デート・ア・ライブ エボリューション   作:オンリー

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第7話 友との再会

 

 

 

「そんなものは、ない」

 

 少女が口にした言葉に士道は言葉が出ず、呆然と少女を見つめる。

 

「・・・・って、ちょ、タンマタンマっ⁉︎」

 

 名無しの少女が剣の柄を握り締め、再び振り上げようとする。

 その姿を見て、先程の光景が士道の脳裏に浮かび、慌てふためいた声を上げながら、彼女が剣を振り下ろすのを止める。

 

「何だ?」

 

「何だ?じゃないからっ!何しようとしてるの⁉︎」

 

「それはもちろん––––––早めに殺しておこうと」

 

「いやいや、何でそうなるのッ⁉︎」

 

「何で?当然ではないか」

 

 少女は物憂げな顔で当然な如く言う。

 

「––––––だってお前も、私を殺しに来たのだろう?」

 

「はいぃぃぃぃぃぃッ⁉︎何で俺がそんな事をするんだよ!」

 

 少女のとんでもない発言に、士道は盛大なツッコミを入れる。

 

「––––––何?」

 

 士道の言った言葉に、少女は耳を疑う。

 少女は猜疑と困惑が入り混じった様な目で、士道に向ける。士道の言った言葉に警戒する少女だったが、何かに気付き、空に顔を向け、眉をひそめる。士道もつられるように視線を空に向ける。

 

「嘘だろッ⁉︎」

 

 上空を見ると、こちらに向かって来る幾つものミサイルが雨の様に降ってきたのだ。

 今から避けようとしても間に合わない。死を予感した士道だったが、次の瞬間、目の前で更に驚愕の光景を目にする。

 空から降ってきたミサイルが、少女の数メートル上空でピタリと静止していた。

 

「こんな物は無駄と、何故学習しない」

 

 気怠げに息を吐き、剣を握っている手を強く握り締める。

 

「ふんっ!」

 

 剣を振り上げ、静止するミサイルに向けて振り下ろす。

 振り下ろした剣から衝撃波が放たれ、、空中で静止するミサイルを全て破壊し尽くされ、辺り一面に砂塵が舞い上がる。

 

「くっ⁉︎次から次へと、一体全体どうなってんだよっ!」

 

 空間震が起きたかと思えば、誰もいない筈の街中でデジモン級の力を持つ少女が目の前で現れ、いきなり襲い掛かって来たに続き、空から無数のミサイルに襲われる。

 

「つうか、どっから撃って来たんだ」

 

 士道は砂塵が晴れると、すぐ様にミサイルが来た方向の空を見渡す。そして、そこにある光景に目を見開き、息を詰まらせた。

 空中には、機械を纏って武装する人達が何人も存在し、空を飛んでいる。

 

「・・・・消えろ、消えろ。一切、合切・・・・消えてしまえっ!」

 

 少女は空に浮かび、武装集団に憎々しげに吐き捨てると、剣を振り下ろした。

 空中に飛んでいる武装集団は慌てた様子で少女の剣撃を回避していった。追撃を恐れてか、先程よりも距離を空け、少女の周囲を飛び回り始めた。

 

「ぬ?」

 

 少女は眉を寄せる。

 彼女の斬撃から逃げ惑う幾つもの中で、一人の人間が彼女の前に降り立ったのである。

 

「また貴様か」

 

 少女は目の前に現れた人物に思わず顔をしかめる。

 だがこの時、士道もまた目の前に降りてきた人物に口を開け、呆然としていた。

 その理由は簡単だった。何故なら目の前にいるのは––––––––––同じクラスメイトである・・・・鳶一折紙だったからだ。

 

「五河士道?」

 

 鳶一がちらと士道を一瞥し、返答の様に士道の名を呼んだ。

 

「お前、その格好は一体・・・・えっ」

 

 突如ポケットから音が鳴り響く。

 

(この音って・・・・まさかッ⁉︎)

 

 それはスマホからの着信音ではない。

 士道は弄る様にポケットの中から音が鳴り響いている物を取り出す。中から取り出したのは、どこに行く時でも常に持ち歩いているポケベルが、五年前に出した音と同じ、警告音を発する。

 

「お前等っ!ここから早く逃げろ‼︎」

 

 士道の叫びと同時に、辺りに歪みが生じる。

 そして、その歪みは次第に広がって行き、やがてその歪みの中から二体のモンスターが出現する。

 

「ぬっ」

 

「あれは」

 

 相対していた二人の少女や空で待機する武装集団も、突如現れた巨大モンスターに目を奪われる。

 士道はすぐ様に、現れた二体をポケベルで検索にかける。

 

「クワガーモン、昆虫型の成熟期デジモン。必殺技はシザーアームズ。もう一体は・・・・トータモン、爬虫類型の成熟期デジモン。必殺技はシェルファランクス」

 

 硬い甲殻で身体を覆い、頭部に巨大な鋏を持つ赤色のクワガタ。もう一方は、鋭いブレードの生えた甲羅を背にする大亀。

 街中に現れたこの二体のデジモンは、お互いに唸り声を上げながら睨みつけ合っている。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァッ‼︎」

