デート・ア・ライブ エボリューション   作:オンリー

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第9話 テイマーとしての役割

 

 

 

 十香とグラウモンが飛び出すと同時に、クワガーモンは羽を羽ばたかせて空に、トータモンはこちらに近づいて来るグラウモンに向けて甲羅の鋭いブレードを射出する。

 

「エキゾーストフレイムッ!」

 

 空中に浮かぶ弾道ミサイルに向けて、熱線を薙ぎ払う様に放つ。撃ち込まれたミサイルはグラウモンが放たれた熱線に直撃し、空中で爆散し破壊される。

 

『いいかグラウモン。まず先にお前が相手にして欲しいのはトータモンだ。あいつの甲羅についているミサイルの威力は一つだけでも建物を破壊できる。まだ避難し切れてない人がいると考えると、無数に辺り一面に撃たれでもしたらマズい。だからグラウモンには撃ち込まれたミサイルを全て墜とすつもりで当たってくれ』

 

 何とか全てを撃ち墜とせたグラウモンは安堵の表情を浮かべて、息を大きく吐く。

 

(上手く全部を墜とせたけど・・・・更にミサイルの数を増やされたらきつくなるな)

 

 額に汗を垂れ流す。まだ撃ち墜とせる範囲内だが、このままミサイルの数を増やれ続けられたら一人では対処できなくなる。それを予想したグラウモンはトータモンとの距離を詰める。

 至近距離で大量のミサイルを撃てば、幾ら強固の甲羅に隠れたとしても自分にも被害が出る。

 

(今できる事はトータモンとの距離を詰めて、ミサイルの発射数を少なくするしかない!)

 

 距離感を取りながら間合いを詰め、同時に拳を地面に打つける。

 叩き込まれた地面からは砂塵が舞い上がり、トータモンの視界を奪う。煙幕に紛れ、死角に上手く入り込むとグラウモンはトータモンの甲羅を拳で連打する。だが何度も拳を甲羅に叩き込むが、甲羅にはヒビ一つ入らず、無傷だった。

 

「おっと!」

 

 トータモンが尾を振り回し、周りの砂塵を攪拌した。砂塵が散らされ、目隠しの効果が消えていく。グラウモンはトータモンから少し距離を空ける。

 

「参ったな。結構強めで叩いたのに無傷なのはちょっと予想外だな」

 

 甲羅が駄目となると残りは首か腹辺りに絞られてくる。しかし腹を攻撃するならば一度あの巨体をひっくり返さなくてはならなくなる。

 

(士道のサポートがないと腹は無理そうだな。なら首を行ってみるか・・・・十香の方はどうだ?)

 

 チラリと視線を外し、十香の方に視線を向ける。

 

「はっ!」

 

 十香が振り下ろす剣とクワガーモンの強靭な鋏がぶつかり火花が散り、戦いは均衡する。

 

(中々やるな)

 

 空中から降り立ち、空を見上げて構えを取る。

 今まで戦って来た中でも比べ様がない程の強敵。その巨体故に細かい動きは鈍いが、身体の強度や基礎能力は油断ならない物がある。先程から隙ができた瞬間、身体に何度か斬りつけているが大した傷は与えられてない。

 尤も倒せない相手ではない。

 素早い動きで隙ができた瞬間に殺すつもりで剣を振り下ろせば、身体を斬り裂く事はできる。だがそれをしてしまえば士道の思いを踏み躙る事になる。

 

(今はこの状態を保たせるしかないな)

 

 クワガーモンが地上にいる十香に向かって急降下する。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 走る、ただひたすら走る。士道は一刻も早く目的の物を見つけ、十香達の元に戻る為に走る。

 道中瓦礫に足をすくわれたりして何度も転んだりしたが、すぐ様に立ち上がって走る。

 

(もう少しだ・・・・もう少しで目的の場所につく!)

 

 息を切らしながら全速力で走ると反応があった場所に辿り着く。そこは最初に十香が現れ、後にデジモン達が現れた場所。辺りにはデジモンらしき存在はなかった。

 士道は辺りをキョロキョロと見渡す。

 

「どこだ。歪みはどこにあるんだっ⁉︎」

 

 周りを隈なく探しているが歪みが見つけられない。確かに反応はこの場所を示している筈なのに、周りには歪みらしき物は見当たらなかった。

 ここに着いてからどれくらいの時間が過ぎたか。時間がどんどん過ぎ、焦りを感じる士道は冷静さを失いかける。

 

(もう、最終手段しかないのか・・・・いや、まだ探していない場所があった!)

