やはり面倒臭い私と捻くれ者の彼とはあまりにも共通点が多すぎ…… 作:無念の非リア
ホームルームが終わり教室から出た私と彼を待ち構えていたのは平塚先生でした。
腕を組んで、仁王立ちの姿はさながら看守⋯⋯やばい軍服とか似合いそうだと一瞬思ってしまった⋯⋯。
まぁ⋯⋯〇獄学園に比べればマシとはいえ、学校なんて所詮隔離施設みたいなものだから、この想像にさして問題は無いと思う⋯⋯ないよね?
「ふっ⋯⋯二人とも部活の時間だ」
うわぁ⋯⋯私はそう言う平塚先生に露骨に嫌な顔になる⋯⋯。
だって部活って面倒臭いと言いますか⋯⋯ボッチな私としては学校にいるよりも早く家に帰りたいのだ。
「行くぞ」
そう言うと平塚先生は私の隣にいる男子、
そして、それに慌てて躱す比企谷⋯⋯それによって更にずいっと手を伸ばす先生⋯⋯それを更に避ける彼⋯⋯。
「あのですね、思うんですが生徒の自主性を尊重し自立を促す学校教育と言う観点から考えても、こうやって強制されることに異議を唱えたいのですが」
攻防のやり取りをする中彼は平塚先生にそう言った。
「残念だが、学校は社会に適応させるための訓練の場だ。社会に出れば君の意見など通らない。今のうちから強制されることに慣れて起きたまえ」
そう言うやいなや⋯⋯平塚先生の綺麗なまでのボディブローが彼に見事なまでにクリンヒットした。
私はそんなやり取りを見た後、今のうちにとばかりににその場を去ろうと⋯⋯。
「それから⋯⋯
出来なかった⋯⋯てか肩を掴む手の力強すぎですよ! あなたは何処の雛〇沢の警察官ですか!
「二人とも⋯⋯次に逃げようとしたら分かるな? 余り私の拳を煩わせないでくれ」
「拳は確定なのかよ⋯⋯」
「体罰禁止とはいったい⋯⋯もはやこの学園だと哲学の領域だったか⋯⋯」
いや⋯⋯そういえば入部(強制)の際も、私達には人権すらありませんでしたね⋯⋯。
そして私達は歩き出すと、平塚先生は何かを思い出した⋯⋯と言うより
「ああ、そうだ二人とも⋯⋯今度から逃げるようなら雪ノ下との勝負は強制的に不戦敗にするからな⋯⋯ついでにペナルティも科す。三年で卒業出来ると思わない方がいいぞ」
将来的にも精神的にも二重の意味で、逃げ道を塞ぐと言うか脅して来ましたよ⋯⋯本当に私達の人権って何処に行ったのでしょうか⋯⋯。
そして、私と彼は先生に連行される形で、連れていかれるのだった。
その際、肘関節をしっかり極められている彼には深く同情したが⋯⋯私もしっかり肩を捕まれてるのでおあいこと言う事にして欲しい⋯⋯。
そんな中、彼が口を開いた。
「あの、別に逃げたりはしないんで一人で大丈夫ですよ。ほら俺いつも一人だし。一人全然平気むしろ一人じゃないと落ち着かないレベル」
「そ、そうですよ! 私も彼と同じく別に逃げたりしませんし、何時も一人ですから! ね?」
一瞬抜け駆けする気かと睨みそうになったが、これ幸いと私も比企谷さんに便乗してそう言った。
そして、そんな私たちに平塚先生はふっと優しげに微笑み⋯⋯。
「そう寂しい事を言うな。私が一緒に行きたいのだよ」
余りにも普段と違う印象を思わせる微笑み⋯⋯私も一瞬見とれてしまう⋯⋯。
「君たちを逃がして後で歯噛みするくらいなら、嫌々でも連行したほうが私の心理的ストレスが少ないしな」
「「理由が最低ですね」」
思わず彼とハモってしまった⋯⋯。
「何を言うか。嫌で嫌で仕方ないが、君たちを更生させるためにこうして付き合ってやっているのだぞ。美しい師弟愛と言うやつだ」
「これが愛かよ。これが愛なら愛などいらないです」
「私も激しく同意ですね⋯⋯」
「さっきの言い訳と言い⋯⋯君たちはまったく捻くれているなぁ⋯⋯。特に
先生⋯⋯マンガ好きすぎでしょう⋯⋯。
「もう少し素直なほうが可愛げがあるぞ。世の中を斜めに見ていても別に楽しくないだろう?」
「先生⋯⋯物語とかは苦難があってそれを乗り越えるから、物語は面白いように⋯⋯楽しいだけが世の中じゃないですよね?」
「そうですよ⋯⋯楽しきゃいいって価値観だけで世界が成立してたら全米が泣くような映画も出来ないでしょ。世の中には悲劇に快楽を見いだせることもある訳ですし」
「⋯⋯二人のその発言はまさに典型的だな。斜に構えるのは若者にはよくあることだが、君たちのそれはもう病気の域だな。高校二年特有の疾患つまり『高二病』と言ったところだろう 」
平塚先生からとても素敵な笑顔で、私達は病気認定を受けた。
「え、病気扱いって酷くね?」
「いや⋯⋯そもそも高二病ってなんですか⋯⋯」
「君たち、アニメやマンガは好きかね?」
平塚先生は狂化でも付与されてるのか自分勝手に話題を降ってきた。
「まぁ、嫌いではないですね」
「そうか⋯⋯それなら
「え? いやまぁ⋯⋯私もまぁ嫌いではないですね⋯⋯」
「そうか⋯⋯なら、二人とも、なぜ好きなのかね?」
平塚先生の突然の問いかけに私は面食らってしまう。
「え? それは⋯⋯まぁ日本の文化の一形態と言いますか⋯⋯世界に誇れるポップカルチャーとして認知されてますし⋯⋯それを認めないのも不自然でしょう?」
「あぁ⋯⋯そうだな⋯⋯それに市場も大きくなってるから経済面でも無視できないしな」
「ふむ。では、一般文芸はどうだ?
