やはり面倒臭い私と捻くれ者の彼とはあまりにも共通点が多すぎ……   作:無念の非リア

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その12 ゴリ押し乙女

 ようやくこの部活⋯⋯奉仕部の活動内容がわかってきました。

 

 要するにこの部活は、問題を抱えあ生徒の相談に乗って、解決の為の手伝いをするみたいです。しかしながら、私が知ら無かったように公にはされてないようで⋯⋯てか私が学校に馴染んでないとかでは無く由比ヶ浜さんも正確に認識してなかった事も踏まえると、ここに来るには何らかの仲介人が必要になるようですね。まぁ⋯⋯その仲介人は間違いなく平塚先生でしょうが⋯⋯。

 

 先生は偶に悩みや問題を抱えた生徒を送り込んで来る⋯⋯要するにここは隔離病棟。

 

 そのサナトリウムで、私は相変わらず読書をしてる訳ですが⋯⋯。

 

 まぁ⋯⋯そもそも悩みを相談するって言うのは相手に弱味を見せる行為です。それを同じ学校の生徒⋯⋯しかも知り合いでもない明らかに怪しい部活に話すとか、普通はハードルが高いと言うものです。

 

 由比ヶ浜さんだって先生の仲介があったから、それならと多少は納得したに過ぎず⋯⋯そうでなければ由比ヶ浜さんじゃなくても来る人は居ないでしょう⋯⋯。

 

 だからこそ今日も人が来ることは無く、まさに閉店休業の状態です。

 

 私も雪ノ下さんや比企谷(ヒキガヤ)さんも沈黙は気にしない性質(タチ)なので、こうして三人で読書する時間はとても静かです。

 

 だからこそ、戸をコツコツと叩く音などはよく響くわけで⋯⋯。

 

「やっはろー!」

 

 由比ヶ浜結衣さんが、気が抜けるような実にアホっぽい挨拶をしながら、引き戸を引いて来ました。

 

 相変わらずスカートはナマ足が突き出る位に短く、そこから視線を上にあげれば今度は大きく開かれたブラウスから見えるフタオカ⋯⋯私達に喧嘩でも売ってるのか?

 

 そんな姿を見るやいなや雪ノ下さんはため息を吐き出します。

 

「⋯⋯何か?」

 

「え、なに。あんまり歓迎されてなくない⋯⋯? えっひょっとして雪ノ下さんってあたしの事⋯⋯嫌い?」

 

 由比ヶ浜さんは雪ノ下さんが呟いた小声を聞いてひくっと肩を揺らします。そんな由比ヶ浜さんを見て雪ノ下さんは何を思ったのか、ふむと少し考えるような仕草をしました。

 

 そして平素と変わらない声で言いました。

 

「別に嫌いじゃないわ。ただちょっと苦手ではあるけれども⋯⋯」

 

「それって女子言葉じゃ嫌いと同じだからねっ!?」

 

 さすがに嫌われるのは嫌なようで、思わずあたふたする由比ヶ浜さん。胸元を強調したような、派手な見た目の割には意外と反応は普通なんですね⋯⋯。

 

「で、何か用かしら?」

 

「や、あたし最近料理にハマってるじゃん?」

 

「じゃんって⋯⋯少なくとも私は初耳なのだけれども⋯⋯」

 

「いやぁ⋯⋯でさっこないだのお礼ってゆーのかな? クッキーを作ってきたから皆にどうかなぁーって」

 

 さぁーっと血の気が引く雪ノ下さん。まぁ⋯⋯由比ヶ浜さんの料理ってアレですよね⋯⋯あの黒々とした鉄のような暗黒物質(ダークマター)⋯⋯。あっなんでしょう急に喉が渇いてきました⋯⋯。

 

 てか⋯⋯ん? 皆って⋯⋯。

 

「あまり食欲がわかないから結構よ。お気持ちだけいただいておくわ」

 

「そっそうですね⋯⋯。私も最近は少しばかりダイエット中ですしね」

 

