遅くなりましたが、こういうことは稀によくあるのでご了承を。
偉大な神格があれば、その性格もそれに伴い厳格かつ、崇高なものへと化していく。
というのは、転生時に消え去った甘い幻想である。
イナバノシロウサギは幸運の神様として名高く、信仰も得ているが、彼女の認知できない部分ではかなり幼い。
主要な神となるとタイムラインも超越した存在となるのだそうだが、イナバノシロウサギはその性質も得ていない。本人によれば『つまらないから』といっていた。
また、北欧神話の神々は彼ら自身の終わりを知っている。
ギリシャ神話の神々は……ま、あんまり気にしていないようだ。
私が言いたいことは、神々って思っていたよりずっと快楽に享受的ということだ。
「酒だァ!酒を持ってこぉい!」
「むむっ、そこなやつ我と飲み比べせい!」
「ちょっとー!それウチの鮭とば!かぁえぇせぇー!」
和風の宴会場はかなりの広さを誇っているはずなのに、ここの空気は酒精が満ちている。
そこにいる神々も神々らしからぬ程に酔いつぶれ、乱れきっている様子だ。
泣き上戸な神もいれば、笑い上戸の神もいる、もちろん悪酔いしている神もいる。
大和滞在2日目にして、私、叶華は神々相手にパーティーを開くことになりました。
大まかに経緯を説明すると。
アマテラスさん『明日、ウチらのペット預けにいくからよろしくー!』→私ら準備→『遊びに来たよー!』→では、早速……→『その前に酒盛りじゃー!』
要約すると、宴会じゃー!飲めや歌え!41000ペリカの散財!
もちろんそれだけでなく、アマテラスさんが預ける予定のヤタガラスにも顔合わせしたり、その他にアメノカクノカミさんからは神使の神鹿、また、ウカノミタマさんの神使の、俗に言うオイナリサマに、ツクヨミさんからは月にいたタマウサギの派遣などなどがありました。
幾ら何でも神話的ビッグネームばっかりすぎ。
天津神が突然降りてくるという、神話的に空前絶後なことの、当の
「おぉーい!叶華もこっちで飲むぞー!」
「あ、はーい!今行きますよ〜。」
私が一通り酒の肴やおかずなどを用意し終えると、タイミングを狙っていたように、アマテラスさんからお誘いの言葉を受ける。
特に断る予定もないので、すぐにそっちにいく。
既にヤマタノオロチも同じ席についていて、すでに大盃を傾けている。
「む?叶華よ仕事は終わったのか?」
「うん、昨日、力使いすぎたから、それほど無茶できなくて、時間かかっちゃった。」
「あぁ、なにやら大変だったようだな。なんでも、小銀河一つ文隔てたようなところにサーバルとネコマタが転移したとかなんとか。」
「しかも、徒労に終わるっていうね……」
アハハ、と苦笑いしながら、アマテラスさんの向かい、ヤマタノオロチの隣に座る。
実はあの後、その地点に体感時間半日をかけて、たどり着いき、大声で彼女らを呼んだものの、反応どころか、物音もなかった。不審に思い、透明ディスプレイを起動して確認してみれば、その反応ははるかかなたの一階廊下に二人の反応が。
……2度とこんなことのないように、空間移動距離に1000mいないという制限を設けた。
しかもおかしなことに、サーバルとネコマタが入った扉は、入っても別に遥か遠くにつながっているわけでもなかった。後々調査が必要だなぁ。
「早速、私たちがあげた能力を活用してくれてて嬉しいじゃない。それにこの屋敷も能力で作ったって?」
「ええ。もともと面白そうなネタとかは考えておきましたし、自動拡張にすると後が楽だったんで。」
「流石の想像力ね。そんな生きてもないのに、知恵も教養もあれば、想像力なんて人間の中でも群を抜いている。ほんと。これ以上ない適任ね。」
そういうのがあって、設定ガバガバなんですけどね!
