エヴァンジェリンの選択   作:平山空海

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初めての作品が連載長編とか無謀の極みだと言われて、短編を投稿してみました。二話で完結です。


第一話

 

 

この冬一番の寒波が麻帆良学園都市を襲った。その日ボブ・ハミルトンとその妻ドロシーはコートを着込み、ある女性に会うために学園都市内の桜ヶ丘を目指していた。ボブは赤いバンダナを頭に締めた二mを超える世紀末覇王に似た巨漢で、ドロシーは百八十㎝を超える長身の肉感的な美女だった。ボブとドロシーは麻帆良学園の学園長にアメリカから招聘され、夫婦二人で麻帆良に住んでいる。

 

ようやくたどり着いたその場所には、趣のある木造の住宅が他から離れてポツンと建っていた。森の側に建てられたその情趣に溢れたログハウスに、二人が会う約束をした女性が住んでいる。二人が会談を申し込んだ女性の名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。魔法使いの間では闇の福音と呼ばれ恐れられている、真祖の吸血鬼であった。

 

今二人はログハウスのリビングで、この家の主であるエヴァンジェリンと向き合って座っている。ところ狭しと可愛らしい人形があふれた、幼い少女に相応しい部屋だった。しかし今そこには、その部屋に似つかわしくない張り詰めた空気が流れている。二人の目には七歳ぐらいの幼女にしか見えないが、魔法使いとしての感覚には巨大な威圧感を感じていた。二人は名前を告げた後、どう話を切り出すか迷っていた。

 

二人と一人はしばらく無言で向き合っていたが、ボブが意を決して口火を切った。

「マクダウェルさん、今日は話し合いに応じていただいて感謝している」

ボブとドロシーは頭を下げたが、それでも上から見下ろす形となっている。不機嫌になったエヴァンジェリンはことさら尊大な態度で応じた。

「ふん、じじいのように自分のテリトリーに呼びつけたりせんだけでも百倍はましだ。大方予想はついているが、用件はなんだ?」

 

ボブがおもむろに話し始めた。

「私がタカミチ・T・高畑の咸卦法の指導のために、この地に呼ばれたことは知っていると思うが、そのタカミチに問題が生じたのだ。一応咸卦法の発動はできるようにはなった。だが実戦で用いるにはまだまだ練度が足りん。自分でもそれは分かっているはずなのだ。それが内容は明かそうとしないがよほど気になる情報が耳に入ったらしい、おかげで鍛練に集中できていない。今にもどこかに飛び出して行きそうなのだ。それでマクダウェルさんの所有する魔法球を使って時間の短縮を図りたい。使わせてもらえるだろうか?」

 

エヴァンジェリンはビスクドールのような端整な顔を歪めると吐き捨てるように答えた。

「大方じじいに吹き込まれたのだろう。お前たちが麻帆良に来たのは去年の8月の末だったはずだ。十年掛けてもものになりそうになかったあの男が、この短期間で究極技能をものにしたとは驚きだが更に欲をかいて尻を叩きにかかったか。私に頼み込むことも予想済だろう。タカミチとお前たちはじじいの手のひらの上で踊らされているのだぞ。分かっているのか。お前たちも知っての通り魔法使いは等価交換が原則だ。タカミチとは知らぬ仲でもない。釣り合う対価を差し出せば私の別荘を使わせてやろう。ただし、私は金では動かんぞ」

 

ボブは口を引き結んで、なぜか虚空を睨み付けている。エヴァンジェリンはそれをうさんくさそうに眺めていた。それを見て小さなため息を吐いたドロシーが、代わりに口を開いた。

「たぶんそうじゃないかとは思ったけど、ダーリンが請け負った以上は仕方がないわよ。あなたがナギ・スプリングフィールド氏に登校地獄の魔法を掛けられたことは聴いているわ。みすみす高畑さんを死なせるわけにもいかないし、対価については登校地獄の魔法の解除に協力するというのではどうかしら?」

エヴァンジェリンはドロシーを疑惑と軽蔑の入り混じった眼差しで見つめた。

「私がこの呪いを解くためにどれだけ研究したと思っている。お前たちにいったい何ができると言うのだ」

 

