無能な俺とスパイ共   作:血塗ろ/(・x・)\

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-プロローグという名の記憶の遡行、その残酷さ-

 

 

「いってきます、母上、父上」

「えぇ......元気でね」

「おう、いってこい!」

 

 

 

 誇らしそうに俺を見つめる母と、俺の背中を押して軍へと行かせた父を見たのはいつのことだったろうか。

 安物のベッドの上で横になりながら、そんなことを考える。

 ぺんだこを沢山作りながら、ただ只管に勉強していた幼少期の頑張りは泡と化した。

 死にたくない。その一心で作法は勿論のこと、様々な勉学、言語にも手を伸ばして大学に合格した、はずだったのに。

 

「.........ハァ。どうしてこうなった.........」

 

 幸運が逃げるとかもクソもあるか。

 現時点で、俺のラック値はマイナスを天元突破しているのだから。

 

 

 

 

 -プロローグという名の記憶の遡行、その残酷さ-

 

 

 輪廻転生(てんしょう)

 

 仏教やヒンドゥー教などといったインド哲学、東洋思想で信じられている考え方。

 例としては、ヒンドゥー教やそれの元となったバラモン教では死んだ魂は月へと登り、雨として地に降り注ぎ作物となり、精子となるとされている。

 輪廻転生の中にも転生型、輪廻型、リインカネーション型なども存在するらしいが、そこの説明はまた長くなるのでまたの機会にさせていただこう。

 

 

 俺は20××年に生きていた少年だった。

 だった、と言うのも、きっとこの前置きを呼んだ人からすれば「あぁ」と納得するだろう。

「俺」という人格は、2気づいたら第二次世界大戦直前の大日本帝国の一市民として生まれていたのだ。

 輪廻転生の考え自体は知っていたが、存在するなんて露にも思っていなかったし、なんだったらまさか過去に生まれ変わるだなんてことも考えていなかった。

 前世の十数年間の記憶と、現世の数年間の記憶。

 そして、本来だったら物心がつく前の時期だと言うのに完全に出来上がっていた人格。

 これら全てを統合して転生と言わずに何と言うのか?

 非科学的なことは信じない質だったが、非現実的なことをこうして体験してしまった今では信じる他ない。

 勿論、初めは俺が死の狭間で生み出した妄想かとも思ったが寧ろ大戦前世界に生まれ変わるなんて妄想するなんて俺の思考を疑う。

 何より、俺は自分が死んだ時のことを鮮明に覚えているのだ。

 たった十数年間しか生きられなかった前世。

 今では生まれつきのハンデなどはなく、例え妄想だったとしても新たな人生を楽しまずにどうする。

 そう開き直った俺は、まずペンを持った。

 

 再度言おう。

 俺が生まれ変わった世界は、「第二次世界大戦直前の大日本帝国」だ。

 俺の生まれた家、辻井家で俺は次男だった。しかもハンデもない至って健康的な体だ。

 戦争、次男、健康的。この三つが揃えば、二十歳で徴兵されることは逃れられない。

 折角生まれ変わったのに人間魚雷だとか神風特攻隊だとか、そんなの絶対に嫌だ!!

 痛いのは嫌いだし死ぬのもごめんだ。

 それだったら死ぬ気で勉強をして大学へ行ったり、会社を設立して賄賂とか握らせて徴兵を免れたい。

 そんな甘く温い考えで、俺は家が裕福なことを活かして勉強をしまくった。

 五つ年上の長男よりも頭がいいぐらいには、頑張ったのだ。

 

 だが、そんな俺が受験した高等学校高等科からの合格通知を待っている時。

 母から嬉しそうに渡されたのは、大日本帝国陸軍からの手紙だった。

 いつの間にか、俺は受験が取り消されて両親の手によって軍への志願兵となっていたのだ。

 手紙を握り潰し、父の元へと直訴しに行った俺に父が言った一言は何とも残酷なもので。

 後にも先にも、父を殴り飛ばしたのはあの時だけだったと思う。

 

 

 結局、逃れられずに陸軍へと入り、幾つか修羅場をくぐり抜けて気づけば少尉になってしまっていた。

 恐らく、このまま俺は軍に使い潰されて戦争で死んでしまうのだろう。

 数年間、軍で鍛えておきながら同年代と比べると上背だけがあって粗末な体を見下ろして溜め息を吐いていた時だった。

 参謀本部からお呼びがかかった。

 もしや頑張りが認められてーーー!などと誘惑に釣られて向かった先にいたのは陸軍内でも噂が囁かれる佐久間中尉と無能大sおっと、武藤大佐。

 そこで伝えられたのは、「佐久間中尉と共に新しく設立されるスパイ養成学校ーD機関へ出向け」という命令だった。

 連絡係という建前で地位を横取りされたくない参謀本部のスパイとして行かせられるのか......まぁ、戦地に赴くよりも全然マシだな。

 そう思い、二つ返事で頷いた俺はその養成学校へ行くために、髪を伸ばしている最中だ。

 え、何で髪を伸ばすかって?

 その養成学校を設立した結城中佐とかいう人が一目で軍人とわかるような奴をウチに出入りさせるわけにはいかないとかほざきやがったそうで。

 こうして俺は翻訳や通訳やらのバイトで何とか食いつないでいる。

 

「辻井少尉、いるか?」

「はい」

 

 扉がノックされ、慌てて立つと佐久間中尉が顔を出した。

 前に見た時は丸刈りで如何にも軍人らしかったが、髪が伸びた今では少し体格の良いエリート会社員みたいな感じだ。

 

「準備はいいみたいだな。では、D機関とやらへ赴こうか」

「はい」

 

 はてさて、漸く養成学校とやらに行けるのか......一体どんな奴らが待ち受けているのかが想像できずに恐ろしいな。

 

 

 

 

 

 そして、養成学校へと赴いた俺と佐久間中尉を待っていたのは十癖ほどもありそうな捻くれ者共と、魔王だった......!?

 

 次回、『佐久間、死す!』死なないで、佐久間さん!!佐久間が死んだら、俺はどうなるの......!?

 乞うご期待!

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