東方水辰閣 ~巫女が二人で幻想入り~   作:ビーグル

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前話における解説を書き殴るコーナー
「永遠亭」:元々長寿たちの巣窟なので、百年経っても大丈夫!・・イナバ的な意味で
「萃香さん」:マジお母さん。ちなみに紅魔館にいる方とは互いに分身同士
「輸血」:霊夢さんが頑張ってくれました。これについては追々
「第一陣」:一があれば二がある、二があれば・・ どうなるでしょう?

既に魔理沙はシリアス担当になりつつあります。未登場キャラにももっと出番を!
それでは、どうぞ


第捌話 「君をわすれない」

 

『そう・・あの子は逝ってしまったのね』

 

 夕暮れの神社に一人の霊が降り立つ

 普段であれば其の者がここを訪れる事はなかった

 妖怪の賢者と呼ばれた友の、たっての願いを叶えに来たのだ

  

 空に極光が二筋

 その煌きを見届けてから主の下に戻った半霊の従者は

 其の光景にしばし言葉を無くしていた

 

『妖夢、貴女は予定通りに事を進めなさい』

 

 青藤色の衣を棚引かせ馴染んだ扇子を袖口に仕舞う

 戸惑いの色を隠せないままの従者は

 それでも主の命に従い、神社を後にした

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

「何時までそうしているつもりなの」

 

 未だ地に伏したまま泣きじゃくる”子供”を見下ろす

 普段の彼女からは想像も付かない醜態

 何も出来ないはずなのにひたすらに足掻き続け

 東奔西走を繰り返した結果

 

 巫女は死んだ

 

「泣いていても何も変わるものはないわよ

 それとも誰かが何とかしてくれるのを待っているの?」

 

 返答は 無い

 唯えづくような嗚咽が耳に届くばかり

 あぁ・・何て無意味な

 この幼気な少女はこのまま祈り続けていれば

 どこかの神が死んだ友を蘇らせてくれると思っているのだろうか

 

「やることは沢山あるのよ。貴女も立って、それを成しなさい」

『・・・

 やることって何だよ・・

 葬式でも挙げるってのか? もう死体を焼くつもりか・・?

 霊夢がたったいまなぁ!死んだばかりなんだよっ!

  それなのに、お前らは泣く事だって許しちゃくれないのかよッ!!』

 

 妄言だ

 この少女が口にするそれは己の感情の塊でしかない

 自分が唯言いたいだけだ

 それで事態が好転するとは、本人だって思っていないと言うのに

 

『ああそうだったな・・

 お前は冥界の管理人だもんな

 知り合いだろうと、ともだちだろうと、家族だろうと

 死んだ人間を見つけりゃ、誰彼構わず飛んでいくんだよな!』

 

 

  ─ああ・・何時以来だろう

   こんなに感情的に ニンゲンを叩いたのは

 

 

 振りぬいた自分の左手を見た

 血の通っていないはずの手のひらが

 薄っすら紅くなっているように見える

 

「勘違いしているようだから言っておくけど

 貴女は私の友人でもないの。分不相応な物言いは止めて貰えるかしら」

 

 頬を腫らした少女はこちらを見上げている

 其の目は恨みつらみの感情なんて込められていなかった

 ただ、何かを求めるように

 助けとなる者を探しているような哀れな目

 

『助けてくれよ・・』

 

 苦しげな声を漏らす

 まるで物乞いのような哀れな嘆き

 

『お願いだ・・

 霊夢を、助けてくれ・・』

「死者が蘇ることは決して無いわ

 それは他でもない、私が良く知っている」

『じゃあ・・

 私たちに出来る事って何なんだ・・』

 

 魔理沙は、ようやく”こちら”を見た

 生きているニンゲンの目

 それは常に先を見る目でなければならない

 過去を振り返ること

 現実を見つめることは妖怪や霊にだって出来る

 だが未来を見つめることは出来ない

 ニンゲンには、見るべき未来(さき)があるのだから

 

『巫女を、造りだす必要がある』

「造る・・? 一体、何言ってんだ・・」

 

 縁側に座る巫女を見る

 そこには先に準備に取り掛かる九尾がいた

 

