やはり面倒臭い私と捻くれ者の彼とはあまりにも共通点が多すぎ……   作:無念の非リア

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その3 戦い

「ふむ⋯⋯そうか⋯⋯」

 

 平塚先生は雪ノ下さんの返事を聞くと、満足気にうんうんと頷くと、ニヤリと楽しげな笑みを浮かべながら比企谷(ヒキガヤ)さんと雪ノ下さんを見る。

 

「それで、話を変えるが雪ノ下、先程の話を聞くと比企谷の更生に手こずっているようだな」

 

 

 

「そうですね⋯⋯その上、本人がその問題点を自覚してませんし⋯⋯」

 

 雪ノ下さんそう言って、比企谷(ヒキガヤ)さんの方をキッと鋭い眼差しで睨み付ける。怖い怖い怖いです!

 

「⋯⋯あの⋯⋯さっきから俺の更生だのなんだの言ってくれますが、別に俺自身はそんなこと求めてないんですけど⋯⋯」

 

 彼は気だるげにそう答えると、雪ノ下さんは呆れたように溜息を吐き出し、比企谷(ヒキガヤ)さんをジト目で見る。

 

「⋯⋯何を言ってるの? あなたは傍から見れば余人に比べて著しく劣っていると思うのだけれど⋯⋯むしろ変わらないと社会的にまずいレベルよ? それともかわろうとする向上心が無いのかしら?」

 

「そうじゃねぇよ。⋯⋯単に変わるだの変われだの他人に『自分』を語られたくないだけだっつの。だいたい人に言われたからはいはいって変わるようなのが『自分』なわけないだろ。そもそも自己というのは⋯⋯」

 

「可哀想に⋯⋯自分を客観視できないのね⋯⋯」

 

 雪ノ下さんは八幡さんをガチで憐れむかのような目で見詰める。おい! やめてあげて! それは彼じゃなくても精神的にダメージが入っちゃうから!

 

 でも⋯⋯比企谷(ヒキガヤ)さんが言いたい事も分からなくは無いんですよねぇ⋯⋯だって周りに言われたからホイホイ変わるって自己の無い機械と同じで、個人としての自己が無いって話なんですよねぇ⋯⋯。まぁ⋯⋯とは言えリア充達はそんな薄っぺらい自己を尊重する連中ですし⋯⋯うんやっぱりリア充はクソだな。

 

「貴方のそれはただ逃げてるだけ。変わらなければ前に進めないわ」

 

「⋯⋯それ言ったら変わる事も逃げになると思いますけど⋯⋯」

 

 私は雪ノ下さんに少し苛立ちを感じて思わず口にしないでも良いことを口にしてしまった。

 

 雪ノ下さんはマイナスレベルのブリザードを起こすかのような鋭い目でこちらを睨みつける。

 

 ひぃー! こっ怖いですよ! 絶対この人、確実に五人は殺してますよね? 松島〇モ子でもゴリゴリ噛まれるレベルですって!

 

「⋯⋯あ、いや⋯⋯私が言いたいのはですね変わるとか変わらないとか言ってますが⋯⋯雪ノ下さんからすれば変わらないでいる行為は〝現実〟からの〝逃げる〟と言う行為なのでしょうが、逆に見れば雪ノ下さんの〝変わる〟と言う行為もまた〝現状〟からの〝逃げる〟と言う行為になると思うんですよねぇ⋯⋯だったらどちらにしろ〝逃げる〟って事に変わらないと思うんです⋯⋯えっと⋯⋯すみません」

 

 そして⋯⋯気不味い空気と共に重苦しい沈黙が流れ、当たりは外の音すら聞こえない程の静寂に包み込まれた。

 

 もはや、私としてはこの状況が永遠に感じられる位に重苦しくて、思わず私は冷や汗を流し視線を泳がせながら生唾をゴクリと飲み込む。

 

「フッ⋯⋯ククク中々面白くなってきたじゃないか」

 

 そんな沈黙をものともせず。楽しげにニヤニヤと笑みを浮かべながら、平塚先生はそんな沈黙を一陣に切り裂いた。

 

「いやぁ⋯⋯実にいい私はこう言う展開は好きだ、大好きだ! ジャンプっぽくて実にいい!」

 

 先生は一人テンションMAXで子供のようにはしゃぐかのようにそう言った。

 

「フッ⋯⋯古来よりお互いの正義がぶつかったときは勝負で雌雄を決するのが少年マンガの習わしだ」

 

「⋯⋯いや、何言ってるんですか⋯⋯」

 

「えぇ⋯⋯そうですよ⋯⋯後、悲しい事ですが最近の少年マンガは努力、友情、勝利の〝努力〟が欠けた。生まれながらチートで、俺TUEEEE見たいな展開や、どう足掻いても絶望デデドン! 見たいな展開の方が多いですよ⋯⋯」

 

 平塚先生は私の言葉に一瞬顔を引き攣らせるが、すぐ様咳払いして誤魔化すと、高らかに私たちに向かって宣言する。

 

「ま、まぁそれではこうしよう。これから君達にはそれぞれで下に悩める子羊を導く。彼らを君たちなりに救って見たまえ。そしてお互いの正しさを存分に証明するのだ! 誰がどれだけ人に奉仕出来るか! ガ〇ダムファイト・レディ・ゴー!!」

 

