルダさんの仇を討つ権利があるんだわ…」

 

「冗談じゃない…冗談じゃないぞ…今更…半年も経ってから、何を今更…!お前はそれでいいのかよヨルコ!こんなわけの分からない方法で殺されていいのか!?」

 

俺がシュミットを落ち着けようと肩に手を置いたその直後、グサッと鈍い音と共にヨルコさんが振り向くと背中には短剣が刺さっていた。ヨルコさんは窓から地面に落下するとポリゴンとなって消えてしまった。

 

「ヨルコさん…!」

 

俺は犯人を見つけようと急いで周囲を見渡すと向かい側の建物の上にローブを被った人影を見つける。

 

「アスナ!後は頼む!」

 

「ダメよ…!」

アスナの静止を背中で浴びながら屋根に飛び乗り犯人を追いかける。背中の剣に手をかけたところで転移結晶を持っているのが見えた。

 

「…くそ!」

 

俺はせめて転移先の名称を聞き取ろうとするがその直後、ゴーンゴーンと鐘が鳴りはじめる。犯人は詠唱が終わったのか光に包まれて消えていった。

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