『藍・・』

『この度は真にお悔やみ申し上げる。

 しかしあまり悠長に構えて居られない。

 彼女の身体を一旦保存し、魂の準備に取り掛からなければ』

 

 魔理沙がこちらに振り返る

 予想通りの反応だ

 そして、この後に掛けられる言葉は きっと

 

『霊夢が生き返るのか?!』

 

 まぁ大よそ期待通りの反応

 ニンゲンはこれだから・・

 

「さっき言ったばかりよね? 死者は生き返らない」

『え?・・じゃ、じゃあ何を・・』

『博麗の巫女が死んでしまった場合

 結界の維持に支障をきたしてしまう。

 現在は紫様が一時的にその役を担っているが

 早急に新たな巫女を用意する必要がある』

「説明有難う、藍ちゃん」

 

 労いの言葉に頭を下げる九尾

 全く、この生娘にも彼女位の気概があれば・・

 とは言え無いもの強請りをしても仕方が無い

 

「彼女の身体には、”予想通り”魂が一切残されていない

 妖夢には現在各地を回り、結界内に飛び散った欠片を集めさせているわ

 あのハクタクにも協力を要請しましょう。時間が惜しい」

『はっ』

 

 藍はそれだけを言うと人里へ向けて飛び立った

 彼女でも説得は十分だが、やはり二人以上の進言が必要だ

 こちらも後で向かわねば

 

『なぁ・・教えてくれ』

「・・なに?」

『どうしてお前らは、そこまで冷静で居られるんだ・・

 お前らにとっちゃ霊夢も友人ですらなかったのか?』

「そんな訳無いじゃない。

 死の訪れは皆に平等にある、けれどそこにある想いは違うわ」

『じゃあどうしてっ!?』

 

 先ほどとは違う激昂

 彼女の悲痛な気持ちは判る

 しかし、それでも私に涙は流せない

 

「巫女の最期を看取るのが、初めてだと思っているの?」

 

 その言葉で、まだ幼い魔法使いは押し黙った

 

 今も縁側で静かに眠っている少女

 彼女は博麗の巫女の一人

 それがたまたま、「霊夢」という名であった

 唯それだけのこと

 でも─

 

「出来ればもう一度会いたいと思ったのは 霊夢だけよ」

 

 それが私の今の気持ち

 それ以上は今は無い

 今はまだ・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからは本当に慌しかった

 幽々子が率先して動き、慧音の助力も得てから

 幻想郷中の”霊夢に関する歴史”が集められた

 ここでいう歴史とは、霊夢がどういった場所で、何をしていたか

 つまりあいつの行動理念を、個人を特定する性質として

 抜け殻となった魂に結合させるというもの ・・らしい

 私は、正直何をどうしているのか

 さっぱり分からなかった

 ただ一つ分かっていることは

 

  ─博麗の巫女を、もう一度この世界に創り出す

 

 そして急ごしらえとは言え、霊夢の体を依り代として造るのだから

 姿かたちはもちろん霊夢本人のものとなる

 

  一度死んだものはそれまでの記憶の一切を失う

 

 これはほぼ常識として、冥界に住む者

 また管理する者は例外なく認識している事実だ

 しかし今回は違う

 新たな魂を結合させるのではなく

 元の魂をかき集め、足りない部分を本人に関する歴史から抽出した

 行動の歴史、つまり性質であり性格に直結するものを練り込ませる

 そうすることでより元の霊夢のままで復活させることも、”可能ではある”という

 しかしそこでも幽々子や妖夢は言い加える、「記憶は戻らない」と。

 

 そんなこと分からない

 

 やってみなくちゃ分からないんだ!

 

 もしかすると本当に元通りの霊夢が戻ってくるかもしれない

 あのズボラで、暢気で、傍から見れば傲慢ちきな巫女が

 再び、私たちの前に帰ってくるかもしれない!

