第001話
俺は今三十五層にある《迷いの森》を全速力で走っている。
なぜなら俺はオレンジギルド《タイタンズハンド》の手がかりを掴むためにとあるパーティーを監視していたのだが、そのパーティーの女の子が森の奥に走っていってしまったのだ。
《迷いの森》はその名の通り一度入ってしまうと出るのにかなり苦労する。俺は万が一を想定し、こうして追いかけている。
そろそろ追いつく頃かと思っていたらすぐ近くで悲鳴が聞こえた。そこにはさっきの女の子がモンスターに囲まれていた。
俺はすぐにソードスキルを発動させ、モンスターを一掃した。モンスターが残っていないのことを確認し、女の子の方を向くと座り込んで泣いているのが分かった。その手には羽根が握られていて、俺は女の子がさっきまで連れていたフェザーリドラがいないことに気が付く。
「すまなかった。お前の友達、助けられなかった…」
女の子はしばらく泣いていたが、少し落ち着いたのか首を振った。
「…いいえ…あたしが…バカだったんです…。ありがとうございます…助けてくれて…」
俺は女の子の前に跪き、優しい声をできるだけ意識して口を開いた。
「…その羽根なんだが、アイテム名設定されてるか?」
女の子が羽根に触れてウインドウを出す。そこにはアイテム名がしっかりと表記されていた。
《ピナの心》
俺は女の子がまた泣き出してしまう前に言葉を続ける。
「心アイテムが残っていれば、まだ蘇生の可能性はある」
「え⁉」
「最近解ったことだから、まだあんまり知られてないんだよ。四十七層の南に、《思い出の丘》っていうフィールドダンジョンがある。名前のわりに難易度が高いんだけどな…。そこのてっぺんに咲く花が、使い魔蘇生用のアイテムらし―」
「ほ、ほんとですか⁉」
女の子は一瞬嬉しそうな顔をしたがすぐに暗くなってしまう。
「…四十五層…」
「俺が行ってきてもよかったんだが、使い魔を亡くしたビーストテイマ―本人が行かないと肝心の花が咲かないらしいんだ」
女の子は少し考えてからちょっとだけ微笑むと、言った。
「いえ……。情報だけでも、とってもありがたいです。がんばってレベル上げすれば、いつかは……」
「それがそうもいかないんだ。使い魔を蘇生できるのは、死んでから三日だけらしい。それを過ぎると、アイテム名の《心》が《形見》に変化して…」
「そんな……!」
俺は何も言わずにシステムウインドウを開き、防具と武器を女の子に渡した。女の子は驚いた表情でこちらを向いた。
「あの…」
「この装備で五、六レベルぶん程底上げできる。俺も一緒に行けば、なんとかなるだろ」
「なんで…そこまでしてくれるんですか…?」
女の子は首をかしげ俺に理由を聞いてきた。
「笑うなよ?」
「笑いません」
「お前が…妹に似てたからだ」
女の子は一瞬ポカーンとした顔をしてからクスクスと笑った。
「だから言いたくなかったんだ…」
「馬鹿にしているわけじゃないんですよ?ちょっとびっくりしちゃっただけです。あたし、シリカって言います。」
俺は手を差し出すか一瞬迷ったがシリカに手を差し出して言った。
「俺はエイト。しばらくの間よろしくな」
俺達は握手を交わし、一度街に戻ることにした