無能な俺とスパイ共   作:血塗ろ/(・x・)\

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今まで以上にごっちゃごちゃです。お許しください


-◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼について-

「貴様、やる気はあるのか」

「僭越ながらっ、申させていただき、ますっ、と! 私は、一軍人でっ、うおぁっ!? あ、あり、決してっ、D機関の一員でっ、はないっのです、がああああああああっ!!!!!?」

「ちょこまかとっ!」

「やめろマジ本気で来んなあああああっああああああああああああ!!!!!!!?」

 

 俺は激怒した。必ず、かの結城中佐を倒すと決意した。

 

「......実井、仕留めろ」

「了解しましたっ!」

「ひいぃっ!!!」

 

 

 

 

「どうしたんだ、辻井。お前から話したいだなんて」

「佐久間中尉ぃ.....俺、佐久間中尉の隊に行きたいです.........もうあんな魔王の下嫌だァ......」

「はは。苦労してるんだな。まぁ、頑張れ。あの結城中佐が半月も交渉してD機関に引き抜いたぐらいなんだから、相当お前が欲しかったんだろう」

 

 佐久間中尉の慰めが心に染みる。っていうか、俺そんなに結城中佐に気に入られてたの......? 嫌すぎる。

 酒を片手に佐久間中尉に頭をガシガシと撫でられ、揺られる。

 苦笑する佐久間中尉はまるで兄のようだ。

 兄と言っても、今世の兄ではなく前世の。

 顔立ちとか体格自体は全く似ていないけれど、俺の愚痴や文句を聞いてくれて、慰めてくれる。

 あの人もよく、こうして俺の頭を撫でてくれたなぁ......

 

「しかし、実戦は負けナシとも言われたお前がそんなにボロボロとはな。一体何があったんだ?」

「戦闘訓練です。普段の戦闘訓練は、軍人を相手にした刀での無力化なんですが、機関生の奴らの殺意に釣られてついつい本気出しちゃって......そしたら、情報を持って逃走する敵国のスパイ役にされてしまって。銃だとか薬だとかを使って俺を捕らえようという訓練に変わって、俺が捕まった場合は決して安くない罰金を払わせられる約定に......うぅ........そうしたら、実井が本気で捕まえに来て.........」

 

 はは、あれ、おかしいな? しょっぱい水が目から出てきたぞ?

 

「そ、それは何とも言えんな......すまないが俺にはどうすることもできない」

「わかってはいるんですけどね.........俺が機関生を倒すのもありなので、いっそのこと情報を餌にしたり、D機関の掟である『死ぬな・殺すな・とらわれるな』を盾にしてしまおうかな、って」

「実井や波多野相手には効かないんじゃないのか? 福本や小田切にはいいかもしれないが」

「そこなんですよねぇ.........波多野は兎も角、実井様や三好にはどう考えても効かない気がします」

 

 でも、やるしかない。これ以上罰金を取られたら俺の唯一の楽しみである煙草と酒が買えなくなってしまう......!

 どうにかして逃げ切らないと......でもあいつら化け物だしなぁ

 

 

 フツッ

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーー

『◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼』

 ーーーーーーーーー

 

 

「あれ、佐久間中尉何か言いましたか?」

「え、いや? 何も言っていないが、どうした?」

 

 突然、何かが聞こえた。

 言葉のようで言葉ではない、ノイズだらけの音声が。

 飲み過ぎたか、とマスターに水を頼む。

 

「ストレスから来る幻聴かな......?」

「無理はするなよ? 何だったら、俺がなんとか上層部に掛け合ってみよう」

「ありがとうございます。現時点で大分無理はしてるんですが、取り敢えずもう少し頑張ってみます」

「そうか......俺はお前がこちらに来るのをいつでも待っているからな」

「はい」

 

 何だったんだろうか、さっきのは。

 ただの空耳だったら良かったんだろうがそれにしてはあまりにもハッキリし過ぎている。

 でもまぁ、大丈夫だろう。

 

「マスター、サンフランシスコを一つ」

 

 取り敢えず飲んで愚痴って、また明日からの仕事を頑張れば大丈夫だ。

 あんな幻聴、すぐに忘れる。

 

 

 

 

 -◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼について-

 

 

 

 

 

