転生者はやる気のないチート野郎 作:名前?何でも良いよ
「もう....逃がさない」
完全に危ないストーカーの言葉である。イビルアイの解除魔法は存在しない。これでは俺のプライバシーなんて無いようなものだ。
「一緒に来て....」
「何処に?」
「王都....」
「どうして王都に?」
「貴方には王都のギルドに来てもらう...」
王都...王都ねぇ。確かさっきまでいたな。王様と話してた場所か。あんな広々として色々お盛んな場所に行く?勘弁してくれ。
「分かった...行くからイビルアイを解除してくれ」
「うん」
あーなんだろう。凄い笑顔で返事して魔法を解こうとしてるんだけど...いやいいんだよ?でもさ少しは疑った方が良いんじゃない?人ってそんなに信用できるもんじゃないからね?つまり俺の中にも良心は僅かながらにも残っていたようで心が痛い。ここまで純粋な女の子だとは...。
俺がそんなことを考えていると後ろから声をかけられる。
「アリス。魔法を解いてはいけないよ。彼はまだ王都に来る気が無いようだからね」
イケメンが後ろにいた。てかメロスさんでしたっけ?友情のために走るんでしたっけ?
「マルス...どうしてここが?」
どうやらメロスではないようだ。
「アリスが一人で出ていったのを見て心配になってね」
「なーに言うとんねん。うちが面白そうだから行こうやってあんたさんを誘ったから来たんやないか」
イケメンの決め台詞を切り捨てたのは始めてみる顔だった。この世界に来てからはあまり見かけなくなった黒色の髪を腰まで伸ばし日本で言う着物を来ている。見た目はTHE大和撫子だ。一部分は自己主張が激しく着物に収まりきっておらず谷間が露になっている。しゃべり方がなんちゃって関西風で大和撫子ぶち壊しだが。
「ほんでこの可愛い坊やが噂の子っちゅうことかい?」
「そうです。彼が獄焔の谷を作った本人ですよ」
「へえ~そらおもろそうやな~。やっぱり来て正解やったわ」
身長は160後半はあるか結構高い。俺のことを値踏みするように見てくるのは良い気分にはならないし威圧されてるようにも感じる。
「あーそう言えば言い忘れてたわ。うちの名前はカグヤ言うねん。よろしゅうな、レツ君」
カグヤと名乗った女性は唾を返してアリスさんの方に向かっていく。気のせいかアリスさんの顔は蒼白して震えている。
「なあアリス。こない面白そうな事どうしてうちに黙ってたんや?」
「......すいません」
「いやいや謝って欲しいんちゃうよ?理由を聞きたいんや」
「あのカグヤさん。アリスは「マルスは黙っとき」.....」
イケメンを言葉一つで玉砕である。この人怖っ。てかアリスさん涙目じゃん。
「で、どないや?アリス」
「す、すみましぇん.....」
半分嗚咽が混じった声でなんとか言葉にするアリスさんだがこの答えは不服だったのかカグヤさんは声音を低くしながら少しずつアリスさんに近付いていく。
「あの俺帰っても良いですか?」
この空気に耐えられなくなったのでカグヤさんの関心を此方に向けることにした。
「すまんなぁ。忘れてたわ。アリスも強く言いすぎたみたいや、許してな」
「い、いえ....」
「さてそれじゃ自己紹介を始めようやないか。まずはうちからや。カグヤ、家柄はめんどくさいから省くでそこは気になったら自分で調べてな。それで冒険者兼王都にいる王様の護衛兼ギルドの総責任者もしとるな。因みにランクはZや。改めてよろしゅうな」
軽い自己紹介の切り出しからカグヤさんのとんでもプロフィールが明かされた。Zランクって確か一番上のランクで世界でも一人しかいないって聞いたが。目の前にいるなんちゃって関西風大和撫子さんがそのZランクとは思ってもみなかった。
「次は君の番や」
「その前に後ろにいる人達の事も俺は知らないんですが?」
自己紹介とかするきないけどな。
「そやな。ほな二人とも挨拶し」
「分かりました。僕の名前はマルス。バルガイナ ハル マルスだ。よろしく頼むよ。ギルドランクはSZで王都の騎士団の団長をしている」
へえーなんか人生勝ち組オーラがぱない。
「私は...アリス。アリス フルーラバルサミス。ギルドランクはSSS....よろしく」
二人の自己紹介が終わったところでカグヤさんが此方を見てくる。
よし逃げるか。
「テレポート」
「またか...よくもカグヤさんの前で出来るな...」
「ありえない....」
「なかなかおもろいやないの。それじゃアリス場所を教えてな」
「は、はい。えーと....シルビィアナ帝国都市の東町にいます」
「馬鹿な。ここからシルビィアナ帝国まで一体何千キロ離れていると思ってるんだ!」
テレポートのようなランダム移動は込める魔力量により距離が変化します。て誰に説明してるんだ?