 まぁ⋯⋯私もそうですが⋯⋯雪ノ下さんが食欲を失ったのは間違いなくこの由比ヶ浜さんのクッキーを聞いた瞬間でしょうね⋯⋯。

 

 それを言わないあたりはそれなりの優しさと言うものでしょう⋯⋯とはいえ私もここは便乗させて頂きますが⋯⋯だってまだ死にたくないもん⋯⋯。

 

 ですが⋯⋯現実は非常で⋯⋯固辞する私や雪ノ下さんをよそに、由比ヶ浜さんは鼻歌交じりに鞄から、案の定⋯⋯暗黒物質(ダークマター)と化した謎の物体の入った、可愛らしくラッピングされたセロハンの包みを取り出しました。

 

「いやーやって見るとけっこう楽しいよねぇ。今度はさぁお弁当とか作っちゃおうかなぁーとか思ってるんだけどさぁ。あ、でさでさ、ユキノンとヒキタンお昼一緒に食べようよ」

 

「いえ、私は一人で食べるのが好きなのでそういうのはちょっと。それと、ゆきのんって気持ち悪いからやめて」

 

「えっと⋯⋯あっアレです⋯⋯私もモノを食べるときは誰にも邪魔されず自由で、なんといいますか救われてないとダメといいますか⋯⋯独り静かで豊で⋯⋯」

 

「うっそ、寂しくない? ヒキタンにユキノンも、何処で食べるの?」

 

「部室だけれど⋯⋯、ねぇ、私の話、聞いてたかしら?」

 

「あ、それでさ、あたしも放課後とか暇だし、部活手伝うね。いやーもーなに? お礼? これもお礼だから、全然気にしなくていいから」

 

「あっ雪ノ下さんこりゃダメですね⋯⋯スルースキルが半端ないです⋯⋯」

 

 トゥルルットゥットゥールー⋯⋯由比ヶ浜さんはゴリ押しを覚えた⋯⋯スルースキルもそうだけど距離感半端ないって⋯⋯雪ノ下さんは戸惑いながら私や比企谷(ヒキガヤ)さんの方をチラチラと見る。このアホをどうにかしろって事ですね⋯⋯分かります。

 

 ですが⋯⋯残念ながら無理です。

 

 彼女を説得できるだけの率先して話しかけて会話するスキルがあるなら、ボッチなんてしてませんし⋯⋯多分⋯⋯比企谷(ヒキガヤ)さんに至っては、野菜生活の代金返せとか、何時も暴言吐く奴を助ける義理はないとか⋯⋯後、由比ヶ浜さんの悩みに真剣に向き合った結果であり、それにより発生した彼女が受けるべき権利と義務が今やって来たに過ぎない訳ですから、むしろ私や比企谷(ヒキガヤ)さんから言わせれば⋯⋯お前の友達だろ何とかしろって話ですよ⋯⋯。

 

 そして案の定⋯⋯比企谷(ヒキガヤ)さんはクールに去るぜと言うかのように文庫本を閉じると、そのまま席を立ち、「お疲れさん」と一言呟いて部室を出ようと動き出しました⋯⋯あぁ⋯⋯クソッ⋯⋯私も出来ればそちらに便乗したいです!!

 

「あ、ヒッキー」

 

 そんな中、由比ヶ浜さんは比企谷(ヒキガヤ)さんを呼び止め、手元の暗黒物質(ダークマター)を彼目掛けて投げました。

 

 対する比企谷(ヒキガヤ)さんはと言うと声をかけられた事で立ち止まると同時に振り向き、飛んできたソレを反射的にキャッチしました。

 

「いちおーお礼の気持ち? ヒッキーも手伝ってはくれてたし」

 

 由比ヶ浜さんはそう言う中、比企谷(ヒキガヤ)さんは、禍々しいソレを見ながら苦笑しつつも、ソレを持ったままその場を去るのでした。

 

 私? 由比ヶ浜さんの視線が比企谷に向いた瞬間に、こっそり荷物を手に取るとコソコソと、比企谷(ヒキガヤ)さんとは別側の戸の方に、さりげなく移動しましたが何か?

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