やはり面倒臭い私と捻くれ者の彼とはあまりにも共通点が多すぎ……   作:無念の非リア

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その8 手作りクッキー

「遅い」

 

 比企谷(ヒキガヤ)さんが帰って来て開口一番で雪ノ下さんはそう言ってから、比企谷(ヒキガヤ)さんの手から野菜生活をひったくり、ストローを刺すや飲み始めます。

 

 彼の手に残ったスポルトップとカフェオレ二本、恐らくカフェオレは由比ヶ浜さんと、私なんだろうなぁと思いつつも、出来れば私もスポルトップが良かったなと言う気持ちを飲み込んで、受け取りました。

 

「⋯⋯はい」

 

 由比ヶ浜さんはそう言うと、ポシェットのような小銭入れから100円玉を取り出しました。

 

 へ〜〜アホの子だとか、以外とチャラそうだとか思ってましたが、以外とこう言う所は礼儀正しいんですね⋯⋯。

 

 私は比企谷さんと由比ヶ浜さんがお金を受け取り拒否して少し問答になってる中、さっきの傍若無人な振る舞いをしていた雪ノ下さんをチラリと見てから、少し沈鬱な気分になりました。

 

「ほらよ」

 

「あっありがとうございます?」

 

 比企谷さんはそう言うと私にカフェオレを前に突き出して来たので、私は咄嗟に受け取ります数俊ほど沈鬱気味で周りが見えてなかった事もあり、お礼も生返事な感じになってしまいました⋯⋯恥ずかしい⋯⋯。

 

「話は終わったのか?」

 

「ええ、あなたがいないおかげでスムーズに話は進んだわ。ありがとう」

 

 わぁお⋯⋯こんな時でも気にせず平常運転で毒が吐けるんですね⋯⋯多分彼の中では、俺史における最低の感謝の言葉じゃね? とか思ってそうですよ⋯⋯。

 

「⋯⋯そいつはよかった。で、何すんの?」

 

「家庭科室に行くわ。比企谷(ヒキガヤ)君も比企谷(ヒキタニ)さんも一緒にね」

 

「家庭科室?」

 

 比企谷(ヒキガヤ)さんはそう言うと少し顔が強張ります。

 

「何すんの?」

 

 まぁ⋯⋯比企谷さんの不貞腐れたその言葉に、行きたくないって気持ちがしっかり伝わります⋯⋯。

 

 確かに体育、遠足と並ぶ三大トラウマスポットの一つとか好き好んで行きたいとは私も思えませんし。

 

 あんな、イチャイチャするような連中が集まってする、私達にとって針山地獄とかす教室、包丁やガスコンロとかあるしで、危険だから本当に規制して欲しいでよ規制。

 

 だいたい楽しくお喋りし合う中に、私が口出した瞬間一気に沈黙しだすアレとか、ほんとその沈黙で傷つくこちらの気持ち考えた事ありますって問い質したい⋯⋯まぁ実際の所⋯⋯そんな事言った所で何の得も無いので言いませんが⋯⋯。 

 

「クッキー⋯⋯クッキー焼くの」

 

「はぁ、クッキーを」

 

「手作りクッキーを上げたい人が居るらしいですよ⋯⋯自身が無いから手伝いのお願いらしいです⋯⋯」

 

 そう言うと私はとても沈黙な気分に再び沈みこむ⋯⋯。

 

 対する比企谷(ヒキガヤ)さんもそんな私の心境を察したのか、同じく露骨に嫌そうな顔になる。

 

「なんで俺たちがそんなこと⋯⋯、それこそ友達に頼めよ」

 

「う⋯⋯、そ、それはその⋯⋯、あんまり知られたくないし、こういうことしてるの知られたらたぶん馬鹿にされるし⋯⋯。こういうマジっぽい雰囲気、友達とは合わない、から」

 

 由比ヶ浜さんは視線を泳がしながら答えました。

 

 対する私と比企谷さんはお互いにふぅ、とため息を吐きだします⋯⋯

 

 本当になんで私達が他人の恋路の為に協力しなきゃいけないんですかねぇ⋯⋯だいたいこんな個人的にクッキー作って渡したいとか十中八九異性案件かそんなでしょ⋯⋯こんな事してる位なら、古典の内容でも暗記してる方がよっぽど有意義だと思いますし、ましてや手伝いなんて論外⋯⋯本当に恋バナなんて犬でも食わない案件だと思える程に興味が無い⋯⋯。

 

 わざわざ奉仕部内で唯一の男性である比企谷(ヒキガヤ)さんが、気を使っての女子だけにしてどんな話が出て来るかと思ったら、これですよ⋯⋯。いや、まぁそうじゃないかなぁとは薄々は思ってましたけど、男子に聞かれたくない案件とかでしたし、まぁ確かに恋愛絡みの案件って「頑張りなよ! 応援してるね!」とか口先だけでも言ってれば万事OKな訳ですし、上手くいかなかったら「アイツ⋯⋯マジ最低だよね〜〜」とか言って陰口叩いてたりするんですね! 分かります!!