 私はその日が来るのをひたすら待った

 もはや私が手を出せる次元ではなかった

 だから敢えてあいつらの邪魔はしないよう

 家から一歩も出ずに、「複製の儀」の終了を待った

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほんの七日

 もっとかかるかと思っていた私に

 そいつはあまりに唐突に

 あまりに簡素に

 只、結果だけを伝えた

 

『巫女が神社に戻ってきたぞ』

 

 いつも通り仏頂面を崩さない九尾の式

 しかしその知らせを待ちわびていた私は

 すぐさま家を飛び出し、神社に向かった

 

 ただそのときの私は浮かれすぎていた

 もっと、いや

 ほんの少しでも

 目の前こと以外にも目を向ける余裕があれば

 藍の 悔しげな表情にさえ

 気づけたかも知れなかったんだ

 

 

 

 

 

「霊夢っ!!」

 

 乗ってきた箒を放り投げて

 境内の石畳を走った

 今更ながら自慢の帽子をおいて来てしまったことに気づいたが

 そんな事はどうでも良かった

 

  ─霊夢が、帰ってきたんだ!

 

 あの社の前

 いつも通り、馴染んだ竹箒を手に持ち

 散らばった枯葉を丁寧に掃く姿を見て

 私は嬉しさのあまりに 涙を零した

 あの時とは違う

 これは歓喜の涙だ

 記憶も無い者が、果たしてああも忠実に

 ”博麗 霊夢”の日課をこなそうとするだろうか?

 あれは、正しく霊夢なんだ!

 

 

  ─その気持ちに、嘘や偽りは無い 筈だった

 

 

 こちらに気づいたのか手を止めて見つめてくる

 どうしよう・・

 何を話せばいいんだ

 「よう。久しぶり!」いや、これはあんまりか

 「伊達にあの世は見てないな!」これも違うな

 やっぱり・・

 「生き返ってよかった」・・うん、これだな

 在り来たりだけど、やっぱり霊夢には普通に

 

『どなた?』

 

  ─・・え?

 

『えと、参拝の方かしら?

 でも私の名前を呼んでたのよね・・

 ごめんなさい。よければ

  

  お名前を教えてくれる?

                   』

 

 

 そうだった

 そうだったよな

 分かっていた事じゃないか

 あんだけ、あいつらが言ってた事だ

 可能性はゼロじゃなかった

 でも限りなくゼロに近かった

 目の前にあるには

 その高すぎる確率の結果

 何の不思議も無い

 

『あの・・・』

 

 なんだよ

 ”霊夢”って、そんな貌もするんだな

 初めて知ったよ

 死んで

 記憶を失って

 そこで初めて知るとか・・

 どんだけ私は霊夢を知らなかったんだよ・・

 

『お客さん?』

 

「他人みたいに呼ぶなよッ!!」

 

 気づけば、私は怒鳴り散らしていた

 分かってる

 相手にはまったく悪気は無かった

 私がいきなりやってきて、黙りこくったかと思えば

 突然怒鳴りだしたんだ

 むしろあいつが怒らなかったのが不思議なくらいだ

 こんな私の暴挙にさえ

 目の前の巫女は、ただ困った顔をするだけ

 

 

  ─ちがう

  ─こいつは 霊夢じゃない

  ─こんなの 霊夢なんかじゃない!!

 

 

 私は 逃げ出した

 何も言わずに

 相手に罵声だけを浴びせて

 勝手に泣き出して

 転がっていた箒を引っつかんで、逃げた

 そうしないと、耐えられなかった

 自分が壊れてしまいそうだった

 現実から目を逸らして

 事実を受け止めず

 妄想に近い希望が打ち砕かれた事に涙し

 背を向けて逃げる

  

  ─頼む 見逃してくれ

  ─じゃないと わたしは

  ─つぶれてしまいそうだ

 

 

 

 

 

 私は、その日を決して忘れない

 自分が何も出来なかった無念を

 あまりに幼すぎた愚かな自分を

 決して わすれない

 

 

 

 ─さようなら 霧雨 魔理沙

 ─さようなら 博麗 霊夢

 

 

 わたしは

  ニンゲンを 辞めることにした

 

 

 

 

 




魔理沙「幽々子・・霊夢(の財政難)を助けてくれよ!」
幽々子「・・妖夢」
妖夢 「はい・・ エェッ?!」


ということで八話目でございました。行き詰ったら過去編に飛ぶ・・何て手法だ;
でもこうした未解明部分を明らかにすることは後々の複線張りにも
一役買ってくれたりするんですよね。タブン
何故、一番動くべき人が動いていなかったのか?そこも追々・・
                           (良ければ次もドウゾ。)
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