「おはよう、ーーー君。今日の体調はどう?」

「おはようございます、先生。体調は頗るいいですよ。これなら外で走って遊べるかも、」

「ダメだからね?」

「うっ......少しぐらいいいじゃないですかー」

 

 苦笑し、その瞳に悲しみを見せた先生に罪悪感が募る。

 違うんだ、先生が全力を出し尽くしてくれてるのはわかってる。だからこそ、明るく振る舞って彼らを安心させたいのに、

 

「さ、朝ご飯を食べようか」

「はーい!」

 

 どうして僕がやること成すことは全て裏目に出てしまうのだろうか。

 

 

 

 

 

「ーーーーーー政治家って、どうしてバカな人ばかりなんですか?」

 

 そう問うた僕に、先生はギョッとした。

 メガネの奥の形のよい瞳が開かれるのが珍しくてジッと見つめてしまう。

 

「それは、どういうことなのかな?」

「全員は全員、バカとは言いません。勿論、皆さん頭がいいから政治家となって国を支えてくれています。でも、その割にはお粗末な気がしてなりません。なりたくてなった職業に、どうして全力を尽くさないんでしょうか......確かに政治家の方々も人間です。過労になるほど力を出せとは思いませんし言いません。けれど、今の政治家の方々は国の現状や問題を掲げるだけでそれをどうやって解消するのか考えていないように思えるんです。例えば、いじめによる自殺問題なんかもそうです。マスコミやメディアにも問題がありますが、いじめなんてそこら中にあるじゃないですか。勿論、いじめをする側、される側にも問題はあります。何故そんな非効率的で生産性のない行動を取るのか疑問でなりませんが......分担して解決策を見つければいいじゃないですか。経理は誰が担当して、という形で。ダメなんですか? 総理大臣は兎も角、この人はこれを担当して、この政治家はこれを担当して、と。その人たち全員が解決策を出してそれを練ればいいじゃないですか。モラルやプライバシーなんて関係ないでしょう? だって、いじめという事象がある時点でいじめられている人のプライバシーも尊厳もクソもない。道徳の授業もそうです。道徳であれはダメこれはダメ、なんて大人の都合や理想を押し付けるだけの無駄な授業。不必要だと思います。すみません、論点がズレましたが、」

「いいよ、ーーー君。一度ここでお話を止めようか」

 

 僕はただ、不思議に思ったことを、疑問を口に出しただけなのに。

 どうして、彼はいつに増して悲しそうな表情をするんだろうか?

 

「.......君は、あの人によく似ているね」

「あの人?」

「ーーー君はこんな箱の中で生きるには頭が良すぎる。テレビや本、僕なんて人間しか傍にいないなんて......ーーー君は不思議に思っていることが沢山あるんだね」

「......でも、僕は疑問に思っても、それを解消する答えがわかりません。今し方、政治家の方々をバカだと言いましたが仮に僕が彼らの役割を果たせと言われたら、何もできません」

「何もできないことはないよ。ーーー君。僕からノートと鉛筆をプレゼントしよう。ノートに自分が疑問に思ったこと、不思議に思ったことを書くんだ。そして、それをどうすれば解決できるのか。考えてみよう」

「書いて、ですか?」

「うん。きっと、僕はーーー君の疑問の解決策を見つけることができない。だから、ーーー君の書いた疑問とその答えを、一緒に探そう」

 

 先生の提案はまさに目から鱗だった。

 考えてもみなかった。

 けれど、それはどうして。

 とてもとても楽しそうなことで、新しいゲームを買ってもらった時よりも、

 

 面白く感じたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、辻井さん。何を書いてらっしゃるんですか?」

「実井か。いや、少しな」

 

 後ろから覗き込まれ、ノートを閉じた。

 まずったなぁ......隠すような行動をしたら、尚更こいつらが食いつくだろうに。

 やってしまったことは取り返しがつかない。

 ゾロゾロと神永や甘利まで食いついてきてしまった。

 

「何々、日記?」

「そんなマメには見えませんけど」

「うっせ。日記ではないけど、まぁ習慣だな。お前らからすれば当然のことで全く面白みもないぞ」

「俺たちには、当然?」

「あぁ」

 

 それだけ言って、ノートを持って食堂を出る。

 誰もいないしいいやー、なんて食堂でこれを書いていた俺がバカだった。

 自室、と言っても機関生と同じ部屋だが寝室へと戻ってランプを点ける。

 さて、続きを書くか。

 

「(D機関生の、化け物っぷりについて)」

 

 ペンを走らせて頭を回転させる。

 俺は現代で生きていたため、当たり前のように民主主義寄りの考えだ。

 だが、奴らは違う。

 帝国主義であるこの大日本帝国のこの時代に生まれて、どうしてあのような考えができるのか?

