「オラァ、照射ァッ!」
これで20匹目!
あ、どーも、この場に集まった神様の神使のみなさんにサンドスターを照射している叶華です。
簡単にあらすじを説明すると、ゆるい神様が私のお仕事のためというのを建前に、うちに酒飲みに来て、やっとこ本題に入れたとこだ。
住吉大社の兎、諏訪大社の白蛇、出雲大社の海蛇など、様々な動物達を照射してきた。
「ええーと?次はヤタガラスさんですか。では、照射!」
またも会場が光に包まれ、神々の歓声が上がる。大神・天照大神の遣い、太陽の化身の八咫烏なだけに期待も大きい。
光が収まると、先程までとは違う人間のシルエットが浮かび上がる。
「お初お目にかかる。余の名はヤタガラス。此度は我が神、天照大神さまの命をうけ、叶華殿に遣わされることになった。よろしく頼む。」
「うん、よろしくね!」
「おおー!礼儀正しい!」「これが、あのアマテラスのとこの子かよ……」「主より(胸が)ある!?」
「キャー!うちのヤタガラスちゃーん!こっちきてー!」
「………………」
主バカだ!主バカがいるぞ!?歓声の中にひときわ大きな黄色い悲鳴がある!考えるまでもない、アマテラスさんだ。
感激しすぎて、まわりの悪意ある独り言に気づいてない。
ヤタガラスもこれには流石に、引き気味の表情。太陽の化身がそんな微妙な顔していいのか?
戸惑いつつも、彼女は私を一瞥し、アマテラスさんの方に向かって飛翔してった。もしかして、人型となったことで気苦労も増やしてしまったかな?いや、まさかなぁ。
………はい、次々いくよ。
「次ィ!
暖かな光が宴会場の包む、が20回ぐらい起きている現象なので、ありがたみが薄れてきている。こんどは……鳩かな?はっきり言って適当に撃ったので、よくわかんなかった。
「
光が収まると、シルエットだったものは優雅な一礼をして、こうべを垂れ、挨拶をする。うーん、神話絡みで神性が若干ある動物って、口調があるていど丁寧だし礼儀がなってるよなぁ。(信じられる?あの神様達に支えてるんだよ?)
それにしても応神天皇を案内したあの白鳩か。あのヤタガラスもどきみたいな扱いをされてる可哀想な鳩。
「ん?あ、名前ね。そうはいっても……何か希望はある?」
「皆さんのようなかっこいい名前がいいですわ!」
「う、うん……」
かっこいい、を強調し、キラキラした目を向けてくるので、顎に手を当て深く思考する。えーと、
「えー、っと?じゃあ、
「えー、それっぽかったのに……」「いい線いってたと思うのになぁ」「え、やめちゃうの?」
それらしい言葉を繋げてったら、それらしいものが出来たが、自分の中のまともな部分が一瞬で却下する。『この厨二な名前、これからずっと聞くことになるんだよ!?』と、もはや悲鳴だ、悲鳴の域に達している。
ほら、彼女も腕プルプルさせながら、俯いているじゃん。やっちゃった、と思いつつ彼女に謝罪の声をかけようとした瞬間、
「いい!いいですわ、それ!」
彼女の目は照り輝いていた。私は何がいいのか理解したくなかったが。
私の中の常識が両手を振り上げ、床をバンバン叩いている。
「ミツルシルベノアマツバト……うんうん、私は大好きですわ!」
「………」
感激したように胸の前で手を握りしめ、詰め寄ってくる彼女は本当に嬉しそうだ。
困った、いや、弱った。
わ、私は、ど、どうすればいいの……?
