※政治家の方や日本人を罵倒するようなことを辻井が考えていますがお気を悪くされないでください......ヤバイかなと思った方は速やかにブラウザバックをしてください。
ここで予め、注意喚起は致しましたのでコメントなどでこれに関する指摘などについては反応しませんのであしからず
「馬鹿か、貴様」
痩せぎすと言っていいだろう、身長に対して脂肪などと言った無駄な肉が何もない体の男が唸るようにそう言った。
男が杖をつきながら、俺の横にいる佐久間中尉に耳元で何かを囁くとパッと佐久間中尉が敬礼を解く。
大方、背広姿で敬礼なんて自分が軍人だと言っているようなものだ、とか言われたのだろう。
佐久間中尉は嫌いではないが、わざわざ髪が伸びるまで待機させられていた理由を忘れてしまったのか、彼は。
俺と同じぐらいの背丈の男ーー結城中佐は、片足を引き摺りながら椅子へと座る。
鋭い眼光に睨みつけられて、反射的に攻撃する物を目で探してしまった。
あんな真意のわからない視線を向けられて、恐ろしさを感じない軍人はいないだろう。
しかし、結城中佐はそんな俺の視線や戸惑いに気付いているのだろう、クッと口角を上げた。
ヤッベ、流石に上官にこれはダメだよな......まさかここで首とか切り捨てられないよな? ほら、スパイとも言うから結城中佐が持つその杖の中は実は剣でしたー、とかありそうだし......
「それで、貴様らが参謀本部から派遣されてきたスパイというわけか」
「違います。自分は、スパイのような卑劣な行為など......」
結城中佐の言葉に、咄嗟に反論した雰囲気の佐久間中尉。
おいおい、嘘だろ......ここはスパイ養成学校で、結城中佐自身も過去はスパイだったというのに本人の前で卑劣な行為って......
「ほう、スパイは卑劣か」
結城中佐の口角が再度上がり、ゾクリと背筋が凍った。
怒っている、雰囲気ではない。
どちらかと言えば嘲笑っているような、馬鹿正直な佐久間中尉を無能だと判断したのか、それとも、結城中佐本人の前でスパイは卑劣だと言い放った佐久間中尉をそういう意味で評価したのか。
影と一体化した結城中佐の目が俺を貫いた。
「貴様は、スパイについてどう思う」
「あ、えっ私ですか」
「貴様以外に誰がいる」
突然の問いかけに、つい吃ってしまった。
いやでも、スパイについてどう思うって言われてもなぁ......
早くしろ、と急かすような視線に、渋々口を開いた。
「......佐久間中尉の言葉を否定するようではありますが、少なくとも私は卑劣な行為だとは思いません。ただ、スパイをするような人間は一体どんな人間なのか、という興味はあります」
「.........ほう? 興味か」
横から佐久間中尉の、「お前は一体何を言ってるんだ」っていう視線が痛い......いやだってスパイって別に卑劣な行為だと思えないんだけど.........まぁ、それも俺が転生者だからなんだろうけど。
真意はわからないが、さも愉快だと言うようにニヤリをする結城中佐に空恐ろしさを感じつつ、俺は今後の生活で受難が待ち受けていないことをただ祈った。
-ジョーカー・ゲーム、その娯楽性。そして日本人の無能さについて-
「貴様ら!」
くぐもってはいるが、ハッキリと耳に届いたその声に目を擦った。
何だ、佐久間中尉の声だ。
こんな夜中にあの人は一体何を怒鳴っているんだ。
今すぐにでもベッドに戻りそうな体を叱咤して、声が聞こえた食堂へと向かう。
「貴様ら、一体何を......何という不敬なことを.........!」
食堂では怒りに打ち震える佐久間中尉を白けた表情で見るd機関生たちがいた。
「可能性を議論しているだけですよ。天皇制における
三好がスラリと述べたのは今の日本ではまず議論しようものなら首を物理的に切られるようなことだった。
興味が湧き、食堂内へ入って福本から水を貰う。
現代日本で生きていた俺は確かに生涯、片手で数える程度しか病室から出たことはなかったがその分、本やテレビなどは飽きるほど見ていたためにそういうことに疎かったわけではなかった。
だからこそ、現代日本を知っているからこそ、天皇制云々の正統性などといったことは馬鹿げているとしか思えない。
一呼吸を置いて、佐久間中尉が口を開く。
すぐに言い返さなかっただけ、佐久間中尉もこの機関に慣れてきたのだろう。