「読んじゃいますけど、正直売れる前の作品が好きですね」
「あぁ⋯⋯そうだな⋯⋯」
平塚先生の問いかけに私は答えると、比企谷さんも何気なく同意する。
「ほう⋯⋯ではライトノベルレーベルはどこだね?」
「ガガガと、講談社BOX⋯⋯まぁ、後者がラノベかどうかは知りませんけど⋯⋯」
「同じく同意ですが⋯⋯てかさっきから何の尋問ですか?」
「ふむ⋯⋯君たちは本当に悪い意味で期待を裏切らないな。立派な高二病だ」
私達がジトと睨みつける中、先生は何故か呆れたように私達に顔を無ける。
「「だから高二病って何《ですか》だよ」」
またしてもハモってしまった⋯⋯。
「高二病は高二病だ。高校生にありがちな思想形態だな。捻くれることがかっこいいと思っていたり、『働いたら負け』とかネットなどでもてはやされているそれらしい意見を常に言いたがり、売れている作家やマンガ家を『売れる前の作品が好き』とか言い出す。みなありがたがるものをバカにし、マイナーなものを褒め称える。そのうえ、同類のオタクをバカにする。変に悟った雰囲気を出しながら捻くれた議論を持ち出す。一言で言って嫌な奴だ」
「嫌な奴って⋯⋯クソ! だいたい合ってるから反論出来ねぇ!」
「不服ですが⋯⋯私も
「いや、褒めたぞ? 近ごろの生徒は実に器用で上手 に現実と折り合いをつけてしまうからな。教師として張り合いがないのだよ。工場で働いているような気分になる」
「近頃の生徒は、ですか」
とまあ、私達がうんざりして軽く論破の一つもしてやろうかとすると、平塚先生は私達の目を交互にじっと見てから肩を竦めた。
「何か言いたそうにしているが、君たちのそういうところがつくづく高二病だと私は思うよ」
「「⋯⋯そうっ《ですか》すか」」
「勘違いしないんで欲しいのだが、私は割と本気で褒めている。考えることを放棄しない人間は好きだよ。捻くれてはいるが、ね」
好きだ、と直接的に言われてしまうとこちらとしては言葉につまらざるおえない⋯⋯言われ慣れてないだけにかなり切り返しの対処に困る。
「そうだな⋯⋯
「嫌な奴」
即答した⋯⋯いや私は確かに彼とは違って面会程度なのは確かなので分からないのは確かですが、即答される程と考えるとよっぽどだったのだろうと軽く思ってしまいました⋯⋯。
「そうか」
平塚先生はそんな彼に苦笑する。
「非常に優秀な生徒ではあるんだが⋯⋯。まぁ、持つ者は持つ者でそれなりの苦悩があるのだよ。けれど、とても優しい子だ」
先生⋯⋯それは巨乳には巨乳のイケメンにはイケメンの悩みがあるとか⋯⋯私達から言えば嫌味や惚れ気みたいな我儘な悩みの事でしょうか? 私はそんな事を思い、心の中で軽く舌打ちをした。
「きっと彼女もやはり何処か病気なんだろうな。優しくて往々にして正しい。だが世の中が優しくないからな。さぞ行きづらかろう」
「あいつが優しくて正しいかは置いとくにしても、世の中についちゃおおむね同意ですね⋯⋯」
彼はそう呟くと先生は、だろう? と言う顔をして彼を見たあと私の方をじっと見た後、口を開いた。
「やはり君たちは、捻くれているな。うまく社会に適応できそうもない部分が心配だよ。だから君たちを1箇所に集めておきたくなる」
「集めておきたくなるってあの場所は隔離病棟ですか⋯⋯」
「そうかもな。けれど君たちのような生徒は見ていて面白くて好きだよ。だから手元に置いて置きたいだけなのかもしれんな」
そう楽しげに笑う先生は相変わらず比企谷さんの腕を極めている。
ぎしぎしと嫌な音が聞こえる中、私は心配になって彼を見ていたが気鬱だったと気付いた。
と言うのも先生は気付いているのかいないのか、先生のその豊満なフタオカ⋯⋯贅肉の塊にちょいちょい当たっているからだ。
そして、その感触に満更でもなさそうな彼を見て⋯⋯私は心配した私が馬鹿だったと思うのだった。