ドロシーはエヴァンジェリンの言葉を気にした風でもなく淡々と答えた。

「私たちも協力すると言う言葉だけで信じてもらえるとは思っていないわ。ダーリンは魔法の術式を見ることができる特殊な目を持っているし、私は術式の解析が結構得意なのよ。今日これからあなたに掛かっている登校地獄の魔法を実地に調査して、後日解析結果を報告するわ。それを聴いてから判断してちょうだい」

ドロシーの言葉を聴いて多少興味が湧いたエヴァンジェリンは尋ねた。

「珍しい魔眼を持っているな。魔法使いならだれもが欲しがるだろう。それで調査とはいったい何をするのだ?」

 

ドロシーは簡潔に答えた。

「それほど変わったことをするわけではないわ。ダーリンがあなたに掛けられた登校地獄の術式を読み上げて私が書き留めるだけよ。あなたはただ真っ直ぐ立っているだけでいいわ。あとはいくつか尋ねたいことと、確認したいものがあるだけよ」

エヴァンジェリンはナギに呪いを掛けられた時のことを思い返していた。

「この私に何を聞きたいのだ。すべてに答えられるとは限らんぞ」

 

ドロシーは少し呆れた表情を浮かべてエヴァンジェリンに答えた。

「別に大したことじゃないわ。魔法を掛けられた時の状況と彼があなたに話した内容が分かれば、魔法を解除する手がかりになるかもしれないと考えただけよ。この二つは答えたくなければ無理にとは言わないわ。本当に確認したいのは出席証明書、卒業成績証明書、卒業証書、卒業課題達成証明書の内容と書式よ。これらに問題があれば、それを解消することで魔法を解除できるかもしれないのよ」

 

エヴァンジェリンは怪訝な顔をしてドロシーに言った。

「何を言っている。そんなものなど一度ももらったことは無いぞ。何しろ卒業式の日には担任教師やクラスメートから、私に関する一切の記憶が消えてしまうのだ。私と三年間同じ教室で過ごしたというのに、卒業式の会場に紛れ込んだ余所者扱いするのだぞ! この呪いが地獄と呼ばれる訳がその時良く分かったよ」

 

ドロシーは訳がわからないといった顔をした。

「それはおかしすぎるわ。この魔法は本来、魔法学校の不登校児童を強制的に通学させるためのものなのよ。地獄と呼ばれるのは不登校になった原因を解決しないで強制的に登校させられるからだわ。いじめが原因で不登校になった子にとってはまさに地獄なのよ。たしかに就学年数の違う一般人の学校にむりやり当てはめたのだからどこかに無理が出るのは当然よ。だけど落第や留年ならまだしも、あなたに関する記憶だけが消えるなんて異常だわ。何か根本的なことを見落としているんじゃないかしら」

 

その時のことを思い出したのか、エヴァンジェリンは虚無感を漂わせながらドロシーに向かって呟いた。

「異常も何も実際にそうなったのだ。おそらくあの男が馬鹿魔力で無理矢理掛けたせいでバグっているのだろう。呪いが解けないことには変わりがないにしてもあまりにもひどい仕打ちだ。そういえばお前はここに来てから一度も呪いという言葉を発していないな。なぜだ?」

 

ドロシーは当然と言いたげにエヴァンジェリンに告げた。

「この魔法は呪いと言われているけど、呪いの術式とは重なる部分がほとんどないわ。呪いと言うのは悪意を持って対象者に災厄をもたらすものなのよ。学校に行こうとしない子供を心配して掛ける魔法が呪いのはずがないでしょう。登校地獄はどちらかと言えば契約魔法に類するものなのよ。『私は契約など承諾していない』と言いたそうだけど、これは本来児童に掛けるものなのよ。本人が承諾しなくても保護者に当たるものが承諾すれば問題ないわ。とにかく高畑さんも今はまだ自重しているけど私たちは急いで結果を出す必要があるの。手早く調べるから立ち上がってくれないかしら。魔法を掛けられた状況については今度で良いわ」