 

 上に顔を上げ、目を凝らして空を見渡す。すると空に小さな歪曲した場所が一箇所だけある事に気付く。

 

「あった!早くこの事を二人に知らせないと」

 

 急いで戻ろうと駆け出す。だがそんな士道の前に一人の女性が立ち塞がる。

 

「鳶一ッ⁉︎」

 

 士道の前に突如空から舞い降りて、立ち塞がったのは士道のクラスメートの鳶一だった。

 

「士道、ここから貴方を安全な場所まで避難させる。私と来て」

 

 マズいと思った。今鳶一と共にここから離れてしまったら、二人にこの事を伝えられない。それにまだ避難してないかも知れない琴里を探せなくなってしまう。

 

「待ってくれ鳶一!今ここから離れる訳にはいかないんだ」

 

「それは駄目」

 

「くっ!」

 

 このままでは埒が明かない。隙を見て何とか横から突き抜けようと考える。

 

(いや駄目だ。さっきの十香との戦いを見ても、俺の身体能力じゃあ隙を見て、出し抜ける事ができたとしてもすぐ様に身柄を拘束されるのがオチだ・・・・でもどうする。このまま何もしなくても身柄は抑えられる)

 

 考えろ、限られた時間の中で何ができる。

 手元にある物で役に立ちそうな物はデジヴィスだけ。だがそれも使い方がまだよく分かっていない状態でこの場を切り抜けるのは不確定だ。

 

(くそっ!何も良い手が思い浮かばない・・・・)

 

 八方塞がりに陥っていると、グラウモンがトータモンと交戦している瞬間を目視する。最初に交戦していた場所からこの場所の近くまで追いやられた様だ。

 どうやらトータモンに苦戦しているのか、グラウモンの身体は所々に傷を負って、息を切らしている様に見える。

 

(ちっ、グラウモンもそろそろ限界に近いか。この分だと十香も・・・・早くしなきゃいけないのに俺は何をやっているんだ!)

 

 こんな所で戦っている光景をただ立って見ている訳じゃないだろ。

 何の為に二人を危険な役目を押しつけてまでここに来た!

 

(そうだ。俺が今やるべき事を全力を尽くすだけだ!その為なら)

 

 士道はデジヴィスを懐に入れ、息を大きく吐き捨てる。覚悟を決めた士道は辺りに落ちていたガラスのカケラを拾い、両手で握りしめて腹に向けて大きく振り下ろす。

 

「がぁッ⁉︎」

 

「士道っ⁉︎」

 

 ガラスを突き刺さった腹からは血が流れ、傷口から鮮血が辺りに飛び散る。士道は苦悶の表情を浮かべるものの歯を食いしばりながら何度も傷口にガラスを突き刺し続けた。

 

(いてぇッ⁉︎マジでいてぇ・・・・だがあいつらはもっと痛い思いをしてるんだ。俺がこの程度で止める訳にはいくかよ‼︎)

 

 鳶一は突然の士道の行動に目を見開き、思考を止めるがすぐ様に意識を戻し慌てて蹲る士道の元に駆け寄る。

 

「悪い鳶一!」

 

 顔を寄せて来た鳶一の顔に溢れ出る血をかける。顔に血をかけられた鳶一は視界を奪われる。

 士道は視界を奪った隙を突き、鳶一を後にしてグラウモンのいる場所まで走る。

 

「グラウモンっ!」

 

「士道ッ⁉︎」

 

 近づいて来る士道に気付くと、グラウモンは再び地面に拳を叩きつけ砂塵を巻き上げてトータモンの視界を奪う。

 

「どうだった・・・・って、どうしたのその傷⁉︎」

 

「あぁ、ちょっと、色々あってな。今は気にしないでくれ。それより目的の物は何とか見つけられた。でも歪みは小さくなって今にも消えそうな状態だ」

 

「どうすれば良い?」

 

「グラウモンのエキゾーストフレイムで小さくなった歪みをこじ開けるしか手はない・・・・だがこの方法はかなり危険を伴う」

 

 歪みを刺激し、何が起こるか分からない。新たなデジモン達が現れるか、それともここら一帯を焦土と化すか。

 最悪の場合は世界が消えてなくなるかも知れない。

 

「でも結果が良いにしろ、悪いにしろ、何もせずにいたら何も起きやしない。やらなければ何も始まらないだ。それにリスクのない選択なんてタカが知れてるしね〜」

 

「そうだな。なら、やるとしますか。作戦は忘れてないよなグラウモン?」

 

「忘れてないよ。士道こそタイミングを見計らってね」

 

「そうだな」

 

 互いに笑みを浮かべ、拳を合わせる。

 グラウモンと士道は二手に分かれトータモンに向かう。

 砂塵が晴れるとトータモンは雄叫びを上げ、こちらに向かって走るグラウモンに甲羅からミサイルを連発する。グラウモンは再びミサイルに向けて熱線を放ち、全て撃ち墜とす。そして全速力でトータモンの元まで一直線に突っ走る。

 

『いいかグラウモン。トータモンの防御力は全体的に高い上に甲羅が頑丈だ。普通に戦っていたらこっちが先に体力が尽きてしまう。だけど唯一あいつにダメージを負わせる方法はある。これはさっき見て分かった事だ』

 

『どんな?』

 

『あいつがミサイルを撃った瞬間、撃った甲羅の箇所が無防備の状態だった。すぐにその場所は新しく生えるミサイルで塞がってしまうけど、俺達に勝機があるとすれば無防備になる瞬間を狙うしかない。攻撃のタイミングは俺が合図するからグラウモンはそこを叩き込んでくれ』

