Fate/Grand Order ~隻眼の弓兵~ 作:カルパン
蹄が地面を叩き、蹴られた小さな土は、土埃として宙へと消えた
「む、君たちの行く先にサーヴァント反応が検出された。あれ?どんどん遠ざかって……駄目だ!ロストした!」
「……!クソッ!予想は的中したというわけか!急ぐぞ!街から煙があがっている!」
ロマニの報告に、ラ・シャリテの方角に顔を向けたギャレッドは、馬にむち打ち、加速を促した
門前に着くと、全員が飛び降り街の中を突き進む
「くっ……この様子だと生存者の見込みは……」
「待って下さい!あそこにまだ人が!」
エミヤが言い切る前に、ジャンヌは言葉を遮って人型の影に近寄った
「大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
「aaaa……Gaaaaaa!!!!」
「きゃっ!?」
人型の影は、振り向くと同時にジャンヌへと飛び掛かった
「Ga……!!」
「馬鹿かお前は!事前に確認してから近付け!もし何かあればどうする気だ!」
人型の首を飛ばし、起き上がろうとするジャンヌにギャレッドは手を出しながら短い説教をした
「ギャーさん、今のは?」
「リビング・デッド……生ける屍だ。マスター、速やかに掃討する事を提案する。この人達も楽に逝かせてやりたいからな」
「……わかった。みんな、この人達を楽にさせてあげて……」
その言葉を皮切りに、全員が町の各所へと散った
「……流石にここまで量が多いと些か面倒だな……」
次々と
「妙に血生臭いな……それに先程から不快な音まで聞こえる……もしやとは思うが、ワイバーンが人の死体を食している訳ではあるまいな……?」
近くの建物の上へと跳びながら、ギャレッドは自信の推測を漏らしたが、それは見事的中する事となった
目に見えるワイバーンの頭を、寸分違わず撃ち抜くが、その近くに見えるのは、無惨にも食い荒らされた死体であった
これにはある程度の死体を見てきたギャレッドなれども、胸糞を悪くするのは当然であった
「…………せめて彼らの魂が報われることを願わんとするか……!?嘘だろう!?」
そこからの行動が早かった。まず、彼は真っ先に立香に、魔力が通じる際に使用される
<マスター!応答を願う、マスター!>
<どうしたの、ギャーさん?>
<いいか、よく聞け。現在、ラ・シャリテ……つまりこの街に恐らく竜の魔女と思われる一団が接近してきているのを確認した!出来る限り速やかに
<り、了解!敵の数と大体のクラスを教えて!>
<敵の数は六体!ランサー、セイバー、ライダーと思われる者が一人ずつ!それ以外は……すまんがわからん!それと竜の魔女と思われる存在も確認した!体勢を整えておくことだ!>
<了解!直ぐに全員に知らせるよ!>
<ああ!よろしく頼んだ!>
「さてと、やるべきことはやった。後は姿でも隠して、適当に牽制でもしておくか」
ギャレッドは、「宝具、起動」と短く呟き、魔力で作り上げた鋼の矢を己の宝具とし、それを弓に番え、射出した。それを十回程行う。この一連の動作に所要された時間は約二秒である
遠目から、矢が弾かれたのを視認すると、これを狙っていたとばかりに口元を歪め、人々が紡いだ幻想の悉くを、文字通り爆破させた
遠くからでも伝わる空気の振動と僅かな風、そして爆光に目を細めた
「さて、これでいくばかの牽制はできたろう。あとは彼女らがここにたどり着くまで、適当に時間でも潰しておくか」
彼は竜の魔女の周りに居た黒みがかったオーラを纏った英霊達について考えながら、その建物の上から影を消した
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マスター、藤丸立香は困惑していた。竜の魔女が攻めてきたと思えば
立香自身も、ギャレッドは何らかの方法で奇襲をかけると予想はしていたが、予想の斜め上を行く方法に思わずあんぐりとしていた
「ふぅ……たまには体術を使うのも悪くはない……」
清々しそうに歩く様からは、最早目頭を押さえる外なかった
「……それでだ、竜の魔女、お前は何者だ」
「あなたもこの街に、私たちの近くにいたのであれば答えずともわかるでしょう?ギャレッド」
「いいや、わからんな。お前を
「……どこまで知っているつもりかしら?」
「さあ?どこまで知っていて、どこから知らないんだろうな?」
「……まぁいいわ。どうせあなたの口から聞き出せばいいだけですもの。行きなさい!バーサーク・セイバー!バーサーク・ランサー!バーサーク・アサシン!」
呼ばれた三騎の英霊は、各々が構えへと移る
それに伴い、カルデアの英霊も構えを取る
「私はあの娘共の血を頂きましょうか」
「ならば余はあの小生意気な小僧の臓物を」
「消去法で残りを相手するよ」
三騎が散ると同時に、其処らかしこでは、火花と金属のぶつかり合う音が鳴り始めた
ギャレッドは、少しふざけ気味であった気分を塗り替え、目の前の槍兵と戦闘を始めていた
狂化を施された槍兵の槍を打ち落とすのは、握られた一本の剣だけである
相手のステータスが高いのか、その一撃一撃が、重く、そして音速を越える域に達している
それでも平然と渡り合うことができているのは、一重に彼の五感、身体能力、反射神経、動体視力、空間認識能力、脳内自動処理演算能力、そして保有するスキルが一つである、千里眼。この全てが上手く、噛み合わさっているが故の恩恵と言っても過言ではない
「ほう!存外やるではないか!」
「ハッ!それはどうも!だが生憎とこちらは全てがスレスレの状態なのでね!あまり過度な評価や期待は遠慮してもらおうか!」
数多に繰り広げられる刺擊を捌き、最後の一突きを上にかち上げることで、隙を作り出す
(殺った!!)
