ソードアートオンライン×比企谷八幡   作:水無月優

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第003話

「馬鹿馬鹿しいな…」

 

俺はそう呟いた。そんな条件で危険なフィールドに出ていくやつはほぼいない。プレイヤー全員安全な街区県内に引きこもり続けるに決まってる。しかし、俺の、あるいは全プレイヤーの思考を読んだかのように茅場晶彦は話はじめる。

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう。』

 

やはりクリアするしかないのか…

 

「クリア…第百層だとぉ⁉」

 

突然クラインが喚いた。

 

「で、できるわきゃねぇだろうが‼ベータじゃろくに上がれなかったって聞いてるぞ‼」

 

その言葉は真実だった。千人のプレイヤーが参加したSAOベータテストでは、二ヶ月の期間中にクリアされたフロアはわずか六層だったのだ。茅場晶彦はさらに続ける。

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』

 

それを聞くや、俺は《メニュー・ウインドウ》を開く。周りのプレイヤー達も同じように《メニュー・ウインドウ》を開いていく。メインメニューからアイテム欄のタブをタップすると一番上にそのプレゼントはあった。アイテム名は《手鏡》。なぜこんなものを?と思いながら手鏡をオブジェクト化した。と、その瞬間プレイヤー全員を白い光が包み込んだ。ほんの二、三秒で光は消え、元の風景が現れ…なかった。さっきまでクラインがいたところには知らない無精ヒゲの生えた男、キリトがいたところには中性的な顔立ちで黒髪ロングの美少女がいた。

 

「お前ら…誰?」

 

「おい…誰だよおめぇら」

 

「貴方達…誰ですか?」

 

俺は手鏡の意味を理解し、すぐに自分の顔を確認した。そこに映っていたのは現実世界の俺の顔だった。

 

「うおっ…オレじゃん…」

 

「えっ…私の顔…」

 

ということは…

 

「「お前がエイト(クライン)か⁉」」

 

え…じゃあこのめっちゃ可愛い子がキリト…?

 

「えっと…もしかしてキリト…?」

 

「うん…」

 

まじかよ…俺今までこんな可愛い子とパーティー組んでたのか。

 

「でもよぉ、エイト。なんでだ⁉なんでこんなことを…⁉」

 

「落ち着けよ。どうせ、すぐ茅場が教えてくれるだろ」

 

茅場晶彦は俺の予想通り説明しはじめた。

 

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は、SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』

 

『私の目的はどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに何の目的も、理由も持たない。なぜなら…この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 

短い間をおいて茅場晶彦は続ける

 

『…以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る』

 

最後の一言が、わずかな残響を引き、消えた。わずかな沈黙。しかしその沈黙はすぐに大勢のプレイヤーの叫び声に破られた。

 

「嘘だろ…なんだよこれ、嘘だろ!」

 

「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」

 

「こんなの困る!このあと約束があるのよ!」

 

「嫌ああ!帰して!帰してよおお!」

 

俺はゆっくり息を吸い、吐いて、口を開いた。

 

「クライン、キリト、ちょっと来てくれ」

 

俺は二人の手を掴み、街路の一本に入り、手を離した。

 

「いいか、よく聞いてくれ。俺はすぐにこの街を出て、次の街へ向かう。お前らも一緒に来ないか?」

 

クラインとキリトは目を剥いているがそのまま続ける。

 

「この世界で生き残っていくためには、ひたすら自分を強化しなきゃならない。この《はじまりの街》周辺のモンスターは同じことを考える奴に狩りつくされるだろうから、今のうちに次の村を拠点にした方がいい。」

 

クラインとキリトは俺の話を真剣に聞いてくれていた。しかしクラインは聞き終えた後わずかに顔を歪ませた。

 

「でもよぉ、おりゃ、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフトを買ったんだ。そいつらももうログインして、さっきの広場にいるはずだ。置いて…いけねぇ」

 

俺にはクラインの言っていることを否定する気にはなれなかった。俺はキリトに答えを求めた。

 

「キリトは?」

 

「私は…エイトと一緒に行く」

 

「そうか」

 

俺がクライン達をどうするか悩んでいると、クラインは俺達に心配をかけさせないかのように笑顔で言った。

 

「これ以上世話になるわけにはいかねえよ。おめぇらは気にしねえで、次の村に行ってくれ」

 

少しの葛藤。だが俺はすぐに決断を下した。

 

「あぁ、わかった」

 

俺はキリトを連れて次の村までの道を進み始めた。数歩歩いたところでクラインが短く叫んだ。

 

「エイト!キリト!」

 

「どうした?」

 

「エイト、お前目かなり腐ってるぞ!キリト、案外可愛い顔してんじゃねえか!」

 

俺は苦笑いし、言ってやった。

 

「お前もその野武士ヅラのほうが十倍似合ってるよ!」

 

クラインに見送られながら俺とキリトは次の村へ向かって走り出した。

 

 

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