「嫌です」

 

「え?嫌ですよ」

 

 雪ノ下さんと私は先生にそう言う。雪ノ下さんにいたっては冷たい眼差しで睨みつけてます⋯⋯。

 

 八幡さんはそんな中、Gガ〇は世代じゃ無いとか思ってそうな顔で私達と同意見だとばかりに頷く。

 

 先生は私達の意志を確認すると悔しげに親指の爪を噛む。

 

「くっ、ロボットファイトの方が分かりやすかったか⋯⋯」

 

「いや、そう言う問題じゃ無いですから!」

 

「あぁ⋯⋯確かにそう言う問題じゃ無いな⋯⋯」

 

 メダ〇ットとかマニアック過ぎますしね⋯⋯。

 

「先生。年甲斐もなくそう言うのは辞めてください。酷くみっともないです」

 

 雪ノ下さんは辺りを凍てつかせんばかりの冷えきった鋭い言葉を投げかける。

 

 そのおかげか、先生も冷水を浴びたように落ち着いたのか、恥ずかしさの余りに顔を赤らめては二度目の咳払いをした。

 

「と、とにかくっ! 自ら正義を証明するなら己の行動あるのみ! だから勝負しろと言ったら勝負しろ。君たちには拒否権はない」

 

「「横暴すぎる」」

 

 柄にもなく私と比企谷(ヒキガヤ)さんと、同じ意見と声が重なってしまった。

 

 てかこの人完全に子供ですよ。大人なのはその忌々しい二つの丘だけですか⋯⋯。

 

 まぁ⋯⋯勝負なんて適当にやってさっさと負けちゃいました! とかで別にいいんですけどね⋯⋯。

 

 参加することに意義があるって、ある意味便利な免罪符ですよねぇ⋯⋯。

 

 しかし、頭が幼女なロリBBAならぬBBAロリは、そんな私達の考えはお見通しかのように、妄言を口にする。

 

「もちろん、死力を尽くして戦って貰わなくては困るからな、君たちには勝利する事へのメリットとして、勝ったほうは負けたほうに何でも命令出来る、と言うのはどうだろう」

 

「なんでもっ!?」

 

 彼女の言葉に比企谷(ヒキガヤ)さんは、突然そう大声を上げると、私達を横目で交互に見てから、生唾を飲み込みました。

 

 私はそんな比企谷(ヒキガヤ)さんを警戒しながら、数歩後ずさり距離を取る。

 

 雪ノ下さんも身の危険を感じたのか椅子をガタッと勢いよく引いて、2mほど距離を取って身体を抱える防御体制に入りました。

 

 比企谷(ヒキガヤ)さんも雪ノ下さんの椅子を引く音に気付いたのか、私と雪ノ下さんを交互に見ます。

 

 そんな中、防御体制の雪ノ下が口を開きました。

 

「⋯⋯この男が相手だと身の危険を感るのでお断りします」

 

「偏見だっ! 高校男子が卑猥な事ばかり考えてる訳じゃないぞ!」

 

「いやいやいやいや!? 何でもの言葉に反応して、雪ノ下さんと私を交互に見てから生唾を飲み込むとか、それこそ説得力ないですからね!」

 

 違うんだって叫んでもアレは言い訳しようがないですからね! 女性は視線に敏感なんです! 特に雪ノ下さんの方が見る回数が多かったのも、やけに平塚先生の胸をちょいちょい見てたのも分かるんですから! 判決有罪! ギルティ! ギルティです!

 

「フフフ⋯⋯さしもの雪ノ下雪乃と言えども恐れるものがあるか⋯⋯」

 

 意地悪そうな顔で平塚先生は言います。ちょっ! さっきの雪ノ下さんの反応からしてそんな挑発的に言うと⋯⋯。

 

「⋯⋯いいでしょう。その安い挑発に乗るのは少しばかり癪ですが、受けてたちましょう⋯⋯」

 

 ほら、雪ノ下さんがムキになって乗っちゃったよ⋯⋯この子さっきから色んな意味でチョロインなんだから⋯⋯。

 

「決まりだな」

 

 ニヤリと平塚先生は笑い、雪ノ下は視線を受け流す。

 

「あれ? 比企谷(ヒキガヤ)さんはともかくとして、私の意志は⋯⋯」

 

「いや、俺はともかくってなんだよ!」

 

「先程のニヤけた表情でも見れば決まってるも同然でしょうが!」

 

「あ、はい⋯⋯」

 

 私は思わずそう言うと平塚先生は楽しげに私を見る。

 

「まぁ⋯⋯そうだな⋯⋯比企谷(ヒキタニ)の場合は比企谷(ヒキガヤ)が勝利しないよう気をつけるのが最前だろう? それだけでも死に物狂いで全力は出せよう。それに君には拒否権は無いからな」

 

「⋯⋯人権ってなんなんでしたっけ⋯⋯」

 

 どうやら私は、気付けば平塚先生の王政国家による、無法地帯へと足を踏み入れていたらしい。私はそんな事を考えながら明後日の方向を見つめる。

 

 平塚先生はそんな私達をまさに愉悦とばかりに、満面の笑みを浮かべながら教室を後にする。

 

 取り残された私達は、当然会話などは無く重い沈黙の中、完全下校時刻のチャイムがなると同時に、そのまま私達は黙ったまま解散するのだった。

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