デート・ア・ライブ エボリューション   作:オンリー

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第6話 名前がない少女との出会い

 

 

 

「五河〜この後どうせ暇だろ?一緒に飯いかねー?」

 

 始業式が終わり、帰りの支度を整えていると鞄を肩がけにした殿町が話し掛けてきた。

 

「あー悪い。これから琴里と飯を食う約束があるんだ」

 

「え〜なら俺も一緒に行っても良いか?琴里ちゃんなら問題ねえだろ」

 

「別に一緒に来ても大丈夫だと思うけど」

 

 士道の許可を得ると、殿町がひそめる声で言ってくる。

 

「なあなあ、琴里ちゃんって中二だよな?もう彼氏とかいんの?」

 

(琴里に彼氏?)

 

 士道は頭の中で、琴里と見知らぬ男の姿がネオンに彩られた夜の繁華街を歩いている想像する。

 

『おっと、終電なくなっちまったな』

 

『えっ、もうそんな時間なの?困ったな・・・・おにーちゃんに怒られちゃう』

 

『まぁ仕方ないだろ。ほら、兎に角もう今日は帰れないんだから、泊まっていくしかねえだろ?』

 

『でもぉ』

 

『大丈夫だよ、何もしないから!』

 

『本当?』

 

『本当本当!俺って紳士な男だから』

 

『うーん、じゃあ・・・・私、あのお城の所がいいな』

 

 指差した先は、十八歳未満は立ち入り禁止のホテルだった。男はニヤけた笑みで琴里と共にホテルの中に入って行った。

 

「クソがッ⁉︎どこの馬の骨だ!ウチの琴里に手を出しやがったのはッ‼︎血祭りにあげてやる!」

 

 目を血走らせながら叫び声を上げ、歯が砕けるのではないかとばかりに歯を噛みしめた。

 

「お、おいー五河く〜ん。冗談だから、俺が言ったの冗談だからな」

 

 あまりのシスコン振りに、殿町は顔を引きつらせ苦笑いした。

 と、その瞬間。

 

 

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ––––––––––

 

 

 

「ッ⁉︎」

 

 教室の窓ガラスを揺らしながら、街中にサイレンの音が鳴り響く。

 

『これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません。前震が、観測されました。空間震の、発生が、予想されます。近隣住民の皆さんは、速やかに、最寄りのシェルターに、避難してください。繰り返します––––––––––』

 

 聞き取りやすい様にする為に、言葉を一拍ずつ区切る様にして、機械越しの音声が何度も繰り返された。それを聞いた生徒たちは静まり返り、一斉に息を呑む。

 

「おいおい・・・・マジかよ」

 

「殿町、焦る気持ちは分かるが落ち着け。空間震の警報が発令されたからって、今すぐに起こる訳じゃないんだ。それにシェルターはすぐそこだ。落ち着いて避難すれば大丈夫だ」

 

 額に汗を滲ませながら動揺する殿町を安心させる様に声をかける。

 

「お、おう、そうだな」

 

 殿町は士道の言葉に頷き、落ち着きを取り戻す。

 落ち着きを取り戻した所で、二人は教室から廊下に出る。廊下には既に生徒たちで溢れ、シェルターに向かう為の列を作っていた。

 

「俺等も列に並ぼうぜ」

 

「あぁ、分かった・・・・って、鳶一ッ⁉︎」

 

 列の最後尾に並ぼうとした時、列とは逆方向の昇降口に向かって走る鳶一の姿を目にし、士道は慌てて声をかける。

 

「おい、鳶一!そっちはシェルターがある方じゃないぞッ⁉︎」

 

「大丈夫」

 

 士道に呼び止められ、一度足を止め、鳶一はその一言だけ言って再び駆け出して行った。

 

「大丈夫って、言われても」

 

「お、落ち着いてくださぁーい!だ、大丈夫ですから、ゆっくりぃー!おかしですよ、おーかーしー!おさない・かけない・しゃれこうべーっ!」

 

 鳶一の心配をしていると、生徒を誘導している珠恵の声が廊下に響き渡る。

 

「自分より焦ってる人を見ると何故か落ち着くよな」

 

「そうだな」

 

 だがそのお陰か、先程まで不安や緊張を感じていた生徒たちは、珠恵の姿を見て、緊張がほぐされている。

 

「ん、どうしたよ五河?」

 

「いや、ちょっとな」

 

 言葉を濁しながら、士道はポケットの中からスマホを取り出し、琴里に電話をかける。

 

「・・・・繋がらないか」

 

 中学校を出ていなければ心配ないのだが、もし既に中学校を出てファミレスに向かっている場合だ。

 ファミレスの近くにも公式のシェルターがある筈だが、ちゃんとシェルターの中に避難しているかが問題だ。

 

「そうだ、確か琴里の携帯にはGPS機能が備わっいた筈だ」

 

 それで琴里の位置を確認しようと、スマホを操作し始める。

 画面が進んでいくと、街の地図が表示され、赤いアイコンが琴里の位置を指し示される。

 