「余とてそう簡単に殺られるほど柔でないわ!!」
「なっ!?ぐっ!!」
突如として、無数の杭が地より、体より、有象無象から生え、一瞬にしてギャレッドは退かざるを得ない状況下に叩き落とされた
「面白いじゃないか、まさかその手があったとはな。盲点だったよ」
手を放り投げ、やれやれといった表情で首を振るギャレッドであるが、事実、彼の戦法から、近距離で一気に方を付けるといったものは破棄された。近付こうものならばあの杭で無惨にも蜂の巣にされるからだ
「いや、余に杭を打たせたのも、そなたの実力あってこそ……。我が名はヴラド・ツェペシュ!彼の地、ルーマニアにて王として君臨せしめた者なり!」
「ほう、ワラキアの串刺し公とな……これはまた随分なビッグネームではないか。ここは一つ、先程までの不敬を詫びれば見逃して頂けるであろうか?」
「抜かせ。確かに余は王である。しかしそれは過去の話であり、今は一介のサーヴァントに過ぎん。それに何より、戦場で敵対したとなれば、王であろうと下民であろうと等しくただの戦士である。さあ、貴公が名を教えてもらおうか!」
「うげっ……強制かよ……おっと……では改めて、我が名はギャレッド・ウォルニール!百年戦争をこの身を以て終結させし英雄なり!我が力、貴公が胸を借りてここに見せしめん!」
「よくぞ言った!その力とその叡智、そして戦闘経験と共に培ったその技、とくと我が目に刻まん!」
二人は再びぶつかった。先程よりも、より激しさを増して
ヴラドは己の手の内がバレているということは既に認識済み。であればその力を惜しみ無くふんだんに振るうまで。そう顔が物語っている
対してギャレッドは、スキル、技の極致(内容は1話参照)を使用していた。運要素が絡むスキルではあるが、Bランクの幸運ステータスが幸いしてか、かなりの技術の向上が見られていた
片方が突きを放てば、剣によって防がれいなされ、片方が斬擊を放てば、防がれかわされ、杭を放たれればその悉くを斬り裂き、落とし、時には下がり、時には弓矢を用いて襲い来る杭の全てを撃ち落とす。延々と続くかと思われたその攻防の均衡は一瞬にして崩された
「ぐっ、しまっ!?」
「貰った!!!!」
手から剣が弾き飛ばされ、ギャレッドは獲物無き戦士と化した。武具を扱う戦士からすれば、獲物を無くしたその時点でただのカモである
普通ならばと、頭に付くが
「フッ、甘く見られては困るな!」
「何!?ぐがあっ!!?」
ギャレッドはすんでのところで槍を回避し、ヴラドの懐へと入り込むと、槍を持つその腕を掴み、肘目掛けて渾身の掌底を打ち込んだ。勿論、掌底が当たる瞬間に、腕を持つ手を下げた。当然ながら肘の骨はあらぬ方向へと曲がり、骨折するであろう
ヴラドは呻き声を上げるが、休む暇も与えられず、鳩尾に拳を捩じ込まれた
その衝撃で浮き上がったのをギャレッドは確認すると、短剣を逆手に、一気に腰から肩まで、切り裂いた
「ぐっ……抜かったわ……まさか格闘に……覚えがある……とは……」
「ああ、確かにあんたは抜かったな。弓兵の癖に剣やら槍やら使える。ならば徒手空拳を使えないとも限らんであろう?」
「で、あるな……誠に見事……である……次に会うならば……貴公が味方であることを……願おうか……」
「ああ、あなたも見事であった。願わくば、再開は仲間としてしたいものだな……あなたと、良き闘いを行えたことに感謝と誇りを」
ヴラドは、未練も無いと言った表情で消えていった
今の死闘と僅かな会話だけでも、二人の間には確固たる絆が生まれていた。事実、ギャレッドも実に清々しい笑顔が生まれていた
彼は、仲間を支援せんと、無言でその場を立ち去った
To be continued.
スミマセン、文化祭の練習やら文化祭やら、なんやかんや忙しくて気がつけば更新が大幅に遅れていました!明日やらねば、明日やらねばと思っていたのにこの体たらく……情けないッッ!!こんなナメクジよりも遅い投稿ペースの小説ですが、まだまだ見ていただけるというのならば幸いです