やはり面倒臭い私と捻くれ者の彼とはあまりにも共通点が多すぎ…… 作:無念の非リア
私達が部屋を出てしばらくした後、家庭科室は重苦しい空気に包まれました。
「これが『本当の手作りクッキー』なの? 形も悪いし、不揃いね。それにところどころ焦げてるのもある。────これって⋯⋯」
雪ノ下さんは何かを察したのか目の前のソレを怪訝な表情で眺めます。
まぁ⋯⋯私が言うのもアレですが⋯⋯明らかに手作り詐欺ですね⋯⋯はい⋯⋯いや⋯⋯手作りなのは手作りなんですが⋯⋯なんと言えばいいのか⋯⋯。
まっまぁ⋯⋯そんな風になんとも言えない気持ちになってる中、私達の脇から由比ヶ浜さんがひょいと覗き込んできました。
「ぷはっ大口叩いたわりに大したことないとかマジウケるっ! 食べるまでも無いわっ!」
嘲笑する由比ヶ浜さん⋯⋯いやむしろ爆笑してますね⋯⋯ですが⋯⋯その⋯⋯言え何も言うまい⋯⋯真実は時に残酷ですからね⋯⋯うん⋯⋯。
「ま、まぁ、そう言わず食べてみてくださいよ」
明らかにそんな滑稽な道化と化してる由比ヶ浜さんに、ヒクヒクと動きそうになっている口角を抑え、見事なまでの営業スマイルで対応する
「そこまで言うなら⋯⋯」
由比ヶ浜さんはクッキーを恐る恐る口にしました。私と雪ノ下さんも何も言わず一つ摘みます。
サクッと小気味よい音がし、嵐の前の静けさの様な僅かな一瞬の沈黙。
「っ! こ、これはっ!」
突如ぐわっと目を見開く由比ヶ浜さん。脳にまで味覚が達したのか、コレにふさわしい言葉を探しだそうとしていますね。
「時々ジャリッてするし、別に特別何かあるわけじゃない! はっきりいってそんなに美味しくない!」
由比ヶ浜さんはそう言って、驚いたと思ったら怒り出し
雪ノ下さんに至っては、無言で訝しむように
対する
「そっか、美味しく無いか。⋯⋯頑張ったんだけどな」
「──あ⋯⋯ごめん」
彼の言葉に罪悪感を煽られたのか、由比ヶ浜さんも気まずそうに床に視線を落としました⋯⋯いや何⋯⋯この茶番⋯⋯。
「わり、捨てるわ」
あっ⋯⋯私がまだ食べてる中、
「ま、待ちなさいよ」
「⋯⋯何だよ?」
そんな
そしてそのまま
「べ、別に捨てるほどのもんじゃないでしょ。⋯⋯言うほどまずくないし」
「⋯⋯そっか。満足してもらえるか?」
いや⋯⋯それにしてもこの紅茶は美味しいですね⋯⋯私は何をみせられてるんでしょうか?
「まぁ、由比ヶ浜がさっき作ったクッキー何だけどな」
「⋯⋯は?」
イヤ⋯⋯まぁ⋯⋯
対する由比ヶ浜さんは、鳩が豆鉄砲をくらったら様な感じに、目を点にしてポカーンと口を開けてます。
「え? え?」
目をぱちくりさせながら周囲を見回す由比ヶ浜さん。コレがドッキリなら大成功の看板を掲げたい位には、見事なまでに自体が呑み込めてない状態です。
「
雪ノ下さんは痺れを切らしたのか、不機嫌ですよと言ったような顔で
私? 私はノーコメントで⋯⋯敢えて言うならクッ悔しい⋯⋯でも嫌という程に意図が分かっちゃうって感じで複雑な心境だとだけ言って起きます。
「こんな言葉がある⋯⋯『愛があれば、ラブ・イズ・オッケー!!』」
「古っ」
「ブフォッ!?」
それに対し由比ヶ浜さんが小声でツッコミました⋯⋯そしてネタが分からなかったのか、はてなと小首を傾げる雪ノ下さん⋯⋯やっやばいこの光景だけで充分つぼってしまいました。
てか紅茶飲んでたタイミングでなので少し吹いてしまいました⋯⋯そのせいか全員の視線が私に向いてます⋯⋯どどどどうしましょう⋯⋯アレでしょうか何か言った方が良いでしょうか?