「すると貴様らは、畏れ多くも現人神であらせられる天皇陛下の正統性を議論しているというのだな?」
「及び、合法性の問題ですね」
機関生の一人が平然と頷いた様子を見て、頬杖をついた。
こりゃ、佐久間中尉ブチ切れるな。
「そもそも、今日の天皇制に見られる特殊性は他のアジア諸国においては到底受け入れられるものではないですからね。美濃部教授の天皇機関説に立ち返って、もう一度根本原理かた組み立て直した方がいい、というのが僕の主張です。佐久間さんのご意見は、」
「貴様、そこに直れ!!」
三好の言葉を遮って、背広姿でありながら抜刀しようとした佐久間中尉に溜め息が出そうになるが、咄嗟に飲み込んだ。
というか、佐久間中尉の反応がこんな日本では正しいものだ。
俺や、正統性などを考える機関生が異常なだけで。
「まあそう興奮なさらず。一緒に話し合いましょうよ。折角、辻井少尉もいるのですから」
「馬鹿め、これ以上貴様らと話しあうことなど何も無い!! このことは明日、参謀本部に報告する。貴様らの処分は追って通達するからそれまで首を洗って待っていろ!」
「佐久間中尉、落ち着いてください」
「辻井、これが落ち着いていられるか! お前も陸軍軍人であるならば、なぜ奴らに反論しない!!」
佐久間中尉が俺に噛みつき、機関生の注目が俺に集まる。
面倒なことになったなぁ......俺は単に彼らの議論に興味があっただけだったのに。
「今、佐久間中尉が怒って何になるのですか。佐久間中尉も見たでしょう? D機関の選抜試験を。それを突破した彼らを化け物だと言ったのは中尉自身ではないですか。彼らの思考や脳の仕組み自体が我々と違うのです」
「だがっ」
「どうした」
いつの間にか佐久間中尉の背後に結城中佐が立っていた。
えっ、うっそ気配感じなかったぞ......?
現れた結城中佐に三好が状況説明をすると、中佐は軽く手を振って「続けろ」と言った。
愕然とする佐久間中尉に、結城中佐は俺たちの時代では当然の考えを説明し始めた。
それは、いつの間にかスパイについての話になっている。
と、結城中佐が佐久間中尉に向かい合って、突然尋ねた。
「もし貴様がスパイだったら、敵に正体が暴かれた時はどうする?」
「その時は、敵を殺すか、さもなければその場で自決します」
武士道とは死ぬことと見つけたり。
名を惜しめ。
見事に花と散ることこそ、武人の誉れ......なんて、軍隊で叩き込まれたことを佐久間中尉は思い出してるんだろうなぁ。
呆れ半分、言い切ったという尊敬半分で佐久間中尉を眺めていると機関生たちからクスクスと笑い声が立つ。
「辻井。貴様はどうする」
「......そうですね。私の場合、ですか」
佐久間中尉へ質問し、答えを聞いた後に俺へと同じ質問をする。
その流れに慣れてしまった自分が悲しい......しかし、俺がスパイだったら、なぁ。
スパイは敵国の情報を自国へ齎すのが仕事だ。
自分が死んでは元も子もない。
「敵は殺し、その死を偽装します。最悪、情報だけでも自国へと送り、敵と相討ちにしますかね」
そう答えると、結城中佐は口角を上げた。
うわぁ、結城中佐が笑っちゃうぐらい間抜けな答えしたかな、俺。
「なぜ、そう考えた」
「なぜ、と言われても......スパイは秘密情報を自国へ齎すものです。その情報を持ったまま自らが死ぬのは、その.........」
言い淀む。佐久間中尉の目の前でこれを言うのははばかられるが.........結城中佐からの視線が怖い。
「......愚策、としか思えません。それに、戦場なら兎も角平時で人が死ねばその国の警察隊などが動くでしょう。そうなると、隠密もクソもないです」
「なっ.........」
わなわなと佐久間中尉の握られた拳が震えるのが視界の片隅に見える。
言っちまったー......遠回しに佐久間中尉が馬鹿だって言っちゃったよ.........
「ふん。答えは佐久間よりかはマシだが、それでもまだ足りんな。いいか。殺人、及び自決はスパイにとっては最悪の選択だ。説明は今、辻井がしたため不要だろう。貴様の答えはおよそ周囲の詮索を招くだけの、無意味で、馬鹿げた行為でしかあるまい」
ついに頭を抱えてしまった。
どうしてこう、機関生といい結城中佐といい、佐久間中尉の血管を切らせるようなことしか言わないのか......
