転生者はやる気のないチート野郎   作:名前?何でも良いよ

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シリアスで始まるプロローグ


file0 プロローグ

俺の名前は高柳優(たかやなぎすぐる)今日で19歳になり社会人の仲間入りを果たした、夢見る新入社員だ。

 

会社初日に遅刻してしまってはこれからの評価に大きく関わってくるだろうと考えた俺は一時間ほど早く家を出ることにした。春の訪れを知らせてくれる桜の花びらが風に揺られながら道路に落ちていく。今までとは違い学校に向かう道ではなく会社に行くための道を進むと少し胸が高鳴り心臓の鼓動も速くなる。期待と不安に苛まれるが嫌な気分ではない。むしろ自分自身が誇らしくもある。部活で早く学校に向かう学生を見ながら自分はもう大人なんだなと実感して駅の改札に入っていく。

 

会社までは電車で15分ほど。電車の中は満員で座れる状況ではなく諦めてつり革に手を伸ばし揺られていた。社会人になる前は電車に乗ることなんて殆ど無かったので新鮮な気持ちになる。

 

電車の揺れに体が揺れながら10分ほどが経過して降りる駅が次の停車駅になったとき事件は起こった。

 

俺の前にいた女性の人が急に悲鳴をあげた。俺は何故悲鳴をあげたのか分からず何かあったのだろうかと思っていると女性の人は俺の方を振り返ってきて言ってきた。

 

「こ、この人!痴漢ですっ!!」

 

俺は理解できなかった。頭の処理が追い付かない。今目の前で起きている状況、周りからの視線。俺は勿論なにもしていない。左手でつり革を掴み右手はぶらんと下げていた。だが真実は嘘より来たり。という言葉がある。いや俺が作ったんだが...真実というものは残酷であり時に嘘により守られ、時に嘘によりねじまがる。

 

俺が否定の言葉を述べようとしたときには既に知らない男の人に抑えられて身動きが取れない状況になった後だった。

 

 

 

 

どうしてこのような事態になってしまったのだろうか。あの後俺は警察署に連れていかれた。何もしていない!俺は証言した。だが俺の言葉を聞いてくれる人なんて一人もいなかった。未成年ということで親を呼ばれ、何も言わずに父親には殴られ、母親は俺の目の前で土下座をした。俺の頭の中は真っ白になっていた。

 

被害者からの申し出により幾ら払ったのか分からないがお金を払うことにより俺は釈放された。親の車に乗せられた。運転している父親は無言。母親は泣いている。

 

俺は何もしていないのに罪を問われた事よりも親にすら信用されなかった事の方がきつく必死に涙を流すことを我慢した。

 

ポケットに入れておいた携帯が鳴り電話に出ると会社からだった。俺のしたことがTwitterで流出し社内で知れ渡ったらしい。明日から仕事には来なくて良い、君は首だ。と言われ電話が切れる。耳に当てていた携帯が椅子の上に落ちる。俺は暫く動けずに車のミラーを見ると父親と目があった。父親は俺と目が合うと直ぐに逸らし首を横にふって無言のまま前を向き此方を見ることはなかった。

 

家に着き車のドアを開ける。朝に出ていったのに、昼に帰ってきてしまった。今日は大事な一日だったはずなのに...俺は家を見ながら立ち尽くしてしまう。そんな俺に構わず父親は泣いている母親の肩を抱き家に入っていく。俺はその姿を見て、ああもうここに俺の居場所は無いんだな。そう思った。

 

-----誰も俺を見てくれない。

 

-----誰も俺を信じてくれない。

 

それなら、と俺は携帯をその場に落として走り出した。出来る限り遠くに....誰も探さないと思ったが出来る限り遠くに。それだけを思いひたすら走り続けた。

 

視界がボヤけてくる。涙が雫となり溜まり腕で拭っても拭っても溢れてくる。先程まで我慢していた筈の涙は留まることを知らずに流れ何かが切れたように大声で泣きながら走った。平日の昼だから人はあまりおらず不審がる人はいない。

 

息が切れ、嗚咽が混じりながら肺に呼吸が足りずにお腹が痛くなり走るのを止めて歩き出す。かなり走っただろう。周りの景色は見慣れないところまで来ていた。

 

そこに廃ビルがあるのが見えて俺は非常階段を登っていく。もう何もいらない。もう何も望まない。

 

非常階段を上がりきると屋上に繋がる扉があった。本来なら鍵が掛かっていそうだがスプレーで壁に文字が書かれていたり屋上に繋がる扉の近くに南京錠が壊れて落ちているところを見るにどうやら誰かが屋上に入るために壊したようだ。

 

屋上に繋がる扉を開くと町が一望できた。夕日が輝き町を彩り輝いて見えた。

 

「俺も今日の朝まではあの輝いていた場所に立っていたんだな....」

 

屋上の端に行き腰を下ろし景色を眺める。一歩前に出れば柵もないので屋上から地面まで落ちるだろう。景色から地面に視線を移す。今日あった出来事が鮮明に脳裏にフラッシュバックしてくる。涙が溢れ泣かないようにしても嗚咽が混じり泣いてしまう。

 

.......................。

 

もう涙も枯れて声も枯れた。空も暗くなり先程まで無かったのに空には雲で覆われていた。ポツリ....と枯れた筈なのに頬に雫が落ちた。その雫は量を増し雨だと気付く。

 

不思議と顔には笑みが浮かんでいた。これで全てが終わる。終われる、と思うと心の底からホッとしていた。もう誰にも会いたくなかったから。

 

俺はゆっくりと立ち上がり深呼吸して一歩ゆっくりと前に進んだ。目を閉じて死ぬってどういうことなのか今更ながら気になっていた。痛いのかな?何も感じないのかな?出来れば何も感じない方がいいな....走馬灯のようにゆっくりとゆっくりと死に向かって時は流れた。

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