「⋯⋯あぁ⋯⋯アレでしょうか? つまり雪ノ下さんと由比ヶ浜さんは、ハードルを上げすぎだって事でしょうか⋯⋯」
私はにヘラと笑みを浮かべながら誤魔化すようにそう言いました。
それを聞いて
「フッ⋯⋯。そうだ⋯⋯そもそもハードル競技の主目的は飛び越えることじゃない。最速のタイムでゴールすることだ。飛び越えなきゃいけないってルールはない。ハー──」
「言いたい事は分かったからもういいわ」
「今までは目的と手段を取り違えていたということね」
雪ノ下さんの言葉に釈然としないのか、不服そうに
「せっかくの手作りなんだ。手作り部分をアピールしなきゃ意味がない。店と同じようなものを出されたって嬉しくないんだよ。むしろ味はちょっと悪いくらいのほうがいい」
まぁ⋯⋯言いたい事は分かりますよ言いたい事は⋯⋯そもそも店と同じなら、もう店で買って渡せばいい話ですしね⋯⋯とは言え私と違い雪ノ下さんは
「⋯⋯悪いほうがいいの?」
「ああ、そうだ。上手に出来無かったけど一生懸命作りましたっ! って所をアピールすれば、『俺の為に頑張ってくれたんだ⋯⋯』って勘違いすんだよ、悲しいことに」
「そんな単純じゃないでしょ⋯⋯」
由比ヶ浜さんは疑わしげに
何言ってんだコイツって感じですね。
対する
「⋯⋯これは俺の友達の友達の話なんだがな、そいつが中学二年生になったばかりのことだ。新学期だから最初の
「そこ全部同じね。あと前書きが長いわ」
「黙って聞け。そのとき、1人女子が立候補した。可愛い子だった。そして、めでたく男女の学級委員が決まった。その女子が『これから1年間よろしくね』とはにかみながら言った。それからと言うもの何くれもなくその女子はそいつに話しかけてくる。『あれ? ひょっとしてコイツ俺のこと好きなんじゃね? そういえば、こいつ俺が委員長になったら立候補して来たし、よく話しかけてくるしもうこれ絶対俺のこと好きだよ!』そう確信するのに長い時間はかからなかった。だいたい一週間くらいだ」
「早っ!」
由比ヶ浜さんはふんふんと頷いていたが、すぐさまツッコンだ。
てか⋯⋯何なんでしょう⋯⋯
「ばっかお前愛に年の差とか時間とか関係ねーんだよ。そして、ある放課後、教師から命じられたプリントの回収をしていたとき、そいつは意を決して告白する。
『あ、あのさ好きな奴とか、いるの?』
『え──、いないよ──』
『いやその答え絶対いるって! 誰?』
『⋯⋯誰だと思う?』
『わっわかんね──って。ヒントっ! ヒントちょうだい!』
『ヒントとか言われてもなぁ』
『あ、じゃあイニシャル、イニシャル教えて。苗字でも名前でもいいから、頼む!』
『う──ん、それならいっかなぁ』
『マジで!?やった! で、イニシャルは?』
『⋯⋯H』
『え⋯⋯、それって、⋯⋯俺?』
『え、何言ってんのそんなわけないじゃん、何、え、マジキモい。ちょっとやめてくんない』
『あ、はは。だ、だよな──。ちょっとボケてみた』
『いや、今のはないと思う⋯⋯。──もう終わったし、私帰るね』
『お、おう⋯⋯』
そうして一人教室に残された俺は夕日を見ながら涙を流した。しかも、翌日投稿してみるとその話はクラスのみんなが知ってたんだ」
「ヒッキーの話だったんだ⋯⋯」
由比ヶ浜さんは気まずそうに目を逸らして言います⋯⋯対する私は過去の黒歴史がフラッシュバックし精神的にダメージ入ってそれ所じゃありませんが⋯⋯。
「ちょ、ばかお前。誰も俺の話とか言ってね──よ、あれだよ言葉の綾だよ」
比企谷さんは見苦しくも言い訳を述べますが、そんな彼に面倒そうに雪ノ下さんため息をつきました。
「そもそも友達の友達、と言う時点でダウトじゃないわ。あなた友達いないし」
「なっ貴様!?」
「