 

「「はっ」」

 

 思わず比企谷さんと同時に鼻で笑ってしまうと、由比ヶ浜さんは私と比企谷(ヒキガヤ)さんを交互に見る。

 

「あ、あう⋯⋯」

 

 由比ヶ浜さんは何か言おうにも、言葉が喉から出ないのか、少し肩を震わせ俯きながらスカートの裾をキュッと握りしめます。

 

「あ、あははーー、へ、変だよねーー。あたしみたいなのが手作りクッキーとかなに乙女(オトメ)ってんだよって感じだよね。⋯⋯ごめん、雪ノ下さん、やっぱいいや」

 

「あなたがそう言うのなら私は別に構わないのだけれど⋯⋯。──ああ、この二人のことは気にしなくてもいいわ。人権はないから強制的に手伝わせるし」

 

 どうやら私と比企谷(ヒキガヤ)さんには日本国憲法は適応外らしいです。どこの某企画ですか⋯⋯。

 

「いやーいいのいいの! だって、あたしに似合わないし、おかしいよ⋯⋯。優美子(ゆみこ)とか姫菜(ひな)とかにも聞いたんだけど、流行んないっていうし」

 

 そう言って由比ヶ浜さんはチラリと私と比企谷(ヒキガヤ)さんを見ます。その萎れてしゅんとした姿に、追い討ちをかけるようにして雪ノ下さんが口を開きます。

 

「⋯⋯そうね。確かに貴方のような派手に見える女の子がやりそうな事ではないわね」

 

「だ、だよねーー。変だよね⋯⋯」

 

 たはは、と人の顔色を(うかが)うようにして由比ヶ浜さんは笑う。伏し目がちな視線が不意に私や比企谷(ヒキガヤ)さんに向けられます。そんなふうに見られると、何かこちらが悪いように思えてしまうのですが⋯⋯。

 

「「⋯⋯いや《いえ》別に変《です》とかキャラじゃない《です》とか似合わない《です》とか、柄でもない《です》とかそう言う事が言いたいんじゃなくてだな《ですね》、純粋に興味がねぇんだ《ないんです》」」

 

 わぁ⋯⋯何か長文至るまで全部ハモっちゃいましたよ⋯⋯あはは息ぴったりですね⋯⋯はぁ⋯⋯私は少し現実逃避気味に目を逸らす。

 

「もっと酷いよ!」

 

 由比ヶ浜さんは憤慨(フンガイ)して、机をバンッと叩きました。

 

「ヒッキーもヒキタンも、マジありえないし! あーー腹立ってきた。あたし、やればできる子なんだからねっ!」

 

「それは自分で言う事じゃねぇぞ。母ちゃんとかがしみじみ潤んだ目でこっち見ながら言うもんだ」

 

「えぇ⋯⋯かねがね同意ですね⋯⋯ちなみにどん感じかと言うと『あんたもやればできる子だと思ってたんだけどねぇ⋯⋯』みたいな感じですね」

 

「あんたたちのママ、もう諦めちゃってるじゃん⋯⋯」

 

「妥当な判断ね」

 

 雪ノ下さんはうんうんと大きく頷き、由比ヶ浜さんはブワッと目に涙を溜めながら、お互いに何か言ってきました。

 

 正直言って余計なお世話なのでほっといて欲しいです。

 

 ですが⋯⋯確かに由比ヶ浜さんがやる気を出してる中で水を差すのも、諦めるのも何か悲しくはありますし悪い気がしてきましたね。それに勝負のこともありますし⋯⋯。

 

 これは渋々ですが協力を申し出るしかなさそうですね⋯⋯。

 

「まぁ⋯⋯カレーくらいしか作れねーーが手伝うよ」

 

「同じく⋯⋯市販のシチューとかしか作れませんがそれでよろしければ⋯⋯」

 

「あ⋯⋯ありがと」

 

 由比ヶ浜さんはほっと胸を撫で下ろします。

 

「別にあなた達の料理の腕に期待はしてないわ。味見して感想をくれればいいのよ」

 

 雪ノ下の言うように複数人からの意見を述べようということであれば、私や比企谷(ヒキガヤ)さんがどうにか出来る部分もあるはず。甘いものが苦手な人達もそれなりにいる訳ですし、他者の味覚に合わせると言う意味では役には立てるでしょう⋯⋯特に今回は異性の相手となれば、この場で唯一の男性である比企谷(ヒキガヤ)さんの意見はかなり希少でしょうしね。

 

 それに比企谷(ヒキガヤ)さんが私と似通ってるなら、たいていのものはうまいと感じるくらいに素直な人間のはずですし⋯⋯。

 

 ⋯⋯あれ? それって結局役に立たないんじゃ⋯⋯。

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