 

「グォォォォォォォォォォォォォォッ‼︎」

 

 二体のデジモン達は、空気が振動するかと思わせる程の雄叫び声を上げ、取っ組み合いに入る。

 クワガーモンは、自身の鋭い鋏でトータモンの首を挟み、絞めつける。強力な力で首を絞めつけられるトータモンは、悲痛な呻き声を上げながら、背中にあるブレードを多弾頭ミサイルの様に発射する。

 

「ピギャァァァァァァァァァァァァッ⁉︎」

 

 放たれたミサイルはクワガーモンの無防備な背中に直撃し、思わぬ反撃に面食らい、首を挟みつけていた力を緩めてしまう。

 トータモンは、クワガーモンの怯んだ隙に首を絞めていた鋏から抜け出し、クワガーモンに目掛けてミサイルを連発する。

 

「くそっ⁉︎ここにいたら不味い。早く琴里の所に行かないと」

 

 空間にいた武装集団も、突然のデジモンの出現に取り乱し、この場から撤退する動きを見せる。

 一刻も早くこの場から立ち去ろうとした時、ミサイルの流れ弾がこちらに向かって襲いかかって来た。

 

「はぁッ‼︎」

 

「ふんッ‼︎」

 

 少女は地上で、鳶一は空中に飛び、自身の持ち手にある剣でミサイルを撃ち落としていく。

 

(何て動きだ・・・・あの子もそうだが、鳶一も人間離れした動きをしてる。離れた場所から見てても動きが捉えきれない)

 

 常人離れの動きに関心していると、上空にいる存在に気付く。

 デジモンの出現に慌てふためいていた武装集団の数名が、上空から少女の背後をライフルを構え、狙いを定めていた。

 少女はミサイルの迎撃に夢中で、背後の存在に気が付いていない。それを見た士道はその場から飛び出し、ミサイルの雨の中を走り抜ける。

 

「危ないっ!」

 

 少女の側に近づくと、横から押し倒す。

 

「貴様ッ⁉︎やはり私を殺しに・・・・ッ‼︎」

 

 自分を押し倒し、抱き締めている男が殺しに来たのかと思った瞬間、先程までそこにいた場所が無数の銃弾が降り注がれた。

 

「良かった・・・・間に合った」

 

「貴様。何故私を助けた」

 

 押し倒さなければ、自分を殺せたかも知れないというのにだ。

 少女は自分を助けた男に警戒をしながら、助けた理由を問い出す。それを聞いた士道は、頬を掻きながら苦笑いする。

 

「いや、気が付いたら身体が動いてた」

 

 その答えに少女は目を丸くして、呆然と士道を見つめる。

 

「・・・・そだ」

 

「ん?」

 

「嘘だッ‼︎」

 

 少女は士道を突き飛ばし、剣先を突き立てる。

 

「そんな言葉など信じない!本当は油断させて、私を殺そうと企んでいるのだろッ‼︎」

 

「・・・・信じる、信じないのはお前の勝手だ」

 

 君からお前に口調を変えると、士道は地面に尻餅をついた身体を起こし––––––––––少女の突き立てる剣先を掴み取る。

 

「だけど俺は何度でも言う!俺はお前を殺したりなんてしないッ‼︎」

 

 声を上げると同時に、士道は刃を握り締める力を更に入れ、剣先から伝って血が流れ出る。

 

「本当に・・・・私を殺さないのか」

 

 今まで自分の前に現れるのは、常に自分を殺しに来る者達だけだった。だから身を呈して自分を助けた目の前の男が信じられなかった。

 

「あぁ、本当だ」

 

「本当の本当か?」

 

「本当の本当だ」

 

「本当の本当の本当か?」

 

「本当の本当の本当だ」

 

 真剣な眼差しで答える士道に、少女は剣を下ろすと、髪をくしゃくしゃと掻き、背を向ける。そして再びこちらに振り返り、腕組みをする。

 

「ふん、誰がそんな言葉に騙されるか、ばーかばーか」

 

「ば、馬鹿って」

 

「だが、まあ、あれだ。どんな腹があるか知らんが、私を殺さないと言った人間は初めてだからな。少しだけお前の話を聞いてやらんでもない」

 

 先程までの冷たい態度や悲痛に満ちた表情とは打って変わり、子供っぽく喋る様に呆気を取られたが、士道は自分を信じ、少しだけ表情が和らいだ姿を見せてくれた少女に微笑む。

 

「そう言えば・・・・名を聞いていなかったな」

 

「あぁ、そうだったな。俺の名前は五河士道だ」

 

「シドーか、良い名だな。私には名がないが、名がないと会話を交わすのに不便だな・・・・そうだ!シドーが私に名をつけてくれないか?」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ⁉︎」

 

「シドーは私を何と呼びたい?」

 

「えっ、いや、そう言われても」

 

 いつまた流れ弾が来るかも分からない状況で、いきなり名前を考えてくれなどハードルが高過ぎる。しかも女子の名前なら尚更難しい。

 士道は眉を寄せ、考えを巡らせる。

 

「・・・・十香」

 

「ぬ?」

 

「君の名前は十香って、言うのはどうだ?」

 