「なぁっ⁉︎嘘だろ・・・・何でファミレスにいるんだよッ‼︎」

 

 士道はスマホの画面を見て、息を詰まらせた。赤いアイコンが指し示した場所は、約束のファミレスの真ん前で止まっていたのだ。

 何故こんな所で指し示しているのかと思っていると、ふと今朝琴里が言った「絶対だぞー」の一言が脳裏に浮かび出す。

 

「まさか、あの約束を・・・・いや、そんな筈ない。きっと避難する時に、ファミレスの前で携帯を落としたんだ。そうに違いない」

 

 幾ら何でも空間震が起こるというのに、今朝の約束を守る訳がないと首を振って否定し続ける。

 

 

 ––––––だがもし避難せず、ファミレスの前にいたとしたら。

 

 

「ッ⁉︎」

 

 士道はもう一度、琴里のスマホに電話をかける。だがやはり琴里のスマホに繋がる事はなかった。

 

「あぁ、クソッ‼︎」

 

 士道はスマホをしまい、列の中から抜け出す。

 

「お、おいッ!どこに行くんだよ五河!」

 

「悪い!先にシェルターに行っててくれ!必ず俺も行くからッ!」

 

 士道は殿町にそれだけ言って、列から逆方向の昇降口に走り出す。

 昇降口を出ると、靴箱にある靴を取り出し履き替え、外に駆け出して行った。

 校門を抜け、学校前の坂道を駆け下りる。

 

「頼むから俺の思い過ごしであってくれよ」

 

 思い過ごしである様に願いながら、街中を走る。

 街中を走っていると、目の前に映る光景は車の通らない道路に、人影のない街並み。

 街路にも、公園にも、コンビニにも誰一人して残っていない。

 つい先ほどまで、誰かがそこにいたことを思わせる生活感を残したまま、人の姿だけが消えている。

 

「無事でいてくれよ琴里」

 

 スマホの画面が表示する位置情報を逐一チェックしながら、一直線にファミレスに向かう。

 その時、突然進行方向の街並みが眩い光に包まれた。

 そして耳の中に響き渡る爆音と凄まじい衝撃波が士道を襲いかかる。

 

「何だっ⁉︎」

 

 士道は強烈な風圧に煽られ、バランスを崩して後方に転げ回る。

 

「いってぇ・・・・一体何が」

 

 チカチカする目を擦りながら身体をゆっくりと起こし、何が起きたのか確認しようとする。

 

「はっ、な、何だよこれッ⁉︎」

 

 視線の先にあったのは、先程まであった街並みが目を瞑っていた一瞬の内に––––––––––跡形もなく、無くなっていたのだ。

 地面は丸ごと削り取られ、消え去っているに加え、周りの建物も崩落していた。

 

「これじゃあ、五年前とまるで同じじゃないか!」

 

 目の前の光景に、悲痛な声を上げる。

 すると士道はクレーター化した中心に誰かがいる事に気付く。そこには王が腰掛ける様な玉座が存在し、その玉座の肘掛に足をかけている奇妙なドレスを着た少女がいた。

 

「ん?」

 

 少女も上から見下ろして、こちらを見ていた士道に気付いた。

 少女は気怠そうに首を玉座に回し、玉座の背もたれから生える柄を握り締め、ゆっくりと引き抜く。

 引き抜かれたのは、幅広の両刃の巨大な剣だった。その剣の刃からは、見る者を魅了してしまう美しさや幻想的な輝きを放たれていた。

 少女はその剣の柄を両手で持ち、剣を振り上げる。

 

「えっ、まさかッ⁉︎」

 

 少女の取る行動を見て、嫌な予感が身体中に走り出す。

 少女がこちらに剣を振りかぶると、そこから衝撃波が放たれ、地面を削りながら士道に迫る。

 咄嗟に身体を左側に避ける様に飛びつき、何とか斬撃から避け切る。

 

「あっぶねぇ!」

 

 動き出すのが、あと少しでも遅れていたら身体が真っ二つになっていただろう。

 

「お前もか」

 

 背後から声が聞こえ、振り向くと、今の今までクレーターの中心にいた少女が目の前に立っていた。

 

(あの一瞬で来たっていうのかよッ⁉︎)

 

 目を離したのは、ほんの一瞬。その一瞬の内に間を詰め寄って来た少女の身体能力に驚愕する。まるでその力と動きは、五年前に戦ったデビモンと同等かそれ以上の物と感じた。

 このままこの場にいては不味いと判断した士道は、すぐにでも逃げようとするが、少女の顔を見て、その場から動けなくなってしまう。

 

(何で、そんな辛そうな顔をしてんだよ)

 

 目の前に立つ少女の表情は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 少女の辛そうな顔を見ていると、胸が締めつけられてくる。士道はそんな少女を見て、声をかけてしまう。

 

「君の・・・・名前は」

 

 士道の問いを聞いた少女は悲しげな表情で、口にする。

 

 

 

「そんなものは、ない」

 

 

 

 

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