「それは、死を恐れる卑怯な考えです! 自分には、やはりスパイは卑劣な存在だとしか思えません」
「それなら聞くが、貴様が自決してそれでどうなる?」
「死ねば.........靖国で、胸を張って同期に会えます」
「ほう、すると貴様は靖国で同期に会って自慢するために死ぬわけか。だが、もしも会えなかったらどうする?」
「会えないはずはありません」
結城中佐と佐久間中尉の問答は、まるで復唱のようだ。
佐久間中尉は恐らく、結城中佐の問いに同じことしか答えない。
「三好、どう思う」
「
馬鹿の一つ覚えのようなものだ。
三好は新興宗教のようなものだ、と説明するがまさにそうだろう。
いや、新興宗教は結局、身内で破滅していったりするからそれでいいが今の日本帝国はそれを国としてやってしまっている。
日本は、日本人は何とも間抜けなものか。
根本から、日本はきっと間抜けの集まりで、間抜けな人間が自らの粗末さに気づけず、トップに立ってそれを下の人間共が鵜呑みにしてしまう。
これは現代日本にも言えたことだった。勿論、俺は学校に通えれるような体ではなかったから両親や先生に勉強を教えてもらってテキストとかをやる程度の脳しかなかったから、彼らや大日本帝国の軍のお偉いさんたちは俺以上に頭はいいのだろう。
だが、そこじゃないんだ。
単にテストや成績と言ったもので幾ら点を取れたって、事象や思想に対する脳がなければそれは無能と言ってもいい存在だと、俺は考える。
だってそうだろう? 上や尊敬する人間から言われたことをただ鵜呑みにしたり、それに疑問を持たなければそれは洗脳と言われるものになる。
洗脳にも様々な種類があるが、偏に洗脳を受けた人間が全て被害者というわけではないのだ。
そして、日本人に限ったことではないが、特に日本人に顕著なのが、洗脳が解けた時にそのことを他人のせいにすることだ。
生まれた時から、それが当然だと育ってきた日本人も当然いる。
だが、その洗脳から目覚める機会はあったはずなのだ。
それを蹴り、盲目に浸る。
それこそが日本人の悪い癖であり、今の日本人のことではないのだろうか。
「辻井さん、辻井さん?」
「......悪い」
気づくと食堂に佐久間中尉の姿はなかった。
実井が俺の肩を揺さぶってくれたおかげで、思考の海から意識が引き上がった。
「どうしますか、辻井さん。僕たちはポーカーをしますが」
「.....いや、今日は遠慮しておこう」
残っていた水を飲み干し、食堂を出た。
彼らが「ジョーカー・ゲーム」なるものをしていることを知ったのはいつだったか。
俺には到底突破できないであろう試験を突破した彼らがカードゲームをしているということで、興味が出て観戦したことがあった。
その時、当然のようにイカサマしていること、そしてそのイカサマを隠そうともしていないことにーー彼らにしてはイカサマの誤魔化し方が粗末だったーーついて、ゲームが終わった後に問いたことがあった。
その時、聞かされたのがジョーカー・ゲーム。
仕組みやルールを聞いて、俺は絶他に参加するものかと誓ったものだ。
自然な動きで味方をつけたり、裏をかいたりなんて高度な技は俺にはできない。
彼らのゲームの結果がどうなるかを見ているのは面白いが、食堂にいるということはジョーカー・ゲームへの参加表明ともなる。
味方にも敵にもプレイヤーにもなる気がない時は、さっさと寝たほうが効率的だ。
部屋にあるベッドに横になり、少しばかり思考を巡らせた。
彼らについて。
D機関はスパイ養成学校だ。
そして、彼らは結城中佐に訓練やスパイとしてのノウハウを学んでいる最中だがその途中でありながら、スパイとして任務に赴くこともある。
彼らは先程のこともあったが、普通の人間では至らない考えをしている。
まさに、天才。その存在は闇に隠され、未来の歴史にも見られないが、きっとあの現代日本が存在したのは彼らの存在も大きかったのだろう。
けれど、一番疑問なのはどうしてあのような天才が生まれたのか。
そして、現代日本に彼らのような天才が存在しないのか。
甚だ疑問だ。
「(きっと、彼らのような天才が存在していれば、政治も腐敗せずにマシだったのだろうな)」
そんなことを考えていると、再び睡魔が襲ってきた。
こういう時は欲に溺れるのが正解だ。
目を閉じて、心地よい眠りに体を明け渡した。
ーーーーーーー
Q.俺は今、どこにいるでしょーか
A.アメリカ人技師ジョン・ゴードン宅、今にも切腹しようとしている佐久間中尉の前にいます
待ってえええええええ!!!!!!? 佐久間中尉、お願い貴方に今死なれたら連絡係を外されるまでの期間、俺が機関生たちの玩具にされちゃうから!!!! 生贄の貴方に死なれたら困るんですううう!!!!!!