ほんと、事故があってから考えるとか……ま、いっかぁ。大抵どうにかなるし。ケースバイケースよ、オホホホホ。
「そういえば、ヤタガラスって神話的にも重要ですけど、うちで預かっていいんですかね?そこ聞いておきたくて。」
「あ、いいよいいよ。分霊は済ませたし、いざとなったら、呼べるし。結構その辺、私達、ルーズだから気にしないで。」
気楽な様子で笑うアマテラスさんからは無邪気さが伺え、それで本当に今までなにもなかったことを表している。
「そのくせ、神話の流れはまもるのか……。お主らも難儀なものなのだのう。」
「ま、今回は叶華ちゃんっていうイレギュラーもいるけどね。」
確かに、とお酒の入ったグラスを傾ける。
まだお酒には慣れていないが、嫌いではないのは確かだ。この喉の熱くなる感じ、ジュースとは違うこの風味、クセになる。が、嗜む程度しか飲まないだろうけど。
ここで私は、神々が私に課したこのたびについて一つ気になっていることを口にした。本当他愛もないことだけど。
「ところでこれって、どんな神様がこのことを提案したんですかね?」
このこと、というのはつまり、私たちの旅のことである。
特別知る必要はないけど、だけど、どんな神が提案したかによっては、警戒しなくてはならないから。
「む、確かに。人々に害なす獣から、神敵ともいえる魔獣まで。
我のようにの、と最後に付け加え、探るような目つきでアマテラスさんをみる。
確かにヤマタノオロチの言う通りに、依頼にはバハムートや、フェンリル、はたまたリヴァイアサンなど、神を害しそうなものをタイムラインを書き換え、保護することにいかほどの利益があるのだろうか。
その質問にアマテラスさんは肩を竦め、答える。
「さぁね。気まぐれな神々が暇つぶしに考えただけじゃない?実は私も、天津神の誰も詳しいことはわかんないのよ。」
普段なら納得できないような答えも、しかし私は神々が気まぐれということをよく知っているので、なんとなく、なるほどと頷く。
「なんじゃ使えんのう。」
「な、なによー!仕方ないじゃない!実際誰が出どころなのかなんてわかんないでしょ、普通!」
「おうおう、そうじゃな。アマテラスちゃんは仕事のできるいい子ちゃんなのじゃー。かわいいのじゃー」
つまらなそうな顔で呆れるヤマタノオロチに、アマテラスさんはムギーっと、諸手を振り上げる。しかし、ヤマタノオロチは改める気もなく、さらに煽る。
「ふんっ、崇め奉りなさい!」
逆効果だったけど。
やはり偉大な神はどんなこともお許しになられる寛大な方々なのかー。
神々のチカラって、すげー!
しかし、こんなことをしていては話が進まない。
「直接誰が、じゃなくてもいいんで、どこの神々が発案したのかとか知ってませんかね?」
その神の所属神話がわかれば、その神話的性質から、何か思惑がわかるかもしれない。
「んー、ごめん、それもわかんないわ。気づいたら出ていたような話題なの。どこの神が言い出しっぺかわかんないし、それどころかどんな目論見があるのかもわかんないわ。」
「そう、ですか。」
死んでから人(今回は神だが)を疑いやすくなったのだろうか。相手の動機や思惑を掴んでないと不安な気分になるのだ。
これが自分だけでなく、みんなのことにもつながり、大きな責任になってると考えるとなおさらだ。
「ま、気にしすぎることないわ。どうせ思いつきだろうし、いざとなったらうちらが守ってあげる。こんな危険なことをやらせているのだもの。それくらいの責任は取るわ。」
「アマテラスさん……ありがとうございます。」
まさに聖人のような台詞を惜しげもなく披露してくるアマテラスさんは、心優しく親切な神だ。
生き返らせてもらって、こっちが責任持って仕事を遂行しなければならないのに、逆に気を使わせてしまうとは、アマテラスさんが親切とはいえ、少々情けないような気もするけど。
「あ、そうそう。こっちも聞きたいことがあるのよ。」
「はい、なんですか?」
「叶華ちゃんはこれが終わったら、なにをする予定?」
これ、とは何のことだろうか。
宴会のこと、旅のこと、それとも……
「全てが終わった時、だよ。」
「………」
「叶華ちゃんはこの仕事に全力を尽くすだろうし、私たちもサポートする。……けど、永遠なんて存在しないわ。力ある神々だって滅ぼされることもあるし、私だって百億年ぐらいで寿命が来るのよ。もしも……もしも叶華ちゃんの成したことが全て無に帰って、何もかも失ったら叶華ちゃんはなにをするのか、それが気になるの。」
まっすぐ目を見つめて、真剣な声音で問い詰めるアマテラスさんは少し悲しそうだった。私を哀れむような、そして己の失態を恥じているような。
少しその気持ちはわかるかもしれない。
私は前世で家族を目の前で失い、そして私も死んだ。それが私の1回目の終わり。あのとき、血にまみれ、人形のように動かなくなった妹を、私は見ていることしかできなかった。
なら、私は訪れるべくして訪れる、2度目の終わりを受け入れ、それを直視できるだろうか?納得できるだろうか?
