ソードアートオンライン×比企谷八幡   作:水無月優

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第011話

第四十八層《リンダース》にて巨大な水車がゆるやかに回転する心地よい音が、工房の中を満たしている。あたしはアスナに頼まれたレイピアのメンテナンスをしていた。

 

「うん…これでよし!」

 

「ありがとうリズ!」

 

あたしはレイピアをアスナに返す。アスナは今日はいつもよりオシャレしている気がする。

 

「なーんか怪しいなあ。よく考えたら今日は平日じゃない!ギルドの攻略ノルマはどうしたのよ?六十三層でだいぶ手間取ってるとか言ってなかったっけ?」

 

「んー、今日はオフにしてもらったの。この後ちょっと人と会う約束があって…」

 

そう言われてアスナが耳にイヤリングをしていることに気づく。

 

「むふふ〜!そういうことねぇ?」

 

そう言いながらアスナの脇を肘でつく。

 

「な、何よ…」

 

「そっかぁー、あんたこの頃妙に明るくなったと思ったら、とうとう男ができたかぁ」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!!」

 

アスナの頬が赤く染まり、咳払いをして、あたしのほうを横目で見ながら、

 

「…わたし、前とそんなに違う……?」

 

「そりゃあねー。知り合った頃は、寝ても醒めても迷宮攻略!って感じでさ。ちょっと張り詰めすぎなんじゃないのって思ってたけど、春先からすこしずつ変わってきたよ。大体、平日に攻略サボるなんて前のあんたからは想像もできないよ」

 

「そ、そっか。…やっぱり影響受けてるのかな…」

 

「ねぇ、誰なのよ。あたしの知ってる人?」

 

「知らないと思うけど…どうだろう」

 

「今度連れてきなさいよ!」

 

「ほんとにそんなんじゃないの!まだぜんぜん、その…一方通行だし…」

 

「へぇー!」

 

あたしは心の底から驚く。アスナはアインクラッドで5本の指に入るかという美人で、彼女に言い寄る男は星の数ほどいるが、まさかその逆パターンがあろうとは夢にも思わなかった。

 

「はっ!そろそろ行かないと!」

 

そういうとアスナは急いで扉まで移動する。

 

「アスナは…大切なものが見つかったんだね…」

 

「えっ?何か言った?」

 

「んーん、なんでもない!上手くやんなさいよ!」

 

「もう!そんなんじゃないわよ!じゃあまたね!」

 

そう言ってアスナは店から出ていった。

 

「私にも…見つかるかな…?」

 

 

 

 

 

 

俺はアスナにオススメしてもらった《リズベット武具店》に来ていた。とりあえず中に入ってみると武器がいくつか並んでいる。少し店内を見て回っていると奥からピンク色でショートカットの女の子が出てきた。まさか女の子が出てくるとは思わなかったのでびくっとしてしまった。変人だと思われてないといいが…

 

「リズベット武具店へようこそ!」

 

「あ、ああ、オーダーメイドを頼みたいんだが…」

 

なんか訝しげな目で俺を見てきているんだけど、やっぱり変人だと思われたか?なんて思ってると彼女が口を開く。

 

「今…ちょっと金属の相場が上がっておりまして…」

 

あ、これは金無いやつだと思われてるな。

 

「予算は気にしなくていい。今作れる最高の剣を作ってもらいたい」

 

「と、言われましても…具体的に性能の目標値を出していただかないと…」

 

「ああ、それならこの剣と同等以上の剣ってことで頼めるか?」

 

俺はエリュシデータを実体化させ、性能を見てもらう。彼女は驚いた顔をして、何かを考え込んでいる様子だった。

 

「…作れそうか?」

 

彼女は後ろの棚から剣を一振取り出すと俺に渡してくる。

 

「これならどう?私が鍛え上げた最高傑作よ!」

 

俺は剣を受け取ると軽く素振りしてみる。うーん、もう少し重量感がほしいな。

 

「少し軽いな」

 

「使った金属がスピード系のやつだからね」

 

「ちょっと試してみてもいいか?」

 

「試すって?」

 

「耐久力を」

 

俺はエリュシデータを横に構え、渡された剣を垂直に構える。

 

「ちょ、ちょっと!?そんなことしたらあんたの剣が折れちゃうわよ!?」

 

「大丈夫だろ、多分。折れてもまあ、なんとかなるさ」

 

俺はエリュシデータに向かってソードスキルを発動する。刃と刃が当たったその瞬間…ガキンという金属音と共にエリュシデータ、ではなく渡された剣が折れてしまった。

 

「あ、やべ」

 

刹那の静寂。その後、リズベットの悲鳴が店内に響き渡った。

 

「ひゃああああ!!」

 

リズベットは俺から剣を奪い取ると剣のステータスを確認してつぶやく。

 

「修復…不可能…」

 

直後、剣はパリンと音を立ててポリゴンとなって砕け散った。

 

「な…なんてことするのよー!?」

 

俺は物凄い勢いで胸ぐらを掴まれる。近い近い、いい匂い。

 

「す、すまん!まさか当てた方が折れるとは…」

 

「それはつまり…あたしの剣が思ったよりやわっちかったってわけ!?」

 

「まあ…そうなるな…」

 

「言っておきますけどね!材料さえあればあんたの剣なんかポッキポキ折れちゃうくらいのいくらでも鍛えられるんですからね!」

 

「へぇ?いくらでも作れるならぜひお願いしたいなあ。これがポキポキ折れるやつをな?」

 

売り言葉に買い言葉でつい言い返してしまったが大人げなかっただろうか。あーあリズベットさんが顔真っ赤にしちゃてるよ。

 

「そこまで言うからには全部付き合ってもらうわよ!」

 

「全部…?」

 

「そう!金属取りに行くところからね」

 

「それなら俺だけで行ってくる。足手まといになられても困るし…」

 

「バカにしないでくれる?これでもあたし、マスターメイサーなんだけど?」

 

「…金属の宛はあるのか?」

 

「五十五層にある西の山に水晶を餌にするドラゴンがいるらしいの。そいつがレアな金属を体内に溜め込んでるって噂よ」

 

「五十五層か…やっぱり危険だし俺だけで…」

 

「金属を手に入れるにはマスタースミスがいないとダメらしいわよ?それでも1人で行くつもり?」

 

そのしてやったりみたいな顔やめてくれませんかね…

 

「わかったよ…ただし、大人しくしててくれよ?」

 

「む…あんたねぇ!」

 

「俺はエイトだ。ひとまず剣ができるまではよろしく頼む」

 

「ふん!よろしくエイト」

 

「いきなり呼び捨てか…まあいいけどね…リズベット?」

 

リズベットは不服そうな顔で口をぷくっと膨らませている。なにそれ流行ってるの?可愛いと思っちゃうからやめてくれ。もしかして俺ってチョロインなの?

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