 答えは彼らが天才であり、尚且つ化け物であるということに他ならないのだが、そうじゃないんだ。

 ついこの間、ドイツに軍の仕事で行ったことがある。

 その時、知り合ったドイツ軍人に聞いたのが「魔術師」について。

 何でも、数十年前に日本軍に売られたというスパイが腕を犠牲にしながらも情報を奪い、逃走したという到底、作り話のような噂だ。

 恐らく、その「魔術師」の正体は結城中佐なのだろう。

 結城中佐は存在を周りに知られてはいけないーとか言っていたくせに自分は杖をついていたり手袋をしていたりする。

 きっと、敵を欺くには味方から、というような感じなんだろう。

 そうなった場合、多分手袋をしていないほうが爆弾で吹き飛んだはずの腕。

 この時代にそれほどまでに性能もよく、周りの人間を騙せる義手があるとは思えないが、根本的にこの時代の大半の人間は義手や義足なんて見たことがないだろうから、普通なら騙せるのだろう。

 そうしてまで生き残り、仮に後世にスパイとして名とその功績が残ったとしたらまさに伝説となるだろう中佐。その名はマタ・ハリと並ぶほどに有名になるだろうが......彼のことだ。きっと、誰にも知られずに死ぬのだろう。

 そして、そんな結城中佐が手掛けたスパイたち。

 彼らは一体、どんな家の生まれでどのように育ちどんな教育を受けどうして結城中佐は彼らを見つけ出したのか。

 謂わば、彼らのプライバシー、プライベートに関わる面が知りたいんだ。

 きっと、それを知ることができたのならば、僕は機関生の全てを知ることができる。

 彼らという《化け物》がどうやって生み出されたのかを、理解できる。

 そのためには一体どうすればいいのか?

 機関生は絶対に教えないだろう。寧ろ俺がそれを調べていることが知られたら結城中佐に首を切られてしまう。

 無理なことなんだから諦めたいんだけどなぁ......ここまで深く関わってしまったのだから、全てを知りたい。

 というか、結城中佐に一泡吹かせてみたい。こんな俺を此処に留めたことを後悔、とまではいかないでも、彼の心に俺の存在を刻みつけてみたい。

 

「(......生まれ変わって、自由に行動できるようになって俺も望みがでかくなったなぁ)」

 

 自分自身の考えに苦笑する。

 でもまぁ俺は疑問を持つことしか脳のない人間だから、きっとそんなことはできない。

 けれど、足掻くことだけでもやってみたい。

 ......と言うか、何で俺はこんなムキになってD機関生のプライバシーを侵害しようとしてんだ(´・ω・`)?

 

「辻井さん、何書いてるんですか?」

「っ!!!?」

 

 気配もなく、背後から覗き込まれる。

 ウッソだろお前!?

 

「......へぇ、僕たちのプライベートについて、ですか」

「.........普通気になるだろ、NOC(Non Official Cover)のお前らが本当は一体どんな人間で、どこで生まれてどのように育ったのか」

「辻井さんは僕たちに興味がおありで?」

 

 あまりの気配のなさに、体は硬直してしまってノートが閉じれなかった。

 化け物にとってはたった一瞬でも書かれている全容を把握するには充分らしい。

 実井の声はいつもと変わらないが、怖すぎて顔を見れない。

 背中は冷や汗でダラダラだ。

 こんなことを知られたら俺、殺されるんじゃないか......?

 

「......まぁ、な」

「ふぅん......」

 

 ひいぃぃ......! 殺されるっ!!