この、ともすれば一生の恥になりかねないような、このネーミングを受け入れれるの?簡素にヤハタノシロハトとかにしとけばよかった。
神々の堪えるような笑いさえも今の私には気にならない。
「………………………………………わ、分かった。君がそれでいいなら、私は今から君をミツルシルベノアマツバトと呼ぶよ。」
「わーい!やったのですわ!ついに、ついに名を授けてもらったですの!」
長い沈黙の後に、渋々と(私が提案したくせに)その名前を了承し、正式に彼女の名前とした。
その瞬間に湧き上がる哄笑、いいや、そのどれも一つ一つが今の私には嘲笑にしか聞こえない。
彼女改めミツルシルベノアマツバトは髪と一体化した翼を器用に使い、宴会の席の方に飛んでった。
過ぎたことは仕方ない、と心の中で割り切り、私はさらに神獣たちにサンドスターを植え付けていった。なんか表現の仕方が、悪の組織感が凄いが、植え付けて行ったのだ。
そして、訪れた最後の一匹。
あらかたの動物たちはサンドスターを得て、それぞれの
何十分かこれを続けているが、未だ熱気が冷める気配はない。むしろ、上がっていっていた。
なぜなら、最後の獣は、ヤタガラスに匹敵するくらいポピュラーな獣だからである。
稲荷大社が神使、稲荷神の眷属とされる白狐のお稲荷様。今回のなかではトップクラスに人気の獣だ。
しかし、神々からの人気とは裏腹に稲荷神が一柱、宇迦之御魂大神は、無言に近いくらい寡黙に口を噤んでいた。
彼の眷属の新生というのに、あまりにも深刻な表情で。
そんな彼に向かいに座っていた同じ稲荷神である、佐田彦大神が彼の異変に気付き、声をかける。
「なんだ、ウカノミタマ。お主が眷属の新たな出発点を迎えようとしておるのに、そんな辛気臭い顔でどうする。」
「……心配なんだよ……」
酒が回っているのか、目を伏せがちに答える。
「なんだ、主バカというやつか。確かにあの娘はお主が手塩にかけておった娘であろうが……ほれ、応援してやr「違うんだ」……は?」
「あの娘には叶華と行動とともにするだけの実力はある。ただ、その、なんだ、すごく言いにくいのだが……」
頭をポリポリと掻き、やけに言い淀む。目も伏せられてて、やけに深刻気味だ。
「なんだ?ハッキリ言え。」
「あー、うん、そうだな。多分、俺が思うにな、今あの娘はーーーーーーーー反抗紀だ。」
「は?」
佐田彦大神が『は?』のhを発音するかしないかのところで、部屋に再び光が満ちる。
宇迦之御魂大神はあちゃー、と顔に手を当て、佐田彦大神は嫌な予感でもしたのか、顔を青ざめさせる。
光が治まりを見せ、最後の神獣の姿が露わとなる。
ミツルシルベノアマツバトの様に真っ白な全身で、衣服はブレザーとミニスカートだ。そして、珍しく素足が見えている。耳の内側は白狐の白い毛皮に対抗する様に緋い。
また、左足と尻尾には紐のようなものを結んでいる。最近は伏見稲荷に縁結び目的で行ってる人も多いからなぁ。
髪は尻尾に届くほどのスーパーロングで、瞳は黄金だ。
光の中から出で来た様はまさに神秘的で美しかった。
そしてあと一つ印象を挙げるなら、とても清楚ということだ。見た目もその印象に加点しているが、お淑やかな雰囲気がさらにその印象を増している。
ともあれ、まずはファーストコンタクトを……
「やぁ!こんにちは、私は叶華。よろしくね。さっきまでのことで大体理解してるだろうし、宇迦之御魂さんからも説明されてると思うから、事情説明は省くけど「嫌ですよ。」ーーーウェッ!?」
この流れでの拒否は卑怯なり!
などと、頭の中で巫山戯たことを考えるも実際頭は混乱した。
お、落ち着け、落ち着いて無理数を数えるんだ、ルート2、ルート3……表記できないやんけぇ!