どうでもよくないんですよね⋯⋯。少なくとも私は⋯⋯
「つまりアレだ。男ってのは残念なくらい単純なんだよ。話しかけられるだけで勘違いするし、手作りクッキーってだけで喜ぶのだから、」
比企谷さんはひとまずそこで話を区切り、由比ヶ浜さんを見つめます。
「別に何かあるわけじゃなくてときどきジャリってするような、はっきり言ってそんなにおいしくないクッキーでいいんだよ」
「〜〜っ! うっさい!」
由比ヶ浜さんは顔を真っ赤にして怒り、
いや⋯⋯まぁ⋯⋯包丁とか鍋で無く態々痛くないものをチョイスしてる分理性的ではありますが⋯⋯。
「ヒッキー、マジ腹立つ! もう帰るっ!」
キッとこっちを睨むと由比ヶ浜は鞄を掴み立ち上がり、顔をフンッと背けたったかドアに向かって歩き出しました。
対する比企谷さんはそんなわなわなと肩を震わせる彼女を見て、あっやべ! さっ流石に言い過ぎたか見たいに挙動不審にキョドり始めます。
「まぁ、なんだ⋯⋯。お前が頑張ったって姿勢が伝わりゃ男心は揺れんじゃねぇの」
比企谷さんがフォローのつもりでそう言いました。対する由比ヶ浜さんはドアの前で振り返りました。
「ヒッキーも揺れんの?」
「あ? あ──もう腸揺れるね。むしろ優しくされただけで好きになるレベル。っつーか、ヒッキーって呼ぶな」
「ふ、ふぅん」
うわぁ⋯⋯適当な事抜かしてますねと
そんな中、気のない返事を由比ヶ浜はするとそのまま顔を逸らし、ドアに手をかけます。
帰ろうとする由比ヶ浜さん、その背中に雪ノ下さんは声をかけました。
「由比ヶ浜さん、依頼のほうはどうするの?」
「あれはもういいや! 今度は自分のやり方でやってみる。ありがとね、雪ノ下さん」
振り向いた由比ヶ浜さんは笑顔でそう言いました。
「また明日ね。ばいばい」
由比ヶ浜さんは手を振ると、エプロン姿のまま今度こそ帰って行きました。
「⋯⋯本当に良かったのかしら」
雪ノ下さんはドアの方を眺めながら呟きました。
「私は自分を高められるなら限界まで挑戦するべきだと思うの。それが最終的には由比ヶ浜さんの為になるから⋯⋯」
「まぁ⋯⋯努力は裏切りませんからね⋯⋯夢は裏切りますが⋯⋯」
「どう違うの?」
雪ノ下さんはそう言って私の方を見ます。風が雪ノ下さんの頬を撫で、両脇に括られた髪が揺れます。
「努力しても夢が叶うわけでは無いでしょう⋯⋯むしろ叶わない方が多いまでありますし⋯⋯それと⋯⋯私が昔いた学園で耳にした話なんですがね。
『あの⋯⋯すっ好きな人とかいますか?』
『ん? あぁ今はいないかな⋯⋯俺両刀だから今は彼氏募集中だし⋯⋯』
『へ?』
『後お前正直言って陰湿そうでキモいし正直ないわ』
『──っ!?』
『あっ話は終わり? じゃあ帰るわ』
その日結局作ったクッキーは渡せなかったまま⋯⋯私は教室で一人泣きました。しかも翌日登校したらその話が広まってたんですよね⋯⋯」
しかも話が何だか曲解されて、ホモにフラれたキモい女として広まってた事もあって、マジで地獄でしたね⋯⋯。
「⋯⋯そう⋯⋯なんというかご愁傷さまね⋯⋯それでその話をして何が言いたいのかしら?」
「⋯⋯まぁ⋯⋯簡単に言えば
私はそう言葉を区切り、俯きニヒルに笑みを浮かべ。
「そんなふうに社会が私しに厳しいのだから、せめて自分に甘えてもいいと思うんですよね⋯⋯はぁ⋯⋯いっその事⋯⋯みんなも自分を甘やかしてしまえば良いのに⋯⋯そうすればみんな堕落してダメな人とかいなくなると思うんですよ」
「⋯⋯やっぱり貴方は
「おい! なんで俺が同じ事考えてると思ってるんだ! アレだぞ少し共感が出来るくらいだっ!!」
そんな
ちなみにオリ主の話は脚色はしてますが作者の実話だったりします⋯⋯しかもその子⋯⋯気がついたら後輩と付き合ってたんですよね⋯⋯。