「ドウシタノデスカ? サァ、ハヤクハラキリショーヲミセテクダサイヨ!」
片言のヘッタクソな日本語で話すゴードンに唾を吐きかけてやりたい。
何時ぞやの天皇制云々かんぬんの話からどれ程経っただろうか。
無能たいs.....無能大佐もとい武藤大佐から、D機関を使ってスパイ容疑がかけられているジョン・ゴードンから証拠を見つけてこいとの指令が出た。
佐久間中尉は馬鹿正直にそれを結城中佐に報告し、こうしてd機関を偽憲兵隊に仕立ててジョン・ゴードンのところへ来たわけだが、なぜか証拠は出てこなかった。
いつの間にか三好が、証拠が見つからなかった場合に佐久間中尉が切腹をするなんていう約束を取り付けていたために、中尉は切腹しようとしているが.........流石無能大佐。そして、流石鰯の頭。
初めは外見だけならイケメン将校だし陸軍士官学校卒業してるからエリートだー、なんて佐久間中尉を尊敬していたが、D機関で機関生たちと過ごしている間に、日本の異常性を再確認し、佐久間中尉の阿呆さにも気づいてしまっていた。
実際には佐久間中尉は結構観察眼も鋭く、切れ者ではあるけども、これは鰯の頭だと言われても仕方ない気がする.........暗号コードだかなんだかが盗まれたのなら、コードを変えればいいだけの話だろうが。
まぁ、きっと上はスパイに出し抜かれたという間抜けなことを露見させてくなかっただけなのだろうけど。
と言うか、そろそろどうにかしないと佐久間中尉がマジで腹を切ってしまう。
はてさて、どうあの人を助けるか......
そんな風に思考を巡らせていると、佐久間中尉が刀を収めた。
「Back of the imperial portrait」
「っ!?」
それなりに流暢な英語で指示を出した佐久間中尉に、短く返事をして御真影へと手を伸ばした。
後ろで小田切たちに押さえられたゴードンが英語で罵ってくるが知るもんか。
目的のものがその裏にあり、口角が上がった。
はてさて、どうやってあの無能大佐を詰ろうか.....
ーーーーーーーーー
「貴様、うちで訓練を受ける気はないか?」
結城中佐からの言葉は俺ではなく、佐久間中尉へと向けられたものだった。
今し方、佐久間中尉は結城中佐の義手や偽りを暴いたばかりだ。
「自分はあくまでも軍人です。必要とあらば、自分はいつでも腹を切る覚悟があります。ただーーーーー」
散っていく桜花を眺めながら、止まった言葉の先を俺はわからない。
彼は、きっとこれからも宣言通りに軍人として生きて、軍人として散っていくのだろう。
彼は、そういう人間だから。
「辻井。貴様はどうする」
「.........は、私、ですか?」
つい、そう返してしまった。
あれ、D機関に誘われたのって佐久間中尉だけだよね?
俺はどうするか、か。
「......私は、」
「答えはいい。来い」
「は、」
佐久間中尉を置いて歩き出してしまった結城中佐を追う。
答えはいい、とはどういうことなのか。
「貴様は歪な人間だ」
独り言のように話す結城中佐。
「この国で生まれ、軍人としての教育や訓練を経ておきながら三好たちと同じような考えを持つ。それどころか、自分の思考が当然であり正しいものであるとすら思っているだろう」
「......勿論です」
全て見抜かれていたのか。
結城中佐の言葉に頷き、返事をすると雰囲気で中佐が笑ったことがわかった。
「佐久間もそうだが、貴様は軍などで駒にするには惜しい」
..................嫌な予感がする。嫌な予感がするぞぅ......今の内に断った方がいいかもしれない......
「結城中佐、私はっ」
「貴様をD機関の教材にしよう」
あっ、そっちですかー............っていうか、えぇ........? 教材..............? 俺が、あの化け物共の?
困惑する俺を振り返り、口角を上げる結城中佐は確かに、魔王のような姿だった。
これで終了みたいな流れですがなんだかんだで続きます! 下手するとジョーカー・ゲーム関係なしのグッチャグチャなお話になるかもしれませんが一応続きます!!!