テキスト的な問題で、無理数のカウント失敗をしでかした私は、さらに混乱の極地へと誘われる。
次の言葉を考えていると、オイナリサマがさらに続ける。
「まったく、その程度でひるみますか!?これだから凡人は、私の上に立とうなんて八万年早いんですよ!ーーーーーーそして、糞オヤジィ!何でもかんでも支持して、挙げ句の果てには人間に責任押し付けて、託児保育ですか!?私はお断りですよ!こうなったら、とことんまで抵抗してやります!」
一息に紡がれる罵詈雑言に瀕死にまで追いやられた脳に追い討ちがかけられた、がそれは宇迦之御魂さんへの糾弾を聞く前までである。
多分、私と大多数の神々は察しただろう、
『この娘、反抗期(紀)だ』と。
主従の関係を超え、もはや親子の仲になった宇迦之御魂さんに今更ながら、第二反抗期が来たのだと。
………そう考えると、微笑ましく感じてきた。ヤマタノオロチなんかは笑いを潜めようと四苦八苦している。
が、もう一人の当事者である、宇迦之御魂さんは深刻な表情をして、宴会の席に座している。
其の神威は凄まじく、周りにいる神を威圧している。
「……確かに俺は其のようなことを言われても仕方のない育て方をしてきたかもしれない。うちの神社の信仰の一端をお前に担わせていたこともあるし、祭事に関しては周りのどんな神より厳しく指導したかもしれない。それに関しては済まないと思っている。完全に眷属ができる範囲の仕事を超えていた。」
述べられていったのは謝罪の言葉。
確かに稲荷大社ってお稲荷様信仰も稲荷神信仰と同じくらい厚いな、と頭の中で共感する。
初めて会った時は、あんまりコミュニケーション取るのがうまくなさそうな印象だったけど、こんな一面があるなんてと思う。
しかし、宇迦之御魂さんの言葉はそれだけで終わらなかった。
「だが、それだけで叶華を貶める理由には足らないな。わかっているはずだ、彼女は黄金の精神を持っている。私に対し憤りを感じたからというだけで彼女に暴言を吐いては、ならぬ……!」
怒気を少し混ぜた其の言葉は、宴会場中の潜み笑いをも根絶し、親子間の仲を拗らせていく。
私たちはどうしたらいいか分からず、その場で偶像になるしかなかった。
「な、なんでよ!謝ったかと思えば、急にそいつの肩持って!少しぐらい私のことを優先的に考えたことぐらいあってもいいじゃない!?私より、叶華とかいうやつの方がいいっていうの!?神霊から見ればそんな塵芥、取るに足らなーーーー」
「いい加減にしろォッ!この出来損ないめがァァーーーーーーッッ!!」
「ーーーーーー」
私やヤマタノオロチ、延いてはこの場の神々全員が完全に凍る。今までの言葉の応酬が、生優しかった。戻して!(切実
ファーストコンタクトで、あまり対話力がないながらも愛情を感じさせた宇迦之御魂さんが、ついにキレた。
神威が文字通り黒いオーラとなって放出されている。祟りとか厄が詰まってそうな禍々しい気の奔流だ。
「俺は親である前に神であるのだッ‼︎神が人を慮るのは当然!子のことで、救いや利益を求める民を見捨てることがあってはならないィッ!よって、我が眷属の人間に対する罵詈雑言は決して許すことはできぬのだァーーーッッ!だいたいにしてお前はァッ!」
全ての神々が圧倒されている。宇迦之御魂さんの神としての流儀を語る其の様に。彼の娘に怒りをぶつけるその形相に。
しかし、彼は親として許されないことを言ってしまう。
「俺の実子ではないだろうがッ!」
「ーーーーーぁ」
怒りに任せた罵声が会場に響き渡るなか、オイナリサマから小さく短い絶望の音が漏れる。
其の音の方を向けば、石のように固まったオイナリサマが目に入る。
さっきまでの威勢よく、私に噛みついてきたその様は何処へやら、まるで抜け殻を思わせる様子だった。
なんてことを、なんてことを言ってしまったんだ!
「あ、あなたは、あなたは!なんてとんでも無いことを……!」
驚愕と怒気が、無意識にその言葉のうちに宿る。彼は宇迦之御魂さんは親として言っていいことの一線を超えた。
いくら反抗期の娘がやらかしたとしても、彼女が子供であるということを否定してはならないのに!