「十香か、悪くない」

 

「そ、そうか。それは良かった」

 

 

 ––––––今日が四月十日だから、名前を十香にしたってゆうのはちょっと安直だけど、気に入ってくれたから良いか。

 

 

「って、のんびり話をしてる場合でもないか。早く琴里を見つけないと」

 

「ん、琴里とは?」

 

「俺の大切な家族だ。まだこの街中にいるかも知れないんだ」

 

 このまま二体のデジモンの争いが激化したら、琴里がまだ避難していない場合を考えると、一刻も早く琴里を見つけなくてはいけない。

 

「ならば奴等は私に任せろ。シドーは琴里とやらの下に早く行け」

 

「でも危険だろ!あの空にいる奴等にも狙われてるのに」

 

 今はトータモンが無数に発射するミサイルを、総動員で撃ち落としている為、こちらには目を向けていないが、二体のデジモンの争いに参加すれば、デジモン達と共に討伐される可能性が高い。

 

「大丈夫だ。それより早く行けっ!」

 

「十香ぁ⁉︎」

 

 十香は地面を蹴り上げ、二体のデジモンが争う戦場に飛び立つ。

 

(くそっ⁉︎俺は何やってんだ。女の子を一人行かせて情けない!)

 

 何も出来ず、ただ見ているしかできない自分の無力さに怒りに、血が流れ出る手の痛みなど忘れ、強く握り締める。

 

 

 ––––––五河士道。

 

 

「ッ⁉︎」

 

 突如、頭の中に声が聞こえる。

 

「誰だ!俺の名前を呼ぶのは!」

 

 声の主がどこにいるのか周りをキョロキョロと見渡す。

 

 

 ––––––私の事はまだ話せない。だが君の敵ではない事だけは言える。

 

 

 いきなり敵でないと言われ、不信に思うのが当たり前の事だが、士道は不思議と頭の中に聞こえる声の主の言葉を信じる。その声はどこか懐かしく、温かい。それを聞くと安らぎを感じさせられる。

 

 

 ––––––大切な者を守りたいか?

 

 

「・・・・守りたい。俺は琴里を、十香を守りたい!」

 

 

 ––––––ならばデジヴィスを掲げ、リアライズと叫べッ‼︎

 

 

(デジヴィス?それって、これの事か?)

 

 それらしい物と言えば、この不思議なポケベルしか思い浮かばなかった。士道は手に持つポケベルを、声の主の指示通りに掲げる。

 

「リアライズっ!」

 

 士道はリアライズと叫ぶと、デジヴィスが反応し、光り輝く。

 デジヴィスから発する眩い輝きに、咄嗟に目を閉じる。輝きが止み、閉じた瞼をゆっくりと開ける。

 目を開けると、そこには信じられない光景を目にする。

 

「ギル、モン」

 

 五年前に姿を消した掛け替えのない友達。

 士道は目に大粒の涙を溜めながら、目の前に現れたギルモンの名を震える声で呼ぶ。

 

「士道?」

 

「うぁぁぁぁぁッ⁉︎ギルモォォォォォォォォンっ‼︎」

 

 大粒の涙を零しながらギルモンの側に駆け寄り、力強く抱き締める。

 

「士道なの?」

 

「あぁ、あぁ、俺だよギルモン!」

 

「何か身体が大きくなってない?」

 

「当たり前だよ。もうあれから五年が経ったんだから」

 

「五年?」

 

 ギルモンは首を傾げて、士道が何を言っているのか分かっていない様子だった。

 士道はギルモン抱き締める手を放し、目元を袖口で擦り上げて涙を拭う。

 

(色々と聞きたいことはあるけど・・・・今は!)

 

 ギルモンと顔を向き合い、真剣な表情でギルモンに自分の気持ちを伝える。

 

「ギルモン。お前に頼みがあるんだ」

 

「な〜に?」

 

「今そこで暴れているデジモン達を止める為に、俺に力を戦ってくれないか?」

 

 ギルモンは士道が指差す方に視線を向けると、視界に二体のデジモンが周りの事を気にせず、お構いなしに暴れているのを捉える。

 

「何がどうなっているのか分からないけど、僕は戦うよ!」

 

「ありがとう・・・・ギルモン」

 

 士道は制服の袖口を破り、出血する手の平を破った布で応急処置する。

 応急処置を終わらせると、士道とギルモンは横に並び立ち、暴れるデジモン達を見据える。

 

「行くぜ・・・・ギルモン!」

 

 士道の叫びと共に、デジヴィスから光り輝き出す。

 

「ギルモン進化––––––グラウモン‼︎」

 

 ギルモンは姿が変わり、真紅の竜へと進化する。

 進化したその姿から両肘には鋭い刃が生え、身体もふた回り以上は大きくなっている。

 

「背中に乗って!」

 

 グラウモンの指示を聞いた士道はグラウモンの背中によじ登る。

 

「乗ったぜグラウモン!」

 

「よ〜し!走るから振り落とされない様に気をつけてね」

 

 グラウモンは士道を背中に乗ったのを確認すると、デジモン達のいる場所に向かって一直線に走り出した。

 

 

 

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