「ほー中々に魔力を使ったんやね」
「と、飛びます。二人とも掴まって下さい....」
「アリス、かなり遠いけど大丈夫かい?」
「はい....多分ですが」
「心配あらへんよ。魔力流しとくからほな行こか」
「あ、ありがとうございます....。我が求めるは力にあらず。我が求めるは居場所也。ワープ」
「さてとこの辺までくれば撒けたかな」
「撒けるわけあらへんよ」
テレポートのランダム移動でかなり魔力込めて飛んだからすぐには来れないと思ったが数秒で追い付かれてしまった。泣けてくる。
「君はイビルアイの事を忘れてるのかい?」
「あ....」
そう言えばイビルアイかかったままだった。すっかり忘れていた。
「....馬鹿?」
このやろう...さっきまでぐずってた癖に。
「ハッキリ言います。俺に付きまとわないでくれ。俺は平凡に静かに暮らしたいだけなんだ」
「そないな戯言はええから早く自己紹介始めーや」
「はぁ...分かりました。その代わり自己紹介したら帰ってくださいね?そしてイビルアイも解くこと」
「まっ、ええやろ」
「良いんですか?」
「かまへんよ」
よしこれで逃げれる。
「レツ。ランクは諸事情につき言えない。家柄は無い。てか家族はいない。以上」
「それじゃ何も分からないじゃないか!」
イケメンが叫んでくる。むっ....やかましいな。てかこれ以上の情報が俺に無いのだから仕方なし。
「なら無理矢理調べよか。采配は来るべき時にきたれり。汝は我の者であり汝の時は全て我が支配する事也。よって」
なんとも危険な魔法を使いだしたので本気で阻止することにした。因みにカグヤさんが使っている魔法は精神干渉魔法という珍しい魔法で最上級魔法だ。ネックなのは魔法の詠唱が馬鹿みたいに長くその間無防備になり魔法の最初の言葉を対象者に聞かせなければならない事だ。
「サンダーライトニング」
取り敢えずスピード重視の攻撃を放ってみた。
キィィンという甲高い音がして砂煙が巻き上がる。砂煙が晴れるとイケメンが剣でガードしていた。うわーめんどくさ。
「我なすれば偽り也。偽りなすれば誠也。影は表で表は影也。シャドウ」
アリスさん万能過ぎない?闇魔法の最上級魔法のシャドウをカグヤさんに使っていた。これは対象物を見えなくするだけではなくそこにいるのにいないと錯覚させる作用まで働く。言ってしまえば何処にいるのか分からなくなる。そこにいるのにいない状態になるのだ。その間もカグヤさんの詠唱は続く。
これはあれだ。本気でやって消し飛んだら逃げよう。
見えないし感じ取れないがそこには必ずいるのだ。それなら全方位魔法で全てをぶっ飛ばす。一応忠告だけしておこう。
「死ぬなよ。暗雲を撒き散らせ終わりあれ。廻れ-------廻れ-----。今まさに世を混沌に帰す。エクスプロージョンっっ!!」
膨大なエネルギーの爆発が起こり地面ごと円上に抉られてクレーターのようになっている。火の魔法の最上級魔法エクスプロージョン。広範囲を全て吹き飛ばすとても燃費の悪い魔法だ。
三人の姿は無い。だが打つ瞬間。カグヤさんが詠唱を止めて他の魔法を使おうとしていたのが見えた。なら無事に逃げてるか。
「末恐ろしい奴よの。まさかエクスプロージョンが使えるとは」
「すいませんカグヤさん助かりました」
「すいません...」
「かまへんよ。あんなの打たれたら仕方ないしな。さてとあれだけ燃費悪い魔法使って立ってるだけでビックリやのに、あんたどないして汗一つかいてないんや?」
確かにエクスプロージョンは全体的に見ても燃費の悪い魔法だ。だが燃費が悪い=一発打てばガス欠になる魔法を使う筈がない。たぶんだが俺の魔力量はおかしいのだろう。丸一日ずっとエクスプロージョン打ってても魔力が枯渇する気がしない。一発打ってピンピンしてるのは単に余裕があるからだ。
「どうでも良いでしょう。んじゃイビルアイ解除してください。しないなら強制的に解除させます」
「...ええやろ。アリス、解除したり」
「でも....」
「ええから。あんたまだ死にたくないやろ?マルスも剣を下げ、どうせあんたじゃ逆立ちしても勝てないわ」
マルスは腰に携えている鞘に剣をしまいアリスはイビルアイを解除した。因みに何故解除したか分かるかと言えばイビルアイ発動中は左目が白くなるため目を見れば分かる。
「さて、と。あんさんはずっとあのギルドでやっていくつもりなんか?」
「さあ、そんなのは俺の自由だ。ワープ」
俺はカグヤさんの言葉に一言だけ返してエリンギルの町にワープした。