 

 所定の位置に到着した士道はトータモンに気付かれない様に隠れながら、攻撃のタイミングを見計らう。

 

(やべぇ、痛みもそうだが・・・・血を流し過ぎたか、視界がぶれる。早く決着をつけないとマズイな)

 

 傷口を手で押さえつけているが、出血の量は変わらず溢れ出てくる。このまま時間が経ち過ぎれば意識を保てなくなる。

 

「グォォォォォォッ!」

 

 雄叫びを上げる声に士道は目を凝らす。接近して来るグラウモンに危機感を感じたのか、すぐ様に新たなミサイルを装填し照準を一直線に向かって走るグラウモンに合わせる。

 そして甲羅のミサイルを全て一斉に発射した。

 

「今だグラウモン!空高く飛べっ!」

 

 士道の声にグラウモンは瓦礫を踏み台にし、階段を上る様に掛けて空高く飛び立つ。予測地点に向けて発射したミサイルは空を切り、地面にぶつかり爆散する。

 爆発の影響で煙幕の様に立ち篭り、余波が離れ隠れている士道の場所にまで届いた。

 

「エアロウィング、selectッ‼︎」

 

 デジヴィスを素早く操作し、グラウモンに送る。グラウモンは翼を生やし、空を舞う。

 

「喰らえっ、ロックブレイカーッ!」

 

 翼を羽ばたかせ急降下する。煙幕で視界を奪われているトータモンは空中から接近しているグラウモンの存在に気付いてはいない。

 その隙にグラウモンは鋭い前爪を突く様にしてミサイルを撃った直後の無防備の箇所に向けて貫く。無防備の箇所を貫かれたトータモンは絶叫を上げて、地面に倒れる。

 

「よし、なら次は三時方向上空に向かってエキゾーストフレイムだ!」

 

「OK・・・・エキゾーストフレイムッ!」

 

 指示された方向に熱線を放つ。最大威力で放たれた熱線は歪みがあった場所に直撃すると、近づかないと見えなかった歪みの穴は目視できるだけ大きく広がって現れた。

 

「やったぁ!」

 

「喜ぶのはまだ早い。歪みは、何とか広がったけど。はぁ、はぁ、はぁ・・・・その、証拠に、段々と小さくなってきてる。早くあの穴にデジモン達を投げ込まないと」

 

「分かった!」

 

 グラウモンは気を失っているトータモンに近づき、両手でトータモンの身体を掴み腕と腰に力を入れて身体を持ち上げようとする。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ⁉︎」

 

(駄目だ、このままじゃ間に合わない。歪みを刺激した所為か思っていた以上に穴が小さくなる速さが上がってる。あの速さだと数分後には消えてしまう。その間まで運ばなきゃいけないのに、ここから持ち上げてあそこまで運ぶまで三十分以上はかかる)

 

 只でさえ自身よりも体格の大きい相手を持ち上げるだけでも大変なのに加え、歪みが発生していられる僅かの時間で運ばなければならない。

 このままでは今までの苦労が水の泡になってしまうと感じた士道はしまったデジヴィスを取り出す。

 

(頼む・・・・デビモンとの戦いの時の様に、俺達に力を貸してくれ‼︎)

 

 血に塗れた手に握りられるデジヴィスは士道の思いに応えたのか、デビモン戦で見せた光を輝かせる。士道はその光を見て笑みを浮かべる。

 

「ありがとな。受け取れグラウモン!」

 

 デジヴィスの光を必死で持ち上げているグラウモンに注ぎ込む。

 

「力が、漲ってきたぞっ⁉︎」

 

 光を浴びたその身体からは普段の力を超える溢れんばかりの力が漲ってくる。先程まで重かったトータモンが嘘の様に軽々と持ち上げられた。これならば持ち上げたまま空を飛んで向かう事も可能だ。

 

「グラウモン。そのまま振り向かずに聞いてくれ。そいつを歪みの穴に投げ込んだら、十香の応援に行ってくれ」

 

「うん、それは良いけど士道はどうするの?」

 

「俺はちょっと此処で休ませてもらう。傷口を止血しないといけないし、これ以上は足手まといだからな」

 

「分かった。でも僕は士道が足手まとい何て思ってないからね!」

 

 翼を広げ、羽ばたかせトータモンを持ち上げたまま上空へ飛び立つ。グラウモンが飛び出た事を確認すると士道はその場に座り込む。

 

「悪いな。俺、お前に嘘ついたわ」

 

 微笑を浮かべる士道の座っている場所はいつの間にか血で染まり切っていた。

 

「もう、止血できるレベルじゃないだ」

 

 鳶一に血を上手く目にかけられるだけの血を出す為に、何度も刺した事で傷口が思っていた以上に広がってしまった。もう視界が霞み、意識が保てなくなってきている。

 

(あぁ、くそ。琴里を探さないといけないのに此処で終わっちまうのか。折角グラウモンとも会えたのに最悪だ)

 

 それに。

 

「十香とももっと話したかったな」

 

 力のない声で呟いた後うつらうつらと、舟を漕ぐ様にして、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

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