 

そう言ってドロシーがエヴァンジェリンを立たせようとしたとき、部屋の中の魔力が一気に高まった。エヴァンジェリンが叫ぶ。

「貴様らいったい何をした!?」

ボブは緊迫した空気とは場違いな落ち着いた声で答えた。

「こいつらがあまりにも石頭なので少し脅しを掛けただけだ」

 

ドロシーがやれやれといったしぐさをしながら、呆れたような口調でボブに話しかけた。

「ダーリン、それじゃ何のことを言っているのか、マクダウェルさんにはわからないわ」

ボブはエヴァンジェリンに向かって軽く頭を下げると説明を始めた。

「私が『こいつら』と言ったのは、マクダウェルさんに取り憑いている契約の精霊たちのことだ。あの男の魔力のせいか知らんが、かなり高位の精霊が複数憑いている。私はここに来たときから、そいつらと話をしていたのだ。黙っていたのは悪かったが簡単に明かす訳にもいかんのでな。すまなかった。マクダウェルさんの周囲の人間の記憶を消していたのはこいつらだ。その事に腹が立って軽く脅しを掛けたら配下の精霊を大勢呼びやがった。魔力濃度が上がったのはそのせいだ」

ボブは途中でエヴァンジェリンにもう一度頭を下げると腹ただしそうに話した。

 

ドロシーは諦め顔で誰にともなく呟いた。

「もう、こうなったらここで精霊に尋ねてもらった方が早いわね」

エヴァンジェリンはたまりかねたように立ち上がってボブに強い口調で問いかけた。

「おい、お前は精霊と話ができるのか? どうなんだ! それに私に取り憑いているとはどういうことだ。なぜそいつらがクラスメートの記憶を消さねばならんのだ!」

 

ドロシーは興奮しているエヴァンジェリンをなだめるように説明した。

「できればこのことは隠して置きたかったんだけどこうなったら仕方ないわ。ダーリンは精霊と意思の疎通ができるらしいの。術式が読み取れるというのも本当よ。それと魔法契約には契約者や契約の対象者に契約の精霊が取り憑く場合があるの。彼らは契約の違反には厳しく対処するけど、対象者を守護する役目もあるらしいわ。そしてそれは契約の満了か解除まで続くのよ。あとはダーリンに直接尋ねてちょうだい」

 

エヴァンジェリンはうつむいてしばらく思案していたが顔を上げるとボブに問い掛けた。

「私に取り憑いているのはてっきり呪いの精霊だと思っていた。見当違いのことをしていては解けるはずがないな。それでなぜその精霊はクラスメートの記憶を消していたのだ?」

 

ボブは鼻を鳴らすと不機嫌そうに答えた。

「ふん、あいつらが言うには、マクダウェルさんには中等部に入学する資格がないのだそうだ。初等部の卒業資格を得た上で入学したのならそんなことはしなかったといっている。学園長が黙認しているのだから同じことだろうと言ったのだが、契約者の唱える呪文か魔力が込められた正式な文書でなければ受け付けないとか抜かしやがった。まったく相変わらず役人並みに融通の利かんやつらだ」

 

エヴァンジェリンは愕然とした顔を両手で隠すとかすかな声で自分自身に問い掛け始めた。

「なんということだ。あいつらの記憶が消えたのはやっぱり私のせいなのか? 奴が約束を守って卒業前に呪いを解いていれば消されずにすんだのか? 奴は私が中等部に入るとき何も言わなかった。私でさえ気づかなかったのだ。魔法学校を中退するような奴が知るわけがないか。じじいはすべてを知った上で私に中等部を勧めたのか? いいや、そこまで腹黒くはないだろう………………」

エヴァンジェリンはうつむいてしばらくの間黙り込んでいた。ボブとドロシーはそれを静かに見守っている。

 

しばらくしてエヴァンジェリンはボブの顔を見上げると静かに尋ねた。

「私はこの魔法を契約とは認めない。これは私にとって呪い以外のなにものでもないのだ。あの馬鹿が約束も守らずに死んだ以上、なんとしてもこの呪いを自力で解かねばならん。それで確認したいのだが、初等部の卒業でもこの呪いは解けるのだな。じじいにはできるだけ余計な借りは作りたくない」