「ーーーーーーーーッ!」
「あっ!」
痛々しい沈黙の後に、まずアクションを起こしたのはオイナリサマだった。
しかし、彼女は宇迦之御魂さんをぶん殴りに行くわけでもなく、その場に泣き崩れるわけでもなく、ただ、その場から逃げ出したのだった。
不運にもオイナリサマの方が扉の方に近かったので、不意をつかれた私たちは誰も彼女を捕まえられなかった。
あとにのこるのはオイナリサマに続いて逃げ出したくなるかのような空気の悪さのみ。
数分にさえ感じるような20秒ののちに、どこの男神だったか、口を開いた。
「取り敢えずさ……………酒飲もうぜ?」
「「「嘘だろ、素戔嗚!?」」」
「そうですね。叶華、お酒を持ってきてください。」
「「「『月読命』を月までブッ飛ばしたくなるこの衝撃…」」」
「お代わりよー!お代わりを持ってきなさーい!」
「「「飲んどる場合かァーーーーッ!!」」」
返して!シリアスを、シリアスを返して!
酒が入りすぎだバカ神共!あの雰囲気からよくそんなこと言えたものだねぇ!宇迦之御魂さんさえも目をまん丸にしてるじゃないですかぁ!?
あぁ、ヤタガラス、その隣にいるロリババァ女神をぶん殴って!
「どうしてくれんだよ!どの上司もポンコツじゃあないか!?」
「マジかよ、宇迦之御魂サイテーだな!」
「体で払え、宇迦之御魂よ!」
あぁ、違うんですよ神様A,B,C,、悪いのはあの能天気な酔っ払い共だけでいいんですよ。この場合、宇迦之御魂さんは悪くないんですよ。そして、1柱やばい人いますよ。
もう収集つかなくなっちゃうよぅ!
余った酒をそのまま、がぶ飲みし始める三貴神、ああもうめちゃくちゃだよ!
「ああー、叶華ちゃーん?
どっかの神の言葉が耳に入り、錯乱状態だった私の頭を冷ます。
って、飲みながら言うなァーーーーッ!
「もう、いいです!解りました!お酒は出しとくんで、勝手に呑んでてください!私は彼女を探しに行きます!」
半ギレで叫び散らせば、おぉーーっ!と歓声が上がる。結局あんたらも飲みたいんじゃないか!?
〜〜〜〜〜〜ッ!もういちいち突っ込んでいたらきりがない!
まず、私は能力を使って卓の上に作り置きしておいた料理や酒をあらん限り出す。
「「「「「やったぜ」」」」」
その瞬間、飯にありつく神々。唐揚げとか多めに作っといてよかったぁ……。
そして、次に……
「ヤマタノオロチに、【インディゴウィズダム】の権限割譲。ヤマタノオロチ!これで皆さんの暇つぶしに協力してあげて!」
「おぉ!いいのか!?ちょっとやってみたいことがあるのだ!礼を言うぞ、叶華。」
さぁ、私も少し、準備をしてから行くかな。
……宇迦之御魂さんは顔に深くシワを刻んだまま、深く考え込んだように動かない。言ってやりたいこともあるけど、本人が深く考えてることの邪魔はしちゃいけないな。
それにしても、はぁ……。親子ゲンカの仲裁をこんな私がするなんて、皮肉なもんだなぁ。
あ、忘れてた。施錠しとかないとオイナリサマ外に逃げちゃうじゃん。
ま、これからうちに預けられる娘なんだから、主人としてこれくらいのことはしてあげないとなぁ。
それに、ちょっと思うところはあるしね。
アプリ版のオイナリサマの反抗紀の親子ゲンカということで書かせてもらいましたが、なんにしたって三貴神が空気読まなすぎですね。と言うことで次回は、オイナリサマの捜索ということに必然的になりますが、やっとこみんなに出番が回って来ますよ。ウレシイヤッター!