デート・ア・ライブ エボリューション   作:オンリー

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第4話 ルインモード

 

 

 

「な、何だよ。あれ」

 

「し、士道。あいつ怖い」

 

 士道もギルモンの答えと同じ。目の前にいるのはさっきまで戦ったデビモンとは違う。姿形も変わり、堕天使の印象だった物が悪魔と呼ぶに相応しい。何よりもあの悪魔から発する圧倒的な威圧感は、二人の心の底から死を感じさせる。

 

「あいつルインモードって、言っていたけど一体なんなんだ?」

 

 冷や汗を身体中から溢れ出し、足の震えが止まらなかった。

 恐怖は先程も感じていたが、今は感じる恐怖は比較にならない物を感じさせる。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」

 

 咆哮。デビモンだった者は空を響かせる絶叫を上げ、辺り一面に光弾を撒き散らす。

 

「なっ⁉︎」

 

 無差別に放たれた無数の光弾は辺りの建物を破壊し、幾つものクレーターを作り出す。士道は思いもよらない攻撃に一瞬気を取られ、動き出すのが遅れた。

 

「士道ッ⁉︎」

 

 避けられない事を悟ったギルモンは士道を身体で覆う様にして、その身を守る。放たれた光弾はギルモンの身体に直撃し、火花を散らす。士道は悲痛の声でギルモンの名を呼び続けた。光弾の雨はいつ止むのか、一分が一時間に感じる程に時間が過ぎるのが遅く体感した。

 

 光弾の雨が止むと辺りにあった建物は倒壊し、辺りは廃墟と化していた。そして士道を庇い続けたギルモンも虫の息の状態に落ちていた。

 

「ギルモンッ⁉︎待ってろ、今傷を治すから」

 

 ポケベルの表示画面から選択し、押す。

 

「リカバリーA、selectっ!」

 

 だがギルモンの身体は治癒される事はなかった。

 

「何で⁉︎さっきはできたのに、何で今はできないんだよッ⁉︎」

 

 何度も表示画面のリカバリーAを繰り返し選択するが、ポケベルは何の反応を見せなかった。

 

「くそ、くそッ⁉︎」

 

 目から止めどなく涙が溢れ、頬を伝って地面にポタポタと落ちる。

 何もできない無力な自分に悔しい気持ちで占められていた。だが相手はそんな事を思いやってくれる訳がなく、デビモンはゆっくりとこちらに近づいて来た。

 

「し、どう」

 

「ギルモン!意識が戻ったんだな⁉︎」

 

「こ、こ、から、にげ、て」

 

「何言ってんだッ⁉︎ギルモンを置いて行ける訳ないだろ!」

 

「あい、つ、は、つよすぎ、る」

 

 確かにギルモンの言う事は最もだ。

 先程まで何とか戦えたのはデビモンとギルモンの実力がそれほど離れてはいなかったからだ。だが今のデビモンは先程までとは比較にならない程の力を出している。ギルモンが負傷していなかったとしても、勝てる見込みは万に一つもない。

 

「それでも嫌だ、俺はギルモンを置いて行けない」

 

「で、も」

 

「それに例え今逃げても後であいつに追い詰められて、どっちにしろ終わりだ」

 

「し、どう」

 

 もう勝ち目も、逃げられないと悟った士道は虚ろな目でポケットにしまい込んでいた物を取り出す。それは妹の誕生日に渡す筈だったプレゼント。

 

(琴里にちゃんと渡したかったな)

 

 思い出すのはいつも泣いて、甘える妹の姿。もしこのまま死んでしまったら、妹は、両親は悲しむだろうか。妹が悲しむ姿を想像してみると胸が締めつけられる。

 

(やっぱり諦めちゃ、ダメだよな)

 

 例え勝つ可能性がなくても、生きなくてはいけない。

 

(俺は・・・・生きたい!どんなに望みがなくても、俺はギルモンと一緒に生きたい)

 

 消えかけていた生きたいと言う意思が蘇り、再び闘志を燃やし立ち上がる。

 

「頼むっ!ギルモンと、皆と一緒に生きる為に・・・・俺に力を貸してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ⁉︎」

 