 

ボブは少し気まずそうに答えた。

「他にも条件があるようなのだが、あの男は卒業成績について何か言っていたか?」

エヴァンジェリンは思い返してみたが、心当たりはなかった。

「いや、成績については言われた覚えはないぞ。精霊はなんと言っているのだ」

 

ボブは少し唸った後口を開いた。

「模範的な成績で卒業するのが契約者の意向だと言っているが、呪文できちんと設定しているのならそんな曖昧な言い方はしないはずだ。だからあの男が何か成績に繋がるようなことを言ったのではないかと思ったのだ。覚えている限りで良いから教えてくれないか。おそらく契約の精霊は重要な設定の抜けた部分を埋めるためにマクダウェルさんの記憶を探ったに違いない。あいつらが取り上げるのは呪文を唱える前後にされた約束とも取れる発言のはずだ。それによっては条件を下げることができるかもしれん」

 

エヴァンジェリンはあの時のことをいまだに夢に見ることがある。ナギに言われたことは一言たりとも忘れてはいない。だが人前であまり口に出して言いたいことでもなかった。

「いいか、一度しか話さんから心して聞け」

そう言ってエヴァンジェリンは登校地獄の呪いを掛けられたときの光景を二人に語り始めた。

「………………そうして奴は長い呪文をめんどくさがりながらも、私に登校地獄の呪いを掛けたのだ。そのあと麻帆良に連れてくるとじじいに私を引き合わせたのだ。そして中等部に編入するのを聴いて怒る私に『まあ、心配すんなって、お前が卒業する頃には、また帰って来てやるからさ』とはっきり言ったのだ。その上『光に生きてみろ。そしたらその時、お前の呪いも解いてやる』そう言って私に呪いを解くことを約束しておきながら結局来なかったのだ」

 

ドロシーは若干ずれたところに目をつけた。

「確かに誰も中等部に入ることをおかしいとは思っていないわね。魔法使いとしての思考で、一度も学校にいったことがないことなど気にしていないんだわ。学園長は一応は教育者なんだからその辺は少しは気にして欲しいわね」

そう言ってドロシーは学園長を非難した。

「じじいにとって学園長の肩書きなどその程度のものなのだろうよ。そういえばボブ・ハミルトン、お前の『あの男』と言う言い方には奴を知っているような感じがするが奴に会ったことがあるのか」エヴァンジェリンはボブの方に向き直り問い掛けた。

 

「青山詠春に手紙を届ける父に着いていったことがある。その当時詠春は魔法世界にいたのだ。それで話す機会があっただけだ。確か紅き翼とか言う傭兵団のリーダーだったはずだ」

ボブは不愉快そうに答えた。

「やけに不機嫌そうだが何があったのだ?」

「最初赤毛のガキと筋肉達磨が父に喧嘩を仕掛けたんだが、他にも依頼を抱えていた父は私に二人の足留めをさせて、自分は依頼を片付けにいったのだ」

ボブは苦々しげに事情を話した。

「それは大変だったな」

エヴァンジェリンは心底同情したように言った。

 

ボブは気を取り直してエヴァンジェリンに説明を始めた。

「契約の精霊たちが模範的な成績で卒業することを、解除の条件の一つにしていた理由が分かった。平均以上の成績でとか入れておけば楽だったのだがな。それをあの男は具体的な卒業条件については設定しなかったらしい。それであいつらはそれに代わる情報を求めたのだ。契約の対象者であるマクダウェルさんの記憶の中でそれらしいものを見つけたのだろう。それがあの男が言った『光に生きてみろ。そしたらその時、お前の呪いも解いてやる』という言葉だったのだろう。あいつらはそれを条件の代わりにしたのだ。どんな気持ちで言ったのか知らんが、そもそも魂の輝きではずっと劣っているあの男が『光に生きてみろ』とか良く言えたものだ。どんな気持ちで言ったにしろ精霊はこの言葉を『人々を導く光となったとき、この契約は満了する』と解釈したのだろう。これは順位については多少引き下げられるかもしれんが、それよりも人々を導く光ということは全校生徒のリーダー、初等部にも生徒会組織があるのかどうか知らんが、つまりはそういった組織のトップになる必要があるのかもしれん」