必ず訪れる、絶望。
そんな未来が確定してあるのにもかかわらず、家族を増やし、親しくなって、己が背負う悲哀の運命を重くする私を。
一人の人間に、簡単に背負わせ、永遠の重石にして、それを映画を見るが如く楽しむ神を。
この人は哀れんでいる。
そして、それを止められなかった自分を恥じている。
「お主なにをッーーーー「ま、落ち着いて、ヤマタノオロチ。」ーーーーーー………」
突然の質問にいきり立つヤマタノオロチを軽く諌める。確かにいきなり投げかけるにしては、重々しい話題だったかもしれない。
正直なことを言えば、私だってどうなるかわかんない。
しかし、ハッキリと予想できるのは、私はそれを目にすることだ。いつかは、絶対。
「何をするのか、ですか……。結論的に言えば、ハッキリ言ってわかりません。私は死ぬのは怖くありません。ですが、家族の死は何よりも恐ろしいかもしれません。私の仲間が誰か一人でも死んでしまうと、多分私の心は壊れてしまうでしょう。」
「……そう。」
「私はみんなを守るためなら、どんなことでもやる勇気がありません。他者を傷つけたくありません。……ワガママですがこれが私の本音です。」
だけどこれも、全て訪れること。
私に誰かを傷つける勇気はなくとも、いつかはやらなければならないことにも遭遇するかもしれない。いや、絶対遭遇するはずだ。
そのとき、もしも私がなんでもする覚悟ができていなかったら、それは確実な滅びに繋がるはず。
「そして、覚悟のできていない私では、やっぱりその質問に答えることはできません。」
「ふふっ、貴方のそれがワガママなら、私の『国取り』はどうなるのよ。ま、いいわ。結論を急ぐものでもないし、
アマテラスさんはくすっと笑い、納得したような表情になる。そして、グラスを傾け、お酒を飲み干す。
あの問いの答えは、きっと永らく|静寂『サイレンス》であり続けるだろう。
いずれ答えが出た時に、
「じゃ、これで最後。このタイムラインはまだまだ不安定だから、突然のイレギュラーも発生するわ。ちっちゃいことだけど、ね。ま、用心することに越したことはないわ。」
「あ、もしかしてそれもこっちで調べたほうがいいですか?」
「いや、いいわ。微々たるものだもの。」
最後にちょっとした忠告じみたことを連絡される。本人曰く、気にすることのほどでもないらしい。時々、異界からの来訪者が現れたり、突然、ものが宙に浮いたり、目が覚めたら体が縮んでしまっていたりするだけらしい。
本当に神々の微々たるものって、規模がでかい。だけど、天変地異並みの異変は起こってないので、安心である。
「あ"ぁ"〜、やっぱカリスマなんてロクなもんじゃないわー!疲れる!」
「アハハ、でも様になってましたよー?」
「ほんと?鏡花ちゃんからそう言ってもらえるなんて嬉しいわ!」
あ、カリスマ切れを起こした。
朗らかに笑顔を見せるこの人が、本当にさっきの神物なのか怪しくなってきた。
いつも気を張っていたら疲れてしまう、と言うことを教えてくれる彼女に、あなたは今日ぐらいしか本気のカリスマ出してないでしょう、と言いたくなる。
「それにしても、叶華ちゃんの擬人化した動物達、本当に偉い子よねー!うちの愚弟にも見習わせたいわ。」
「あ、弟さんって素戔嗚さんですよね?やっぱりイタズラとかしてたんですか?」
「ええ、そりゃもう!この前なんてたまに帰ってきたと思ったら、体に厄を引っ付けてそこら辺歩き回るし!しかも、御土産が『ヒグマの鼻くそ』に、『うしのう○こ』よ!?馬鹿にしてるんじゃないの!?」
うーん、イタズラっていっても、前者は確実に素戔嗚さん忘れてただけだし、後者は北海道のお土産なんだけどなぁ。
ま、気を良くして饒舌になってるところを邪魔するわけにもいかないので、しばらくアマテラスさんの兄弟に関してのマシンガントークをしばらく聞いていることにした。
〜〜〜〜〜一時間半後〜〜〜〜〜
「でね?結局花札に負けた私は一雫の御神酒も許されなかったってわけ!ほんと、五光に猪鹿蝶に赤単青単なんてどうやったら取れるって言うの!?」
「私もやったことありますけど、普通そんなの取れませんよね!『サマ○ウォーズ』のあの取り方なんて、実際できませんよ!」
な、長い……。幾ら何でも長すぎる。アマテラスさんからは、あらゆるタイムラインのあらゆる弟への愚痴が、次々と口から紡がれている。
話題は移りに移り、プレステ4から始まり、めんこ、大富豪、果てに花札へと移り変わってきた。
途中から宴会芸の披露が始まり、定番の腹芸、漫才、ダンス、カラオケまでやり始めた。
が、どうも神様達は飽きっぽいらしく、また、酒飲みに戻っている。
ここで、私は一つ大事なことを思い出した。
「みなさんの神使さん達にサンドスターを与えなくていいんですか?」
「あ、忘れてたわ。んー、そうねぇ……。うちのヤタガラスとお酒を飲める機会なんてそうそうないでしょうし、やってしまいましょう!」
「「「「「おーーーっ!!」」」」」
近くにいた神々も、アマテラスさんの言葉に同調して、歓声をあげる。
「せっかくだし、ステージの上でやりますか。私に神使さんを預ける
大きく声を張って全体に聴こえるよう叫ぶ。すると、あちこちの神様達から、「いいぞいいぞー」「お、メインイベントか?」「ついに来たか……」などと声が上がる。
駆け足気味でステージの上まで登る。そこからは宴会場の全てが見回せ、すべての神様が好奇の目を向けてきているのが解る。
当然だろう、ここから起こることは神々さえも目にしたことのない全くの『未知』なのだから。
………しかし、このとき私たちは全く予想もしていなかった。このあと、ちょっとした事件があるなんて。