 雄叫びを上げ、ポケベルを空高く上げる。

 ポケベルは士道の生きたいと言う思いに応え、再び光が輝き出す。

 

「ぼく、も、士道と生きたい!」

 

 ギルモンも士道の言葉を聞いて、激痛が走る身体の痛みに耐えながら立ち上がる。

 

「ギルモン進化––––––グラウモン‼︎」

 

 ギルモンの身体が光輝くと、また新たに姿が変化する。

 身体の大きさがギルモンの時のふた回り以上の大きさになり、何よりも身体つきが戦いに特化した姿になっていた。

 

「グラウモン、魔竜型の成熟期デジモン。必殺技はプラズマブレイドとエキゾーストフレイム。更に進化したんだな、グラウモンっ!」

 

「あぁ、今のこの姿ならデビモンのあの力に勝てるかも知れない」

 

「でも身体の傷はどうなんだ?ダメージは残ってるんじゃないか?」

 

「・・・・正直、この姿でいられるのも長くは保たないな」

 

 進化した事で少しだけ身体が回復したのだが、やはり先程に受けた攻撃のダメージが大きく、今の成熟期の状態を維持できるだけの時間が限られてしまう。

 

「ならその限られた時間を一回の攻撃に集中しよう。幸いデビモンは急激に強くなったけど、思考能力が失い欠けてる」

 

 視線をデビモンに向けると、狂気な表情で同じ事を何度も繰り返し呟いている。

 

「コロス、コロス、コロス、コロス、コロス」

 

「あれなら避けられる心配はない。それよりも問題はその一撃で倒し切れるかだ」

 

 進化して力が増したとはいえ、今のデビモンを一撃で倒せる可能性は低い。もし倒し切れなければこちらの体力は底を尽き、今度こそ殺されるだろう。士道は自分が殺される姿を想像すると、必死に抑えていた恐怖が蘇り、一度しかないチャンスと言うプレッシャーに身体がカタカタと小刻みに震える。

 

「でもやるしかないんだ」

 

 今、奴を倒せるのはこの場にいる自分達だけ。士道は震える身体で、光輝くポケベルをグラウモンに向ける。

 

「グラウモン、ここまで一緒に戦ってくれてありがとう」

 

「僕の方こそ、ずっと側にいてくれてありがとう」

 

 互いの顔を見合い、微笑む。

 

「受け取ってくれ!グラウモンっ⁉︎」

 

 ポケベルの光をグラウモンに注ぎ込み、身体に注がれた光はグラウモンの力を底上げしていく。

 

「コロスッ‼︎」

 

 本能が危険を察知したのか、思考能力を失った筈のデビモンが止めを刺しに真っ直ぐ士道とグラウモンの下に急接近する。

 

「これで最後だ!デビモンッ⁉︎」

 

 士道に渡された力と残された自分の力を集中させ、グラウモンは力の全てを解放した。

 

「エキゾーストフレイムッ‼︎」

 

 グラウモンの放たれた熱線は地面を削り取りながら、一直線に向かって来るデビモンに炸裂する。

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ⁉︎」

 

 熱線の渦に飲み込まれたデビモンは断末魔の絶叫を上げ、消滅する。だがデビモンが消滅すると同時に、眩い光が放ち、辺りの物を包み込んでいった。そして光に包まれた士道とグラウモンは意識を失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「う、あぁ・・・・」

 

 地面に倒れ伏せていた士道は意識が戻る。

 ゆっくりと身体を起こし、額に手を押さえながら立ち上がる。辺りを見渡すとデビモンに破壊された筈の建物などが、全て元通りになっていた。あれだけ酷く荒れた場所が嘘の様になくなっている。

 

「グラウモン?」

 

 だがそこにはいる筈の者がいなくなっていた。

 先程まで一緒に戦っていた筈の友達が、辺りをどんなに見渡しても姿がなかった。

 

「どこにいるんだよ、グラウモン⁉︎隠れてないで出て来いよっ!」

 

 張り裂けそうな大声で名を叫び続ける。だがどんなに叫んでもグラウモンは姿を見せなかった。

 

「出てきてくれよ・・・・グラウモォォォォォォォォォォォンっ⁉︎」

 

 士道は涙を流し、いなくなったグラウモンの名を呼び続けた。

 

 

 

 

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