ボブはエヴァンジェリンにそう告げた。

 

エヴァンジェリンは全身をプルプル震わせたかと思うといきなり叫んだ。

「あの馬鹿はどこまで私に祟るのだ! 生徒会長など冗談ではないぞ」

ドロシーはいきりたつエヴァンジェリンをなだめながら他にも大事なことがあると言った。 

「確か初等部には児童会があって、トップは児童会長だったと思うわ。マクダウェルさんならその気になれば児童会長になることはそれほど難しくないでしょう。それよりも他の条件も確認しておかないと、何が障害になるかわからないわよ。ダーリン、他の条件も教えてちょうだい」

 

ボブはしばらく虚空を睨んでいたが10分以上経ってようやく口を開いた。

「すまん。私の早合点だった。必ずしも児童会長になる必要はないそうだ。解除の条件は、まず就学期間中は正当な事由のない遅刻・欠席をしない。今後は体調が悪くて病欠するときは魔力を込めてラテン語で宣言すれば良いそうだ。次に定期試験のすべての科目で、常に十分の一以内の上位に入る。そしてその次の条件なのだがな。できるだけ多くの人を導けと言うから、具体的な数値を示せと言ったら、最低でも千年の人生を救えと言い出した。最初は何のことか分からなかったが、ようするにマクダウェルさんが誰かに助言や忠告をすることによって、そいつがその後の人生にプラスの影響を受けたとする。影響を受けてプラスに転じた年数の総計が千年を超えれば良いそうだ。精霊には人間のおおよその運命や寿命が分かるというから可能なのだろう。この条件に関しては精霊が直接判断するらしい。千年と言うと長いようだがこれは意外と簡単に達成できると思う。初等部一年のクラスメート十五人、短命の者もいるだろうから余裕をみて二十人に良い影響を与えればクリアできるのだからな。マクダウェルさんは取り憑いている精霊に好意を持たれているようだ。最後に魔法書式で作成された出席証明書、卒業成績証明書、卒業証書、卒業課題の達成証明書の四つを精霊が確認しなくてはならない。当然学園長の血のサインが必要だ。これですべてだ」

 

ボブの長い説明を聴き終わったドロシーは妙に優しい声でボブに再び質問をした。

「ダーリン、卒業課題は誰が決めるの?」

「学園長だろうな」

「卒業課題の達成を認めるのは誰?」

「当然、学園長だ」

「そしてすべての書類に学園長の血のサインが必要なのよね」

「そうだな…………」

「『そうだな』じゃないでしょう。それってすごくまずいわよ。彼はマクダウェルさんに警備員として、麻帆良にずっと居て欲しいのよ。きっとギリギリの交換条件を持ち出すわ。私とダーリンは登校地獄の魔法の解除に協力するっていったのよ。何か良い方法を考えないと、彼が学園長の椅子に座っている間は登校地獄を解除できないかもしれないわ」

 

ボブは頭を抱えて思案にくれたが、名案は浮かんでこなかった。考え込んでいるボブをぼんやりと眺めていたエヴァンジェリンは二人に言った。

「明日から私の別荘を使うのを許す。対価については今日の話だけでも十分すぎるほどだ。これからは私のことはエヴァと呼べ。それとすまんが久しく使っていなかった別荘を整備するから今日のところは帰ってくれ」

 

二人が出ていって一人になったエヴァンジェリンはポツリと呟いた。

「ナギ、お前はいったいどんな気持ちで私に『光に生きてみろ』といったのだろうな」

エヴァンジェリンのかたわらには、ドロシーが手土産に持ってきた、硬いことで有名なせんべいの箱が置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実際に書き始めて見ると言葉の意味や漢字の使い分けなど、調べることがたくさんあることに気づかされます。web検索のありがたさを再認識しました。
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