 内心ガタガタと震えていると、フッと笑うような気配がした。

 それは俺が恐怖を覚えるようなものではなく、パッと振り向いてしまう。

 

「怯えてるのがバレバレですよ、辻井さん。今日の戦闘訓練で少しいじめすぎちゃいましたか?」

「なっ、少しだ!!? あれのどこが少しだよ!!!」

 

 あっ、やっべいつもの感じで言い返しちまった。

 だが、実井の表情は裏のあるものではなかった。

 寧ろ、まるで微笑ましいものを見るような目線で。

 

「ふふ。だって辻井さん、ちょっと殺気を出せばこちらを食い殺しそうな気迫を出すくせにそうでないとただ逃げるだけなんですから。つい虐めてしまいます」

「このサディストめ......」

「辻井さんに言われたら褒め言葉ですね。それで、僕の何を知りたいんですか?」

「......え?」

 

 椅子を引き摺ってきて俺の隣に腰掛けた実井の言葉に、つい問い返してしまう。

 何を、知りたいって......

 

「教えられる限りですが、教えてあげますよ」

「.........え、ええと、じゃあ、好きな人間とかっていたのか?」

「おや、いきなりどストレートな質問をしてきますね。出身地とかではないんですか?」

「どうせ事実は話さないし話せないだろ? 勿論、そことかも知りたいが本人が話してくれるのならそこら辺も知りたい」

「......そうですねぇ。いませんでしたよ。親類に対する情は、きっと過去にはあったんでしょうけど今はありません」

「いませんでした?」

 

 実井の言葉を聞き返すと、彼は肩を竦めた。

 

「えぇ。今はいるかもしれないですし、いないかもしれません」

「つまりはいないんだな」

「おっと、何を根拠にそう決めつけるんですか?」

「死ぬな・殺すな・とらわれるな、なんだろ」

「..........まぁ、どちらかかどうかは辻井さんが決めてください」

 

 それじゃあ意味ないじゃーん......実井さんマジ実井様。

 じゃあ、次の質問はどうしようか。

 

「なら、実井の好物は?」

「好物、ですか」

 

 長い足を組み、顎に手をやる実井。

 その姿が様になっていて腹が立つ。

 

「ーーーーーーーーー」

 

「.........え?」

「どうしたんですか、辻井さん」

「......いや、何でもない」

 

 窓へと目を滑らせる実井の姿が、何かに被った。

 明るい日差しに包まれて外を眺める、僕からすると背の高い姿。

 男のくせにやけに童顔で中性的な顔立ちをした彼は、よく思えば実井に似ている。

 

「◼◼◼◼◼くんーーーーーー」

「......................あ、れ?」

 

 彼は俺を振り返って、何かを言った。

 なんて言ったんだっけ? あの人は、一体誰だ?

 誰だよ、◼◼◼◼◼って。一体、誰だ、俺は、なんなんだ。

 

「辻井さん、辻井さん? 少し休憩しましょう、辻井さん」

「......実井.........」

 

 眉を下げ、心配そうな表情の実井に支えられてベッドに横になった。

 やっぱり今日の戦闘訓練という名の俺イジメが祟ったんだ。

 早く寝たほうがいいかもしれない。

 

「ノートのことは僕が皆さんには内緒にしておきます。もうお休みになった方がいいですよ」

「あ、あぁ......そうだな。悪い、実井」

「いえ、僕も無理させたという自覚はありますから」

 

 苦笑し、ノートを持った実井。

 こうしてベッドから眺めると、更にあの人に似ているなぁ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待てよ、あの人って、誰だ?

 ヤバイ、頭が混乱している。思考回路が乱雑になっていくのが手に取るようにわかってしまう。

 少し、落ち着けないと。

 俺は、転生した人間だ。

 第二次世界大戦前の大日本帝国に。

 そして、父親に軍に入れられて、佐久間中尉とD機関の連絡係になって、気付いたらなぜか教材になってて.........

 

 

 少し、状況を整理しよう。

 いや、転生した人間であるのはいい。

 

 でも、生まれ変わったのはわかっていても、()()()()()()()()

 

 どうしてだ? 確かに文明の利器やら現代日本の社会や政治、世界については覚えているのに、一体いつから前世の自分についての記憶を忘れていた?

 最初の頃は確かに覚えていたはずなのに、どうして自分が死んだのか、自分が一体どんな人間だったのか、記憶が、データがない。

 

 

 

 なぜ、どうして

 

 

 

 俺は、一体なんなんだ?

 

 

 

 






もうすぐ終わるかも......?
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